ゲームの世界に堕とされた開発者 ~異世界化した自作ゲームに閉じ込められたので、攻略してデバックルームを目指す~

白井よもぎ

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第一章

9話 臨時パーティ2

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 それからというもの、シンは連日のように幽幻の館へと通い続けた。
 毎日朝から晩まで、薬や魔法で無理矢理回復しながら、休むことなく戦い続ける。
 いくら身体を回復しても精神的疲労はとれない為、かなり無理をした戦い方だが、一人で攻略するには、これぐらいやらなければ辿り着けない道のりであった。

 シンが一閃すると、霧状のモンスターであるレイスがかき消されるように消滅する。
 そして消えたモンスターの中から十字架のアクセサリーが落ちた。
 そのアクセサリーを拾ったシンは自分の身体を確認する。

(大分、筋力がついてきたな)

 体格は以前と変わらないものの、全体的に引き締まった体つきになっていた。
 そこでシンは、ふと違和感を覚える。

 インドア派だったシンは、これまで外で遊ぶことも少なかったので、ここまで鍛えたことなどなかった。
 そんな人間が突然このような世界に放り出され、モンスターと戦わないといけない状況になっても、普通はそう簡単に戦えるようになるはずはない。
 だが、シンは雑魚モンスター相手とはいえ、初めから特に苦労することなく倒せていた。
 青銅ゴーレムと戦った際も、それなりに冒険歴のあるライル達が避けられなかった全体攻撃を一人だけ余裕で避けることができていた。
 普通は有り得ないことである。

(若返ったから、という理由だけでは済ませないな。茂が何かやったのか?)

 身体能力が劇的に上がった理由など、茂がやった以外に考えられなかった。
 慈悲を与えてくれたのか、それとも簡単に殺されてはつまらないと思ってのことなのか定かではないが、このことはシンにとって好都合であった。
 自分で戦わないといけなくなった以上、身体能力は高ければ高いほど戦いやすくなる。
 つまり、天獄の大迷宮攻略の難易度が下がったと言える。
 元凶である茂がやったことなので、シンとしては癪ではあったが、それでも一人で攻略しなければならないことを思えば、非常に助かることであった。


 シンがそんなことを考えていると、近くの階段から登ってくる音が聞こえて来くる。
 警戒して視線を向けるが、上がってきたのは見知った顔。
 ガウルとモコのファング親子であった。

「あ、こんにちは」

 二人を見つけたシンは、自分から挨拶をした。

「こんにちは。今日も精が出ますね」

 ガウルが挨拶を返す。
 この場所で訓練をしていた二人とは狩場が被っていた為、あれからも頻繁に顔を合わせていた。
 話すのは挨拶程度だが、一ヶ月も続ければ、すっかり顔馴染みである。

「何かいいもの取れました?」
「丁度さっきこれが」

 シンは先程出た十字架のアクセサリーを拾い、ガウルに見せる。

「おぉ、なかなかいいものじゃないですか」

 十字架の形をしたシルバーのアクセサリー。
 それほど高価なものではないが、この場所で出るアイテムとしては当たりの部類だった。
 ガウルはアクセサリーを軽く見てから言葉を続ける。

「ところでシンさん。偶には一緒に周りませんか?」
「……パーティですか」
「ええ。シンさん結構腕が立つようですから、一緒に周った方がお互いに効率的かと」

 それは初日以来のお誘いであった。
 他の冒険者を見限っていたシンだが、ファング親子に対しては、よく顔を合わせていたことから心証が良くなっていたので、前みたいに、すぐには断らず考えることにした。

 今も一人で攻略するという意見自体は変えていない。
 印象は良くても、仲間として命を預けるというのは無理である。
 そもそも親子連れの時点で攻略パーティの仲間としては不適格である。
 だが、これは攻略パーティの話ではない。
 一時的に組むのであれば、ガウルが言うように一人で戦うよりも、共に戦った方が効率的であった。
 ここはシン一人でも十分戦える場所なので、ライル達と組んだ時みたいなことになる恐れはない。
 軽く考えた限りではリスクは見当たらず、メリットしかなかった。

 何かあったら途中で抜ければいいと考えたシンは、誘いに乗る方向で話を進めることにする。

「一つ条件と言いますか、お願いがあるのですが、属性付与は俺にさせてもらっても?」

 他者が倒したモンスターであっても、その武器に付与を行っていればシンの討伐ポイントとしてカウントされる。
 シンがここで狩りをしているのはポイント目的であるので、パーティを組むのなら、この条件を呑んでもらわなければならなかった。

「構いませんよ。娘はまだ付与なんてできないですから」
「では、ご一緒させていただきます」

 シンはファング親子と臨時でパーティを組むこととなった。

――――

「ふんっ」

 廊下に並ぶモンスターをガウルが盾で、まとめて蹴散らす。

(攻撃スキルが羨ましい)

 何体ものモンスターが一撃で屠られていく様子を見て、シンは羨まずにはいられなかった。

 ガウルのクラスであるパラディンは防御に特化されている為、攻撃面では手薄であった。
 しかし流石にスキルなしとでは雲泥の差がある。
 上級クラスということもあって、この場所で出てくる程度のモンスターは皆一撃であった。
 おかげでシンは攻撃と支援、両方で立ち回る予定だったのに支援しかできていない。

 ガウルが戦いながらシンに話しかける。

「シンさん、支援かなり上手いですね。魔法も大分鍛えられているようだし、正直ここまでの腕とは思いませんでした。上手過ぎて、モコの出番が全然ないですよ」

 シンが支援の仕事を全部やってしまっていた為、モコは何をすればいいのか分からずおろおろとしていた。

「あっ、すみません 手持無沙汰だったのでつい」

 シンは支援しかやることがなかったせいで、無意識に力を入れてしまい、モコが入る隙が無いほどの完璧な支援をしていた。
 二人はモコの訓練で来ていたので、それは完全に邪魔になっていたと言える。

 ガウルは最後のモンスターを倒し、息をついて言う。

「いや、いいんです。シンさんの支援はモコのいい見本になる。是非とも、これからも支援のやり方を見せてやってください」
「そう言うのであれば」
「モコもシンさんの動きをよく見て覚えるんだぞ」

 ガウルが見習うよう言うが、モコは顔をムッとさせる。

「仲間を見殺しにするような人から見習うことなんかない」
「モコ! まだそんなことを言うのか」

 モコは元々シンのことを良く思っていなかった為、見習えと言われるのは不愉快極まりないことだった。
 ガウルは怒が、モコはムスッとした表情でそっぽを向く。
 そんな娘にガウルは困り果てる。

「娘が申し訳ない。この子ちょっと意地っ張りなところがあって。根は素直でいい子なんだが……」
「全然、気にしてないので大丈夫ですよ」

 丁寧に対応しているシンだが、心の底では、この世界の人間をNPCの一種と認識していたので、もういくら罵倒されようとイラつくことはなかった。
 そのせいもあって、ライル達に流された間違った悪評も全く弁解せずに放置している。
 おかげで未だにシンは他の冒険者から疎まれていた。

「本当に申し訳ない」
「ほら、モコも謝りなさい」

 謝るようせっつくが、モコはツンとして態度を変えようとしない。

「モコ!」

 強く言うとモコが怯む。

「ぅ……ごめんなさい」

 むすっとしたまま、明らかに嫌々ではあったが謝罪をした。

「あぁ、うん。もういいよ。本当に気にしてないから。それじゃあ、これで終わりにして先進みましょう」

 どうでもいいと思っていたシンはそれで話を終わらせ、一人先へと歩み出す。
 ガウルはモコの謝罪に不満があったが、シンが進み始めてしまったので、それ以上言うことはしなかった。
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