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第四章
62話 冒険者達の襲撃
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驚いて目を向ける一同。
すると、村の入り口には、倒れた見張りのドリアードと、武装したグループの姿があった。
入口近くの建物は火をつけられ、燃え盛っている。
「くっ、しまった!」
「何? 何なの、あの人達」
「フェルシアの冒険者だ。村にある命脈草の備蓄を狙って、襲撃に来るんだ。いつもなら警備を厳重にしてるんだが……」
普段なら、村への侵入を許すことはなかったが、村の中に居る凛とガーネットを警戒するあまり、そちらに警備を割いて、外への防衛を疎かにしてしまっていたのだ。
「オラァ! ありったけの命脈草出せや。お前らが隠してるのは分かってんだぞ」
襲撃してきた冒険者達は、武器を出して恐喝する。
ガラの悪い、冒険者とも思えない連中だった。
ドリアード達は慌てて冒険者達に詰め寄る。
「出ていけ、粗暴な人間共! ここは貴様らが入って良い場所ではない!」
「なら、さっさと出すもの出せよ。さもないと、お前ら全員燃やすぞ」
「ふざけるな! 貴様らなどに与えるものは何もない」
「そうか、よっ」
冒険者は突然ドリアード達に火炎瓶を投げつけた。
身体に火が広がり、ドリアード達は悲鳴を上げて燃え盛る。
「貴様ぁ!」
先程栄養剤を浴びたドリアードは、燃えながらも蔦を伸ばして反撃するが、炎に巻かれているせいで威力が弱く、冒険者に簡単に撃ち落とされる。
しかし、そこで燃え盛るドリアード達に水が浴びせられる。
彼女らに水を浴びせたのは凛だった。
「私が相手をするわ。貴方達は下がっててちょうだい」
「人間の手を借りることなど……」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ。死人、出ちゃうわよ」
ドリアードは迷う素振りを見せるが、すぐに避難を始めた。
そこでガーネットが何事かと小屋から出てくる。
「何? あんた、何かやらかしたの?」
「私じゃなくて、あっち。あっちは私が相手するから、消火お願い」
「わ、分かったわ」
ガーネットは状況がいまいち分からなかったが、燃え盛る炎を見て、慌てて消火活動を始める。
凛はドリアード達を避難させつつ、冒険者達と向き合う。
「ドリアードじゃない奴が、何でこんなところに居る」
「観光客みたいなものよ。それより貴方達、こんなことして、ライセンス剥奪ものよ?」
「何だ、同業者か。真面目ちゃんだねぇ。実際、この程度で処罰されることなんて殆どねえんだよ。それにな。今、領主様は命脈草の収集に力を入れている。沢山回収して来れば、お咎めなしってもんよ」
「領主、ね……」
凛は命脈草採取の依頼が、領主直々のものだったことを思い出す。
「つう訳で、退けや。邪魔するなら、お前の痛い目に遭わせるぞ」
「それはこっちのセリフよ。痛い目に遭わされたくなかったら、立ち去りなさい。あ、建物損壊させた分と、ドリアード達への治療費・慰謝料はちゃんと置いて行くのよ」
「馬鹿にしてんのか、てめぇ! てめぇも、ぶっ殺してやる!」
激高した冒険者達は、武器を振り上げて飛び掛かった。
――――
凛はボコボコにした冒険者達を縛り上げる。
「まったく……。チンピラと変わらない冒険者って結構いるのよね。ギルドはもっと厳格に冒険者の管理をしてほしいわ」
愚痴を言いながら縛り上げていると、栄養剤をかけられたドリアードの人が、おずおずと凛に近づいてくる。
「あら、怪我はもう大丈夫?」
「あ、ああ、他の子達も、貰った栄養剤のおかげで快晴に向かってる」
「それは良かった」
すると、ドリアードはもじもじしながら言う。
「……助けてくれて感謝する。それから、先程のことは失礼した。改めて謝罪させてくれ」
「いいわ。実はね、私も同じ依頼を受けて来たの。勿論、もうやる気ないわよ。受けた時は、貴方達にとって大切なものって知らなかったから」
「そうか……。ならば、お礼に分けてやりたいところだが、乱獲で備蓄も少なくてな」
「そのことなんだけど、私が話をつけてきてあげましょうか? 領主の娘さんとは、お友達なの。聞いてくれるかは分からないけど、任せてくれるなら、何とか話してみるわ」
「そうなのか? できるなら頼みたいが……」
「任せて。出来る限り頑張ってみる」
――――
「そのようなことが起こっていたのですか……」
それから一旦街に戻った凛は領主邸へと赴き、クーネに事の次第を報告していた。
「でね。乱獲するのを止めさせてほしいのよ。必要だから依頼出してるのは分かるけど、無茶苦茶やる人も出てきてるから」
「……実は現在、父は身体を壊していて、兄が代理で取り仕切っているのです。兄は私の言葉など聞きませんから、出している依頼に口出しすることはできません」
「じゃあ無理ってこと?」
「いえ、依頼は変えられませんが、別の指示を出すことはできます。私の方から、ドリアード達の村周辺を保護地域に指定するようにすれば、環境を破壊することは厳罰となりますので、乱獲はなくなるでしょう」
「おぉ、いいじゃない。じゃあ、それでお願い」
「はい。現地には私も行きましょう。ドリアードさん達には、領主の娘として、これまでのことを謝罪しなければいけないですから」
クーネとの話により、比較的あっさりと解決策が出された。
それから、クーネはすぐに動き、ギルドの方にドリアードの村周辺を保護地域に指定するよう指示を出してから、凛と共にドリアードの村へと向かった。
すると、村の入り口には、倒れた見張りのドリアードと、武装したグループの姿があった。
入口近くの建物は火をつけられ、燃え盛っている。
「くっ、しまった!」
「何? 何なの、あの人達」
「フェルシアの冒険者だ。村にある命脈草の備蓄を狙って、襲撃に来るんだ。いつもなら警備を厳重にしてるんだが……」
普段なら、村への侵入を許すことはなかったが、村の中に居る凛とガーネットを警戒するあまり、そちらに警備を割いて、外への防衛を疎かにしてしまっていたのだ。
「オラァ! ありったけの命脈草出せや。お前らが隠してるのは分かってんだぞ」
襲撃してきた冒険者達は、武器を出して恐喝する。
ガラの悪い、冒険者とも思えない連中だった。
ドリアード達は慌てて冒険者達に詰め寄る。
「出ていけ、粗暴な人間共! ここは貴様らが入って良い場所ではない!」
「なら、さっさと出すもの出せよ。さもないと、お前ら全員燃やすぞ」
「ふざけるな! 貴様らなどに与えるものは何もない」
「そうか、よっ」
冒険者は突然ドリアード達に火炎瓶を投げつけた。
身体に火が広がり、ドリアード達は悲鳴を上げて燃え盛る。
「貴様ぁ!」
先程栄養剤を浴びたドリアードは、燃えながらも蔦を伸ばして反撃するが、炎に巻かれているせいで威力が弱く、冒険者に簡単に撃ち落とされる。
しかし、そこで燃え盛るドリアード達に水が浴びせられる。
彼女らに水を浴びせたのは凛だった。
「私が相手をするわ。貴方達は下がっててちょうだい」
「人間の手を借りることなど……」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ。死人、出ちゃうわよ」
ドリアードは迷う素振りを見せるが、すぐに避難を始めた。
そこでガーネットが何事かと小屋から出てくる。
「何? あんた、何かやらかしたの?」
「私じゃなくて、あっち。あっちは私が相手するから、消火お願い」
「わ、分かったわ」
ガーネットは状況がいまいち分からなかったが、燃え盛る炎を見て、慌てて消火活動を始める。
凛はドリアード達を避難させつつ、冒険者達と向き合う。
「ドリアードじゃない奴が、何でこんなところに居る」
「観光客みたいなものよ。それより貴方達、こんなことして、ライセンス剥奪ものよ?」
「何だ、同業者か。真面目ちゃんだねぇ。実際、この程度で処罰されることなんて殆どねえんだよ。それにな。今、領主様は命脈草の収集に力を入れている。沢山回収して来れば、お咎めなしってもんよ」
「領主、ね……」
凛は命脈草採取の依頼が、領主直々のものだったことを思い出す。
「つう訳で、退けや。邪魔するなら、お前の痛い目に遭わせるぞ」
「それはこっちのセリフよ。痛い目に遭わされたくなかったら、立ち去りなさい。あ、建物損壊させた分と、ドリアード達への治療費・慰謝料はちゃんと置いて行くのよ」
「馬鹿にしてんのか、てめぇ! てめぇも、ぶっ殺してやる!」
激高した冒険者達は、武器を振り上げて飛び掛かった。
――――
凛はボコボコにした冒険者達を縛り上げる。
「まったく……。チンピラと変わらない冒険者って結構いるのよね。ギルドはもっと厳格に冒険者の管理をしてほしいわ」
愚痴を言いながら縛り上げていると、栄養剤をかけられたドリアードの人が、おずおずと凛に近づいてくる。
「あら、怪我はもう大丈夫?」
「あ、ああ、他の子達も、貰った栄養剤のおかげで快晴に向かってる」
「それは良かった」
すると、ドリアードはもじもじしながら言う。
「……助けてくれて感謝する。それから、先程のことは失礼した。改めて謝罪させてくれ」
「いいわ。実はね、私も同じ依頼を受けて来たの。勿論、もうやる気ないわよ。受けた時は、貴方達にとって大切なものって知らなかったから」
「そうか……。ならば、お礼に分けてやりたいところだが、乱獲で備蓄も少なくてな」
「そのことなんだけど、私が話をつけてきてあげましょうか? 領主の娘さんとは、お友達なの。聞いてくれるかは分からないけど、任せてくれるなら、何とか話してみるわ」
「そうなのか? できるなら頼みたいが……」
「任せて。出来る限り頑張ってみる」
――――
「そのようなことが起こっていたのですか……」
それから一旦街に戻った凛は領主邸へと赴き、クーネに事の次第を報告していた。
「でね。乱獲するのを止めさせてほしいのよ。必要だから依頼出してるのは分かるけど、無茶苦茶やる人も出てきてるから」
「……実は現在、父は身体を壊していて、兄が代理で取り仕切っているのです。兄は私の言葉など聞きませんから、出している依頼に口出しすることはできません」
「じゃあ無理ってこと?」
「いえ、依頼は変えられませんが、別の指示を出すことはできます。私の方から、ドリアード達の村周辺を保護地域に指定するようにすれば、環境を破壊することは厳罰となりますので、乱獲はなくなるでしょう」
「おぉ、いいじゃない。じゃあ、それでお願い」
「はい。現地には私も行きましょう。ドリアードさん達には、領主の娘として、これまでのことを謝罪しなければいけないですから」
クーネとの話により、比較的あっさりと解決策が出された。
それから、クーネはすぐに動き、ギルドの方にドリアードの村周辺を保護地域に指定するよう指示を出してから、凛と共にドリアードの村へと向かった。
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