アネモネ

ぱる@あいけん風ねこ

文字の大きさ
57 / 79
10 - 二学年 二学期 秋 -

03

しおりを挟む


「で?なんで泣きそうな顔してたの?」
「…別に、」
「大倉くん、居たね?」
「っ…、」
「彼、いつ帰って来たの?」
「…知らない」
「…知らなかったのか」
「………、」




だったらなんだよ。知らなかったよ。連絡も一切なかったよ。
あと、別に泣きそうになってない!ただ、色々とムカついてただけ!
それに…井上に言えるかよ。言えるわけないだろ。
俺たち別に、友達でも何でもないただのクラスメイトだし。何だったら、俺お前のこと振ってるし。




「ね、相澤くん」
「…なに」
「俺、まだ諦めてないからね?」
「は?」
「まだ、相澤くんの事好きだよ」
「何言って、」
「そんなすぐに諦められるわけないじゃん」
「…、」




そんな事言われても、俺はお前の気持ちに応えられないんだって。
女が好きかと言われたらそうでもないし、じゃあ男が好きなのかと言われたらそれも違う。
多分、大倉だから好きになったんだ。
だから、他の人を好きになる事はないんだ。
井上にそうはっきり伝えたのに、こいつは諦めようとしない。




「…俺のどこがいいんだよ」
「……1年の時さ、図書委員してたでしょ?」
「…うん」
「その時に俺、図書室通ってたの」
「…そうなんだ」
「うん。でさ、カウンターで本読んでる相澤くん見かけて」
「………」
「その時の真剣な顔が可愛いなぁって思ったのがきっかけ」
「は…?」




「それから毎週木曜日は通ってたんだよ」なんて言われても、俺は知らない。
その時は、大倉と居るのが楽しかったし、周りは当時の3年生ばっかりだったし。
井上が俺に好意を寄せた事も知らないし、見られてた事も知らない。何だったら井上の存在も知らなかった。




「2年になって、同じクラスになって、しかも目の前に相澤くんが居て」
「………」
「好きな人が目の前に居て、気持ち抑えるなんて無理でしょ」
「それは、」
「まぁ…大倉くんと何があるんだろうなぁとは思ってたけど」
「……、」




「まさか付き合っちゃうとはなぁ」って、どこか寂しそうに言われても…反応に困る。

正直、俺は今まで告白した事もされた事もなかったから。
それも全部、大倉だけだったから。




「なんで大倉くんと喧嘩したのかは知らないけど」
「……」
「そんなんだったら、俺奪っちゃうよ?」
「っ…、」
「……いいの?大倉くん」
「っはぁ…あかんに、決まってるやろ」
「…っえ?」




声のした方に振り向いたら、大倉と真琴が居た。
2人とも息が上がってる。走って来たのかな。




「航」
「っ……」
「…ごめんなさい」
「……、」
「ほんまにごめんなさい」
「っ……」
「俺も。航ちゃん、ごめんなさい」
「………」




謝られても、正直どうしていいのか分からない。
確かに、何も聞かされてなかった事には怒ってる。
何で俺には何も言わないで、真琴は知ってるの?とか、いつ戻って来たの?とかもうなんか、色々。聞きたい事もいっぱいある。
でも、どうしたらいいのか分からなくなってるのも確か。
許すのが1番良いのも分かってる。でも自分の中でまだ処理しきれてないから、どう許せば良いのかも分からない。




取り敢えず、ずっとここに居るのも何だからと、俺の家に行く事にした。
井上は、あまり関わりたくないのか、それとも大倉と一緒に居たくないのか、帰って行った。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

タトゥーの甘い檻

マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代) どのお話も単体でお楽しみいただけます。 ​「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」 ​真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。 ​それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。 「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。 アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。 ​ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。 愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。 ​「……お前のわがままには、最後まで付き合う」 ​針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。 執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。

俺の婚約者は小さな王子さま?!

大和 柊霞
BL
「私の婚約者になってくれますか?」 そう言い放ったのはこの国の王子さま?! 同性婚の認められるパミュロン王国で次期国王候補の第1王子アルミスから婚約を求められたのは、公爵家三男のカイルア。公爵家でありながら、長男のように頭脳明晰でもなければ次男のように多才でもないカイルアは自由気ままに生きてかれこれ22年。 今の暮らしは性に合っているし、何不自由ない!人生は穏やかに過ごすべきだ!と思っていたのに、まさか10歳の王子に婚約を申し込まれてしまったのだ。 「年の差12歳なんてありえない!」 初めはそんな事を考えていたカイルアだったがアルミス王子と過ごすうちに少しづつ考えが変わっていき……。 頑張り屋のアルミス王子と、諦め系自由人のカイルアが織り成す救済BL

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

人の噂は蜜の味

たかさき
BL
罰ゲームがきっかけで付き合うフリをする事になったチャラい深見と眼鏡の塔野の話。

無自覚オメガとオメガ嫌いの上司

蒼井梨音
BL
ベータとして生きてきた無自覚オメガの小国直樹は、オメガ嫌いの白鷹課長のいる部署に異動になった。 ビクビクしながら、なるべく関わらないように仕事をしてたのに、 ペアを組んでいた先輩が倒れてしまい、課長がサポートすることに。 そして、なぜか課長にキスされてしまい…?? 無自覚オメガ→小国直樹(24) オメガ嫌いの上司→白鷹迅(28)アルファ 第一部・完 お読みいただき、ありがとうございました。 第二部 白鷹課長と一緒に住むことになった直樹。 プロジェクトのこととか、新しくできた友だちの啓さんのこととか。 相変わらず、直樹は無自覚に迅さんに甘えています。 第三部 入籍した直樹は、今度は結婚式がしたくなりました。 第四部 入籍したものの、まだ番になってない直樹と迅さん。 直樹が取引先のアルファに目をつけられて…… ※続きもいずれ更新します。お待ちください。 直樹のイラスト、描いてもらいました。

強面若頭は、懐っこいナースの献身に抗えない ―極道、はじめての恋を処方される―

たら昆布
BL
ウブで堅物な極道若頭×明るいわんこ系看護師

処理中です...