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「ふおおおおおのれロン!!はやくもどちぇええええ!!」
「どわっ!どっから湧いてきたのこの神様!!」
「サリエル!」
ロズウェルの処置までは大人しくしていたはずだったのに、サリエルはポンッと音を立てて黒い子獅子に姿を転じると、大口を開けてロンに襲いかかる。しかし子は子である。ロンによってがしりと胴のあたりを掴まれると、まるで高い高いをするかのように遊ばれる。
「ぉわぁあきらい!!きらいいぃぃい!!」
「だっはっは!!執着の神も型なしである!!いいぞもっとやれ!!」
ミハエルは、呑気にロンが遊んでくれていると思ったらしい。器具に清潔魔法をかけ終えると、ロズウェルの毒を結晶化した。
淡紫色をした美しいそれは、歪な魔石にも見える。幼児期のナーガ毒は実に不純物などもないため、錬金術などを行う魔女からしてみたら垂涎の代物だ。ミハエルはそれを巾着にいれると、そっとサジに差し出した。
「はい、どうぞ。」
「む?」
「不純物のないナーガ毒です。サジさん魔女でしょう?必要かなと思いまして。」
「え、サジ錬金術とかしないぞ。」
「へ、そうなのですか?」
んな面倒くさいことするくらいなら買うわ。そんなことを宣うと、それはミハエルが使えと押し返された。しかしミハエルも錬金術など斧を作ったくらいで、ナーガ毒を使う大袈裟なものは作れない。どうしようと手の平のそれを見ると、ロンが勢いよく手を上げた。
「はいはい!!いらないなら僕にください!!」
「ロンさん、それは…サジさんが構わないならいいですが…」
「そんな物騒な結晶なんて何につかうのだ。」
「拷問。」
端的に答えたロンに、ミハエルもサジもぴしりと固まる。ロンが小脇に抱えているサリエルもぎょっとした顔で見上げると、スンとした真顔をみせていたロンが、ゆっくりと顔をほころばせた。
「うそうそー!単に鉱石とかそういうキラキラしたものが好きなだけ!」
「こ、こわいわ!!洒落にならんこと言うなバカモノ!!」
「わはは!ミハエルちゃんそんな怯えないで、まじで嘘だから!」
絶句して毒をしまおうとしたミハエルに慌てて取り縋る。放り出されたサリエルがくるくると空中で回ったかと思うと、がぶりとロンの頭に齧りついた。
「いでーーーっ!!!!」
「さ、サリエル!こら!」
「余程腹に据えかねてるみたいだなあ。」
ちゅむちゅむとロズウェルにサジの指を吸わせながら、呆れたような目で3人を見る。がぶがぶとしっかり満足いくまで噛んだらしい。ミハエルがロンに慌てて治癒をかけてやると、ムッとした顔でサリエルを見た。
「なんてことするんですかサリエル!仮にも神の一柱を名乗るのなら、分別を知りなさい!」
「おれにふけいをしてるのはそいつでしゅよ!なんでおこられにゃきゃならんのでしゅか!ふふく!!」
「素直にごめんなさいと言いなさい!お母さんに教わらなかったのですか!」
「おい!ははうえをひきあいにだしゅのはいけましぇん!!」
あまりに横暴を振る舞えば、ジルバ様に言ってヘレナ様に言いつけますからね!そう言うと、ようやくサリエルは大人しくなった。
「み、ミハエル、ははうえにはいわぬよな?」
「しりません!」
「み、ミハエルうう!」
ひしっと顔にくっつくサリエルを抱き直すあたり、ミハエルもサリエルに甘い。ロンはやれやれと溜め息を吐くと、二人して次の検診は一月後だからね!と言った。
「まあ、ミハエルが少しずつ強くなってきたのは良いことだな。」
「良いことなんですか?」
「ノーが言えるのは仕事のできる人間だろう。」
そう言って、サディンはミハエルの頭を撫でる。
あの後、サジを表門まで迎えに来たアロンダートは、うとうとするロズウェルを抱くサジの肩にショールをかけてやっていた。里親ではあるが、ロズウェルを育て始めてからは日が浅いものの、二人共可愛く思っているらしい。ミハエルが微笑ましくそんな二人を見送っていた所で、サディンとばったりあったのである。
「訓練はもう宜しいのですか?」
「ああ、明日から野外演習だからな。少し早めに切り上げた。」
そんな話をしながら、二人でジルバの元へ向かう。肝っ玉が座ったうんぬんの話は、先程のロンのところでのサリエルとのやり取りの話から派生した。どうやら明日の野外演習に蜘蛛の巣も参加するらしく、ジルバの所で段取りの確認に行くらしい。サリエルはビビり散らかしているらしく、丸っこいおててで獅子のお耳を抑えながら腕の中で縮こまる。
「ははうえはよぶな、じぇったいに。」
「そうか、お前がしおらしくなるほどの怖い人なのか。」
「りづめはいやだ、はんろんのよちもないからこわい…」
淡々と、なぜ?やどうして?を繰り返して追い詰めていくヘレナの説教は、どうも苦手らしい。ちんまい手で顔を隠すように覆うと、ちらりと指の隙間からどこに向かっているのかを確認して、ぶわりと尾の先をふくらませる。
「う、うしょちゅき!!やだぁあ!!」
「わっ、ジルバ様に会いにいくだけですって!」
「いやだっどうしぇははうえよぶのでちょう!?やだやだかえるううう!!」
「わ、ちょっ、あ、あぶなっ」
腕の中でジタバタと暴れるサリエルは、宰相のいる執務室に向かっていることに気がついたらしい。ミハエルがよろけると、サディンはその細い体を支えるように腰を抱く。
「サリエル。駄々をこねるな。ヘレナ様を呼ぶかどうかはジルバ次第だ。お前が暴れるなら呼べと俺は進言するが、構わないか?」
「あばれまちぇん。」
「最初からそれくらいしおらしくしていろどら猫。」
そう呆れたサディンが、目と鼻の先の執務室に目を向けた時だった。扉が開き、中からは見慣れぬ金の巻毛の10歳にも満たぬくらいの女の子が出てきたのだ。思わずミハエルもサディンも、誰だろうと顔を見合わせた。
水色のドレスを着て、青いリボンを頭に飾ったお人形さんのような美少女だ。気の強そうな緑の瞳が二人に向けられる。
「どなた?」
きょとりとした顔で二人を見る。サディンもミハエルも、おそらく貴族の子だろうと思ったが、まさか王の執務室から出てきたのだ。扉の両脇に立つ騎士も何も言わないと言うことは、おそらく血縁者だろうと判断する。
「第一騎士団団長、サディンにございます。」
「医術局に所存しております、ミハエルにございます。」
二人は目上の者から名を聞かれたと捉え、ボウアンドスクレープで返す。少女はどうやら二人の名を聞いたことがあったらしい。あら、と少しだけ嬉しそうな声で反応を返してくれた。
「グレイシス国王は母さまよ。私、アイリスと申します。お二人のことは父上と兄上からもお聞きしておりますわ。」
「これは、アイリス様。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。」
「構いませんわ。父上からは出歩くなと言われてますもの。私、どうやら箱入りらしくて。」
「ジルバ様もアイリス様を愛おしく思ってらっしゃるのですよ。どうかお父上のお心をお汲み取りください。」
サディンもミハエルも、小さなレディに緩く微笑む。アイリスはどうやらお稽古を抜け出してきたらしい。グレイシスに会いに執務室へとこっそり来たはいいが、どうやら今日に限ってグレイシスは不在のようだった。
「国王が不在?」
「カイン殿下からは何も言われてないのか?」
「ええ、…サロンでしょうか。そういえば見慣れぬ馬車が来ていたので。」
アイリスは背の高い二人を見上げていたのだが、どうやら首がつかれたらしい。サディンが跪いて目線を合わせると、可愛らしいピンクの頬を更に赤らめ、そそくさとミハエルの影に隠れた。
「アイリス様?」
「顔のよろしい殿方は危険ですと父上がおっしゃいました。サディン様は不可です。」
「不可…」
「困りました、ミハエル様も不可ですね。私、どちらを見たらよろしくて?」
「ええと、御心のままに。今はジルバ様もおりませんので。」
「そう、そうね…なら、サディン様。アイリスのことをレディって読んでくださる?」
「勿論です、レディ。」
ミハエルの手を緩く握りしめたアイリスが、期待のこもった瞳でミハエルを見上げる。どうやらミハエルにも男性としての役割を果たせといっているらしい。可愛らしい淑女にミハエルも跪いてそっと手の平を掬うと、優しく握りしめた。
「レディ、もしご迷惑でなければ、グレイシス様とお会いできるまでお供しても?」
「それはあなたの意志で?それとも職務?」
サディンとミハエルは、アイリスの言葉に目を丸くした。まだこんなに小さいのに、そんな言葉が出てきたのに驚いたのだ。互いに顔を合わせると、とんでもないと言わんばかりに首を振る。
「いいえレディ、これは職務ではありません。」
「私達はお願いをしています。」
「お願い?」
「ええ、小さなレディを御守りさせていただく誉れをお与えください。」
サディンとミハエルの言葉に、アイリスの頬が嬉しそうに緩む。その視線は、ゆっくりとミハエルの肩辺りを見つめると、どうやら大人しく猫のふりをすることに決めたらしいサリエルを見て、目を輝かせた。
「いいわ、お供してちょうだい。あと、猫ちゃんを触らせて?」
ぎょっとしたサリエルが、獅子の尾の先端を膨らませる。助けを求めるような顔でミハエルを見ると、その背後で金色の目を光らせて無言の圧を送りつけるサディンを目にして、きゅぅっと口を噤む。どうやらサリエルの中でなにかの打算が働いたらしい。
「に、にゃー…」
「あら、貴女もご挨拶ができるのね。」
「うに、ぐうう…」
おのれミハエル。サリエルを抱き上げてアイリスに手渡した愛し子に、サリエルが信じられないものを見る目で見上げる。ミハエルは口パクで我慢ですよ!と伝えると、ぎゅうぎゅうと抱きしめて頬ずりをするアイリスに、声のない悲鳴を上げた。
「どわっ!どっから湧いてきたのこの神様!!」
「サリエル!」
ロズウェルの処置までは大人しくしていたはずだったのに、サリエルはポンッと音を立てて黒い子獅子に姿を転じると、大口を開けてロンに襲いかかる。しかし子は子である。ロンによってがしりと胴のあたりを掴まれると、まるで高い高いをするかのように遊ばれる。
「ぉわぁあきらい!!きらいいぃぃい!!」
「だっはっは!!執着の神も型なしである!!いいぞもっとやれ!!」
ミハエルは、呑気にロンが遊んでくれていると思ったらしい。器具に清潔魔法をかけ終えると、ロズウェルの毒を結晶化した。
淡紫色をした美しいそれは、歪な魔石にも見える。幼児期のナーガ毒は実に不純物などもないため、錬金術などを行う魔女からしてみたら垂涎の代物だ。ミハエルはそれを巾着にいれると、そっとサジに差し出した。
「はい、どうぞ。」
「む?」
「不純物のないナーガ毒です。サジさん魔女でしょう?必要かなと思いまして。」
「え、サジ錬金術とかしないぞ。」
「へ、そうなのですか?」
んな面倒くさいことするくらいなら買うわ。そんなことを宣うと、それはミハエルが使えと押し返された。しかしミハエルも錬金術など斧を作ったくらいで、ナーガ毒を使う大袈裟なものは作れない。どうしようと手の平のそれを見ると、ロンが勢いよく手を上げた。
「はいはい!!いらないなら僕にください!!」
「ロンさん、それは…サジさんが構わないならいいですが…」
「そんな物騒な結晶なんて何につかうのだ。」
「拷問。」
端的に答えたロンに、ミハエルもサジもぴしりと固まる。ロンが小脇に抱えているサリエルもぎょっとした顔で見上げると、スンとした真顔をみせていたロンが、ゆっくりと顔をほころばせた。
「うそうそー!単に鉱石とかそういうキラキラしたものが好きなだけ!」
「こ、こわいわ!!洒落にならんこと言うなバカモノ!!」
「わはは!ミハエルちゃんそんな怯えないで、まじで嘘だから!」
絶句して毒をしまおうとしたミハエルに慌てて取り縋る。放り出されたサリエルがくるくると空中で回ったかと思うと、がぶりとロンの頭に齧りついた。
「いでーーーっ!!!!」
「さ、サリエル!こら!」
「余程腹に据えかねてるみたいだなあ。」
ちゅむちゅむとロズウェルにサジの指を吸わせながら、呆れたような目で3人を見る。がぶがぶとしっかり満足いくまで噛んだらしい。ミハエルがロンに慌てて治癒をかけてやると、ムッとした顔でサリエルを見た。
「なんてことするんですかサリエル!仮にも神の一柱を名乗るのなら、分別を知りなさい!」
「おれにふけいをしてるのはそいつでしゅよ!なんでおこられにゃきゃならんのでしゅか!ふふく!!」
「素直にごめんなさいと言いなさい!お母さんに教わらなかったのですか!」
「おい!ははうえをひきあいにだしゅのはいけましぇん!!」
あまりに横暴を振る舞えば、ジルバ様に言ってヘレナ様に言いつけますからね!そう言うと、ようやくサリエルは大人しくなった。
「み、ミハエル、ははうえにはいわぬよな?」
「しりません!」
「み、ミハエルうう!」
ひしっと顔にくっつくサリエルを抱き直すあたり、ミハエルもサリエルに甘い。ロンはやれやれと溜め息を吐くと、二人して次の検診は一月後だからね!と言った。
「まあ、ミハエルが少しずつ強くなってきたのは良いことだな。」
「良いことなんですか?」
「ノーが言えるのは仕事のできる人間だろう。」
そう言って、サディンはミハエルの頭を撫でる。
あの後、サジを表門まで迎えに来たアロンダートは、うとうとするロズウェルを抱くサジの肩にショールをかけてやっていた。里親ではあるが、ロズウェルを育て始めてからは日が浅いものの、二人共可愛く思っているらしい。ミハエルが微笑ましくそんな二人を見送っていた所で、サディンとばったりあったのである。
「訓練はもう宜しいのですか?」
「ああ、明日から野外演習だからな。少し早めに切り上げた。」
そんな話をしながら、二人でジルバの元へ向かう。肝っ玉が座ったうんぬんの話は、先程のロンのところでのサリエルとのやり取りの話から派生した。どうやら明日の野外演習に蜘蛛の巣も参加するらしく、ジルバの所で段取りの確認に行くらしい。サリエルはビビり散らかしているらしく、丸っこいおててで獅子のお耳を抑えながら腕の中で縮こまる。
「ははうえはよぶな、じぇったいに。」
「そうか、お前がしおらしくなるほどの怖い人なのか。」
「りづめはいやだ、はんろんのよちもないからこわい…」
淡々と、なぜ?やどうして?を繰り返して追い詰めていくヘレナの説教は、どうも苦手らしい。ちんまい手で顔を隠すように覆うと、ちらりと指の隙間からどこに向かっているのかを確認して、ぶわりと尾の先をふくらませる。
「う、うしょちゅき!!やだぁあ!!」
「わっ、ジルバ様に会いにいくだけですって!」
「いやだっどうしぇははうえよぶのでちょう!?やだやだかえるううう!!」
「わ、ちょっ、あ、あぶなっ」
腕の中でジタバタと暴れるサリエルは、宰相のいる執務室に向かっていることに気がついたらしい。ミハエルがよろけると、サディンはその細い体を支えるように腰を抱く。
「サリエル。駄々をこねるな。ヘレナ様を呼ぶかどうかはジルバ次第だ。お前が暴れるなら呼べと俺は進言するが、構わないか?」
「あばれまちぇん。」
「最初からそれくらいしおらしくしていろどら猫。」
そう呆れたサディンが、目と鼻の先の執務室に目を向けた時だった。扉が開き、中からは見慣れぬ金の巻毛の10歳にも満たぬくらいの女の子が出てきたのだ。思わずミハエルもサディンも、誰だろうと顔を見合わせた。
水色のドレスを着て、青いリボンを頭に飾ったお人形さんのような美少女だ。気の強そうな緑の瞳が二人に向けられる。
「どなた?」
きょとりとした顔で二人を見る。サディンもミハエルも、おそらく貴族の子だろうと思ったが、まさか王の執務室から出てきたのだ。扉の両脇に立つ騎士も何も言わないと言うことは、おそらく血縁者だろうと判断する。
「第一騎士団団長、サディンにございます。」
「医術局に所存しております、ミハエルにございます。」
二人は目上の者から名を聞かれたと捉え、ボウアンドスクレープで返す。少女はどうやら二人の名を聞いたことがあったらしい。あら、と少しだけ嬉しそうな声で反応を返してくれた。
「グレイシス国王は母さまよ。私、アイリスと申します。お二人のことは父上と兄上からもお聞きしておりますわ。」
「これは、アイリス様。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。」
「構いませんわ。父上からは出歩くなと言われてますもの。私、どうやら箱入りらしくて。」
「ジルバ様もアイリス様を愛おしく思ってらっしゃるのですよ。どうかお父上のお心をお汲み取りください。」
サディンもミハエルも、小さなレディに緩く微笑む。アイリスはどうやらお稽古を抜け出してきたらしい。グレイシスに会いに執務室へとこっそり来たはいいが、どうやら今日に限ってグレイシスは不在のようだった。
「国王が不在?」
「カイン殿下からは何も言われてないのか?」
「ええ、…サロンでしょうか。そういえば見慣れぬ馬車が来ていたので。」
アイリスは背の高い二人を見上げていたのだが、どうやら首がつかれたらしい。サディンが跪いて目線を合わせると、可愛らしいピンクの頬を更に赤らめ、そそくさとミハエルの影に隠れた。
「アイリス様?」
「顔のよろしい殿方は危険ですと父上がおっしゃいました。サディン様は不可です。」
「不可…」
「困りました、ミハエル様も不可ですね。私、どちらを見たらよろしくて?」
「ええと、御心のままに。今はジルバ様もおりませんので。」
「そう、そうね…なら、サディン様。アイリスのことをレディって読んでくださる?」
「勿論です、レディ。」
ミハエルの手を緩く握りしめたアイリスが、期待のこもった瞳でミハエルを見上げる。どうやらミハエルにも男性としての役割を果たせといっているらしい。可愛らしい淑女にミハエルも跪いてそっと手の平を掬うと、優しく握りしめた。
「レディ、もしご迷惑でなければ、グレイシス様とお会いできるまでお供しても?」
「それはあなたの意志で?それとも職務?」
サディンとミハエルは、アイリスの言葉に目を丸くした。まだこんなに小さいのに、そんな言葉が出てきたのに驚いたのだ。互いに顔を合わせると、とんでもないと言わんばかりに首を振る。
「いいえレディ、これは職務ではありません。」
「私達はお願いをしています。」
「お願い?」
「ええ、小さなレディを御守りさせていただく誉れをお与えください。」
サディンとミハエルの言葉に、アイリスの頬が嬉しそうに緩む。その視線は、ゆっくりとミハエルの肩辺りを見つめると、どうやら大人しく猫のふりをすることに決めたらしいサリエルを見て、目を輝かせた。
「いいわ、お供してちょうだい。あと、猫ちゃんを触らせて?」
ぎょっとしたサリエルが、獅子の尾の先端を膨らませる。助けを求めるような顔でミハエルを見ると、その背後で金色の目を光らせて無言の圧を送りつけるサディンを目にして、きゅぅっと口を噤む。どうやらサリエルの中でなにかの打算が働いたらしい。
「に、にゃー…」
「あら、貴女もご挨拶ができるのね。」
「うに、ぐうう…」
おのれミハエル。サリエルを抱き上げてアイリスに手渡した愛し子に、サリエルが信じられないものを見る目で見上げる。ミハエルは口パクで我慢ですよ!と伝えると、ぎゅうぎゅうと抱きしめて頬ずりをするアイリスに、声のない悲鳴を上げた。
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