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07 - 一学年 三学期 春 バレンタイン篇 -
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結局、どうしようと考えてたらあっという間にバレンタインデーの日になった。
そんな今日は平日。
そう、朝からずっと大倉が忙しそうで、まともに話せてない。
朝は下駄箱にチョコが入ってたり、教室来たら机の上に大量に置いてあったり(おかげで教室はチョコの匂いがすごい)、休み時間の度に呼び出されてたり。
今はちょうどお昼。勿論、大倉は呼び出されてて居ない。
「はぁ…」
「大変だねぇ、大倉くん」
「ほんとにな…」
俺?俺は貰えるわけないじゃん。クラスの奴らとそこまで仲良いわけじゃないし、部活にも委員会にも属してないし、大倉みたいにモテるわけでもないし。
因みに真琴は貰ってた。
「5個も貰っちゃったよー、えへへー」て自慢された。ムカつく。
「航ちゃんはあげないの?」
「…どうしようか悩み中」
「え、まだ悩んでんの?当日なのに?」
「うるさい…」
別に、チョコじゃなくても良いんでしょ?とか思って、俺でも買える本を選んだ。
その本は、『アネモネ』を書いた作家さんで、最近発売された本。
『アネモネ』の続編で、タイトルは『カスミソウ』。
一応、俺の気持ちを表しても居るんだけど…大倉は気付くかな…?
て言うか、大倉にあんな返答されたらチョコあげづらいじゃん。あげて食べてくれなかったらそれこそヘコむし…。
だから本ってのも味気ないとは思うんだけど、俺と大倉の仲良くなるきっかけが本だったし。良いかなぁって。
一応、鞄の中に入れて持って来てはいる。
でも、渡すタイミングが分からなくて、結局お昼になった。
放課後、渡せたら良いな…でも、正直渡して良いのかも悩んでる。
付き合ってるとは言え、俺から欲しいのかな…?喜んでくれるんだろうか…?こんなことした事ないから、本気で悩むし本気でこわい。
結局大倉は、チャイムがなるギリギリまで戻って来られず、そのまま放課後までまともに話す事はなかった。
「航、帰ろ」
「あ、うん。え?呼び出しされてないの?」
「うん。放課後の呼び出しは全部断ってる」
「そ、うなんだ」
「うん」
ねぇ、それってさ…自惚れかも知れないけど、俺のためって思っても、バチは当たらない、よな?
やべぇ、今絶対顔赤い。嬉しいけど恥ずかしい。でも嬉しいの気持ちが戦ってる、今。
「航?」
「………」
「こーう!」
「っ!は、はい!?」
「さっきからどないしてん?」
「え?!い、いや…」
やばいやばい。嬉しすぎて話聞いてなかった。
いや、俺どんだけ浮かれてんだよ。まじで乙女かよ。
「あ、なんか言ってた?」
「…べつに」
「え?」
あ、れ?なんか、めちゃくちゃ不機嫌になってるんですけど?!俺、なんかした?
待って待って。大倉は何の話してた?うわ…まじでちゃんと聞いてなかった…。
ほんと、どんだけ浮かれてんだよ、俺…。
「おお、くら」
「…なに」
「あ、の…」
「……ねぇ、航」
「は、はい!」
「…何もくれへんの?」
「……へ?」
「今日、何の日か分かってるやろ?」
「ま、まぁ…」
あげても、良いのか。そっか。良かった。
そう思った途端に、嬉しい気持ちが爆発しそうになった。
すぐに鞄の中に手を突っ込んで、綺麗にラッピングしてもらったモノを取り出す。
すーはーと息をしてから、大倉に手渡した。
「チョコより、いいかなと…思いまして…」
「…開けてええ?」
「うん」
「………」
「…べ、別に読まなくてもいいから、あの…よかったら…と言う、こと…で…」
めちゃくちゃ恥ずかしい。恥ずかしくて最後の方ちゃんと聞こえてるのか分からないくらいの声量しか出なかった。
誰かに何かあげるって、こんなに緊張するんだな。
毎年、女の子たちはこれを行なってると思うと、すごいと思った。
「本…」
「う、うん…。いらなかったら、」
「ありがと」
「………、」
「めちゃくちゃ嬉しい」
「お、う…」
その時の大倉の、すごく嬉しそうな笑顔は、絶対に忘れない。
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