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第二章
18話 融資
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数日後。
「ヤベっ、一班に負けてるぞ」
「いい調子だ。そのまま突き放せ」
作業場では、作業員達が各班で、完成品の数を競い合っていた。
「うんうん、いい感じじゃない。やっぱりデール・カーネギーは偉大だわ」
思惑通りの結果が出た凛は、満足気に作業の様子を眺める。
「完成品の数を書いただけなのに何故……」
「そりゃ、班の成果をこんなでかでかと書かれたら、勝ち負けを意識しちゃうでしょ? 学業でも物で釣ったりして無理矢理勉強させるより、友達との勝負の方が伸びたりするのよ」
班同士を勝負させることで、お金で動かない作業員達の生産ペースを上げることに成功させた。
負けたことへのペナルティはない為、遊び感覚でできており、班同士が険悪になることもなく、作業員達のモチベーションも高まっていた。
「なるほど。不良品は除外してるから、品質の低下もない。感服致しました。これなら十分間に合います」
またしても凛のアドバイスが功を成し、問題を解決することができた。
それからは特にトラブルなどはなく、順調に生産・販売を行い、一ヶ月も経たないうちに融資するに足りる経営状態になった。
経営状況の報告書を作ることが出来た凛は、ルイスと共にウェルダム商事を訪れ、ロバートへと報告する。
「これは驚きました。噂は聞いていましたが、立て直すどころか、以前よりも伸ばすことができるとは」
報告書を読むロバートは、そこに書かれている鮮やかに盛り返された数値を見て、驚きと感心をしていた。
「全ては凛さんのおかげです。このようなお方を監査につけていただき、ロバートさんには感謝しております」
融資の為に経営を立て直したが、思っていた以上に好調な為、自社の資金だけで賄える見込みまで出てきていた。
「武力だけでなく、商才までお持ちであるとは。やはり貴方は、類稀な才女のようだ。これで確信しました。我が社には、いえ、我が一族には貴方が必要です。是非とも、うちの息子の嫁に来ていただきたい」
「え……えぇ!?」
度重なる凛の功績を受け、ロバートは自分の息子との縁談を持ち掛けてきた。
凛は思わず全力で首を横に振る。
「無理無理無理。あっ、いや……そんな、ロバートさんの息子さんが嫌ってことじゃないけど、異性との結婚自体考えてなくて……」
「でしたら、是非前向きに考えてください。うちに嫁入りしていただければ、何不自由ない暮らしをすることができます。それどころか、我が一族の資金力と貴方の才覚があれば、国一、いえ、世界一の富豪になることも夢ではないでしょう」
「いや、あの、えっと、それは……ごめんなさい。遠慮しておきます」
異性との結婚など、冗談ではなかった凛は、ロバートの誘いをお断りした。
「巨万の富に興味がないと? では、何をお望みですか? 貴方が望むことは、どんなことでも、我が社の総力を持って叶えてみせましょう」
「望みとかじゃなくて、する気自体ないんです。すみません」
しつこく食い下がるロバートに、改めて断りを入れる。
「では、うちの会社で役員をやるのはどうです? 特別に多額の報酬をお出ししますよ」
「いえ、実はこの度、ルイスさんのところで始めるお店で、店長をやる予定がありまして。暫くはそっちにかかりきりになるので、ほんと申し訳ないです」
定住するつもりもなかった凛は適当な理由をでっち上げて、再度断る。
経営の拡大に伴い、経営難で閉鎖していた自社店舗を開けることは決まっていたが、凛が店長をやる予定などはなかった。
でっち上げの言い訳であることなど知らないロバートも、再三断られれば、拒絶されていると理解する。
「そうですか……。それが凛さんの意思ならば、私は諦めるしかありません。これからも凛さんとは良い関係を続けたいですからね」
ロバートは確認するように手を差し出した。
凛はその手を握り、二人は握手をする。
「知人として、よろしくお願いします。私もロバートさんとは仲良くしたいですから」
金持ちとのコネの価値は小さくない。
婚姻はお断りの凛だが、資産家であるロバートとの繋がりは絶ちたくなかった。
「ヤベっ、一班に負けてるぞ」
「いい調子だ。そのまま突き放せ」
作業場では、作業員達が各班で、完成品の数を競い合っていた。
「うんうん、いい感じじゃない。やっぱりデール・カーネギーは偉大だわ」
思惑通りの結果が出た凛は、満足気に作業の様子を眺める。
「完成品の数を書いただけなのに何故……」
「そりゃ、班の成果をこんなでかでかと書かれたら、勝ち負けを意識しちゃうでしょ? 学業でも物で釣ったりして無理矢理勉強させるより、友達との勝負の方が伸びたりするのよ」
班同士を勝負させることで、お金で動かない作業員達の生産ペースを上げることに成功させた。
負けたことへのペナルティはない為、遊び感覚でできており、班同士が険悪になることもなく、作業員達のモチベーションも高まっていた。
「なるほど。不良品は除外してるから、品質の低下もない。感服致しました。これなら十分間に合います」
またしても凛のアドバイスが功を成し、問題を解決することができた。
それからは特にトラブルなどはなく、順調に生産・販売を行い、一ヶ月も経たないうちに融資するに足りる経営状態になった。
経営状況の報告書を作ることが出来た凛は、ルイスと共にウェルダム商事を訪れ、ロバートへと報告する。
「これは驚きました。噂は聞いていましたが、立て直すどころか、以前よりも伸ばすことができるとは」
報告書を読むロバートは、そこに書かれている鮮やかに盛り返された数値を見て、驚きと感心をしていた。
「全ては凛さんのおかげです。このようなお方を監査につけていただき、ロバートさんには感謝しております」
融資の為に経営を立て直したが、思っていた以上に好調な為、自社の資金だけで賄える見込みまで出てきていた。
「武力だけでなく、商才までお持ちであるとは。やはり貴方は、類稀な才女のようだ。これで確信しました。我が社には、いえ、我が一族には貴方が必要です。是非とも、うちの息子の嫁に来ていただきたい」
「え……えぇ!?」
度重なる凛の功績を受け、ロバートは自分の息子との縁談を持ち掛けてきた。
凛は思わず全力で首を横に振る。
「無理無理無理。あっ、いや……そんな、ロバートさんの息子さんが嫌ってことじゃないけど、異性との結婚自体考えてなくて……」
「でしたら、是非前向きに考えてください。うちに嫁入りしていただければ、何不自由ない暮らしをすることができます。それどころか、我が一族の資金力と貴方の才覚があれば、国一、いえ、世界一の富豪になることも夢ではないでしょう」
「いや、あの、えっと、それは……ごめんなさい。遠慮しておきます」
異性との結婚など、冗談ではなかった凛は、ロバートの誘いをお断りした。
「巨万の富に興味がないと? では、何をお望みですか? 貴方が望むことは、どんなことでも、我が社の総力を持って叶えてみせましょう」
「望みとかじゃなくて、する気自体ないんです。すみません」
しつこく食い下がるロバートに、改めて断りを入れる。
「では、うちの会社で役員をやるのはどうです? 特別に多額の報酬をお出ししますよ」
「いえ、実はこの度、ルイスさんのところで始めるお店で、店長をやる予定がありまして。暫くはそっちにかかりきりになるので、ほんと申し訳ないです」
定住するつもりもなかった凛は適当な理由をでっち上げて、再度断る。
経営の拡大に伴い、経営難で閉鎖していた自社店舗を開けることは決まっていたが、凛が店長をやる予定などはなかった。
でっち上げの言い訳であることなど知らないロバートも、再三断られれば、拒絶されていると理解する。
「そうですか……。それが凛さんの意思ならば、私は諦めるしかありません。これからも凛さんとは良い関係を続けたいですからね」
ロバートは確認するように手を差し出した。
凛はその手を握り、二人は握手をする。
「知人として、よろしくお願いします。私もロバートさんとは仲良くしたいですから」
金持ちとのコネの価値は小さくない。
婚姻はお断りの凛だが、資産家であるロバートとの繋がりは絶ちたくなかった。
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