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10 - 二学年 二学期 秋 -
05
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「落ち着いたか?」
「うん」
どのくらい抱き締めあってたのか分かんないけど、取り敢えず落ち着いたらしい。よかった。
落ち着いてもらわないと話出来ないしな、うん。
「で、いつ帰って来たの?」
「3日前」
「お父さん、大丈夫になったの?」
「うん。結局兄ちゃんが来てくれてん」
「そっか」
「うん」
お父さんは、事故に遭ったけど命に別状はなく、まだ起き上がることは出来ないけど意識もあるし、大丈夫らしい。
お兄さんも、なんだかんだ言って心配してたらしく、大倉の代わりに面倒見てくれるって言ってくれて、大倉がこっちに帰って来れたと。それが3日前。
真琴が、大倉が帰って来てるのを知ってたのは、3日前にたまたま駅で会ったらしく、その時に真琴から「航ちゃん驚かそう!」て言われて、俺に連絡しなかったらしい。
まじで…おい、真琴。やっぱお前次会った時殴るからな!!
それと、大倉が全然連絡しなかったのは、ただ単にお父さんの世話が大変で、お父さんが借りてる家に大倉が泊まってたらしいんだけど、そこと病院の距離が思いの外あって、移動だけで疲れるのと、病院ではお父さんの世話するのでなかなか時間が取れなくて、連絡出来なかったらしい。
「よかったな、大倉」
「うん…でも、ごめん」
「…おう」
「…ほんまは、帰って来た日にすぐに連絡するつもりやってん」
「うん」
「でも、笠井くんにあかんって言われて」
「うん」
「でも、航に会いたかったし、連絡したかったし、声聞きたかったし」
「うん」
「むっちゃ、つらかった」
「そっか」
背後から俺にまたぎゅって抱きつきながら、「会えなくてつらかったさみしかった」と言う大倉は、やっぱり可愛い。
連絡くれなくて、俺だけ知らされてなくて、俺もつらくて寂しかったけど、大倉も同じだったんだって思ったら、怒ってたことが恥ずかしくなって来た。
「大倉、ごめんな?」
「…なんで航が謝るんよ」
「いや、なんも聞かないで勝手に怒ったからさ…」
「それは、航悪くないやん。俺と笠井くんのせいやん」
「そうだけど、でもさ」
「…じゃあ許す。だから、航も許して」
「うん。許す」
「んふっ」
やっといつもの笑顔が見れて、心が温かくなる。
やっぱ大倉は笑ってる顔が1番いい。
じーっと大倉の顔見ながら、あー好きだなぁ…て思ってたら、ちゅってされた。しかもちゃんとちゅって音付きで。
やばい。不意打ちは恥ずかしい。今確実に顔真っ赤だ。
「っ、ちょ…大倉?!」
「んふふ。真っ赤。かわいい。航かわいい」
「っ…まじでさぁ…」
「好きやで、航」
「ぅ、…うん…俺も、好き」
「うん。んふふふふ」
そんな幸せそうな顔しないでほしい。
そんな顔されたら、もっともっと好きになるだろ。
どんだけ好きにさせたら気が済むんだよ、大倉は。
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