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闖入者
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ああ、俺はここで生を終えるのか。
シグムントは、目の前に現れた人間界の男に剣先を向けられながら、そんなことを思った。
今日は特に何もない、いつも通りの一日であった。朝起きて湯浴みをし、朝食を取ってからは執務をした。
午後からは水妖たちに管理を任せている水源へと視察に行くつもりだった。予定が終わったら、庭の手入れでもしようか。そんなささやかな趣味にかける時間を楽しみに、シグムントは残りの執務に取り掛かろうとした。
人間の男が来たのは、丁度その時だ。俄に階下が騒がしく、侍従が見て参りますと部屋の外に行こうとした時、執務室の扉が綺麗に四等分された。
ただの板になった扉を、重そうなブーツが踏みつける。随分と軽装備で現れた人物を前に、シグムントは美しい男だなと思った。
滑らかな黒髪は硬質な光沢を放っていた。瞳の色は、シグムントと同じ銀灰の瞳。切長の、形のいい瞳だ。己の眠そうな二重とは違う。惜しむらくは顔立ちが整っているのに、やけに疲れた顔をしているということか。
初めましての挨拶を交わすように、目の前の男は真っ直ぐにシグムントを見据える。その瞳が細まったのを見て、漸く目前の男が招かれざる客なのだと認識した。
「てめえに恨みはないが、俺の安寧の為に死んでくれ、魔王」
「………」
男は、感情の抜け落ちた顔でそう口にした。青く光る冷たい剣先で細い頤を掬い、シグムントの顔を上げさせた。
滑らかな銀の髪が、さらりと一房零れ落ちる。シグムントの髪は剣の一部かのように、やけに馴染んだ。
目の端では、今にも死にそうな顔で侍従が壁に張り付いている。それだけ、この部屋には並々ならぬ緊張感が満ちていた。深夜の国でも目を見張るような魔力量を持つ人間の男の瞳は、なんの感情も宿してはいない。これは作業の一つなのだろうなあと、他人事のように思った。
決して気を抜いていたわけではない。しかし、侍従を気に掛けたシグムントが男から視線を外してしまったから。男の鋭い瞳が侍従を射抜いてしまった。
「……下手な動きを」
か細い悲鳴をあげる侍従へと、男は牽制をするように口を開いた。
ああ、余計な気を回したせいだ。シグムントは申し訳なさそうに眉を下げる。
命の審判の決定権を男に握られていることは、未だ変わりはないはずである。しかし、シグムントは怯える侍従へ微笑みかけると、再び男を見上げて口を開いた。
「彼は最近、子供が生まれたのだ」
「……子供?」
シグムントは男から決して目を逸らさなかった。
本質は理知的なのだろうか。男の目が、値踏みするようにシグムントを見る。それとも、魔族の言葉に耳を傾ける愚か者なのだろうか。そろそろ覚悟を決めないと、執務室に宰相が駆けつけたら余計に大事になってしまう。
冷たい刀身に視線を移す。白磁の手が、手入れの行き届いた剣先を掴んだ。男が振り払えば簡単に解ける程度の力で握りしめた刀身は、どうやらとても切れ味がいいらしい。青く光る刃紋を辿るかのように、刃先へと、シグムントの赤い血が伝う。
「彼は、子を育てねばならない。だからお前の剣が吸う血は、俺のものだけだ」
怯えを悟らせない、凛とした声だった。
少しだけ口角が上がっているのは生まれつきだ。魔王にしてはあまりにも幼く見えるシグムントの美しい顔立ちが、微笑みかけるように男を見つめる。その体躯は、随分と小柄だった。剣を伝う赤が、男の手に辿り着く。
「……赤い」
「俺達も、皆一様に血は赤い」
剣は、シグムントの手によって誘導されるかのように薄い胸へと運ばれた。切先が心臓へと向かい、しかし迷うように再び首元へと位置を戻される。
読めないシグムントの行動に、男は眉を寄せた。年下にも見えなくはない美しい容貌を前に、何を考えているのか理解に苦しむといったように。
「何をする気だ」
「心臓を突き刺されるよりも、首を落とされる方が苦しくないだろう。君、一息にとってくれよ。俺は痛いのが得意ではないのだ」
「……自殺志願者かよ。変わってんな」
シグムントの瞳が、侍従へと向けられる。
守られるべき魔王の命を捨てて逃げろとでもいうのだろうか。男はシグムントの行動に意外そうな表情を浮かべた。
魔王なのに、らしくない。まるで人間のように振る舞うシグムントの行動を前に、戸惑ったという方が正しい。
「早くしてくれ。人の子。俺は足掻かぬ。死ぬ間際まで疲れたくはないからな」
「……なあ、怖くないのか」
「怖いよ。怖いが、人もそうやって怖いと思って我らを見るのだろう」
人間が魔物や魔族を怖がることは知っている。人にとって、それらは悪だ。シグムントは特に何もしていないが、もし今生に心残りがあるとすれば、もっと早く和平を繋ぐ為に、動けばよかったなと思う。
「わかった。ならてめえが怖がらなくていいように、眠らせてから首を切る。それでいいな」
「人間にとっては忌むべき存在なのに、そんなに優しく殺してくれるのだな」
「俺の都合をてめえに押し付けるんだ。これくらいはいいだろう」
「人の子、俺の首が意味を成すなら、好きに使うといい」
シグムントの額に、男の乾いた指先が触れた。これから殺す相手だというのに、随分と優しい手つきで笑いそうになってしまった。
「おやすみ、魔王。俺はイザルだ」
「イザル」
そうして、深い眠りへと堕ちていった。抵抗すらしなかった魔王シグムントを前に、イザルがなにを思ったのかはわからない。ただ、目の前で崩れた華奢な体を抱き止める手は、迷わずに動いていた。
薄情なことに、侍従はシグムントが眠りについた時にはすでに逃げたらしい。肉の少ない軽い体を、そっと床に横たえる。イザルの手は、白い手のひらから伝う赤に吸い寄せられるように伸びていた。
「……血が、赤い」
剣先を恐れずに握ってきた手は、随分と小さかった。細い指にはペンだこができ、手の縁もインクで汚れている。あかぎれもしているし、少しだけ乾燥気味だった。
てっきり、イザルはやり返してくるものだと思っていた。実際は、一息で命を刈り取ってもらえる場所を探していたというから皮肉がすぎる。
白く、透き通った頬に触れる。シグムントの頬は、想像以上に暖かかった。手のひらとは違い、水々しく張りがある。
すうすうと寝息を立てながら眠る中性的な美貌を見つめていたが、イザルは事を成すことにしたらしい。ゆっくりと立ち上がると、剣先を下に構え両手で持ち上げた。剣がわずかに反射して、シグムントの首元に光を散らす。
「ああ、似てるな……」
それは、イザルが初めて台座から聖剣を引き抜いた時とよく似ていた。真逆のことを今からしようとしているのに、なぜそれが今頭をよぎったのか。掠れた声で自嘲した。そして、その鋒を一気にシグムントへと突き立てた。
わずかに生じた風圧で、白銀の髪が散らばった。断面からは蛍のように薄ぼんやりとした光の残滓が、逃げ場を求めるように天井へと向かっていく。
ゴトリと落ちた討伐の証であるそれを、イザルは乱雑にインベントリに突っ込もうとして、やめた。
「……なんで」
こいつが人間じゃないんだ。そう、思ってしまった。
もしシグムントが人間だったとしても、イザルが手にかけてしまったことには変わりないというのに。この、煮え切らない気持ちの理由がわからない。もしかしたら、浅ましい欲を貫き通すための材料としてしまった罪悪感。とでもいうのだろうか。
たとえこれが、今更な偽善だとしても構わない。ただイザルがそうするべきと決めたから、を大義名分にしてもいいだろう。
窓際に向かい、カーテンを引き千切った。討伐証明であるシグムントの一部を包んで立ち上がると、引き寄せられるようにバルコニーへと続く扉を開く。
外には、魔王城には似つかわしくない花の鉢植えがいくつか置いてあった。
丁寧に世話を焼かれていたのだろう。人間界でも見慣れた野花が、みずみずしく咲き誇る。使い込まれたブリキの如雨露に、スコップ。魔界では見かけなかった栄養の詰まった土の袋が置かれている。
無意識に、イザルの手はバルコニーの欄干へと触れていた。見下ろした中庭にも、同じ花が植えられている。人の真似事をしていたのかはわからない。しかし、魔王の部屋の外では野花が植木鉢に移され、丁寧に世話を焼かれていたようだった。
魔界の空はずっと月灯のみの闇の世界だ。見下ろした中庭の花々は、何かを悲しむように下を向いていた。
「……なんでこいつだけ咲いてんだ」
植木鉢の花を手に持ったとき、俄かに執務室の外が騒がしくなった。逃げ出した侍従が、正しい働きをしたのかもしれない。
イザルは瞬時に着地点と決めていた断崖へと転移をした。手に持った花の存在を忘れたわけではないが、元に戻す機を逃してしまったのだ。
視界が開ける。針葉樹林が剣山のように生い茂った幻惑の森の向こう側。小さくなった魔王城を前に、イザルはシグムントの体を捨て置いた部屋を思い出すように振り返る。今思えば、魔王が住むにしては随分と質素な部屋であった。
仰々しい調度品に囲まれ、悪辣なる様を体現したかのような魔王。それが、イザルの住む太陽の国で広がった魔王という存在だ。
噂とは信用できないものだと思いもしたが、そもそも誰が流したかも存ぜぬ噂を信じ込んでいたのはイザルの方である。
魔界は赤土混じりの枯れた大地だ。イザルはブーツの靴底を擦り付けるかのようにして足跡を残すと、魔王城を再び視界へと収める。
塔には美しい三日月がかかっていた。ああ、月夜は魔界でもこんなに見事なのか。風流など気にもしないイザルがそう思うくらい、丸い月を背負う魔王城は美しかった。
シグムントは、目の前に現れた人間界の男に剣先を向けられながら、そんなことを思った。
今日は特に何もない、いつも通りの一日であった。朝起きて湯浴みをし、朝食を取ってからは執務をした。
午後からは水妖たちに管理を任せている水源へと視察に行くつもりだった。予定が終わったら、庭の手入れでもしようか。そんなささやかな趣味にかける時間を楽しみに、シグムントは残りの執務に取り掛かろうとした。
人間の男が来たのは、丁度その時だ。俄に階下が騒がしく、侍従が見て参りますと部屋の外に行こうとした時、執務室の扉が綺麗に四等分された。
ただの板になった扉を、重そうなブーツが踏みつける。随分と軽装備で現れた人物を前に、シグムントは美しい男だなと思った。
滑らかな黒髪は硬質な光沢を放っていた。瞳の色は、シグムントと同じ銀灰の瞳。切長の、形のいい瞳だ。己の眠そうな二重とは違う。惜しむらくは顔立ちが整っているのに、やけに疲れた顔をしているということか。
初めましての挨拶を交わすように、目の前の男は真っ直ぐにシグムントを見据える。その瞳が細まったのを見て、漸く目前の男が招かれざる客なのだと認識した。
「てめえに恨みはないが、俺の安寧の為に死んでくれ、魔王」
「………」
男は、感情の抜け落ちた顔でそう口にした。青く光る冷たい剣先で細い頤を掬い、シグムントの顔を上げさせた。
滑らかな銀の髪が、さらりと一房零れ落ちる。シグムントの髪は剣の一部かのように、やけに馴染んだ。
目の端では、今にも死にそうな顔で侍従が壁に張り付いている。それだけ、この部屋には並々ならぬ緊張感が満ちていた。深夜の国でも目を見張るような魔力量を持つ人間の男の瞳は、なんの感情も宿してはいない。これは作業の一つなのだろうなあと、他人事のように思った。
決して気を抜いていたわけではない。しかし、侍従を気に掛けたシグムントが男から視線を外してしまったから。男の鋭い瞳が侍従を射抜いてしまった。
「……下手な動きを」
か細い悲鳴をあげる侍従へと、男は牽制をするように口を開いた。
ああ、余計な気を回したせいだ。シグムントは申し訳なさそうに眉を下げる。
命の審判の決定権を男に握られていることは、未だ変わりはないはずである。しかし、シグムントは怯える侍従へ微笑みかけると、再び男を見上げて口を開いた。
「彼は最近、子供が生まれたのだ」
「……子供?」
シグムントは男から決して目を逸らさなかった。
本質は理知的なのだろうか。男の目が、値踏みするようにシグムントを見る。それとも、魔族の言葉に耳を傾ける愚か者なのだろうか。そろそろ覚悟を決めないと、執務室に宰相が駆けつけたら余計に大事になってしまう。
冷たい刀身に視線を移す。白磁の手が、手入れの行き届いた剣先を掴んだ。男が振り払えば簡単に解ける程度の力で握りしめた刀身は、どうやらとても切れ味がいいらしい。青く光る刃紋を辿るかのように、刃先へと、シグムントの赤い血が伝う。
「彼は、子を育てねばならない。だからお前の剣が吸う血は、俺のものだけだ」
怯えを悟らせない、凛とした声だった。
少しだけ口角が上がっているのは生まれつきだ。魔王にしてはあまりにも幼く見えるシグムントの美しい顔立ちが、微笑みかけるように男を見つめる。その体躯は、随分と小柄だった。剣を伝う赤が、男の手に辿り着く。
「……赤い」
「俺達も、皆一様に血は赤い」
剣は、シグムントの手によって誘導されるかのように薄い胸へと運ばれた。切先が心臓へと向かい、しかし迷うように再び首元へと位置を戻される。
読めないシグムントの行動に、男は眉を寄せた。年下にも見えなくはない美しい容貌を前に、何を考えているのか理解に苦しむといったように。
「何をする気だ」
「心臓を突き刺されるよりも、首を落とされる方が苦しくないだろう。君、一息にとってくれよ。俺は痛いのが得意ではないのだ」
「……自殺志願者かよ。変わってんな」
シグムントの瞳が、侍従へと向けられる。
守られるべき魔王の命を捨てて逃げろとでもいうのだろうか。男はシグムントの行動に意外そうな表情を浮かべた。
魔王なのに、らしくない。まるで人間のように振る舞うシグムントの行動を前に、戸惑ったという方が正しい。
「早くしてくれ。人の子。俺は足掻かぬ。死ぬ間際まで疲れたくはないからな」
「……なあ、怖くないのか」
「怖いよ。怖いが、人もそうやって怖いと思って我らを見るのだろう」
人間が魔物や魔族を怖がることは知っている。人にとって、それらは悪だ。シグムントは特に何もしていないが、もし今生に心残りがあるとすれば、もっと早く和平を繋ぐ為に、動けばよかったなと思う。
「わかった。ならてめえが怖がらなくていいように、眠らせてから首を切る。それでいいな」
「人間にとっては忌むべき存在なのに、そんなに優しく殺してくれるのだな」
「俺の都合をてめえに押し付けるんだ。これくらいはいいだろう」
「人の子、俺の首が意味を成すなら、好きに使うといい」
シグムントの額に、男の乾いた指先が触れた。これから殺す相手だというのに、随分と優しい手つきで笑いそうになってしまった。
「おやすみ、魔王。俺はイザルだ」
「イザル」
そうして、深い眠りへと堕ちていった。抵抗すらしなかった魔王シグムントを前に、イザルがなにを思ったのかはわからない。ただ、目の前で崩れた華奢な体を抱き止める手は、迷わずに動いていた。
薄情なことに、侍従はシグムントが眠りについた時にはすでに逃げたらしい。肉の少ない軽い体を、そっと床に横たえる。イザルの手は、白い手のひらから伝う赤に吸い寄せられるように伸びていた。
「……血が、赤い」
剣先を恐れずに握ってきた手は、随分と小さかった。細い指にはペンだこができ、手の縁もインクで汚れている。あかぎれもしているし、少しだけ乾燥気味だった。
てっきり、イザルはやり返してくるものだと思っていた。実際は、一息で命を刈り取ってもらえる場所を探していたというから皮肉がすぎる。
白く、透き通った頬に触れる。シグムントの頬は、想像以上に暖かかった。手のひらとは違い、水々しく張りがある。
すうすうと寝息を立てながら眠る中性的な美貌を見つめていたが、イザルは事を成すことにしたらしい。ゆっくりと立ち上がると、剣先を下に構え両手で持ち上げた。剣がわずかに反射して、シグムントの首元に光を散らす。
「ああ、似てるな……」
それは、イザルが初めて台座から聖剣を引き抜いた時とよく似ていた。真逆のことを今からしようとしているのに、なぜそれが今頭をよぎったのか。掠れた声で自嘲した。そして、その鋒を一気にシグムントへと突き立てた。
わずかに生じた風圧で、白銀の髪が散らばった。断面からは蛍のように薄ぼんやりとした光の残滓が、逃げ場を求めるように天井へと向かっていく。
ゴトリと落ちた討伐の証であるそれを、イザルは乱雑にインベントリに突っ込もうとして、やめた。
「……なんで」
こいつが人間じゃないんだ。そう、思ってしまった。
もしシグムントが人間だったとしても、イザルが手にかけてしまったことには変わりないというのに。この、煮え切らない気持ちの理由がわからない。もしかしたら、浅ましい欲を貫き通すための材料としてしまった罪悪感。とでもいうのだろうか。
たとえこれが、今更な偽善だとしても構わない。ただイザルがそうするべきと決めたから、を大義名分にしてもいいだろう。
窓際に向かい、カーテンを引き千切った。討伐証明であるシグムントの一部を包んで立ち上がると、引き寄せられるようにバルコニーへと続く扉を開く。
外には、魔王城には似つかわしくない花の鉢植えがいくつか置いてあった。
丁寧に世話を焼かれていたのだろう。人間界でも見慣れた野花が、みずみずしく咲き誇る。使い込まれたブリキの如雨露に、スコップ。魔界では見かけなかった栄養の詰まった土の袋が置かれている。
無意識に、イザルの手はバルコニーの欄干へと触れていた。見下ろした中庭にも、同じ花が植えられている。人の真似事をしていたのかはわからない。しかし、魔王の部屋の外では野花が植木鉢に移され、丁寧に世話を焼かれていたようだった。
魔界の空はずっと月灯のみの闇の世界だ。見下ろした中庭の花々は、何かを悲しむように下を向いていた。
「……なんでこいつだけ咲いてんだ」
植木鉢の花を手に持ったとき、俄かに執務室の外が騒がしくなった。逃げ出した侍従が、正しい働きをしたのかもしれない。
イザルは瞬時に着地点と決めていた断崖へと転移をした。手に持った花の存在を忘れたわけではないが、元に戻す機を逃してしまったのだ。
視界が開ける。針葉樹林が剣山のように生い茂った幻惑の森の向こう側。小さくなった魔王城を前に、イザルはシグムントの体を捨て置いた部屋を思い出すように振り返る。今思えば、魔王が住むにしては随分と質素な部屋であった。
仰々しい調度品に囲まれ、悪辣なる様を体現したかのような魔王。それが、イザルの住む太陽の国で広がった魔王という存在だ。
噂とは信用できないものだと思いもしたが、そもそも誰が流したかも存ぜぬ噂を信じ込んでいたのはイザルの方である。
魔界は赤土混じりの枯れた大地だ。イザルはブーツの靴底を擦り付けるかのようにして足跡を残すと、魔王城を再び視界へと収める。
塔には美しい三日月がかかっていた。ああ、月夜は魔界でもこんなに見事なのか。風流など気にもしないイザルがそう思うくらい、丸い月を背負う魔王城は美しかった。
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