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移籍即ち新環境
レッスン
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Side-庄吏
本日の学業を終えた虎音も合流して、十一人で何回か基礎のステップや間違いやすい箇所を何度か確認した後、いよいよ全員揃った状態でセトリを通すことになった。
ライブ『入学式』におけるHoliday Partyの持ち時間は20分。移籍後初タイトル『夢のため』と、PROJECT_Party-Party時代にリリースした曲の中から一曲、移籍先である六学年アイドル制度『AURA』でこれまでにリリースされた全体選抜曲から二曲をカバーして披露する予定だ。
持ち曲があるとはいえ、体制が変わったことで変更点も多くある。気を抜くことはとてもできない。
とくに、二曲披露するAURAの全体選抜曲のうち、一曲は庄吏がセンターに立ってカバーするのだ。候補生出身で何度かカバーに挑戦したことがある曲を選んだとはいえ、いざメインとなるセンターとしてパフォーマンスするのは緊張が勝ってしまう。
「いい?練習は本番のように、本番は練習のように!練習で手を抜いたら本番で何も上手くいかないわよ、常に全力を出してやりなさい!分かった?」
「はい!!!!!」
「よしオッケー。じゃあ、一曲目の最初の位置につこうか。クリックちゃんと感じるんだよ!」
先生の檄に腹から出した声で返事をして、Holiday Partyの十一人は最初のフォーメーションについた。庄吏は前に立つ高身長のモデル組に隠れるように膝をつき、息をひそめる。セトリの1番初めに持ってきたのは、AURAの全体選抜曲で特に人気の高い曲、【Heaven or Real】だ。
アップテンポでダークな曲調が作り出す中毒性で人気を博す【Heaven or Real】は、学年制全体ライブや候補生のみで作り上げるアンダーライブでもよく選曲される、学年制ファンには馴染みのある曲だ。庄吏が候補生となって初めて出演したアンダーライブでも披露した覚えがある。
候補生出身者でないメンバーが多数を占めるHoliday Partyがこの曲を披露する事を学年制の既存のファンは嫌がるかもしれないが、そのリスクを取ってでも候補生だったメンバーが紆余曲折を経て学年制に“帰ってきた”事を知らしめたい。
そんな思惑から選曲したが、現役学生がメンバーの半分を占めるHolidayPartyに随分とあっているような気がしている。思春期ゆえに表現できる雰囲気と曲の雰囲気が一致しているのかもしれない。
身に響く低音と、ゾクゾクするストリングスの音を聞きながら、庄吏は【Heaven or Real】の世界に没入していった。
――――
Side-良透
持ち曲でない曲を含んだセトリを通しで練習するのは、やはり疲れる。
最新シングル【夢のため】のアウトロの余韻を感じながら、良透はそう思った。
元々ファンだった時代に聞いていた曲を披露する事になって喜んだのも束の間。元々十六人で披露する事を前提とした振りを十一人用に再構成した時点で、パフォーマンスの難易度は格段に上がり、要求されるスキルも高くなった。特に、一曲目に選んだ【Heaven or Real】はアップテンポの曲だから、振りの難易度だけでなく歌唱の難易度もかなり高い。ただ歌っているだけにならないよう、表現者としていかに世界観を再現できるかが試される一曲なのだ。
「よし、オッケー。楽にしていいよ、フィードバックは水分補給の後にするから、とりあえず息を整えて」
「はい……!」
先生から終了の許可を出されて、ふっと空気が緩む。壁際にそれぞれ置いた水筒やペットボトルを各々持って、水分を取りながら息を整える。
良透を含め、誰も喋らない。フィードバックを受ける前にどこを失敗したとか上手くいったとか、そういう演者としての感想を言うべきではないと思っていたのだろう。
「よし、息は整ったね。じゃあフィードバックに入ろうか、楽にしていいよ」
「お願いします!」
「まず歌だね、持ち曲は及第点だけど、カバー曲のピッチが悪すぎる。庄吏と万努花、輝舟のピッチがズレないからギリギリ体裁を保ってるけど、本番まで一ヶ月前を切ってる今の段階でこの出来は、今までなにやってきたの?としか思わないよ」
ズキ、と早速胸が痛む。ピッチの甘さは前々から指摘されていたし、改善する為にボーカルレッスンの量を増やしてもいるのだが、まだ力が及んでいないらしい。
「ただ、持ち曲の【Party's CREATE】と【夢のため】については問題なかったから、カバー曲ももっと練習すればあなた達はきっと上達する。本番までどこまで伸ばせるかはわからないけど、ダンス練習より歌を中心にやっていこう。個人練も同じくね。分かった?」
「はい!!」
「よし。なら、次は個人のフィードバックをするよ。まず庄吏から。――――」
メンバー個人個人へのフィードバックが始まったが、自分への評価でなくても、皆真剣に聞き入っていた。自主練習などで集まる際、各個人の課題点を共有できていたほうが、気になった点やできていない点を共有しやすいからだ。
「次、良透」
「はい」
「良透はとにかく歌を頑張ろうか。後で録音を聞き返してほしいんだけど、良透が歌ってるパートの殆どが揺れて聞こえる。この揺れは耳を鍛えていない人でも簡単に聞き取れるし、グループの完成度に関わってくる事になるからね。ダンスももうちょっと頑張ってほしいけど、歌ほど悪目立ちしている訳ではないから自信をもって」
「はい!」
やはり、良透個人で受ける指摘は歌のピッチだった。そうだろうなとは思っていたけれど、改めて指摘されるとへこんでしまうが、出来ていない点は伸び代である。へこんでいる暇なんてない。
良透は早速、明日からの個人レッスンの内容を考え始めた。
――――
Side-柚唯
「……以上、フィードバックを終了します。今指摘した事を意識して、一曲ずつやってみようか」
「はい!」
一曲ずつの確認。柚唯が一番苦手とする練習だった。特に、今日のように一通り通してから行う確認はいつまで経っても慣れなくて苦労してしまう。
柚唯はどちらかといえば、曲を細切れにしながら練習する方が好きだし性に合っていた。実際、個人練では殆ど通さず各曲を細切れにしながら振りや歌詞を体に叩き込んでいる。
とはいえ、HolidayPartyは個人のプロジェクトではなく複数人からなるグループだ。個人の得手不得手で練習方法を左右することはできない。間違えないようにしないと、と気合を入れて、柚唯は一曲目の【Heaven or Real】の立ち位置についた。
【Heaven or Real】のセンターは、最年少の虎音が務める事になっている。
地獄か現実かを問う曲だ、酸いも甘いも噛み分けてきた成人組が担うと重くなりすぎるし、高校生組に任せるには少々振り切りにくい曲だ。
最年少で成長期真っ盛り、加入時よりも他メンバーとの身長差はなくなってきたとはいえまだ伸び盛りの女の子である虎音を目立たせるにはフォーメーションにもそれなりの工夫が必要になる。という事で、モデルの仕事をしていてグループ内でも身長の高い柚唯と樹里叶がセンターの横に立つ事になったのだ。
センターが最後方から登場してくるというオリジナルのユニークな振り付けを踏襲しつつ、HolidayParty独自の要素として"センターを誤認させる"為に、最初に柚唯と樹里叶が前に立ち、次いでリーダーの庄吏、最後に虎音が現れるという流れを組んでいた。
低音とストリングスの効いたイントロが流れ出し、背中合わせに立っていた樹里叶とゆっくり向かい合いながら横へと移動する。同時に、後ろに隠れていた庄吏が立ち上がって、センターのように一人だけ違う振りを踊り出す。
Aメロに向けて徐々に盛り上がる中で、庄吏が後ろにいた虎音の手を引いて前に引っ張り出し、最初のフォーメーションから歌唱用のフォーメーションへの移動が完了した。
Aメロを主に歌うのは、Holiday Partyの中でも歌唱力の高い万努花と庄吏、輝舟、樹里叶、那金の五人だ。Holiday Party移籍後初のステージだ、なるべく安定した歌で観客の心を掴もうという作戦だ。
続くBメロはAメロに比べて短い小節で作られているため、ここは虎音と誠の年少コンビが歌うことになっている。
地獄が楽か、今が楽か。【Heaven or Real】は、そんな思考を表現している曲だ。Bメロは特に、その思考をダイレクトに表しているパートになる。聞いているととても楽しいパートだが、柚唯のようにすでに成人を迎えた大人が歌うと羞恥心が勝ってしまい、表現の中にノイズが混じってしまうことが多かった。
そこを、思春期真っ只中である虎音と誠に任せる事でノイズを極限まで低減しようという訳だ。
(虎音、最初にここを歌うって決まった時はかなり恥ずかしそうにしてたけど、大分上手く歌えるようになってるなぁ。思春期の子供の吸収力ってすさまじいや)
――――
Side-樹里叶
一曲目の【Heaven or Real】の通しレッスンが終了し、二曲目の【春色カゲロウ】のレッスンに入る。
この楽曲での樹里叶の立ち位置は後方左端。一曲目とは真逆の位置だ。曲名の通り春めいた爽やかな曲であるため、差を出すために一曲目で前方のポジションにいたメンバーは後方に下がることとなったのだ。
(ま、俺の得意な曲調でもないし、パフォーマンスの邪魔にならないのならそれでいいんだけど)
HolidayPartyとして活動する前からモデルの仕事をしていた樹里叶にとって、表現する世界に自分があうかあわないかを見極めるのは自分の心を守る事でもあった。明らかに自分にあっていないコンセプトのオーディションを受けても審査員の目に引っかからず落ちるだけだ。
勿論、コンセプトに合わせる努力をしなければこの世界からあっという間に追い落とされてしまうため、鍛錬を怠るようなことは基本しないのだけれど。
【春色カゲロウ】でセンターを務めるのは、一曲目でセンターだった虎音の後ろにいた庄吏だ。庄吏が候補生から抜けてHolidayPartyの一期生となった時期にAURAがリリースした曲で、別プロジェクトを経て学年制に戻ってきた庄吏がセンターに立つ。なんてドラマチックな展開だろう。
樹里叶は、デビューが確約されている候補生を抜けてHolidayPartyに一期生として合流した庄吏の事を尊敬していた。なにせ、六学年アイドル制度『AURA』に所属するメンバーとなるには、養成所に入所するためのオーディションを突破し、更にこの制度の候補生に選ばれる必要があるからだ。
樹里叶がデビューする前の子供時代から、アイドル志望の養成所生は多かった。あの人数から、毎年一回しかチャンスのない候補生選抜に選ばれるというのは並大抵の努力なしでは成り立たない。そんな関門をくぐってきたにもかかわらず、新しく立ち上げられた、成功するかもわからないプロジェクトでデビューするだなんて肝が据わりすぎている。
最終的に学年制所属となったわけだが、当時は移籍するかどうかすらわからなかったのだ。初代リーダーが卒業し、新たなグループの纏め役になった庄吏を年長組として支えることが増えた現在、樹里叶が庄吏へ抱く尊敬の念は大きくなるばかりであった。
【春色カゲロウ】も、そんな頑張り屋な庄吏にぴったりな曲のように感じる。ピアノが主軸になった優しいテンポのポップスながらギターとストリングスが明るい空気を作り出していて、しんみりとした感傷が湧いてくるようなことがない。
『ゆらりとゆらめくカゲロウは、決して幻覚なんかじゃない』
『あれはぼくらの未来の姿』
『いつか叶える明るい未来のその姿』
(学年制に所属するアイドルになる……遠回りしたけど、お前はよくその夢を叶えたよ。虎音も、音杷も、よく頑張ったな)
――――
Side-輝舟
三曲目の【Party's CREATE】は、HolidayPartyが一番最初にリリースした曲で、既存ファンからしてもライブで必ず歌われる鉄板曲であるらしい。
らしい、というのも、輝舟は四期生、HolidayParty内では後輩も後輩で、オリジナルメンバーとして楽曲に参加するのは移籍と同時に引っ提げて発表する最新曲『夢のため』が初めてであり、HolidayPartyとして出演するライブも今回で1回目であるからだ。
年齢も上のほうだし、初代リーダーである吉松が期別による先輩後輩概念をなくして活動しようという方針でグループを纏めていたから、加入当初から新参者という意識を持つことなくHolidayPartyの活動に参加できたことも大きな要因だろう。
とはいえ、【Party'sCREATE】は歌唱する回数が増えるほどライブの鉄板曲という位置づけに納得してくる楽曲だ。この曲は端的に言えばダンスナンバーで、緩急のあるテンポのおかげでサビが印象に残りやすい。その印象に残りやすいサビの振付も比較的覚えやすいとくれば、初見客が多いライブでも披露しやすい曲になるのは至極当然と言えた。
この楽曲での輝舟のパートは、多くもなければ少なくもない。グループ最初期の曲なので、この曲をメインに歌うのは一期生の庄吏、柚唯、樹里叶、万努花、誠の五人だ。それに不満を唱えるメンバーは、輝舟から見てもいないように思う。
彼らがいなければHolidayPartyというグループは生まれていないのだから、当然といえば当然なのかもしれない。
『夢を描こう Lachacha ta Latata』
クラップを2回ずついれる振り。このパートだけ全員の声を重ねるから、徐々に盛り上がっていく空気を作りやすい。
『楽しいパーティーは、自分たちで作るもの』
『Let’s CREATE & DANCING!』
サビ直前、しっとりとしたパートと、元気いっぱいに歌うパートを連続させることでより緩急をつけて一番の盛り上がりに突っ込んでいく。
簡単な振付とは言うが、【Party'sCREATE】の振りは飛んで跳ねて移動してを繰り返す体力の消耗が激しいものだ。午前中の個人練習を含めればかなりの時間踊り続けている輝舟は、そろそろ体力の限界を迎えつつあった。
(楽しいけど、もうちょっとスタミナつけられるトレーニングも取り入れないとしんどいかもな……!)
――――
Side-万努花
(輝舟、ちょっとしんどそう……?本番通りのセトリ通しは終わって今は一曲ずつの通しだし、この曲終わったら一回休憩を挟んでもらおうかな)
万努花の斜め前で歌い踊る輝舟は、いつもより少し苦しそうだった。
三曲目に持ってきた【Party'sCREATE】は、飛んで跳ねる振り付けを多用している分体力消費の激しい曲だ。
その分だけライブに来てくれたファンにも楽しんでもらいやすいのだけれど、慣れていない頃はいくら練習しても息切れしてうまく歌えないメンバーが大多数をしめてしまい、反省会ではいつもこの曲に関する反省点ばかり上がっていた程度に一曲を通して披露する難易度は高い。振りが簡単なのと披露難易度は、HolidayPartyの持ち歌では比例しないのである。
「うん、やっぱり長くやってるだけあって、この曲は安定感あるね。じゃあ次、【夢のため】を……」
「先生!」
「ん?何、万努花」
「次の一曲レッスンに入る前に、少し休憩をいただけませんか。少し集中が切れてきていて」
「……それもそうね。結構な時間やってたし、万努花の言うとおり少し休憩を入れましょうか」
万努花の申し出を快く受け入れた先生は、2回手を叩いて一旦解散の合図を出した。
「ありがとう万努花、休憩を申し出てくれて助かったよ」
「そう?ならよかった。庄吏達は午前中から練習してるんでしょ、あんまり根を詰めすぎないでね。ここで疲労を溜められて倒れられたら大変になるのはグループなんだから」
「うん、分かってる」
各々が休憩に入る中、リーダーの庄吏が万努花に声をかけてくる。きっと、リーダーなんだから自分が言い出さなければならなかったのになんて思っているのだろう。
一曲目から前方で踊り続けている庄吏にそこまで求めるほど、メンバーは鬼ではない。むしろ万努花は、副リーダーであるからこそ、庄吏がカバーしきれない箇所をフォローしたいと思っているのだ。
礼を伝えられるのはうれしいが、変に気負ってほしくはなかった。
「じゃあ、庄吏もちゃんと休憩してね。私さっきお水切れちゃったから、ちょっと買ってくる」
「うん。気を付けて行ってきて」
「わかってる!」
そう返してから、万努花はレッスン室の扉を開けた。勿論、外履きの靴と財布も忘れずに手に持って。
――――
Side-簪瑚
休憩時間は練習しない。HolidayParty内で決められた練習ルールのうちの1つだ。
HolidayPartyには熱心なメンバーが多い。特別な訓練を受けずにグループへ加入した簪瑚達二期生は勿論、負けず嫌いが集うHolidayPartyは、だれにも負けないよう、自分がグループの足を引っ張らないようにとひたすらに練習する光景がよく見られた。しかし、長すぎる練習は体に毒だ。練習のし過ぎで体を壊しては元の子もない。というところで制定されたのが、先のルールというわけである。
(まぁ、権くんが練習のしすぎで怪我したのを見てたんだから、少なくとも一期と二期は無理しないと思うけど……虎音と那金と輝舟が心配にはなるよねぇ。音杷含めて、三期と四期はギリギリまで頑張っちゃうし)
数か月前に卒業した一期生の松浦権を思い出す。子役としてキャリアを積んできた権は、新しい事に挑戦するためにHolidayPartyの一期生となり、優れたパフォーマーとなるために頑張っていた。先述した通り、権は自身に課した練習量の多さから怪我をしてしまい、移籍の話が出た時点で俳優の道へ戻ることを決めグループを卒業したのだ。
権は怪我をしたとはいえHolidayPartyのパフォーマンスの支柱を担っていたし、今後もきっとそうなのだろうと思い込んでいた。少なくとも、簪瑚は彼らが卒業するだなんてつゆほども考えていなかったのだ。
今でも、権と優太が抜けたHolidayPartyに寂しさを覚えることがある。歌もダンスも発展途上な簪瑚にとって、彼らは本当に精神的に寄りかかれる存在であった。
すでに卒業したメンバーにいつまでも執着しているわけにはいかないが、この練習ルールを思い出すたび、簪瑚はいつもこうして感傷に浸るのだ。
「簪瑚、どうした?暗い顔してるけど、なにかつらい事でもあった?」
「柚唯……ううん、なんでもないよ。ただちょっと、権くんと優太くんのことを思い出してただけ」
「あぁ、なるほど。寂しくなっちゃった?簪瑚は権が大好きだったもんね」
「別に、柚唯が言ってるようなことではないんだよ!権くんって理想のお兄ちゃんだったよなぁって思ってるだけで」
「はいはい、そうだね。そんなむきにならないで」
「ねーえ!柚唯!からかわないでよ!」
ケラケラと笑ってくる柚唯に、簪瑚はぷぅっと頬を膨らませた。いつもは柚唯もかっこいいお兄さんなのに、卒業した彼らの名前を出すといつもこうしてからかってくるのだ。
いつもなら万努花が窘めてくれるのだけれども、今はあいにく離籍していて見当たらない。ほかのメンバーもただのじゃれあいと思っているから基本静観してくるだけだ。
こんなに困っているのに、と、簪瑚は少しだけ不機嫌になる。柚唯は好きだが、からかわれるのは好きじゃない。
「ごめんごめん、怒らないで簪瑚。いつも可愛い反応をしてくれるからうれしくてさ」
「可愛い反応って、もー……ホリパの可愛い請負人なんだから当たり前じゃない」
褒められているんだか、舐められているんだかわからない。簪瑚は頬を膨らませながらそう思った。
――――
Side-藍
「はい!じゃあ続きをやろうか。みんな、夢のための最初のフォーメーションになって」
二十分くらい休憩していただろうか。歌って踊り通して消費されていた体力が若干戻ってきた頃、レッスンが再開となった。
移籍と同時にリリースする最新曲【夢のため】は、藍がセンターを務める曲だ。HolidayPartyの新章を彩る曲のセンター、プレッシャーがないわけがない。
(夢のために遠い場所へ旅立つ主人公の心情を細かく描く、ストーリー仕立ての曲……本当に、僕で大丈夫かなぁ)
元々俳優志望で、アイドル活動の合間を縫いながら演技レッスンも欠かしていないとはいえ、藍には演技の実績がない。子役出身の万努花や誠の方が、余程向いている曲のはずだ。
でも、それでも、事務所は藍をセンターに選んだ。
O-KAWApromotionアイドル部門、その最大手に所属して最初に発表する楽曲でセンターを務める者が、そのグループの顔になるにも関わらずだ。
即ちそれは、事務所が藍をHolidayPartyの顔に任命した事と同義である。
なんてことだろう、一期生のリーダーでも副リーダーでもなく、一般から加入したメンバーをグループの顔に任命するなんて正気の沙汰とは思えない。
足が震える。きっと、歌い始めたら声も震えている。情けない、そんな情けない姿を見せる人間がセンターだなんて、本当にいいんだろうか。
(怖い、でも……やるしかない。ここで怖がってたら、みんなの足を止めることにも繋がっちゃう。それだけは、なんとしてでも避けないと)
――――
Side-那金
『変わらない毎日に ちょっと飽き飽きしてた』
田舎で生まれ育った子供が、夢を志して遠い場所へ旅立つ。そのあらすじは、地元から一人で出てきた那金と重なるものがあった。
那金は幼い頃から剣道を始めており、芸能界に入る気などまったくなかった。可愛い服に憧れはあったけれど、それよりも始めた武術の腕を上げる事の方が熱を上げられていたのである。
ただ、那金の地元はとても田舎だった。武道以外に興味が出てくる年頃になると、学業と稽古を繰り返すしかない日々に飽きが来始めて、もっと大きな街に出て色々な事に触れてみたい気持ちが溢れてきたのだ。
那金の両親はおおらかな大人で、やりたいことがあるなら一度やってみればいいという考えの元那金を育てていたのたが、地元を離れる話題にだけは、明確な言葉こそなかったけれどやんわりと反対されていた。
当時はまだ中学校に上がったばかり。反対されるのも仕方がないと今でこそ思うけれど、当時の那金は何故反対されるのか分からなくて、どうしたら地元から出られるのかを必死で考えたものだ。その結果が、芸能界に入るためのオーディション受験だった。結果として、昨年まで所属していたオーロラエンターテイメントのオーディションに合格し、紆余曲折を経て高校入学と同時に上京を果たしたのである。振り返ってみても、どうしてもそんな思考になったのか自分でもわからない。両親はきっと、もっと困惑したことだろう。
(HolidayPartyでこの曲の主人公に一番近いのは、多分私……でも、“宮崎那金“が前に出過ぎちゃいけない。この曲の主人公を演じているのは藍なんだから、私が出過ぎたら曲のバランスが崩れちゃう。……難しいな、アイドルって)
――――
Side-誠
「今日のレッスンはここまで。明日からは本格的にライブリハーサルも始まるので、グループ単体のレッスンはしばらく間が開くけれど、きちんと復習しつつ改善できる部分は改善して行くようにしてください」
「はい!」
「じゃあお疲れ様でした!!ストレッチ忘れずにやっといてね!」
「ありがとうございました!」
レッスン室から出ていく先生を見送って、誠はようやく身体を強張らせる緊張を解いた。
グループ単体のレッスンは、ほぼノンストップで進んでいく。練習のし過ぎで体を壊したメンバーもいた事からかなり気を使ってもらってはいるが、人並みの体力しか持ち合わせていない誠はついていくのがやっとだった。
「おつかれ誠。座る前にまず着替えておいで、風邪ひいちゃうよ」
「万努花……うん、ありがとう、そうするよ」
ヘナヘナと座り込みそうになるのを膝に手をついてこらえていれば、副リーダーで同じ一期生の万努花が労るように肩を叩いて、更衣室へ促してくれる。大事な時期に風邪など引いていられない。誠はその助言に素直に従って、更衣室へと入った。
十二人で使うことを想定されているレッスン室だ、更衣室は男女それぞれ1部屋ずつ、そこをカーテンで区切って複数人で使えるようになっている。
誠は一番に男性用の更衣室に入って、奥のカーテンを引っ張った。簡易的な個室が出来上がり、ざわざわとした騒がしさから隔離される感覚を覚える。
(今日は褒められる事が多かったけど、ここで気を抜いたらまた皆の足を引っ張ることになる。出だしで躓くと挽回が大変だし、少しずつでも完成度を高めていかなくちゃ)
レッスン着から私服に着替えながら、誠は今日のレッスンの内容を反芻する。
HolidayPartyを結成してから歌い続けてきた【Party’sCREATE】しか、褒められたのは反省するべき点だろう。明日からグループレッスンだけでなく、同時デビューする二グループとの共同リハーサルが始まるというのに、課題だらけなのはいただけない。
誠は子役としてキャリアを積んできたが、そのほとんどはテレビドラマや映画など、カメラを通して客を楽しませる技量が求められるものだった。
アイドルは、違う。
アイドルは、目の前の客をまずは喜ばせなければならない。
「僕はもう高校生だし、最年少でもない。甘えないよう、虎音を引っ張っていけるよう頑張らなくちゃ……」
HolidayPartyとして活動してきた三年間のうち、誠が最年少であった期間は二年ある。その二年間は、一期生にも二期生にも甘えて頼って、少ない体力をフォローしてもらいながら活動できていた。しかし、今は違う。
三期生として加入してきた虎音は寡黙でおとなしいしっかり者だが、加入するまでは学年制の候補生としてレッスンを重ねていたアイドル見習いだった。
その期間は二年。誠が最年少として動いていた時間とほとんど同じだが、虎音は誠のように他の芸能の仕事をしたことはない。HolidayPartyとしての動きが初めての芸能活動なのだ。
芸歴でもグループの中でも先輩である以上、甘えた姿は見せられない。
折れそうになる心を奮い立たせて、誠は小さく、パチンと両方をたたいた。
本日の学業を終えた虎音も合流して、十一人で何回か基礎のステップや間違いやすい箇所を何度か確認した後、いよいよ全員揃った状態でセトリを通すことになった。
ライブ『入学式』におけるHoliday Partyの持ち時間は20分。移籍後初タイトル『夢のため』と、PROJECT_Party-Party時代にリリースした曲の中から一曲、移籍先である六学年アイドル制度『AURA』でこれまでにリリースされた全体選抜曲から二曲をカバーして披露する予定だ。
持ち曲があるとはいえ、体制が変わったことで変更点も多くある。気を抜くことはとてもできない。
とくに、二曲披露するAURAの全体選抜曲のうち、一曲は庄吏がセンターに立ってカバーするのだ。候補生出身で何度かカバーに挑戦したことがある曲を選んだとはいえ、いざメインとなるセンターとしてパフォーマンスするのは緊張が勝ってしまう。
「いい?練習は本番のように、本番は練習のように!練習で手を抜いたら本番で何も上手くいかないわよ、常に全力を出してやりなさい!分かった?」
「はい!!!!!」
「よしオッケー。じゃあ、一曲目の最初の位置につこうか。クリックちゃんと感じるんだよ!」
先生の檄に腹から出した声で返事をして、Holiday Partyの十一人は最初のフォーメーションについた。庄吏は前に立つ高身長のモデル組に隠れるように膝をつき、息をひそめる。セトリの1番初めに持ってきたのは、AURAの全体選抜曲で特に人気の高い曲、【Heaven or Real】だ。
アップテンポでダークな曲調が作り出す中毒性で人気を博す【Heaven or Real】は、学年制全体ライブや候補生のみで作り上げるアンダーライブでもよく選曲される、学年制ファンには馴染みのある曲だ。庄吏が候補生となって初めて出演したアンダーライブでも披露した覚えがある。
候補生出身者でないメンバーが多数を占めるHoliday Partyがこの曲を披露する事を学年制の既存のファンは嫌がるかもしれないが、そのリスクを取ってでも候補生だったメンバーが紆余曲折を経て学年制に“帰ってきた”事を知らしめたい。
そんな思惑から選曲したが、現役学生がメンバーの半分を占めるHolidayPartyに随分とあっているような気がしている。思春期ゆえに表現できる雰囲気と曲の雰囲気が一致しているのかもしれない。
身に響く低音と、ゾクゾクするストリングスの音を聞きながら、庄吏は【Heaven or Real】の世界に没入していった。
――――
Side-良透
持ち曲でない曲を含んだセトリを通しで練習するのは、やはり疲れる。
最新シングル【夢のため】のアウトロの余韻を感じながら、良透はそう思った。
元々ファンだった時代に聞いていた曲を披露する事になって喜んだのも束の間。元々十六人で披露する事を前提とした振りを十一人用に再構成した時点で、パフォーマンスの難易度は格段に上がり、要求されるスキルも高くなった。特に、一曲目に選んだ【Heaven or Real】はアップテンポの曲だから、振りの難易度だけでなく歌唱の難易度もかなり高い。ただ歌っているだけにならないよう、表現者としていかに世界観を再現できるかが試される一曲なのだ。
「よし、オッケー。楽にしていいよ、フィードバックは水分補給の後にするから、とりあえず息を整えて」
「はい……!」
先生から終了の許可を出されて、ふっと空気が緩む。壁際にそれぞれ置いた水筒やペットボトルを各々持って、水分を取りながら息を整える。
良透を含め、誰も喋らない。フィードバックを受ける前にどこを失敗したとか上手くいったとか、そういう演者としての感想を言うべきではないと思っていたのだろう。
「よし、息は整ったね。じゃあフィードバックに入ろうか、楽にしていいよ」
「お願いします!」
「まず歌だね、持ち曲は及第点だけど、カバー曲のピッチが悪すぎる。庄吏と万努花、輝舟のピッチがズレないからギリギリ体裁を保ってるけど、本番まで一ヶ月前を切ってる今の段階でこの出来は、今までなにやってきたの?としか思わないよ」
ズキ、と早速胸が痛む。ピッチの甘さは前々から指摘されていたし、改善する為にボーカルレッスンの量を増やしてもいるのだが、まだ力が及んでいないらしい。
「ただ、持ち曲の【Party's CREATE】と【夢のため】については問題なかったから、カバー曲ももっと練習すればあなた達はきっと上達する。本番までどこまで伸ばせるかはわからないけど、ダンス練習より歌を中心にやっていこう。個人練も同じくね。分かった?」
「はい!!」
「よし。なら、次は個人のフィードバックをするよ。まず庄吏から。――――」
メンバー個人個人へのフィードバックが始まったが、自分への評価でなくても、皆真剣に聞き入っていた。自主練習などで集まる際、各個人の課題点を共有できていたほうが、気になった点やできていない点を共有しやすいからだ。
「次、良透」
「はい」
「良透はとにかく歌を頑張ろうか。後で録音を聞き返してほしいんだけど、良透が歌ってるパートの殆どが揺れて聞こえる。この揺れは耳を鍛えていない人でも簡単に聞き取れるし、グループの完成度に関わってくる事になるからね。ダンスももうちょっと頑張ってほしいけど、歌ほど悪目立ちしている訳ではないから自信をもって」
「はい!」
やはり、良透個人で受ける指摘は歌のピッチだった。そうだろうなとは思っていたけれど、改めて指摘されるとへこんでしまうが、出来ていない点は伸び代である。へこんでいる暇なんてない。
良透は早速、明日からの個人レッスンの内容を考え始めた。
――――
Side-柚唯
「……以上、フィードバックを終了します。今指摘した事を意識して、一曲ずつやってみようか」
「はい!」
一曲ずつの確認。柚唯が一番苦手とする練習だった。特に、今日のように一通り通してから行う確認はいつまで経っても慣れなくて苦労してしまう。
柚唯はどちらかといえば、曲を細切れにしながら練習する方が好きだし性に合っていた。実際、個人練では殆ど通さず各曲を細切れにしながら振りや歌詞を体に叩き込んでいる。
とはいえ、HolidayPartyは個人のプロジェクトではなく複数人からなるグループだ。個人の得手不得手で練習方法を左右することはできない。間違えないようにしないと、と気合を入れて、柚唯は一曲目の【Heaven or Real】の立ち位置についた。
【Heaven or Real】のセンターは、最年少の虎音が務める事になっている。
地獄か現実かを問う曲だ、酸いも甘いも噛み分けてきた成人組が担うと重くなりすぎるし、高校生組に任せるには少々振り切りにくい曲だ。
最年少で成長期真っ盛り、加入時よりも他メンバーとの身長差はなくなってきたとはいえまだ伸び盛りの女の子である虎音を目立たせるにはフォーメーションにもそれなりの工夫が必要になる。という事で、モデルの仕事をしていてグループ内でも身長の高い柚唯と樹里叶がセンターの横に立つ事になったのだ。
センターが最後方から登場してくるというオリジナルのユニークな振り付けを踏襲しつつ、HolidayParty独自の要素として"センターを誤認させる"為に、最初に柚唯と樹里叶が前に立ち、次いでリーダーの庄吏、最後に虎音が現れるという流れを組んでいた。
低音とストリングスの効いたイントロが流れ出し、背中合わせに立っていた樹里叶とゆっくり向かい合いながら横へと移動する。同時に、後ろに隠れていた庄吏が立ち上がって、センターのように一人だけ違う振りを踊り出す。
Aメロに向けて徐々に盛り上がる中で、庄吏が後ろにいた虎音の手を引いて前に引っ張り出し、最初のフォーメーションから歌唱用のフォーメーションへの移動が完了した。
Aメロを主に歌うのは、Holiday Partyの中でも歌唱力の高い万努花と庄吏、輝舟、樹里叶、那金の五人だ。Holiday Party移籍後初のステージだ、なるべく安定した歌で観客の心を掴もうという作戦だ。
続くBメロはAメロに比べて短い小節で作られているため、ここは虎音と誠の年少コンビが歌うことになっている。
地獄が楽か、今が楽か。【Heaven or Real】は、そんな思考を表現している曲だ。Bメロは特に、その思考をダイレクトに表しているパートになる。聞いているととても楽しいパートだが、柚唯のようにすでに成人を迎えた大人が歌うと羞恥心が勝ってしまい、表現の中にノイズが混じってしまうことが多かった。
そこを、思春期真っ只中である虎音と誠に任せる事でノイズを極限まで低減しようという訳だ。
(虎音、最初にここを歌うって決まった時はかなり恥ずかしそうにしてたけど、大分上手く歌えるようになってるなぁ。思春期の子供の吸収力ってすさまじいや)
――――
Side-樹里叶
一曲目の【Heaven or Real】の通しレッスンが終了し、二曲目の【春色カゲロウ】のレッスンに入る。
この楽曲での樹里叶の立ち位置は後方左端。一曲目とは真逆の位置だ。曲名の通り春めいた爽やかな曲であるため、差を出すために一曲目で前方のポジションにいたメンバーは後方に下がることとなったのだ。
(ま、俺の得意な曲調でもないし、パフォーマンスの邪魔にならないのならそれでいいんだけど)
HolidayPartyとして活動する前からモデルの仕事をしていた樹里叶にとって、表現する世界に自分があうかあわないかを見極めるのは自分の心を守る事でもあった。明らかに自分にあっていないコンセプトのオーディションを受けても審査員の目に引っかからず落ちるだけだ。
勿論、コンセプトに合わせる努力をしなければこの世界からあっという間に追い落とされてしまうため、鍛錬を怠るようなことは基本しないのだけれど。
【春色カゲロウ】でセンターを務めるのは、一曲目でセンターだった虎音の後ろにいた庄吏だ。庄吏が候補生から抜けてHolidayPartyの一期生となった時期にAURAがリリースした曲で、別プロジェクトを経て学年制に戻ってきた庄吏がセンターに立つ。なんてドラマチックな展開だろう。
樹里叶は、デビューが確約されている候補生を抜けてHolidayPartyに一期生として合流した庄吏の事を尊敬していた。なにせ、六学年アイドル制度『AURA』に所属するメンバーとなるには、養成所に入所するためのオーディションを突破し、更にこの制度の候補生に選ばれる必要があるからだ。
樹里叶がデビューする前の子供時代から、アイドル志望の養成所生は多かった。あの人数から、毎年一回しかチャンスのない候補生選抜に選ばれるというのは並大抵の努力なしでは成り立たない。そんな関門をくぐってきたにもかかわらず、新しく立ち上げられた、成功するかもわからないプロジェクトでデビューするだなんて肝が据わりすぎている。
最終的に学年制所属となったわけだが、当時は移籍するかどうかすらわからなかったのだ。初代リーダーが卒業し、新たなグループの纏め役になった庄吏を年長組として支えることが増えた現在、樹里叶が庄吏へ抱く尊敬の念は大きくなるばかりであった。
【春色カゲロウ】も、そんな頑張り屋な庄吏にぴったりな曲のように感じる。ピアノが主軸になった優しいテンポのポップスながらギターとストリングスが明るい空気を作り出していて、しんみりとした感傷が湧いてくるようなことがない。
『ゆらりとゆらめくカゲロウは、決して幻覚なんかじゃない』
『あれはぼくらの未来の姿』
『いつか叶える明るい未来のその姿』
(学年制に所属するアイドルになる……遠回りしたけど、お前はよくその夢を叶えたよ。虎音も、音杷も、よく頑張ったな)
――――
Side-輝舟
三曲目の【Party's CREATE】は、HolidayPartyが一番最初にリリースした曲で、既存ファンからしてもライブで必ず歌われる鉄板曲であるらしい。
らしい、というのも、輝舟は四期生、HolidayParty内では後輩も後輩で、オリジナルメンバーとして楽曲に参加するのは移籍と同時に引っ提げて発表する最新曲『夢のため』が初めてであり、HolidayPartyとして出演するライブも今回で1回目であるからだ。
年齢も上のほうだし、初代リーダーである吉松が期別による先輩後輩概念をなくして活動しようという方針でグループを纏めていたから、加入当初から新参者という意識を持つことなくHolidayPartyの活動に参加できたことも大きな要因だろう。
とはいえ、【Party'sCREATE】は歌唱する回数が増えるほどライブの鉄板曲という位置づけに納得してくる楽曲だ。この曲は端的に言えばダンスナンバーで、緩急のあるテンポのおかげでサビが印象に残りやすい。その印象に残りやすいサビの振付も比較的覚えやすいとくれば、初見客が多いライブでも披露しやすい曲になるのは至極当然と言えた。
この楽曲での輝舟のパートは、多くもなければ少なくもない。グループ最初期の曲なので、この曲をメインに歌うのは一期生の庄吏、柚唯、樹里叶、万努花、誠の五人だ。それに不満を唱えるメンバーは、輝舟から見てもいないように思う。
彼らがいなければHolidayPartyというグループは生まれていないのだから、当然といえば当然なのかもしれない。
『夢を描こう Lachacha ta Latata』
クラップを2回ずついれる振り。このパートだけ全員の声を重ねるから、徐々に盛り上がっていく空気を作りやすい。
『楽しいパーティーは、自分たちで作るもの』
『Let’s CREATE & DANCING!』
サビ直前、しっとりとしたパートと、元気いっぱいに歌うパートを連続させることでより緩急をつけて一番の盛り上がりに突っ込んでいく。
簡単な振付とは言うが、【Party'sCREATE】の振りは飛んで跳ねて移動してを繰り返す体力の消耗が激しいものだ。午前中の個人練習を含めればかなりの時間踊り続けている輝舟は、そろそろ体力の限界を迎えつつあった。
(楽しいけど、もうちょっとスタミナつけられるトレーニングも取り入れないとしんどいかもな……!)
――――
Side-万努花
(輝舟、ちょっとしんどそう……?本番通りのセトリ通しは終わって今は一曲ずつの通しだし、この曲終わったら一回休憩を挟んでもらおうかな)
万努花の斜め前で歌い踊る輝舟は、いつもより少し苦しそうだった。
三曲目に持ってきた【Party'sCREATE】は、飛んで跳ねる振り付けを多用している分体力消費の激しい曲だ。
その分だけライブに来てくれたファンにも楽しんでもらいやすいのだけれど、慣れていない頃はいくら練習しても息切れしてうまく歌えないメンバーが大多数をしめてしまい、反省会ではいつもこの曲に関する反省点ばかり上がっていた程度に一曲を通して披露する難易度は高い。振りが簡単なのと披露難易度は、HolidayPartyの持ち歌では比例しないのである。
「うん、やっぱり長くやってるだけあって、この曲は安定感あるね。じゃあ次、【夢のため】を……」
「先生!」
「ん?何、万努花」
「次の一曲レッスンに入る前に、少し休憩をいただけませんか。少し集中が切れてきていて」
「……それもそうね。結構な時間やってたし、万努花の言うとおり少し休憩を入れましょうか」
万努花の申し出を快く受け入れた先生は、2回手を叩いて一旦解散の合図を出した。
「ありがとう万努花、休憩を申し出てくれて助かったよ」
「そう?ならよかった。庄吏達は午前中から練習してるんでしょ、あんまり根を詰めすぎないでね。ここで疲労を溜められて倒れられたら大変になるのはグループなんだから」
「うん、分かってる」
各々が休憩に入る中、リーダーの庄吏が万努花に声をかけてくる。きっと、リーダーなんだから自分が言い出さなければならなかったのになんて思っているのだろう。
一曲目から前方で踊り続けている庄吏にそこまで求めるほど、メンバーは鬼ではない。むしろ万努花は、副リーダーであるからこそ、庄吏がカバーしきれない箇所をフォローしたいと思っているのだ。
礼を伝えられるのはうれしいが、変に気負ってほしくはなかった。
「じゃあ、庄吏もちゃんと休憩してね。私さっきお水切れちゃったから、ちょっと買ってくる」
「うん。気を付けて行ってきて」
「わかってる!」
そう返してから、万努花はレッスン室の扉を開けた。勿論、外履きの靴と財布も忘れずに手に持って。
――――
Side-簪瑚
休憩時間は練習しない。HolidayParty内で決められた練習ルールのうちの1つだ。
HolidayPartyには熱心なメンバーが多い。特別な訓練を受けずにグループへ加入した簪瑚達二期生は勿論、負けず嫌いが集うHolidayPartyは、だれにも負けないよう、自分がグループの足を引っ張らないようにとひたすらに練習する光景がよく見られた。しかし、長すぎる練習は体に毒だ。練習のし過ぎで体を壊しては元の子もない。というところで制定されたのが、先のルールというわけである。
(まぁ、権くんが練習のしすぎで怪我したのを見てたんだから、少なくとも一期と二期は無理しないと思うけど……虎音と那金と輝舟が心配にはなるよねぇ。音杷含めて、三期と四期はギリギリまで頑張っちゃうし)
数か月前に卒業した一期生の松浦権を思い出す。子役としてキャリアを積んできた権は、新しい事に挑戦するためにHolidayPartyの一期生となり、優れたパフォーマーとなるために頑張っていた。先述した通り、権は自身に課した練習量の多さから怪我をしてしまい、移籍の話が出た時点で俳優の道へ戻ることを決めグループを卒業したのだ。
権は怪我をしたとはいえHolidayPartyのパフォーマンスの支柱を担っていたし、今後もきっとそうなのだろうと思い込んでいた。少なくとも、簪瑚は彼らが卒業するだなんてつゆほども考えていなかったのだ。
今でも、権と優太が抜けたHolidayPartyに寂しさを覚えることがある。歌もダンスも発展途上な簪瑚にとって、彼らは本当に精神的に寄りかかれる存在であった。
すでに卒業したメンバーにいつまでも執着しているわけにはいかないが、この練習ルールを思い出すたび、簪瑚はいつもこうして感傷に浸るのだ。
「簪瑚、どうした?暗い顔してるけど、なにかつらい事でもあった?」
「柚唯……ううん、なんでもないよ。ただちょっと、権くんと優太くんのことを思い出してただけ」
「あぁ、なるほど。寂しくなっちゃった?簪瑚は権が大好きだったもんね」
「別に、柚唯が言ってるようなことではないんだよ!権くんって理想のお兄ちゃんだったよなぁって思ってるだけで」
「はいはい、そうだね。そんなむきにならないで」
「ねーえ!柚唯!からかわないでよ!」
ケラケラと笑ってくる柚唯に、簪瑚はぷぅっと頬を膨らませた。いつもは柚唯もかっこいいお兄さんなのに、卒業した彼らの名前を出すといつもこうしてからかってくるのだ。
いつもなら万努花が窘めてくれるのだけれども、今はあいにく離籍していて見当たらない。ほかのメンバーもただのじゃれあいと思っているから基本静観してくるだけだ。
こんなに困っているのに、と、簪瑚は少しだけ不機嫌になる。柚唯は好きだが、からかわれるのは好きじゃない。
「ごめんごめん、怒らないで簪瑚。いつも可愛い反応をしてくれるからうれしくてさ」
「可愛い反応って、もー……ホリパの可愛い請負人なんだから当たり前じゃない」
褒められているんだか、舐められているんだかわからない。簪瑚は頬を膨らませながらそう思った。
――――
Side-藍
「はい!じゃあ続きをやろうか。みんな、夢のための最初のフォーメーションになって」
二十分くらい休憩していただろうか。歌って踊り通して消費されていた体力が若干戻ってきた頃、レッスンが再開となった。
移籍と同時にリリースする最新曲【夢のため】は、藍がセンターを務める曲だ。HolidayPartyの新章を彩る曲のセンター、プレッシャーがないわけがない。
(夢のために遠い場所へ旅立つ主人公の心情を細かく描く、ストーリー仕立ての曲……本当に、僕で大丈夫かなぁ)
元々俳優志望で、アイドル活動の合間を縫いながら演技レッスンも欠かしていないとはいえ、藍には演技の実績がない。子役出身の万努花や誠の方が、余程向いている曲のはずだ。
でも、それでも、事務所は藍をセンターに選んだ。
O-KAWApromotionアイドル部門、その最大手に所属して最初に発表する楽曲でセンターを務める者が、そのグループの顔になるにも関わらずだ。
即ちそれは、事務所が藍をHolidayPartyの顔に任命した事と同義である。
なんてことだろう、一期生のリーダーでも副リーダーでもなく、一般から加入したメンバーをグループの顔に任命するなんて正気の沙汰とは思えない。
足が震える。きっと、歌い始めたら声も震えている。情けない、そんな情けない姿を見せる人間がセンターだなんて、本当にいいんだろうか。
(怖い、でも……やるしかない。ここで怖がってたら、みんなの足を止めることにも繋がっちゃう。それだけは、なんとしてでも避けないと)
――――
Side-那金
『変わらない毎日に ちょっと飽き飽きしてた』
田舎で生まれ育った子供が、夢を志して遠い場所へ旅立つ。そのあらすじは、地元から一人で出てきた那金と重なるものがあった。
那金は幼い頃から剣道を始めており、芸能界に入る気などまったくなかった。可愛い服に憧れはあったけれど、それよりも始めた武術の腕を上げる事の方が熱を上げられていたのである。
ただ、那金の地元はとても田舎だった。武道以外に興味が出てくる年頃になると、学業と稽古を繰り返すしかない日々に飽きが来始めて、もっと大きな街に出て色々な事に触れてみたい気持ちが溢れてきたのだ。
那金の両親はおおらかな大人で、やりたいことがあるなら一度やってみればいいという考えの元那金を育てていたのたが、地元を離れる話題にだけは、明確な言葉こそなかったけれどやんわりと反対されていた。
当時はまだ中学校に上がったばかり。反対されるのも仕方がないと今でこそ思うけれど、当時の那金は何故反対されるのか分からなくて、どうしたら地元から出られるのかを必死で考えたものだ。その結果が、芸能界に入るためのオーディション受験だった。結果として、昨年まで所属していたオーロラエンターテイメントのオーディションに合格し、紆余曲折を経て高校入学と同時に上京を果たしたのである。振り返ってみても、どうしてもそんな思考になったのか自分でもわからない。両親はきっと、もっと困惑したことだろう。
(HolidayPartyでこの曲の主人公に一番近いのは、多分私……でも、“宮崎那金“が前に出過ぎちゃいけない。この曲の主人公を演じているのは藍なんだから、私が出過ぎたら曲のバランスが崩れちゃう。……難しいな、アイドルって)
――――
Side-誠
「今日のレッスンはここまで。明日からは本格的にライブリハーサルも始まるので、グループ単体のレッスンはしばらく間が開くけれど、きちんと復習しつつ改善できる部分は改善して行くようにしてください」
「はい!」
「じゃあお疲れ様でした!!ストレッチ忘れずにやっといてね!」
「ありがとうございました!」
レッスン室から出ていく先生を見送って、誠はようやく身体を強張らせる緊張を解いた。
グループ単体のレッスンは、ほぼノンストップで進んでいく。練習のし過ぎで体を壊したメンバーもいた事からかなり気を使ってもらってはいるが、人並みの体力しか持ち合わせていない誠はついていくのがやっとだった。
「おつかれ誠。座る前にまず着替えておいで、風邪ひいちゃうよ」
「万努花……うん、ありがとう、そうするよ」
ヘナヘナと座り込みそうになるのを膝に手をついてこらえていれば、副リーダーで同じ一期生の万努花が労るように肩を叩いて、更衣室へ促してくれる。大事な時期に風邪など引いていられない。誠はその助言に素直に従って、更衣室へと入った。
十二人で使うことを想定されているレッスン室だ、更衣室は男女それぞれ1部屋ずつ、そこをカーテンで区切って複数人で使えるようになっている。
誠は一番に男性用の更衣室に入って、奥のカーテンを引っ張った。簡易的な個室が出来上がり、ざわざわとした騒がしさから隔離される感覚を覚える。
(今日は褒められる事が多かったけど、ここで気を抜いたらまた皆の足を引っ張ることになる。出だしで躓くと挽回が大変だし、少しずつでも完成度を高めていかなくちゃ)
レッスン着から私服に着替えながら、誠は今日のレッスンの内容を反芻する。
HolidayPartyを結成してから歌い続けてきた【Party’sCREATE】しか、褒められたのは反省するべき点だろう。明日からグループレッスンだけでなく、同時デビューする二グループとの共同リハーサルが始まるというのに、課題だらけなのはいただけない。
誠は子役としてキャリアを積んできたが、そのほとんどはテレビドラマや映画など、カメラを通して客を楽しませる技量が求められるものだった。
アイドルは、違う。
アイドルは、目の前の客をまずは喜ばせなければならない。
「僕はもう高校生だし、最年少でもない。甘えないよう、虎音を引っ張っていけるよう頑張らなくちゃ……」
HolidayPartyとして活動してきた三年間のうち、誠が最年少であった期間は二年ある。その二年間は、一期生にも二期生にも甘えて頼って、少ない体力をフォローしてもらいながら活動できていた。しかし、今は違う。
三期生として加入してきた虎音は寡黙でおとなしいしっかり者だが、加入するまでは学年制の候補生としてレッスンを重ねていたアイドル見習いだった。
その期間は二年。誠が最年少として動いていた時間とほとんど同じだが、虎音は誠のように他の芸能の仕事をしたことはない。HolidayPartyとしての動きが初めての芸能活動なのだ。
芸歴でもグループの中でも先輩である以上、甘えた姿は見せられない。
折れそうになる心を奮い立たせて、誠は小さく、パチンと両方をたたいた。
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