[改稿版]これは百貨店で働く俺の話なんだけど

だいきち

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 どうしよう。
 旭は、熱が気化して感覚が鋭敏になった胸元を、柴崎の髪でくすぐられながら、そんなことを思った。
 時折、唇でそこを挟まれるのだ。部屋に響く小さな水音も含まって、この状況が旭の熱を上げていく。
 唇が離れて、愛撫を惜しむように銀糸が柴崎の唇と繋がった。
 体温が離れ、ゆっくりと体を上げた柴崎が、上半身を赤く染め上げた旭を見下ろした。
 
「やばいかも。」
「…も、うるさい、」
「うん、素直でごめんな。」
 
 旭の濡れた声に、柴崎の目元が柔らかく緩む。薄くついた腹筋に手を添えるようにして、柴崎がその筋を指先でなぞる。
 少しだけ汗ばんだ体が、己の愛撫によるものだとわかるだけで、こんなにも嬉しい。
 
 肩で呼吸をしている。旭の首筋と肩口につけた鬱血痕は、きっと気づかれたらこっぴどく怒られるに違いない。両手で覆えるほどの細い腰は目に毒だ。下肢は如実に反応を示し、それが柴崎の征服欲を煽るのだ。
 
 くい、と指先に引っ掛けるようにして、旭のボトムスのウエスト部分を緩く引く。それだけで意味がわかったようで、薄い腹がひくんと震えた。
 
「いい?」
「…い、い。」
 
 たった二文字の肯定だ。それだけで、柴崎は微炭酸に包まれたかのような、そんなふわふわとした喜びで満たされる。
 二回目。まだ、旭の肌に触れるのは二回目なのだ。
 最初の一回目から、すれ違いの日々を送っていたので、随分と日が空いている。きっと旭の体には負担が大きいだろう。そんなこと、頭ではわかっているつもりなのに、まるで己が童貞にでもなってしまったかのように、欲が前に出てしまう。
 怖がらせたら、三回目はないかもしれない。そんなことを思っていれば、旭の手が緩々と上がって、柴崎の腕に触れた。
 熱い掌が肘のあたりを握る。引き寄せようと緩く力を入れたことに気がついて身を寄せれば、消え入りそうな声で言われた。
 
「恥ずかしい、から、く、くっついてて、ほし…」
 
 旭の細腕が柴崎の背に回って、そんなことを主張された。
 なんだそれ、ずるいだろう。そんなこと言われたら、こっちだって込み上げてくるものがある。
 
「…おま、…うん、…」
「かお、こわいよ…?」
「自覚してる…。」
 
 堪えているから、表情がえらいことになっていると言うのは、自覚している。
 首の後ろに回った旭の腕に応える。そっと互いの頬を重ねるように摺り寄せると、柴崎は指先だけで旭のボトムスの前をくつろげた。
 薄い腹にぴたりとそうように、ボクサーパンツが侵入の邪魔をする。
 旭の反応を見ながら、腹を撫でるように下着の隙間から手を侵入させた。
 
「あ、っ」
「…ちょっと、お前堪えてて…」
「ご、ごめ、」
「違う、…乱暴に、したくないから。あんま煽んないで。マジで。」
「へ、」
 
 絞り出すような、そんな声であった。
 よく見れば、柴崎のこめかみには何かを堪えるために力んでいるらしい、血管がほのかに浮いていた。
 旭は、そんな表情を己がさせているのだとわかった途端、またひとつ心臓を跳ねさせる。
 
「…も、一息に…やって、心臓、持たない…」
「だから、お前、本当に…」
 
 ぐう、と妙な声を漏らしながら、柴崎が項垂れる。震える膝を立てれば、確かに興奮している柴崎の熱いものがあたり、小さく息を呑む。
 嬉しかった。旭の薄い体にこうして欲情を示す度、柴崎が己に対して思ってくれているという、その事実が嬉しかった。
 だから、旭は思ったのだ。
 柴崎のせいで、体を女にされてもいいか、と。
 だって、これは不毛だ。孕むわけでもない。愛が形になることはなくて、傷の舐め合いのように互いを労わりながら、実らぬ愛を育む行為だ。
 柴崎は上等な男だ。女だってたくさん抱いてきたのだ。旭は、そんな柴崎が愚かしくも己にこうして欲情をするのを嬉しいと思っている。だから、柴崎が旭に女を求めるのなら、柴崎の望む雌になろうと思ったのだ。
 尻込みする前に、さっさと作り替えてほしい。この体に柴崎を教え込んで、旭を上等な雌にして欲しかった。
 
「早く、も、なんでもいいから、」
「くそ、んとに…、ああ、もう…!」
 
 荒々しい声と共に、ぐっと抱き寄せられた。柴崎の手はそのまま下履きの隙間から差し込まれ、濡れた性器の硬さを確かめるかのように握り込まれる。先走りに塗れたそこは、ぬるつくそれが尻の間にまで垂れていた。
 
「すげ、…俺で、こんなんになってんの、お前。」
「柴崎、さ、っ…」
「名前で呼んで、なあ。理人。」
「ふ、…っ」
 
 ちゅ、と可愛らしいリップ音を立てて、柴崎が唇を食む。旭はそれに応えながら、にゅくにゅくと摩擦される己の性器への刺激に、内股を震わしていた。
 
「せ、せい、や…さん、」
「うん、」
「せい、やさ、ん…っ…」
 
 ちゅくん、と先端を強く擦られた。目の前で光が弾けて、腰が震えた。漏れ出た悲鳴が舌で受け止められると、旭は腰を震わせながら、柴崎の手の中に長い射精をしてしまった。
 
「っ、…っぁ、あは、っ…ぁ、あ…」
 
 はあはあと荒い呼吸を繰り返す。長距離を全力でかけ抜けたかのような疲労感と、脳が溶けてしまうんじゃないかと言うくらいの性感。
 柴崎の指の隙間から、白い精液が滲む。それだけ出したのだ。柴崎はくたりと身を投げ出した旭の目元に口付けると、ゆっくりとそれを尻の合間に塗りつけた。
 
「俺の名前呼んでイくのも、狡い。」
「ひぅ、っ…ぁ、うそ、っ…」
「ここに入れるから、解さねえと。」
 
 にゅくにゅくと塗りつけられ、時折手慰みのように袋も揉み込まれる。旭は腰を跳ねさせると、柴崎は汚れていない方の手で腰を掴んで引き寄せた。
 
 
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