婚約破棄されたと思ったら次の結婚相手が王国一恐ろしい男だった件

卯月 みつび

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第二章 波乱の七日間

プロローグ

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 美しい花が咲き乱れる庭園の真ん中。
 そこには、花に負けず劣らず輝く赤い髪をたなびかせる一人の令嬢がいた。
 
 彼女の名前はカトリーナ・リクライネン。
 貧乏子爵家の一人娘であった彼女は、ある日、婚約者であるサーフェ・トラリスから婚約破棄を言い渡された。そしてすぐさま婚約が決まったと思ったら、その男は国で最も恐れられているといわれている暗黒の騎士と呼ばれる男だったのだ。

 思えばそれからというもの、彼女は慌ただしい毎日を過ごしていた。
 暗黒の騎士とも徐々にうちとけ、なんだかんだ想い人になって、命を助けて死にかけて、両想いになった。
 そんな波乱に満ちた一か月半を過ごしたカトリーナは、今日も庭園でお茶を楽しんでいる。

 そう。
 愛しの婚約者――黒獅子のバルト――を待ちながら。

「バルト様はいつになったら帰ってくるのかしら。ねぇ、ダシャはどう思う? 今日かな? 明日かな?」
「失礼ながら、私には見当もつきません」
「そうよね。でも本当に助かるわ。私一人でこの庭園を維持するのは難しいですから。本当に、ありがとね? ダシャ」
「は…はい」
 
 カトリーナが礼を言うと、ダシャは恥ずかしそうに顔を背けた。
 カトリーナのことをちょっぴり見直しているダシャだったが、それを本人には伝えていない。いつも通り、淡々と受け答えをしていた。
 しかし、二人はこのままゆっくりしているわけにはいかない。
 なぜなら。
 
 7日後には結婚式が開かれるからだった。
 ほかでもない。
 カトリーナとバルトの結婚式だ。

 本来であれば、準備も佳境であり、カトリーナも慌ただしく過ごしている日程だ。
 だが、彼女はバルトがいなくてもこの庭園を必ず自分の手で手入れをしていた。
 婚約者の大事な大事な庭園である。
 手伝いこそしてもらうが、かならず自分の目で確認をおこなっているのだった。
 時間がないカトリーナは、せめてもの息抜きにこの庭園の真ん中のテーブルでお茶をすることを日課としていた。かわりに、このお茶会が終わったら怒涛のようなスケジュールをこなさなければならない。
 
 それがわかっているカトリーナはそっとカップを置くと、大きく手を振り上げ伸びをした。 

「ぐちぐち言っててもしょうがいわよね? じゃあ、そろそろやりますか!」
「はい、カトリーナ様」

 二人はそういうと、足早にその場から去っていく。

 本格的に始まる7日後の結婚式へ向けて。新婦は大忙しなのであった。
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