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第二章
28話 アリカ
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商店街の一角にある薬屋。
アリカは憂鬱な顔をして勘定場に座っていた。
「はぁ……」
気分が沈み、つい大きな溜息が出る。
理由は言わずもながら、ここ最近の周りからの評判のことである。
これまでアリカとライルは、シンに犯罪紛いの嫌がらせをしてきた。
周りは同情的な人が多く、ギルドも動かなかったので問題にはならなかった。
しかし、先の魔獣災害でシンが活躍したことで事態は一変する。
街を救ってくれた英雄となったシンに二人がやってきた行いは、多くの人々にとって到底許せることではなかった。
二人の所業は瞬く間に広がり、嫌がらせのことを知らなかった人達も知ることとなる。
アリカはあからさまに疎まれるようになり、それまで同情的だった人も掌を返してきた。
皮肉にも、今では自分が、曾てのシンと同じ状況へと追いやられていたのだった。
しかも、噂の影響で実家の商売にも影響が出てくる始末。
客足が明らかに減ってしまい、最近は赤字続きである。
減った売り上げを冒険者稼業で補填しようにも、アリカと組んでくれる人は誰もいない。
シンのように特別実力がある訳ではないので、一人で真面に稼げるところへ行くこともできない。
どうすることもできずに家族からも責められ、アリカは精神的に参っていた。
店内の隅を見ながら、ぼんやりしていると、入り口に人が入ってくる気配を感じた。
客が来てくれたと思い、思わず明るい表情を向ける。
「いらっしゃ……」
しかし、入ってきた人物を見て表情が固まった。
店に入ってきたのは、アリカが頭を悩ます今の状況を作った原因であり張本人であるシンだった。
「よう。なかなか苦労しているそうじゃないか」
「え、あ……」
まさか、また来るとは思っていなかったアリカは突然の来店にどうすればいいのか分からず、口をパクパクさせる。
「自業自得と言えばそれまでだけど、よくもまぁこんな綺麗に跳ね返ってきたもんだ。どうだ? 自分達がやったことをそのままやられて。後悔してるか? それとも逆恨み?」
煽るような言葉に、アリカは馬鹿にしに来たのだと思ってシンを睨み付ける。
「おっと、親は呼ばないでくれよ。今日は煽りに来たんじゃなくて謝りに来たんだから」
「え?」
予想外の言葉が出て来て、アリカはきょとんとする。
そんなアリカに向けてシンは頭を下げた。
「青銅の洞窟でのことは悪かった。今更、遅いかもしれないけど謝らせてくれ」
「な、何で、あんたが謝るの?」
「ちょっとあってね。考え直したんだ。あの時、俺は最善の選択をしたと思っていた。でも、もっと他にやりようがあったかもしれない。もっと皆のことを真剣に考えていれば、誰も死なずに済んだのかもしれない。そう思うようになったんだ」
シンは天秤に置かれているものを人間であることは一切考慮せず、リスクとリターンから判断して行動した。
その判断はゲームだったなら最善だったかもしれない。
しかし、一つの世界となった、この世界では人として正しいとは言えなかった。
「今更そんなこと言ったところで何も変わらないけどな」
シンの想いを聞いて沈黙していたアリカは、ぽつりぽつりと話し始める。
「……貴方は何も悪くないわ。貴方は嫌がってたのに、私達が強引にダンジョンの奥に連れて行ってしまったの。それでも貴方は、ちゃんと支援をしてくれた。ボスとの戦いでもあれが最善だったってことは分かってる。悪いのは無謀な行動をした私達。最初から分かってた。でも私達は認めたくなかった。認められなかったから貴方を悪者にしてしまったの。謝らないといけないのは私の方よ」
アリカはシンの謝罪に感化され、自分達に非があることを認めた。
心の底では自分が間違っていると分かっていた為、ずっと罪悪感があったのだ。
だから今回、シンから謝罪をしてきたのはアリカにとって、いい機会であった。
黙って聞くシンにアリカは言葉を続ける。
「私達、ずっと周りから危なっかしいって言われてたの。冒険者になった時も絶対早死にするって言われてて。だから遅かれ早かれこうなる運命だったと思うの。私達の無茶な行動に巻き込んでしまって、ごめんなさい」
アリカは真摯に謝罪をした。
頭を下げるアリカを見て、シンはニヤリと笑みを浮かべる。
「じゃ、これで、おあいこってことで」
「え……で、でも……」
軽く終わらせようとしたシンにアリカが戸惑う。
アリカは自分達の方が圧倒的に非があると思っているので、おあいこで終わらせることには抵抗があった。
「まぁいいじゃん。悪いと思うなら貸しにしといて。でさ、ライルにも謝りたいんだけど何処にいるか知ってる?」
ライルの居場所を尋ねられたアリカは表情を暗くする。
「それが分からないの。この前の魔獣災害で行方不明になって。多分もう……」
ライルが行方不明になっていたことを知らなかったシンは、軽く目を見開いて驚く。
「言ったでしょ。危なっかしいって。結局こうなっちゃうのよ」
アリカは諦めた様子だった。
薄々こうなることは予期していたのだ。
「そうか……それは残念だ」(本当にな。おかげで予定が狂った)
シンは内心、違う意味で残念がる。
シンがアリカのところへ訪れたのは謝罪をする為などではなかった。
これまでの行いから、アリカとライルは他の冒険者達に疎まれて、冒険者稼業が出来ない状態へと追いやられていた。
この状況を変えるにはシンに、これまでのことを許してもらう以外に方法はない。
そこでシンは許しを出す代わりに、自分の駒となってもらおうと考えたのだ。
弱みがあれば逆らうことはまずない。
上手く言うことを聞かせられたなら、攻略パーティに入れることさえ考えていた。
マジシャンとファイター。
現在の攻略パーティに不足している火力を補うには最適のクラスである。
二人が上級クラスとなれば、益々攻略が楽になったであろう。
だからライルの死亡はシンにとって痛手だった。
(だがまぁ、あいつは性格的に扱い辛そうだったから、下手に拗れて両方使えなくなるよりはマシと考えた方がいいか)
「? 何がマシなの?」
シンは考えていたことが僅かに声に出てしまい、それにアリカが反応した。
「いや、こっちの話。ところで、最近よくギルドに通ってるようだけど、やっぱりまだ冒険者は続けるつもりか?」
「続けたいけど多分もうダメね。誰も私と組んでくれる人いないから」
「なら、うちのクランに来ないか? 俺と和解したと広まれば、周りからの風当たりも弱くなるはずだ。まぁ、クランと言っても、休止してる知人のクランを間借りしてるだけだから、実際には俺含めて三人の少数パーティみたいなものだけど」
「えっ、クランに? ……い、いいの?」
あまりに都合のいい誘いに、半ば呆然としながらも聞き返す。
その誘いはアリカが今抱えている問題を完全に解決できるものであった。
「ああ。今のままじゃ困るだろ? こっちも人手が欲しいから来てくれると有難い」
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかしら」
精神的に追い詰められていたこともあって、アリカは疑うこともせず誘いに乗った。
「歓迎するよ」
シンが笑顔で手を差し伸べ、二人は握手を交わす。
――――
「という訳で新しくメンバーとなったアリカさんです」
「えっと、アリカ・メディスンです。宜しくお願いします」
クランハウスでシンはアリカをファング親子に紹介した。
「話は聞いている。これから宜しく」
ガウルは歓迎の態度を示す。
だが、娘のモコは反対に不満を露わにしていた。
「本当に連れてきたんですか。あんなことされた相手なのに、よく引き入れられますね。私には理解できません」
アリカをまるで汚物を見るような目で見ながら吐き捨てた。
「まぁ、俺にも悪いところはあったし。お互い様ってことで円満和解したから」
「あれだけのことをされて、お互い様って、おかしくないですか?」
モコは二人が揉めることとなった詳しい事情は知らないが、シンがされていたことは大体知っていた。
シンがそこまでされるようなことをしたとは思えず、お互い様で済ませるのは納得がいかなかった。
アリカも、その自覚があった為、気まずそうに顔を俯かせる。
「まぁいいじゃん。アリカも反省してるからさ」
「ハッキリ言って私は反対です。シンさんが許すのは勝手ですけど、私はあんなことするような人と仲間としてやっていける気がしません」
シンは取り成そうとするが、モコは強く反対を表明する。
本人が許したとしても、誹謗中傷の噂を流したり闇討ちをする人間をクランに入れることには抵抗があった。
思いの他、拒否感が強くて困ったシンは、ガウルに目で助けを求める。
しかし、返ってきたのは期待していた言葉ではなかった。
「そうだな。俺も正直モコの主張に同意するところはある。クランはメンバー同士の良好な関係が重要だ。信頼できないメンバーを入れることはクランの崩壊に繋がる」
「それは、ご尤もですけど、彼女は……」
シンが反論しようとするが、ガウルが声を被せて言葉を続ける。
「だから、二人が揉めた理由を教えてくれないか? 事情が分かれば俺やモコも受け入れられるかもしれない。無論、差し支えなければだが」
ガウルは事情を話すことを提案してきた。
これまで敢えて訊かなかったことだったが、今後のクランでの関係の為には知っておいた方が良いと考えてのことだった。
提案を受けてシンが目を向けると、アリカは小さく頷いて了解を出す。
了解を得て、シンは青銅の洞窟での出来事を二人に話した。
――――
話を聞いたモコが声を上げる。
「完全に八つ当たりじゃないですか! それで、あんなことをするなんて信じられません。最低です」
モコは憤慨してアリカを責めたてた。
そんなモコをガウルが宥める。
「モコ、それくらいにしておきなさい。確かに八つ当たりだが、その子の気持ちも理解できる」
「えっ、何で!? 私には全然分からないよ」
「自分に置き換えて考えてみるといい。例えば俺とモコ、シンの三人に一人臨時で募集して四人でダンジョンに行ったとしよう。その結果、俺とシンが死んで募集した人とモコだけが生き残った。彼には落ち度はなかった。しかし、助けようとしていた時、見捨てることを主張していたら? 死んでしまった後、どうでもいいような態度を取られたら? 筋違いだとしても、恨んでしまう気持ちが分かるんじゃないか?」
「……」
モコは何も言い返せなかった。
想像して、アリカの気持ちが少し分かってしまったのである。
次にガウルはアリカに向けて言う。
「事情は分かった。シンが許したなら、俺はとやかく言うつもりはない。仲間として歓迎しよう」
「あ、ありがとうございますっ」
アリカは深々と頭を下げて受け入れてくれたことへのお礼を言う。
「モコは?」
シンが訊くと、モコは複雑な表情で答える。
「私は……ぅー……シンさんの好きにしていいです。元々、部外者ですし」
モコは受け入れるとは言わなかったが、反対もしなかった。
「じゃあ受け入れるってことで。これからは同じクランの仲間として、みんな仲良くしましょう」
アリカは憂鬱な顔をして勘定場に座っていた。
「はぁ……」
気分が沈み、つい大きな溜息が出る。
理由は言わずもながら、ここ最近の周りからの評判のことである。
これまでアリカとライルは、シンに犯罪紛いの嫌がらせをしてきた。
周りは同情的な人が多く、ギルドも動かなかったので問題にはならなかった。
しかし、先の魔獣災害でシンが活躍したことで事態は一変する。
街を救ってくれた英雄となったシンに二人がやってきた行いは、多くの人々にとって到底許せることではなかった。
二人の所業は瞬く間に広がり、嫌がらせのことを知らなかった人達も知ることとなる。
アリカはあからさまに疎まれるようになり、それまで同情的だった人も掌を返してきた。
皮肉にも、今では自分が、曾てのシンと同じ状況へと追いやられていたのだった。
しかも、噂の影響で実家の商売にも影響が出てくる始末。
客足が明らかに減ってしまい、最近は赤字続きである。
減った売り上げを冒険者稼業で補填しようにも、アリカと組んでくれる人は誰もいない。
シンのように特別実力がある訳ではないので、一人で真面に稼げるところへ行くこともできない。
どうすることもできずに家族からも責められ、アリカは精神的に参っていた。
店内の隅を見ながら、ぼんやりしていると、入り口に人が入ってくる気配を感じた。
客が来てくれたと思い、思わず明るい表情を向ける。
「いらっしゃ……」
しかし、入ってきた人物を見て表情が固まった。
店に入ってきたのは、アリカが頭を悩ます今の状況を作った原因であり張本人であるシンだった。
「よう。なかなか苦労しているそうじゃないか」
「え、あ……」
まさか、また来るとは思っていなかったアリカは突然の来店にどうすればいいのか分からず、口をパクパクさせる。
「自業自得と言えばそれまでだけど、よくもまぁこんな綺麗に跳ね返ってきたもんだ。どうだ? 自分達がやったことをそのままやられて。後悔してるか? それとも逆恨み?」
煽るような言葉に、アリカは馬鹿にしに来たのだと思ってシンを睨み付ける。
「おっと、親は呼ばないでくれよ。今日は煽りに来たんじゃなくて謝りに来たんだから」
「え?」
予想外の言葉が出て来て、アリカはきょとんとする。
そんなアリカに向けてシンは頭を下げた。
「青銅の洞窟でのことは悪かった。今更、遅いかもしれないけど謝らせてくれ」
「な、何で、あんたが謝るの?」
「ちょっとあってね。考え直したんだ。あの時、俺は最善の選択をしたと思っていた。でも、もっと他にやりようがあったかもしれない。もっと皆のことを真剣に考えていれば、誰も死なずに済んだのかもしれない。そう思うようになったんだ」
シンは天秤に置かれているものを人間であることは一切考慮せず、リスクとリターンから判断して行動した。
その判断はゲームだったなら最善だったかもしれない。
しかし、一つの世界となった、この世界では人として正しいとは言えなかった。
「今更そんなこと言ったところで何も変わらないけどな」
シンの想いを聞いて沈黙していたアリカは、ぽつりぽつりと話し始める。
「……貴方は何も悪くないわ。貴方は嫌がってたのに、私達が強引にダンジョンの奥に連れて行ってしまったの。それでも貴方は、ちゃんと支援をしてくれた。ボスとの戦いでもあれが最善だったってことは分かってる。悪いのは無謀な行動をした私達。最初から分かってた。でも私達は認めたくなかった。認められなかったから貴方を悪者にしてしまったの。謝らないといけないのは私の方よ」
アリカはシンの謝罪に感化され、自分達に非があることを認めた。
心の底では自分が間違っていると分かっていた為、ずっと罪悪感があったのだ。
だから今回、シンから謝罪をしてきたのはアリカにとって、いい機会であった。
黙って聞くシンにアリカは言葉を続ける。
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アリカは真摯に謝罪をした。
頭を下げるアリカを見て、シンはニヤリと笑みを浮かべる。
「じゃ、これで、おあいこってことで」
「え……で、でも……」
軽く終わらせようとしたシンにアリカが戸惑う。
アリカは自分達の方が圧倒的に非があると思っているので、おあいこで終わらせることには抵抗があった。
「まぁいいじゃん。悪いと思うなら貸しにしといて。でさ、ライルにも謝りたいんだけど何処にいるか知ってる?」
ライルの居場所を尋ねられたアリカは表情を暗くする。
「それが分からないの。この前の魔獣災害で行方不明になって。多分もう……」
ライルが行方不明になっていたことを知らなかったシンは、軽く目を見開いて驚く。
「言ったでしょ。危なっかしいって。結局こうなっちゃうのよ」
アリカは諦めた様子だった。
薄々こうなることは予期していたのだ。
「そうか……それは残念だ」(本当にな。おかげで予定が狂った)
シンは内心、違う意味で残念がる。
シンがアリカのところへ訪れたのは謝罪をする為などではなかった。
これまでの行いから、アリカとライルは他の冒険者達に疎まれて、冒険者稼業が出来ない状態へと追いやられていた。
この状況を変えるにはシンに、これまでのことを許してもらう以外に方法はない。
そこでシンは許しを出す代わりに、自分の駒となってもらおうと考えたのだ。
弱みがあれば逆らうことはまずない。
上手く言うことを聞かせられたなら、攻略パーティに入れることさえ考えていた。
マジシャンとファイター。
現在の攻略パーティに不足している火力を補うには最適のクラスである。
二人が上級クラスとなれば、益々攻略が楽になったであろう。
だからライルの死亡はシンにとって痛手だった。
(だがまぁ、あいつは性格的に扱い辛そうだったから、下手に拗れて両方使えなくなるよりはマシと考えた方がいいか)
「? 何がマシなの?」
シンは考えていたことが僅かに声に出てしまい、それにアリカが反応した。
「いや、こっちの話。ところで、最近よくギルドに通ってるようだけど、やっぱりまだ冒険者は続けるつもりか?」
「続けたいけど多分もうダメね。誰も私と組んでくれる人いないから」
「なら、うちのクランに来ないか? 俺と和解したと広まれば、周りからの風当たりも弱くなるはずだ。まぁ、クランと言っても、休止してる知人のクランを間借りしてるだけだから、実際には俺含めて三人の少数パーティみたいなものだけど」
「えっ、クランに? ……い、いいの?」
あまりに都合のいい誘いに、半ば呆然としながらも聞き返す。
その誘いはアリカが今抱えている問題を完全に解決できるものであった。
「ああ。今のままじゃ困るだろ? こっちも人手が欲しいから来てくれると有難い」
「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかしら」
精神的に追い詰められていたこともあって、アリカは疑うこともせず誘いに乗った。
「歓迎するよ」
シンが笑顔で手を差し伸べ、二人は握手を交わす。
――――
「という訳で新しくメンバーとなったアリカさんです」
「えっと、アリカ・メディスンです。宜しくお願いします」
クランハウスでシンはアリカをファング親子に紹介した。
「話は聞いている。これから宜しく」
ガウルは歓迎の態度を示す。
だが、娘のモコは反対に不満を露わにしていた。
「本当に連れてきたんですか。あんなことされた相手なのに、よく引き入れられますね。私には理解できません」
アリカをまるで汚物を見るような目で見ながら吐き捨てた。
「まぁ、俺にも悪いところはあったし。お互い様ってことで円満和解したから」
「あれだけのことをされて、お互い様って、おかしくないですか?」
モコは二人が揉めることとなった詳しい事情は知らないが、シンがされていたことは大体知っていた。
シンがそこまでされるようなことをしたとは思えず、お互い様で済ませるのは納得がいかなかった。
アリカも、その自覚があった為、気まずそうに顔を俯かせる。
「まぁいいじゃん。アリカも反省してるからさ」
「ハッキリ言って私は反対です。シンさんが許すのは勝手ですけど、私はあんなことするような人と仲間としてやっていける気がしません」
シンは取り成そうとするが、モコは強く反対を表明する。
本人が許したとしても、誹謗中傷の噂を流したり闇討ちをする人間をクランに入れることには抵抗があった。
思いの他、拒否感が強くて困ったシンは、ガウルに目で助けを求める。
しかし、返ってきたのは期待していた言葉ではなかった。
「そうだな。俺も正直モコの主張に同意するところはある。クランはメンバー同士の良好な関係が重要だ。信頼できないメンバーを入れることはクランの崩壊に繋がる」
「それは、ご尤もですけど、彼女は……」
シンが反論しようとするが、ガウルが声を被せて言葉を続ける。
「だから、二人が揉めた理由を教えてくれないか? 事情が分かれば俺やモコも受け入れられるかもしれない。無論、差し支えなければだが」
ガウルは事情を話すことを提案してきた。
これまで敢えて訊かなかったことだったが、今後のクランでの関係の為には知っておいた方が良いと考えてのことだった。
提案を受けてシンが目を向けると、アリカは小さく頷いて了解を出す。
了解を得て、シンは青銅の洞窟での出来事を二人に話した。
――――
話を聞いたモコが声を上げる。
「完全に八つ当たりじゃないですか! それで、あんなことをするなんて信じられません。最低です」
モコは憤慨してアリカを責めたてた。
そんなモコをガウルが宥める。
「モコ、それくらいにしておきなさい。確かに八つ当たりだが、その子の気持ちも理解できる」
「えっ、何で!? 私には全然分からないよ」
「自分に置き換えて考えてみるといい。例えば俺とモコ、シンの三人に一人臨時で募集して四人でダンジョンに行ったとしよう。その結果、俺とシンが死んで募集した人とモコだけが生き残った。彼には落ち度はなかった。しかし、助けようとしていた時、見捨てることを主張していたら? 死んでしまった後、どうでもいいような態度を取られたら? 筋違いだとしても、恨んでしまう気持ちが分かるんじゃないか?」
「……」
モコは何も言い返せなかった。
想像して、アリカの気持ちが少し分かってしまったのである。
次にガウルはアリカに向けて言う。
「事情は分かった。シンが許したなら、俺はとやかく言うつもりはない。仲間として歓迎しよう」
「あ、ありがとうございますっ」
アリカは深々と頭を下げて受け入れてくれたことへのお礼を言う。
「モコは?」
シンが訊くと、モコは複雑な表情で答える。
「私は……ぅー……シンさんの好きにしていいです。元々、部外者ですし」
モコは受け入れるとは言わなかったが、反対もしなかった。
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