中二病ドラゴンさんは暗黒破壊神になりたい

禎祥

文字の大きさ
213 / 228
第九章 俺様、ダンジョンに潜る

18、問題は俺か

しおりを挟む
 封印の鈴の効果が切れるまでの間、それぞれスキルに頼らずにどの程度身体を動かせるか確かめることになった。
 偽女神の能力がチート級である以上、封印の鈴を使うことは絶対になる。
 意外なことに、ベルナルド先生は剣の腕前もそこそこだということが判明した。

「詠唱中に接近されることもあるからね」
「うぅ、本職でない相手にここまで苦戦するとは……自信失くします」

 先生が使う予備武器は片手剣より少し短めの剣。
 それから投げナイフや粉状の毒が入った筒などがマントの下に隠れていた。
 ここ1年近く一緒に行動していて俺がそれを知らなかったのは、レガメの連携が良くベルナルド先生が近接戦をする必要がなかったからだろう。
 エミーリオと組手をしたところ、エミーリオが辛勝するほどの腕前だった。

 問題は、俺か。
 誰も相手をしてくれないから壁を相手に尻尾を打ち付けたりタックルしてみたり、勢いよく引っ掻き攻撃をしようとして爪をおっかいたり。
 尻尾は変な方向に折れて肩を脱臼して1号に盛大に笑われた。


「創世の腕輪で、反射の腕輪を量産してみました」

 封印の鈴の効果が切れてすぐ、ルシアちゃんが創世の腕輪の効果を検証した。
 何を創り出すか思いつかなかったため反射の腕輪が人数分あると良いなぁと思ったらできたらしい。
 さすがルシアちゃん。得意げに微笑んでるのも可愛い。

「これはリージェ様に」
『うむ、助かる』

 なんと、俺の足サイズで作ってくれたらしい。
 跪いて俺の左前足につけてくれた。少し照れくさい。
 で、全員装着して判明したこと。これつけると念話が通じない。
 あと、回復魔法も通じない。回復・支援系魔法かける時は外す必要があるとわかった。
 戦闘中に俺からルシアちゃん達に話しかけることはあまりないと思うが、念のため「避けろ」「防御」「結界」「治癒」のハンドサインならぬ尻尾サインと鳴き声を決めた。

 全員が反射の腕輪をつけたことで、こちらの動きは女神の未来予知の効果から外れたはずだ。
 これで向こうも俺達がどう動くか見えないはず。
 予想だらけで不安だが、実際偽女神と戦ったことのある奴なんか歴史上にもいないんだから仕方ない。

「じゃあ、次は実戦を想定してオークキングと戦ってみよう」

 偽女神がどんな戦闘力か知らないが、オークキングよりは弱いってことはないだろう。
 スキルなしのガチンコバトルでオークキングに苦戦するようじゃ話にならない。
 壁のバリケードを解除して通路に出ると、索敵を使った。



 幸い13階層に上がる階段の手前でオークキングは見つかった。
 いくらも戻らないうちに見つけられたのは、まさに行幸と言えよう。

「ブモォォォォオオオオオッ!!」
「行きます」

 オークキングもまた俺達に気付くと、雄叫びを上げ地響きを立てながらこちらに突進をしてくる。
 騎士達が盾となる背後で、ルシアちゃんが手筈通りに銀色の鈴を鳴らした。
 チリィィィン、と低音の、けれど心地よい音が響く。

 それはオークキングの持つ巨大な棍棒が騎士達に接触する寸前で。
 数名は吹き飛ばされるのを覚悟していたが、オークキングはピタリと動きを止めた。
 振り上げていた棍棒をそっと下ろし、円らな瞳で直立している。

「……お、大人しくなった……」

 ルシアちゃんが鳴らしたのは、封印の鈴ではなく和魂の鈴。
 精霊を鎮めるという説明だったが、どうやらモンスターにも効果があるらしい。
 その効果に、騎士達が呆気に取られている。

『封印の鈴を使うのではなかったのか?』
「あ、す、すみません。もう一方の鈴の効果も試してみたくて……」
『そうか、だが、相談してからやってくれ』

 打ち合わせと違う行動をしたルシアちゃんに問い質すために腕輪を外す。
 追求されたルシアちゃんは、申し訳なさそうにする。
 今回は結果オーライだったから良いけど、戦闘時は何が起きるかわからないんだからね。

「それより、こいつどうするんだ?」

 1号の言葉に待機状態だったオークキングの存在を思い出す。
 オークキングはそのままの位置で大人しくしていた。

『戦意がなくともモンスターには違いあるまい。対偽女神戦のための犠牲となってもらう』
「モンスター相手とはいえ、無抵抗の相手を殴るってのは気分が良いもんじゃないな」

 バルトヴィーノは文句を言いつつも剣を抜く。
 騎士達も躊躇いがちに武器を構えた。
 ルシアちゃんに合図を送ると、今度こそ金色の鈴を鳴らす。

「さて、スキルなしでどこまで通じるか、試させてもらう!」

 直立不動で円らな瞳でこちらを見つめているオークキングに、ジルベルタが先陣を切る。
 女性とは思えない勢いの乗った切先がオークキングの左肩に食い込んだ。
 途端。

「ブルォオオオオオオオ!!」

 悲鳴のような鳴き声を上げ、オークキングの瞳が紅く輝いた。
 血走った眼で鼻息も荒く、殺意を向けたジルベルタに棍棒を振り上げる。

「なるほど、攻撃を喰らうと和魂の鈴の効果は切れるのか」

 あまり乗り気じゃなかったバルトヴィーノ達も、ジルベルタをフォローするように攻撃を仕掛ける。
 一撃を入れては退避、別の者が攻撃と入れ替わり立ち代わり斬りつけていく。
 ルシアちゃんとベルナルド先生はスキルが使えないため後方で怪我人の手当てだ。

「ブモォォォォオ!」

 スキルなしだと決め手にかけるらしく、なかなかオークキングを倒せない。
 斬りつけても傷が浅いのだ。
 ただし、相手もまたスキルが使えないため、こちらへのダメージも軽い。
 騎士達の膂力でも十分対処可能だ。

「後ろから!?」
「仲間を呼んだぞ!」

 先ほどの雄叫びは、このフロア内にいるオーク達を呼び寄せるものだったらしい。
 通路の後方から、前方から、左右からとオーク達がわらわらと集まってきた。
 一匹一匹は大したことがないが、いかんせん数が多い。

 ジルベルタの指揮の下、騎士達が隊列を組み三人一組でオークに当たる。
 さて、俺もそろそろ腕試しで参戦しますかね。

しおりを挟む
感想 289

あなたにおすすめの小説

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...