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第二章 波乱の七日間
六日前①
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次の日も、カトリーナは準備に追われていた。
だが、ここは前世での学生経験や今世での貧乏ハングリー精神をいかんなく発揮した。
働かなければ食えない。
そんな二つの人生を生きたカトリーナの底力はすごかった。
短時間睡眠を終え、カトリーナは必死で礼儀作法を頭に詰め込んでいった。
もう何もかもがでていってもいい。そんな想いすら掠めた。
そこまで自分を追い込むことができたのは、昨夜にたどり着いた早馬のおかげだ。
深夜、王都からの早馬でバルトが本日帰ってくることがわかった。
仕事が終わったというより、ラフォン領での引継ぎを行う必要があるから、というのが主な理由なようだが、カトリーナはそれまでには仕事を終わらせようと躍起になったのだ。
そうして午前中にはふらふらになりながらも、礼儀作法の課題を終えることができた。
あとは、この詰め込んだ知識をこぼさないように当日まで持てばいい。
異様な達成感に包まれたカトリーナは、ドレッサーの前に座り化粧を整えている。
「目の下のくまが!! どうしたらいいの、ダシャ!? もう少しでバルト様が帰ってきちゃう!」
「だから言ったじゃないですか。ご無理なさると後悔しますよって。今から必死で温罨法しても限界がありますし、あきらめたらどうですか?」
「そんな!? だって、久しぶりに会うのよ? 二人して静養中は毎日会ってたけど、久しぶりすぎて、しかもこんな顔じゃ、バルト様がっかりするし! 会わなくなった期間は大概相手を美化するものだから! あぁ、恐ろしい!」
「……カトリーナ様。相手を美化するくらい想われてるって発言がのろけだって気づいてます?」
発言がめちゃくちゃになりかけているカトリーナにダシャが冷静につっこむもすでに聞いていない。
くまを消そうとして、厚化粧になり化粧を落としを何度繰り返せばいいのだろうか。
ダシャがいい加減、飽きてあきれて欠伸をしていたところに、屋敷の呼び鈴が鳴らされた。
「あぁ!? もしかしてバルト様かしら! 速い、速すぎる!」
「でもお出迎えしないわけにはいかないですから。行きますよ、ほら、カトリーナ様!」
「嫌! 誰かコンシーラー持ってきてよ! 誰かぁ!」
そんな現実逃避のような叫びを残して、カトリーナは正面へと出ていった。
さすがに引きずられて姿を現すのが嫌だったのだろう。
カトリーナは、自分の足であるき背筋を伸ばして来訪者を迎える。
が、そこにいたのはバルトではなかった。
バルトよりもほっそりとした体躯に、柔らかいまなざし。色素が薄く細い髪の毛はゆるくウェーブしていた。
見たこともないその男性は、カトリーナに微笑みかけて白い歯をのぞかせる。
「お初にお目にかかります、カトリーナ嬢。噂に聞く通りとても美しく可憐ですね。……やっと会えた」
そして、彼女に向かってとても自然なほほ笑みを浮かべた。
その微笑みは天使と見まごう程の美しさがあり、女性であっても見とれてしまうほどだった。
「あなたは……だれ?」
思わず漏れ出た疑問に、目の前の男は爽やかに答える。
「私はエリオット。エリオット・ゴールトンです。あなたの本当の婚約者です。ようやく戻ってこれた」
「は?」
思わず間抜けな声が漏れ出たことをダシャですら咎められない。
驚きで満ちた二人の前で、エリオットはとてもうれしそうに微笑んでいた。
だが、ここは前世での学生経験や今世での貧乏ハングリー精神をいかんなく発揮した。
働かなければ食えない。
そんな二つの人生を生きたカトリーナの底力はすごかった。
短時間睡眠を終え、カトリーナは必死で礼儀作法を頭に詰め込んでいった。
もう何もかもがでていってもいい。そんな想いすら掠めた。
そこまで自分を追い込むことができたのは、昨夜にたどり着いた早馬のおかげだ。
深夜、王都からの早馬でバルトが本日帰ってくることがわかった。
仕事が終わったというより、ラフォン領での引継ぎを行う必要があるから、というのが主な理由なようだが、カトリーナはそれまでには仕事を終わらせようと躍起になったのだ。
そうして午前中にはふらふらになりながらも、礼儀作法の課題を終えることができた。
あとは、この詰め込んだ知識をこぼさないように当日まで持てばいい。
異様な達成感に包まれたカトリーナは、ドレッサーの前に座り化粧を整えている。
「目の下のくまが!! どうしたらいいの、ダシャ!? もう少しでバルト様が帰ってきちゃう!」
「だから言ったじゃないですか。ご無理なさると後悔しますよって。今から必死で温罨法しても限界がありますし、あきらめたらどうですか?」
「そんな!? だって、久しぶりに会うのよ? 二人して静養中は毎日会ってたけど、久しぶりすぎて、しかもこんな顔じゃ、バルト様がっかりするし! 会わなくなった期間は大概相手を美化するものだから! あぁ、恐ろしい!」
「……カトリーナ様。相手を美化するくらい想われてるって発言がのろけだって気づいてます?」
発言がめちゃくちゃになりかけているカトリーナにダシャが冷静につっこむもすでに聞いていない。
くまを消そうとして、厚化粧になり化粧を落としを何度繰り返せばいいのだろうか。
ダシャがいい加減、飽きてあきれて欠伸をしていたところに、屋敷の呼び鈴が鳴らされた。
「あぁ!? もしかしてバルト様かしら! 速い、速すぎる!」
「でもお出迎えしないわけにはいかないですから。行きますよ、ほら、カトリーナ様!」
「嫌! 誰かコンシーラー持ってきてよ! 誰かぁ!」
そんな現実逃避のような叫びを残して、カトリーナは正面へと出ていった。
さすがに引きずられて姿を現すのが嫌だったのだろう。
カトリーナは、自分の足であるき背筋を伸ばして来訪者を迎える。
が、そこにいたのはバルトではなかった。
バルトよりもほっそりとした体躯に、柔らかいまなざし。色素が薄く細い髪の毛はゆるくウェーブしていた。
見たこともないその男性は、カトリーナに微笑みかけて白い歯をのぞかせる。
「お初にお目にかかります、カトリーナ嬢。噂に聞く通りとても美しく可憐ですね。……やっと会えた」
そして、彼女に向かってとても自然なほほ笑みを浮かべた。
その微笑みは天使と見まごう程の美しさがあり、女性であっても見とれてしまうほどだった。
「あなたは……だれ?」
思わず漏れ出た疑問に、目の前の男は爽やかに答える。
「私はエリオット。エリオット・ゴールトンです。あなたの本当の婚約者です。ようやく戻ってこれた」
「は?」
思わず間抜けな声が漏れ出たことをダシャですら咎められない。
驚きで満ちた二人の前で、エリオットはとてもうれしそうに微笑んでいた。
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