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2章

教えてえろい人 *

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生徒会長としての任期が終わり、学に呼び出された末永は悲鳴をあげていた。もちろん、これは声に出さない悲鳴と言うやつで、静謐な生徒会室の雰囲気を壊さないように配慮されたものだった。

むしろ、静謐な生徒会室の雰囲気に配慮してくれない恋人を前にして、末永ができることはそれだけだったからだ。

「俺ら、そろそろここは入れなくなるだろ。だから思いで作ろーぜ?」

そういって吉崎学は生徒会長席の机に腰掛けて、まるで天使が降臨されたしといった具合の美しい顔で微笑んだ。そよぐ風に遊ばれるカーテンと、窓から降り注ぐ陽光が祝福の光のように見える。主は来ませり、この場合の主とは末永にとっては学を差す。

「思い出?」
「そう、ずっと真面目くさって運営してきたんだ。ちょっとくらいしようぜ?悪いコト。」
「悪いコト。」

頭の処理が追いつかないと、言葉をオウム返ししてしまう癖をなんとかしなくてはならない。学はバカみたいで可愛いと気に入ってくれているが、人によっては腹が立つに違いない。末永は忙しい思考の中で、不意にそんなことを思った。それが現実逃避の一つだということに気がつく前に、行動を起こしたのは学だった。

「洋平、こっちきて。」

末永に向かって両腕をひらいた姿に、真面目な生徒会長様はお望み通りにそっと学近づくと、その小柄な体を抱きしめた。
末永の腰に回った足が、がしりと腰をホールドしたとき、学が何をしたいのかを理解した。

「シよ、ここで。」
「え、っ」

ご機嫌にニッコリと笑った学は、絶句する末永のネクタイを引っ張るとその唇に口付けた。





「っ、おまえ…よ、用意周到過ぎやしないか…」
「ん、っ…らって…、ひたいっていっへは…ん、ふ…」
「そ、こでしゃべるな…!」

椅子に座らせた末永の足の間を陣取り、ちゅぽ、と耳を塞ぎたくなるようなやらしい水音をたてながら、学がその小さな口で末永の性器を愛撫する。
確かに、聞かれたことがある。どんなシチュエーションものが好きなのかと。
その時は深く意味も考えず、その前の会話も好きなこと二人きりになるとしたら、という前提が付いていたので、末永は純粋に最近読んだ小説で出てきた密室の部屋で二人きり、のシーンを思い出したに過ぎなかったのだ。

ーー二人しかいない空間で、ってのはドキドキするな。
ーーふうん?生徒会室でもいいの?
ーーお前と一緒なら、どこだっていいさ。
ーーん、わかった。

回想を終えたとき、末永の思考は何でこうなった、という疑問で支配された。確かに、なんで具体的に生徒会室というワードが出てきたのかは疑問に思った。ただ、よく二人で居残りをしてた場所だということもあったので、その時は深く考えなかったのだ。

その結果がこれである。

ぬぷ、ちゅ、くち、今だ下半身は最高に気持ちがいい。それもそうだ、早業で末永を生徒会長の椅子に座らせたかと思うと、あっけにとられた末永を完全に置いてけぼりにして、あろうことかくわえたのである。
いつも突拍子もないとは思っていたが、ここまで突拍子もないと最早仕様なのではと疑ってしまう。

「ふ…、んん、む、ふぁ…」
「うぁ、っ…、ばかやろうっ」

学と行為を重ねてわかったが、この恋人はフェラチオが好きなようだ。

いわく、そこしか勝てるところはなさそうだから、
とのことだが、そもそも勝負だってしていない。ごきげんな学は、この空間での行為を俺がしたいって言ったから、というが、末永の中でのシチュエーションで行う行為にこれは入っていなかった。

「っ、あ、甘い…ひとときを、すご、す…だけじゃないのか…っ!」
「んぶ、っ…ふごひへぅゃん…ちゅ、ふは…」
「これは解釈違いだっっ」

人の居ない生徒会室で、学を膝に乗せてたくさんキスして甘やかしたかっただけなのに。
ちょっとだけやらしい雰囲気になったらいたしてしまうかもしれない。だけどこんな小悪魔みたいな学と最初から背徳の行為にふけるなどとは思っていなかった。

「んぅ…、らって…誕生日だろ。」
「誕生日…!?」
「だから、お、俺がプレゼント…的な?」

どうやら誕生日だった末永に、学からのサプライズプレゼントということらしい。大方片平に相談して学をあげたら?とでも言われたのだろう。番の事以外適当な部分があるやつだ。絶対にそうに違いない。許さん。俺の知らないところで学を間接的に支配するなと思うが、少しの嫉妬もあるかもしれない。

花も恥らうとか、こんな時に使っていいのかわならないが、とにかくその整った容貌で照れられると堪らない。凄く可愛いのだが、性器を舐める前にしてくれないかと思った。末永の太いそれを握る小さい手、それだけでも興奮するのに、そんな顔して顔を赤らめられると先程の小悪魔はどこに消えたのかと思う。

「ぷぁ、っ…すげ…がちがち…」
「それは、っ…仕方ないだろう…」
「ふふ、仕方ねぇんだ…」

嬉しそうに笑いながら性器に頬を擦り寄せる。学の顔ほどの長さのそれを、最近はゆっくりとだが全て収められるようになってきたのだ。
びきりと脈打つ血管を、舌先でちろりとからかうように舐められる。

「据え膳ってやつ?早く食わねーの?」
「だから、そういうのはお前が言うな…」
「頭でっかち。こーんなにぶっとくしといてよくいうわ。」
「…お前、さっきの恥じらいはどこにいった?」

そんなもん、ティッシュにくるんで捨てたわと宣う。目の前でスラックスをぱさりと床に落とし、ボクサー姿になった学はその白い太腿で末永の膝にまたがると、プチプチと、目の前でシャツのボタンを外し始める。

一度、二度とセックスを繰り返してわかった。学はこういうことが好きだ。しかも、いざ始めると快感が強過ぎる余り嫌だ止めて怖いときゃんきゃんと泣く。自分がどんなふうに乱れるかいい加減わかってもらいたい。
主導権はあくまでも自分がいいらしい。同じオメガの片平の尻を狙っていたこともあるせいか、男らしさにとことんこだわる癖に、攻めすぎると子供のようにわんわんと泣くのだ。

非常に面倒くさい正確だというのがわかったのに、いかんせんそれに強い興奮を覚えてしまう。
末永は自分自身変態だと思ったことはないのだが、この恋人のせいでその自信もなくなってきた。もちろん、友人であり、元恋敵のきいちからは末永くんって絶対ムッツリだよねぇ、と言われていることは知らない。学だけが知っているし、それを聞いて思わず同意した。

ふにり、と柔らかい尻が末永のボクサー越しの性器を優しく包む。どこで覚えてきたのか、焦らすようにふにふにと尻を押し付けながらシャツの前をはだけさせると、まるで手練のようにその薄い胸に末永の頭を抱き込んだ。

「ぅぶ…っ、」

身長差と、その他の事情で若干前屈みになる。学は楽しそうに尻で性器を押しつぶしながら、主導権を掌握したと言わんばかりの雄を出す。出ててもリスやハムスターくらいの威厳しかない。ようするに可愛いが渋滞しているのだが、末永の理性も渋滞した興奮と自制が血管を通して体に蓄積されていく。

もはや大人しくなってしまった末永の様子を疑問に思ったのか、学がその抱き込んだ顔を上げさせると、小さく悲鳴を上げた。

「ひぇ、…」
「絶対に、なかす。」

顔を赤らめて血管が切れそうなくらいに静かな怒りを称えた末永が、しっかりと学の腰を鷲掴む。
からかいが過ぎたと、自覚する頃にはもう逃げられなかった。
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