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第二章
17話 生産ライン
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二人も加わり、クラフトの指導を再開する。
玖音が見学する横で、フラムとクレアが指導を受けながらクラフトの練習を行う。
「クレア、結構筋がいいな。本当に初めてなん?」
「クレアちゃん、何気に何でもできるわよね。料理とか裁縫とか」
クレアもまだ仲間となって間もないが、玖音との戦いで損傷した衣服の修復や、移動中の休憩で、間食のおやつを作ったりと、裏方として活躍していた。
「村で何でもやらされてたから……」
「あっ……」
これまでの人生、村人に散々こき使われていた結果、皮肉にも大抵のことは、初めてでもそれなりに熟せるようになっていた。
気まずさを感じた凛は、話題を変えようと玖音に話しかける。
「玖音は本当にやらないの? 楽しいわよ」
「やらん。見てるだけで十分じゃ」
「やってみれば、楽しいと思うのにな」
玖音はクラフトの指導を受けることを断っており、見学に徹していた。
クラフトに興味がないということもあるが、神としてのプライドがあった為、凛に配下には下ったものの、少女達と一緒に習い事をするようなことには抵抗があったのだ。
そんな話をしていると、ルイスが様子見にやってくる。
「フラムの筋はどうですか? おや?」
顔を覗かせたルイスは、玖音とクレアの存在に気付く。
「あ、私のお友達です。すみません、勝手に入れちゃって」
「いえいえ、構いませんよ。お二人も、うちの娘と仲良くしてやってください」
無断で招き入れたのだが、年の近い女の子とのことで、ルイスは嫌な顔一つせずに受け入れてくれた。
「生産の方は順調ですか?」
「あ、いや……ちょっと問題が」
些か問題が起こっているとのことで、凛はルイスに連れられ、作業場へと足を運ぶ。
定時が過ぎ、作業場では従業員達が帰宅をしている真っ最中であった。
ルイスは完成品が置かれている各製造機の前に移動して話し始める。
「今日、完成した製品がこれだけですなのですが、生産ペースがちょっと怪しくて、納期までに間に合うかどうか……」
「契約、沢山取れたものね。取り過ぎちゃった?」
「いえ、契約は生産のことを考えて、作れる分しか取りませんでした。ただ、作業員達が些かのんびりとしてまして……。サボっている訳じゃないのですが、必死にはやってくれないと言いますか、追加報酬をつけても、釣られてくれる人がいなかったみたいで。フル稼働状態でのペースで考えたのは失敗でした」
普段は仕事も少なく、作業員達はマイペースに仕事をしていたので、ルイスは基本給に成果報酬のボーナスをつけて、頑張ってもらおうと考えていた。
だが、作業員の多くは、暮らしていけるだけあれば十分という考えで、あまりやる気を出してくれなかったのだ。
「あらら、それは困ったわね。じゃあ、基本給減らして、成果報酬ないと生活できないようにするのはー……よくないわよね」
「反乱が起きてしまいますね。良くて一斉退職でしょうか」
「うーん……平和的で、お金以外の方法となるとー」
凛が考えながら周りを見渡すと、完成品を置いている場所が一纏めではなく、いくつかの機械の前に分けて置かれていることに気付いた。
「分けられて置いてあるのは? 何か理由でもあるの?」
「あぁ、それはただ、作る機械が複数あるからというだけです。一機づつだけじゃ、流石に通常量の生産もできませんから」
「一連の工程をグループでやってるってこと?」
「そうですね。一応、班としています」
「なら、これがいいかしらね」
置かれている完成品の数を数えた凛は、機械の横に備え付けてあった各班のホワイトボードに、それぞれの今日作った完成品の数を、大きな文字で書いた。
「はい。こんな感じに、それぞれが一日に作った完成品の数を、暫く書き続けてみて。質の悪いやつは、ちゃんと差し引いてね」
「分かりました」
「じゃ、私は戻るわね」
「え? それだけ、ですか?」
「ええ、上手くいくかは分からないけど、とりあえずはそれで様子見てちょうだい」
凛はそれだけ言って、首を傾げるルイスを置いて、フラム達が待つ開発室へと戻って行った。
玖音が見学する横で、フラムとクレアが指導を受けながらクラフトの練習を行う。
「クレア、結構筋がいいな。本当に初めてなん?」
「クレアちゃん、何気に何でもできるわよね。料理とか裁縫とか」
クレアもまだ仲間となって間もないが、玖音との戦いで損傷した衣服の修復や、移動中の休憩で、間食のおやつを作ったりと、裏方として活躍していた。
「村で何でもやらされてたから……」
「あっ……」
これまでの人生、村人に散々こき使われていた結果、皮肉にも大抵のことは、初めてでもそれなりに熟せるようになっていた。
気まずさを感じた凛は、話題を変えようと玖音に話しかける。
「玖音は本当にやらないの? 楽しいわよ」
「やらん。見てるだけで十分じゃ」
「やってみれば、楽しいと思うのにな」
玖音はクラフトの指導を受けることを断っており、見学に徹していた。
クラフトに興味がないということもあるが、神としてのプライドがあった為、凛に配下には下ったものの、少女達と一緒に習い事をするようなことには抵抗があったのだ。
そんな話をしていると、ルイスが様子見にやってくる。
「フラムの筋はどうですか? おや?」
顔を覗かせたルイスは、玖音とクレアの存在に気付く。
「あ、私のお友達です。すみません、勝手に入れちゃって」
「いえいえ、構いませんよ。お二人も、うちの娘と仲良くしてやってください」
無断で招き入れたのだが、年の近い女の子とのことで、ルイスは嫌な顔一つせずに受け入れてくれた。
「生産の方は順調ですか?」
「あ、いや……ちょっと問題が」
些か問題が起こっているとのことで、凛はルイスに連れられ、作業場へと足を運ぶ。
定時が過ぎ、作業場では従業員達が帰宅をしている真っ最中であった。
ルイスは完成品が置かれている各製造機の前に移動して話し始める。
「今日、完成した製品がこれだけですなのですが、生産ペースがちょっと怪しくて、納期までに間に合うかどうか……」
「契約、沢山取れたものね。取り過ぎちゃった?」
「いえ、契約は生産のことを考えて、作れる分しか取りませんでした。ただ、作業員達が些かのんびりとしてまして……。サボっている訳じゃないのですが、必死にはやってくれないと言いますか、追加報酬をつけても、釣られてくれる人がいなかったみたいで。フル稼働状態でのペースで考えたのは失敗でした」
普段は仕事も少なく、作業員達はマイペースに仕事をしていたので、ルイスは基本給に成果報酬のボーナスをつけて、頑張ってもらおうと考えていた。
だが、作業員の多くは、暮らしていけるだけあれば十分という考えで、あまりやる気を出してくれなかったのだ。
「あらら、それは困ったわね。じゃあ、基本給減らして、成果報酬ないと生活できないようにするのはー……よくないわよね」
「反乱が起きてしまいますね。良くて一斉退職でしょうか」
「うーん……平和的で、お金以外の方法となるとー」
凛が考えながら周りを見渡すと、完成品を置いている場所が一纏めではなく、いくつかの機械の前に分けて置かれていることに気付いた。
「分けられて置いてあるのは? 何か理由でもあるの?」
「あぁ、それはただ、作る機械が複数あるからというだけです。一機づつだけじゃ、流石に通常量の生産もできませんから」
「一連の工程をグループでやってるってこと?」
「そうですね。一応、班としています」
「なら、これがいいかしらね」
置かれている完成品の数を数えた凛は、機械の横に備え付けてあった各班のホワイトボードに、それぞれの今日作った完成品の数を、大きな文字で書いた。
「はい。こんな感じに、それぞれが一日に作った完成品の数を、暫く書き続けてみて。質の悪いやつは、ちゃんと差し引いてね」
「分かりました」
「じゃ、私は戻るわね」
「え? それだけ、ですか?」
「ええ、上手くいくかは分からないけど、とりあえずはそれで様子見てちょうだい」
凛はそれだけ言って、首を傾げるルイスを置いて、フラム達が待つ開発室へと戻って行った。
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