なんだか泣きたくなってきた

金大吉珠9/12商業商業bL発売

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2章

とろとろ *

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頭の中に、もったりとおもいクリームを並々と注がれたように思考が鈍る。あまくてふわふわして、とろとろと僕を馬鹿にさせてしまうその感覚はひどく久しぶりで、ずっと浸っていたくなる。

男らしい太い首や、隆起した腕の筋肉、厚みのある背中に腕を回してすがりつく。かすかに汗の匂いがした。

「や、だ、ぁ、あっ…も、わけ、わかんな…はう、ぅっ…」
「ん、いいよ…馬鹿になって、全部オレに見せて。」
「はぁ、あ、や、ぁっ…」

ごり、と硬い腹筋にはしたなく勃起した僕の性器が押し潰される。胸元は僕から滲んだそれと唾液でべたべたで、俊くんがさんざん甘噛みしたり舐めたりと虐めてくるせいで、先程から性感帯であることを思い出したかのようにぷくんと腫れ上がっている。

胸板がこすれる度に潰されると、それだけでもう声が、我慢することができない。

「だ、ぇ…っ、な、なぎ…おきちゃ、う…から、ぁ…っ」
「今の、興奮した…。」
「ばか、ぁ…!!」

首筋をあぐあぐと噛まれ、尻を揉まれる。擦り合わせるかのように火傷しそうなほど熱い俊くんの性器が僕のそこと擦れて、役目を忘れたそこがとろとろと情けないくらい沢山の先走りを零す。

挿入のない、ペッティングだけなのにこんなに気持ちがいい。俊くんの引き締まった腰に、思わず脚を絡めてしまう。
嬉しそうに細まった瞳に、僕の内側に灯る熱が揺らいだ気がした。

僕は、僕だけのアルファに征服されたいのかもしれない。強い力で引き寄せられる腰と、血管の走る腕。そっとなぞるように指でたどると、張り詰めた性器が擦り付けるようにして僕の蕾を往復する。
尻肉に当たる膨らんだ袋と乾いた音に、きっと入れたいんだろうと思う。

僕のお腹を心配して、必死でこらえてくれる俊くんの優しさが愛しくて、その顔を引き寄せて唇を合わせる。全部全部、くっついて、とけて、ひとつになれたらいいのに。

「ぁ、っ」

擦り合わせるように口付けた唇の隙間から声が漏れる。まるで飲み込むように俊くんが唇で塞いでくれても、感じ入ってしまった体はひどく従順で、揺らめく腰が俊くんの性器を求めてしまう。

「かわい、…」
「や、やだ…あ…」

かすれた声で囁かれると、総毛立つように甘い痺れが全身に走る。大きな手で触れられて、握られてこすられる。重なるように押し付けられた、俊くんの性器から溢れる先走りを塗りつけて、ぬちぬちと粘着質な水音が響く。
気持ちがいい、溶けちゃう、だらし無いくらいたまる唾液を飲み下す。僕の喉が動くと、嗜めるようにがぶりと首元を齧られる。寄越せと言われているのだろうか。

「は、あ、…きも、ちい…」
「寄越せ、全部。」
「ん、んく…っ…」

口の中に熱い舌が入ってくる。口の中に溜まった唾液を根こそぎ奪うようにぐちゅぐちゅと掻き回され、ジュル、と座れる。俊くんの喉が上下した瞬間、耐えられなかった僕の性器から滞っていた精液が情けない音を立てて弾けた。

「ふ、んん…ん、ン…っ、…」

ぶぴゅ、とドロリとしたものが脈打つ鼓動に合わせてどぷどぷと押し出される。久しぶりの射精は何も考えられないくらい気持ちよくて、震えて力が入らなくなった脚を抱えた俊くんが、まるで挿入したように僕の薄い茂みで俊くんの性器が摩擦されるように、ばつばつと腰を打ち付ける。
荒い呼吸を漏らす俊くんの熱いからだに縋り付きながら、僕もその行為にひどく興奮してがぶりと肩口に噛み付いた。

「う、っぁ…、」
「んん、ん、っ…」

ぶぷっ、と音がして、僕の性器に俊くんの精液がかけられる。ぬめりを帯びて白く凝ったそれを指で触れる。そのとろみが臍に流れるのを見つめた俊くんが、ぐるりと喉を鳴らした。
指に伝うそれを僕の唇にそっと塗りつけると、誘われるようにペショリと舐めた。

「にが、」
「くく、だろうよ…」

くっくっ、と喉奥で笑うと、形のいい唇を優しく緩めてそっと額に口付けをされた。
なんだかすごくドキドキして、このまま流されてしまうのかと思ったとき、まるで今まで空気を読んで我慢してましたと言わんばかりにえぐえぐと愚図りだした凪の声に、二人して現実に戻された。

「あ、」
「ちょっとまってろ。」

ティッシュで軽く拭いた俊くんが、下着とスウェットだけを身に着けてベビーベッドに向かう。遂に我慢できなかったのか、ついにふえええんと泣き出した凪を抱き上げると、はっとして振り向いた。

「やべえ。凪の分のこってるか?」
「え?凪の分…っ、」

なんのことだと思っていたら、さんざん弄られて濡れそぼっていたのを思い出す。さすがに授乳させるにも一度シャワーを浴びたほうがよさそうだ。二人分の色々な体液で濡れた体は、なんとも誤魔化しが聞かない。
俊くんによって母乳も悪戯に絞られた感が否めない、次からはご遠慮願わねば凪の空腹に繋がりかねない。
じわりと熱くなる体は、知らんぷりをした。

「の、残ってる…と、おもうけど…俊くんの後だとさすがにいたたまれないからシャワー浴びてくる…」
「お、おう…そ、そうだな。」

うんうんと頷く俊くんの頬も若干赤い。お互いのテンションが変な方向に上がりすぎたとはいえ、こんなことで凪を我慢させるのは申し訳ない。
おしゃぶりを取り出した俊くんが口元に運ぶと、一瞬泣き止んだものの、これじゃないとばかりにふにゃふにゃと泣く。

「な、なるはやで…」

俺があやせるうちにはやくシャワーを浴びてこい。そんな必死な目で見つめられ、少しだけ笑いそうになる。凪もうるうるの目で致し方なしと言わんばかりだ。
着るものだけ片手にぱたぱたと浴室に向かうと、いよいよ火をつけたように大泣きする凪の声と、俊くんの声なき悲鳴が聞こえた気がして、僕は大慌てでシャワーをあびたのだった。



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