中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

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第五章 俺様、北方へ行く

2、久々の戦闘か?

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 前方はどこまでも続く草原。
 後方は先ほどまで歩いてきた街道。一番景色の良い方が見える位置をエミーリオが譲ってくれたのだ。
 エミーリオは逆に街道と森が見える位置で警戒しつつ野営の準備をしてくれている。

 覚えたのは、火を起こした時に延焼しないよう地面が剥き出しになるまで草を刈ること。
 さらに石、なければ土を盛って火を囲むこと。これで火災をだいぶ防げるらしい。
 草を刈るのは俺も得意。寝ている間に焼け死んだなんで嫌すぎるから積極的に手伝う。
 エミーリオがおだてるのがまた上手なもんだから、少しやりすぎた。
 こんもりと山になった草山は今夜のベッドにちょうど良さそうだ。スキルレベルも久々に上がった。使い方違う気もするけど、強くなったことには変わりがない。



「なぁ」
『ああ、気付いている』

 エミーリオがくつくつと煮込むスープ。今日も醤油ベースのスープに干し肉を切って入れ、まるで卵とお湯を注いで3分待つだけで出来上がるあのラーメンのような懐かしい匂いを辺りに漂わせている。
 その匂いに釣られたのか、森の方からカサカサと草木を揺らして近づいてくる何かがいるのだ。久々の戦闘か? と緊張感が高まっていく。


 チャキッ


 エミーリオも気づいたようで静かに腰の剣を少しだけ抜く。
 日が傾き輪郭もぼやける時間帯。夕日が辺りを朱く染め、草原は綺麗の一言だが森はかなり不気味な様相になっている。
 身構えたものの、不思議そうな顔をして再び火加減に意識を向けるエミーリオ。

「おかしいですね」
「『何がだ』」

 ついつい声を潜め、ぽつりと呟いたエミーリオに聞く。

「明らかにこちらに近づいてくるのに、殺気がないのですよ」

 近づいてくる正体がモンスターや盗賊の類であれば殺気などを感じるのにそれがない。
 ルシアちゃん達が追いついてきたのかというと、森の中を突っ切ってくるのがおかしい。第一、近づいてくる気配は一人分だけだ。

 そんな感じで警戒していたら、ガサっと森から黒い人影が飛び出してきた。
 一直線にこちらに向かってくると、俺とちびきのこを突き飛ばし、一心不乱にスープを貪り食っている。
 その姿にあ然としてしまう。

「……おいひぃ……もぐもぐ……ヒック……おいしぃよぅ……」

 先ほどまで火にかけていたのに熱さを感じないかのように、泣きながら一心不乱にスープを貪り食う黒いズタボロの人影。その高い声で辛うじて少女だとわかる。

「黒の使徒?」
「いや、待て待て。剣を納めてくれエミーリオ」

 こちらの存在を気に留める余裕も無いほどスープに夢中な彼女の肩に登り、ぼさぼさの頭についた大量の蜘蛛の巣や葉っぱを取り除いてやるちびきのこ。
 流れた涙が顔の汚れを落としていく。
 呆気に取られてしまったが、落ち着いてよく見ると本当に酷い有様だ。髪はぼさぼさのごみ塗れ。顔も手足も泥だらけ。服もドロドロであちこちほつれたり裂けたりしてしまっている。

『ん? これうちの制服か?』
「では、彼女も勇者様の一人ですか?!」

 ジッと見つめている俺達に、スープを飲み干して一心地ついた少女が気づき慌てて土下座のようなポーズを取った。

「ご、ごめんなさい! お腹が空いてどうしようもなくて、懐かしい醤油の香りを嗅いだら訳がわからなくなって! あの、何でもしますので許してください!」
「落ち着いて、顔を上げてください、勇者様!」
『娘、面を上げよ』
「ちょ、お前何でいつもそんな偉そうなんだよ」

 慌てふためいて謝罪と言い訳の言葉を口早に語る少女を落ち着かせようとするエミーリオと、俺の口調を咎めるちびきのこ。
 彼女の眼にはきっと一人の人間とドラゴンしか映っていないのだろう。三人分の声が聞こえたことに混乱したのか声の主を探してキョロキョロとしている。

 最初は彼女を見て黒の使徒かと警戒したエミーリオも、勇者のほとんどが黒髪黒服だと聞かせてあったので剣をすぐに納めてくれた。
 泥だらけの彼女に水で濡らしたタオルを渡してまずは身なりを整えるよう言って背を向けている。
 戸惑いながらもタオルを受け取った彼女が体や顔を拭くのをじっくり見ようとしたらちびきのこに叩かれて後ろを向かされた。解せぬ。俺今ただのドラゴンなのに。


「あの、もう向いてもらって大丈夫です」

 少女の声に振り向く俺達。
 服はボロボロのままだが、顔も手足も綺麗になって、髪型も手櫛でだが簡単に整えらえている。見覚えのある子がそこにいた。


『えっと、誰だっけ……武谷の後ろにいつもいた……』
「江間だ」
「はい、あの、何で私を知っているですか?」

 そう、死んだ武谷の後ろでいつもオドオドとしていた少女。言葉を交わした事はなかったけど、武谷が俺に構う時にもいつも一緒にいたから何となく覚えていたんだ。
 江間に改めて自己紹介すると、凄く驚いていた。
 続けて俺が聖竜として旅をしていること、エミーリオのこと、これから聖女と合流する予定の事、暗黒破壊神と戦う予定だということなど、江間の質問にも答えながら旅の目的などについても語っていく。

『さて、こちらの事情は以上だ。次は、そちらの話を聞きたい。今までどこで何をしていた?』
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