56 / 228
第四章 俺様、西方に行く
7、この野郎、ちゃっかりしてやがる。
しおりを挟む
エミーリオは、オチデンが勇者を意図的に隠しているという俺の無理矢理な陰謀説を信じたようで、墓を暴くことを承諾してくれた。
何でも、このところ軍備拡張をしている様子があったらしい。それで、勇者が殺されたので暗黒破壊神の討伐に協力できないと言い、セントゥロの守備が薄くなったところで攻め込んでくるのではと考えたようだった。
「遺体があれば、聖竜様の仰る通り疑惑が一つ消えます。少なくとも、勇者を隠し戦争に利用しようとしているという疑惑が」
エミーリオの話だと、こちらの世界では土葬が一般的なのだという。
世界に満ちる暗黒破壊神の悪意に触れ蘇ったりしないよう、聖職者による祝詞と封印を施されて埋葬されるのだと。
つまり、処刑の段階で俺の天罰のように骨も残さず殺されたとかでなければ、埋まっているはず。
『大丈夫だ。万が一蘇っても、俺の天罰で骨も残さんよ』
「頼みますよ。これがバレたら自分は大罪人です」
墓を暴くというのは封印を破るということ。つまり、死者を蘇らせ人々を危険に晒すこと。
見つかると暗黒破壊神の信徒だとして処刑される可能性もあるのだと。
『ふむ、では、まずマジィアの司祭を抱き込むか』
「確かに、聖職者立ち合いのもとで死者を掘り起こすことはあります」
聖竜様がいるのだし、大丈夫ですね! と見事な手の平返し。
ようやく納得してくれたようだ。
そんな話をしているうちに、国境の砦が見えてきた。レンガ造りの要塞のような建物に、トンネルのようなものが隣接していて、武装した兵士らしき人間が二人立っている。
ここで身分証の提示と出入国の理由、犯罪の有無を申告し通行税を支払うのだという。
横をすり抜けられないよう恐らく国境沿いにずっと背の高い金属製の柵がどこまでも伸びていた。
多くの人や馬車が出国審査を受けるためここで並んでいる。俺達もその最後尾についた。
エミーリオは脱走兵だが、国王の好意で騎士団所属のまま俺の護衛兼付き人の扱いにしてもらっている。
俺達の、というかエミーリオの不穏な言葉を聞いて密告した人がいたようだが、騎士団の身分証とエミーリオの「噂話ですよ」というやたらキラキラした胡散臭い微笑で何の問題もなく通過できた。
『エミーリオ、あの関所の周りには何故街が発展していないのだ?』
普通、関所となればその行列目当てに行商人が集まり、夜間関所を抜けられない人を目当てに宿ができ、とだんだん街として発展してもおかしくないのだが。
「それはですね、あの関所は1年前にできたばかりだからですよ」
何でも、昨年までオチデンとは冷戦状態。国境の境界線は小競り合いの度に変わり街は侵攻拠点にされないよう打ち壊したらしい。
目視できる範囲に街は見えない。今日中に宿に辿り着くのは無理なようだ。
「まぁ、各国を巡るのであれば何度かは野営になりますよ」
『人の多い所は何かと落ち着かぬ。まだ3オーラであるし、もう少し進もう』
「はいっ!」
野営をするにしても、明るいうちに準備をするというものらしく。
先ほど関所を抜けたものが街道から外れ草を刈り石を積みあちらこちらで野営の準備をしている。
まだ昼日中だ。先を急ぎたいこともあり、俺達はさらに進むことにした。
そして1オーラ後。
街道の両脇にはすぐ傍に鬱蒼とした森が広がっており、周囲に人は誰もいない。
このような場所は視界が悪くモンスターが潜みやすいとして野営には向かないからだ。だが、そんなことは俺とエミーリオには関係がない。むしろ望むところだ。
「この辺りでよろしいでしょうか?」
強行軍しても良いのだが、じきに日が暮れる。
俺が頷いたのを確認して街道から逸れた。
エミーリオは手ごろな太い幹に馬を繋ぎ鞍と荷物を下ろすと石を組んで竈を作り始める。
『エミーリオ、少し辺りを散策してくる』
「はい、美味しい食材を期待してますね」
この野郎、ちゃっかりしてやがる。適当に食えそうな木の実でも探すか。
俺は風呂敷を持つと森の中に入った。
そして現在。
俺の足の下には何やらグネグネと動くきのこがいた。
「やめてー。やめてよぅ。俺は悪いエリンギじゃないよう。プルプル」
『悪くないということは美味いということであろう? 大人しく俺様の食事になるんだな』
喋るエリンギ。こんなものをエミーリオに食わせても良いのだろうか?
と思ったがそういや魔物を解体して食ってたな。じゃぁこれも大丈夫だろう。エリンギだし。
観念して俺の餌になりな、と噛みつこうとしたら、舌打ちしやがった。なんか腹立つ。
「バレてしまっては仕方ない! そう、俺は人畜無害な群馬県産食用キノコ! 煮て良し焼いて良し、俺的にはバター炒めがお勧めです!」
『ああ、確かにエリンギのバター醤油炒めは最高……って、群馬県産? お前もしかして転生者か?』
「お? このネタがわかるってことはお前も地球出身か?」
少し話をしようじゃないか、というきのこをエミーリオの待つ野営地へ連れて帰る。
きのこの語る内容はとても信じがたいものだった。
何でも、このところ軍備拡張をしている様子があったらしい。それで、勇者が殺されたので暗黒破壊神の討伐に協力できないと言い、セントゥロの守備が薄くなったところで攻め込んでくるのではと考えたようだった。
「遺体があれば、聖竜様の仰る通り疑惑が一つ消えます。少なくとも、勇者を隠し戦争に利用しようとしているという疑惑が」
エミーリオの話だと、こちらの世界では土葬が一般的なのだという。
世界に満ちる暗黒破壊神の悪意に触れ蘇ったりしないよう、聖職者による祝詞と封印を施されて埋葬されるのだと。
つまり、処刑の段階で俺の天罰のように骨も残さず殺されたとかでなければ、埋まっているはず。
『大丈夫だ。万が一蘇っても、俺の天罰で骨も残さんよ』
「頼みますよ。これがバレたら自分は大罪人です」
墓を暴くというのは封印を破るということ。つまり、死者を蘇らせ人々を危険に晒すこと。
見つかると暗黒破壊神の信徒だとして処刑される可能性もあるのだと。
『ふむ、では、まずマジィアの司祭を抱き込むか』
「確かに、聖職者立ち合いのもとで死者を掘り起こすことはあります」
聖竜様がいるのだし、大丈夫ですね! と見事な手の平返し。
ようやく納得してくれたようだ。
そんな話をしているうちに、国境の砦が見えてきた。レンガ造りの要塞のような建物に、トンネルのようなものが隣接していて、武装した兵士らしき人間が二人立っている。
ここで身分証の提示と出入国の理由、犯罪の有無を申告し通行税を支払うのだという。
横をすり抜けられないよう恐らく国境沿いにずっと背の高い金属製の柵がどこまでも伸びていた。
多くの人や馬車が出国審査を受けるためここで並んでいる。俺達もその最後尾についた。
エミーリオは脱走兵だが、国王の好意で騎士団所属のまま俺の護衛兼付き人の扱いにしてもらっている。
俺達の、というかエミーリオの不穏な言葉を聞いて密告した人がいたようだが、騎士団の身分証とエミーリオの「噂話ですよ」というやたらキラキラした胡散臭い微笑で何の問題もなく通過できた。
『エミーリオ、あの関所の周りには何故街が発展していないのだ?』
普通、関所となればその行列目当てに行商人が集まり、夜間関所を抜けられない人を目当てに宿ができ、とだんだん街として発展してもおかしくないのだが。
「それはですね、あの関所は1年前にできたばかりだからですよ」
何でも、昨年までオチデンとは冷戦状態。国境の境界線は小競り合いの度に変わり街は侵攻拠点にされないよう打ち壊したらしい。
目視できる範囲に街は見えない。今日中に宿に辿り着くのは無理なようだ。
「まぁ、各国を巡るのであれば何度かは野営になりますよ」
『人の多い所は何かと落ち着かぬ。まだ3オーラであるし、もう少し進もう』
「はいっ!」
野営をするにしても、明るいうちに準備をするというものらしく。
先ほど関所を抜けたものが街道から外れ草を刈り石を積みあちらこちらで野営の準備をしている。
まだ昼日中だ。先を急ぎたいこともあり、俺達はさらに進むことにした。
そして1オーラ後。
街道の両脇にはすぐ傍に鬱蒼とした森が広がっており、周囲に人は誰もいない。
このような場所は視界が悪くモンスターが潜みやすいとして野営には向かないからだ。だが、そんなことは俺とエミーリオには関係がない。むしろ望むところだ。
「この辺りでよろしいでしょうか?」
強行軍しても良いのだが、じきに日が暮れる。
俺が頷いたのを確認して街道から逸れた。
エミーリオは手ごろな太い幹に馬を繋ぎ鞍と荷物を下ろすと石を組んで竈を作り始める。
『エミーリオ、少し辺りを散策してくる』
「はい、美味しい食材を期待してますね」
この野郎、ちゃっかりしてやがる。適当に食えそうな木の実でも探すか。
俺は風呂敷を持つと森の中に入った。
そして現在。
俺の足の下には何やらグネグネと動くきのこがいた。
「やめてー。やめてよぅ。俺は悪いエリンギじゃないよう。プルプル」
『悪くないということは美味いということであろう? 大人しく俺様の食事になるんだな』
喋るエリンギ。こんなものをエミーリオに食わせても良いのだろうか?
と思ったがそういや魔物を解体して食ってたな。じゃぁこれも大丈夫だろう。エリンギだし。
観念して俺の餌になりな、と噛みつこうとしたら、舌打ちしやがった。なんか腹立つ。
「バレてしまっては仕方ない! そう、俺は人畜無害な群馬県産食用キノコ! 煮て良し焼いて良し、俺的にはバター炒めがお勧めです!」
『ああ、確かにエリンギのバター醤油炒めは最高……って、群馬県産? お前もしかして転生者か?』
「お? このネタがわかるってことはお前も地球出身か?」
少し話をしようじゃないか、というきのこをエミーリオの待つ野営地へ連れて帰る。
きのこの語る内容はとても信じがたいものだった。
0
あなたにおすすめの小説
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?
山咲莉亜
ファンタジー
ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。
だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。
趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?
ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。
※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました!
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる