116 / 228
第六章 俺様、東方に行く
22、うまーー!!
しおりを挟む
休暇1日目。
オットリーノ国王の護衛として何度かここに来たことがあるというエミーリオの案内で散策して回る。
建物は道中で見てきたタイラーツ領と違い、セントゥロに近い洋風の景観だ。違うのは、王城を中心に円形に貴族の居住区、一般市民の居住区、スラムで構成されている。モンスター避けの分厚く高い塀のすぐ近くがスラム街だ。
「絶対にスラム街には入らないでくださいね」
何度もエミーリオに念を押された。もっとも、スラム街には店らしい店などないというから行きたいとも思わないが。
俺達のためにオーリエンの国王が用意した宿は貴族街にあった。レンガ造りの洋館が立ち並ぶ中、他と一線を画すほどの豪奢な洋館だ。
巨大な門を抜けると白亜の美麗な石像が立ち並ぶ道を進み、噴水を回った先で同じく白亜の建物の前に馬車を乗りつけられるようになっていた。
他国の貴族や王族などが逗留するために作られた療養宿とのことで、広大な土地に温泉や劇場、遊技場、商店などまであり、視察など他に目的もなければここから出ていかずとも十分楽しめるだけの設備が整っていた。
宿の主人が言うには、フロントに申し付ければ宿の施設にない店の者を呼び出せるらしい。とにかく逗留する貴人が何一つ不自由ないように、を体現した施設だった。
『まるで檻のようだな』
宿の施設だけでも間に合うとはいえ、そこはさすが貴族向け。高級そうな贅を尽くしただけの味も良くわからないような、良く言えばフォトジェニックな料理屋だの。汚すのが怖くて袖を通せないような服屋だのでは俺は楽しめない。
他国の王都へ来る機会などなかなかないから様子を見たいというルシアちゃんも連れて俺達は一般居住区へと繰り出した。
貴族街の店は宿の設備と似たり寄ったりで、それなら宿で十分だという結論になったのだ。
各区画は柵で分けられていて、内側の人間が外側は行くのは自由だが外側の人間が内側に行くには厳重な身分証確認と地区長の許可証が必要だという。
聳え立つ金属の柵が他の地区の人間を締め出すための何かに見えて。お前はここから先へは行けないのだと言われているようで。
実際にそんなことを言われたことなんてないのに、それは前世で周囲に馴染めなかった時のあの感覚が蘇ってくるようで嫌な感じだった。
「タイラーツ領でも感じたでしょうが、ここでも身分を重要視する者が多くいます。さすがに王の御許でルシア様やリージェ様をどうこうすることはないでしょうが、不快に感じることがあっても手を出さないよう気を付けてくださいね」
「わかりましたわ」
『ああ。トラブルはもう懲り懲りだしな』
つまり、ここでも差別的、いや身分を嵩にえばり散らしている奴がいるってことか。
うんざりしている俺の横でエミーリオが、一般居住区も貴族の居住区に近いほど土地や税が高く、自然に富裕層が中心に住むようになっていると街を指し説明してくれている。
スラムに近い方ほど貧しいというのを修繕もされない家々が証明していた。
「あの、スラムには店がないというお話でしたけど、それならスラムの方々はどうやって生活をされているのでしょう?」
「厳密にいえば、スラムに住むのはハレタ市民ではありません。税を納められず、市民権を捨てた人たちなのです」
つまり、何の保護保証も受けられないということを前提としてエミーリオが説明する。
オーリエンの国王はスラム地区をないものとして扱っているそうだ。市民権を捨てているから、スラムの人間が一般居住区で仕事を得る事はできない。そもそも一般居住区に入れないしね。その代わりとして納税の義務もない。
じゃあどうやって生活をしているのかというルシアちゃんの質問の答えは、自給自足だ。と言っても農耕ではない。土地は市民権を得ないともらえないし、土地を開拓するだけの体力もない。罠による狩りや採取などをしてとにかく必死に食べる物を得ているらしい。
柵の隙間から手を伸ばして何かを恵んでもらおうと呼びかけてくるスラムの人間もいるし、稀に柵を乗り越えて盗みを働く者もいるらしい。不法侵入と盗みは捕まり次第即奴隷落ちらしいが。
食べ物に困り自ら奴隷になる人間もいるのだと。とにかくスラムはそういう場所だった。
『それよりルシア、あれは何だ?』
「何でしょう? とても良い匂いがしますね」
「買ってきます!」
スラムの人に心を痛めている様子のルシアちゃん。現状救う手立てもないし、他国のことに口を出すべきでもない。それならば、とルシアちゃんの気を逸らすため近くの屋台を示した。
俺の意図に気付いたのかエミーリオがすかさず三人分買ってきた。暴力的なまでの匂いに思わず腹の虫が騒ぎ口から汁が溢れてくる。俺のそんな様子にルシアちゃんが笑ってくれた。
「ん、美味しい。腸詰めが入っていますね」
「このかかっているソースも、スパイスが効いていて……さすが王都です」
一口食べて、「うまーー!!」と感動の叫びが出た。
コショウが効いたピリ辛のソースたっぷりの、ソーセージと野菜をナンのような薄焼きのパンで巻いた食べ物。ルシアちゃんとエミーリオが口々に味を分析している横で俺は無心にかぶりつく。
コショウが平民向けの屋台で使われるくらい、ここでは流通しているのだろう。ひき肉も日本のようなスライサーなんてないから、手作業で細かく切り刻んだものだ。歯ごたえのあるソーセージがプリプリと肉のうまみをしっかり伝えてくれる。
屋台でこれだ。他の店には何が並んでいるか、期待が高まるな。
オットリーノ国王の護衛として何度かここに来たことがあるというエミーリオの案内で散策して回る。
建物は道中で見てきたタイラーツ領と違い、セントゥロに近い洋風の景観だ。違うのは、王城を中心に円形に貴族の居住区、一般市民の居住区、スラムで構成されている。モンスター避けの分厚く高い塀のすぐ近くがスラム街だ。
「絶対にスラム街には入らないでくださいね」
何度もエミーリオに念を押された。もっとも、スラム街には店らしい店などないというから行きたいとも思わないが。
俺達のためにオーリエンの国王が用意した宿は貴族街にあった。レンガ造りの洋館が立ち並ぶ中、他と一線を画すほどの豪奢な洋館だ。
巨大な門を抜けると白亜の美麗な石像が立ち並ぶ道を進み、噴水を回った先で同じく白亜の建物の前に馬車を乗りつけられるようになっていた。
他国の貴族や王族などが逗留するために作られた療養宿とのことで、広大な土地に温泉や劇場、遊技場、商店などまであり、視察など他に目的もなければここから出ていかずとも十分楽しめるだけの設備が整っていた。
宿の主人が言うには、フロントに申し付ければ宿の施設にない店の者を呼び出せるらしい。とにかく逗留する貴人が何一つ不自由ないように、を体現した施設だった。
『まるで檻のようだな』
宿の施設だけでも間に合うとはいえ、そこはさすが貴族向け。高級そうな贅を尽くしただけの味も良くわからないような、良く言えばフォトジェニックな料理屋だの。汚すのが怖くて袖を通せないような服屋だのでは俺は楽しめない。
他国の王都へ来る機会などなかなかないから様子を見たいというルシアちゃんも連れて俺達は一般居住区へと繰り出した。
貴族街の店は宿の設備と似たり寄ったりで、それなら宿で十分だという結論になったのだ。
各区画は柵で分けられていて、内側の人間が外側は行くのは自由だが外側の人間が内側に行くには厳重な身分証確認と地区長の許可証が必要だという。
聳え立つ金属の柵が他の地区の人間を締め出すための何かに見えて。お前はここから先へは行けないのだと言われているようで。
実際にそんなことを言われたことなんてないのに、それは前世で周囲に馴染めなかった時のあの感覚が蘇ってくるようで嫌な感じだった。
「タイラーツ領でも感じたでしょうが、ここでも身分を重要視する者が多くいます。さすがに王の御許でルシア様やリージェ様をどうこうすることはないでしょうが、不快に感じることがあっても手を出さないよう気を付けてくださいね」
「わかりましたわ」
『ああ。トラブルはもう懲り懲りだしな』
つまり、ここでも差別的、いや身分を嵩にえばり散らしている奴がいるってことか。
うんざりしている俺の横でエミーリオが、一般居住区も貴族の居住区に近いほど土地や税が高く、自然に富裕層が中心に住むようになっていると街を指し説明してくれている。
スラムに近い方ほど貧しいというのを修繕もされない家々が証明していた。
「あの、スラムには店がないというお話でしたけど、それならスラムの方々はどうやって生活をされているのでしょう?」
「厳密にいえば、スラムに住むのはハレタ市民ではありません。税を納められず、市民権を捨てた人たちなのです」
つまり、何の保護保証も受けられないということを前提としてエミーリオが説明する。
オーリエンの国王はスラム地区をないものとして扱っているそうだ。市民権を捨てているから、スラムの人間が一般居住区で仕事を得る事はできない。そもそも一般居住区に入れないしね。その代わりとして納税の義務もない。
じゃあどうやって生活をしているのかというルシアちゃんの質問の答えは、自給自足だ。と言っても農耕ではない。土地は市民権を得ないともらえないし、土地を開拓するだけの体力もない。罠による狩りや採取などをしてとにかく必死に食べる物を得ているらしい。
柵の隙間から手を伸ばして何かを恵んでもらおうと呼びかけてくるスラムの人間もいるし、稀に柵を乗り越えて盗みを働く者もいるらしい。不法侵入と盗みは捕まり次第即奴隷落ちらしいが。
食べ物に困り自ら奴隷になる人間もいるのだと。とにかくスラムはそういう場所だった。
『それよりルシア、あれは何だ?』
「何でしょう? とても良い匂いがしますね」
「買ってきます!」
スラムの人に心を痛めている様子のルシアちゃん。現状救う手立てもないし、他国のことに口を出すべきでもない。それならば、とルシアちゃんの気を逸らすため近くの屋台を示した。
俺の意図に気付いたのかエミーリオがすかさず三人分買ってきた。暴力的なまでの匂いに思わず腹の虫が騒ぎ口から汁が溢れてくる。俺のそんな様子にルシアちゃんが笑ってくれた。
「ん、美味しい。腸詰めが入っていますね」
「このかかっているソースも、スパイスが効いていて……さすが王都です」
一口食べて、「うまーー!!」と感動の叫びが出た。
コショウが効いたピリ辛のソースたっぷりの、ソーセージと野菜をナンのような薄焼きのパンで巻いた食べ物。ルシアちゃんとエミーリオが口々に味を分析している横で俺は無心にかぶりつく。
コショウが平民向けの屋台で使われるくらい、ここでは流通しているのだろう。ひき肉も日本のようなスライサーなんてないから、手作業で細かく切り刻んだものだ。歯ごたえのあるソーセージがプリプリと肉のうまみをしっかり伝えてくれる。
屋台でこれだ。他の店には何が並んでいるか、期待が高まるな。
0
あなたにおすすめの小説
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。
馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。
元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。
バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。
だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。
アイドル時代のファンかも知れない。
突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。
主人公の時田香澄は殺されてしまう。
気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。
自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。
ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。
魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる