なんだか泣きたくなってきた

金大吉珠9/12商業商業bL発売

文字の大きさ
73 / 273

君へのギフト

しおりを挟む
「という話があったのだ。」
「お前のクラスメイト愉快だな。」

所変わって俊くんちである。
最近は忍さんが仕事のときにお邪魔して一緒に過ごすことが多い。けして爛れたひとときを過ごしてるばかりじゃないぞ!なんてったってまだ3回しかしてないしな!何をって、言わせんな恥ずかしい。

俊くんは眼鏡をかけてパソコンで調べ物中だ。何やってんのか気になるけど邪魔するのも嫌なので僕は何故かそこらへんにあったチラシで折り紙をしながら先程の会話をしていたのである。

「そんでね?なんと益子は知らんまに童貞を脱していたらしい。やっぱ忽那さんとしたのかなぁ。」
「忽那さん?彼女でもできたのか。」
「うんにゃ、僕と同じ。」
「ああ、番…」

珍しく俊くんが興味深い顔をして聞き返してきたので、忽那さんが益子とどういう出会いをしたのかもかんたんに話した。マジもんのラブロマンスだ。

「なるほど、益子の言う近所のえっちなお兄さんは存在したのか。」
「そー、しかも写真舘しながらどっかの大家さんも兼ねてるらしい。めちゃ綺麗な人だよ。」
「へぇ、益子も頑張んねーとな。」

俊くんが眼鏡を外してパソコンを閉じる。どうやら調べ物も一段落したらしい。コピーしないのか聞いたらブクマしたので必要ないらしい。
僕もスマホを見ながら折ったザリガニを完成させたばかりだったのでちょうどよかった。なんとなく写メって益子と学に送っておいた。特に意味はない。

「んで、なんか話あるとか言ってなかったか?」
「童貞非処女やだ!脱童貞したい!」
「直球だな、なんでまたそんなこと思ったんだ…」
「益子が童貞じゃないからなんかくやしい。」

スンっとした顔で見つめると、呆れたようなため息をつかれた。それを言うなら益子だって処女だろうとか言ってたけど、それは想像できないというか、したくないのでまるっと聞かなかったふりをする。

「大体俺は抱かれるつもり無いぞ。」
「なんっで!?」
「逆になんで?」

うちの晃だって僕と同じで童貞非処女は嫌だとか言って本職のお姉さんに筆おろししてもらったとか言ってたのに!!正し結婚前、高校卒業してからきちんと吉信を説得したらしい。
ちなみに本職のお姉さんにも事情を説明したら大層笑われて、クソ真面目なイケメンオメガの筆おろしは取り合いになったとかならなかったとか。
おかんはたまにその時のことを楽しそうに振り返るけど、そのお姉さんと年賀状のやりとりしてるのは流石に面白すぎた。今やその人は2児の母らしい。
その日の夜にめちゃめちゃ死ぬ思いをしたと言っていたが。付いてるもん使わないのはもったいないだろうとか男らしい理由を言っていた。

「だからうちの晃だって非童貞なんだよぉ!」
「年賀状やばいな。さすが晃さん、まじで律儀すぎてやばい。」
「ちなみにお歳暮も送ってるぞ。」
「いやもうどこから突っ込んでいいのか。」
「僕も突っ込みたい!」
「やかましいわ。」

うわん!と泣いたふりをしても通じない。ぐぅ、むしろべチリと頬を両手で挟まれた。僕はどうせなら前も後ろも俊くんで始まって俊くんで終わりたいのである。おはようからおやすみまでも俊くん。なにそれ最高かよ。

「わかったわかった。だけど流石に本職のお姉さんに相手してもらうのは同意できん。」
「いれさせてくれるのぉ!?」
「阿呆。まあ考えがある。忍もそのへんで親父と揉めたらしいしな。なんかアドバイスは聞いてくるよ。」
「忍さんも男の子だもんなぁ…」

やはり、男オメガの脱童貞は死活問題である。学とかそこんところどうなんだろ。忽那さんがもしおなじ気持ちだったら益子は素直に尻を差し出すのだろうか。やめよう、ちょっと甘納豆のイメージが強すぎて笑う。

僕が期待に胸を馳せている中、まさか俊くんのスマホでリアルタイムに正親さんに連絡を入れているとは知らず、僕の脱童貞への野望を吉信にも知られることとなる。そして正親さんと吉信がアルファの心の安寧のために選んできた恐ろしいラブグッズが僕あてに届いて悲鳴を上げることとなるとは、このときの僕も、頼んだ俊くんでさえ思わなかったのである。











「なんだこれ。」

みかんの箱に高さを足したような長方形の紙のダンボールが僕あてに届いた。右から見ても、左から見てもまっさらなきれいな茶色である。ダンボールの表面からは何が送られてきたのか全くわからず、晃になんか頼んだかと聞いても知らんといわれた。

「化粧品…?」

送り状に記載されている文字にはそう書かれていた。これはもしかして世に言う詐欺なのだろうか…送りつけ商法とかなんとかニュースでやってた気がする。
重さはそこまでじゃないけど、何が入っているかわからないので、とりあえずリビングの端っこに置いとこう。触らぬ神になんとやらだ、こういうのは吉信に任せるに限る。

「トイレットペーパーストックするのにちょうど良さそうな箱だな…」
「えー?開けたら支払うことになるかもしれんじゃん。僕こんなの頼んでないし。」

オカン的にちょうど良さそうな箱の大きさだったようで物欲しそうに見つめている。そういや最近ライフハックにはまってたね、入れるのかこの箱に、むき身のトイレットペーパーを。

「なら吉信に聞こ。」

スマホで吉信に連絡を取るオカンを横目に、早々に興味をなくした僕は牛乳パックをはさみで長方形に切る。魚とか切るときにまな板を汚したくないらしいオカンが思いついた牛乳パックストックである。ものぐさが進化してエコロジーになっている。

「あ、そうなんだ。俺も使っていいって?化粧品って書いてあったけど?」

ちょきちょきとハサミでパックを切りながら聞き耳を立てる。なにやらオカンとシェアしてもいいらしい。なんだ、シャンプーとかか?よくわかんないけど悪いものじゃなさそうで、そうとなるとやっぱり気になってしまい再びすみに押しやった箱を見た。

なんとなくシンプルながら存在を主張するその箱。
通話を切ったオカンと目を合わせると、開けてみろとジェスチャーされた。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭

アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?

モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。 平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。 ムーンライトノベルズにも掲載しております。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

獣人王と番の寵妃

沖田弥子
BL
オメガの天は舞手として、獣人王の後宮に参内する。だがそれは妃になるためではなく、幼い頃に翡翠の欠片を授けてくれた獣人を捜すためだった。宴で粗相をした天を、エドと名乗るアルファの獣人が庇ってくれた。彼に不埒な真似をされて戸惑うが、後日川辺でふたりは再会を果たす。以来、王以外の獣人と会うことは罪と知りながらも逢瀬を重ねる。エドに灯籠流しの夜に会おうと告げられ、それを最後にしようと決めるが、逢引きが告発されてしまう。天は懲罰として刑務庭送りになり――

【運命】に捨てられ捨てたΩ

あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

処理中です...