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第三章 王都攻防編
王都コンテスト②
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あいさつの後すぐに、ミス、ミスターコンテストが始まった。
平民、貴族と分けながら若く見目麗しい男女が壇上へと上がっていく。
一人一人自己紹介や特技を披露して、観客の目を楽しませている。
カトリーナはその様子を見ながらあたりを見回した。
檀上の男女を食い入るように見つめている観客。
その脇では、屋台が立ち並び壇上を見ながら食べるものもいれば、舞台そっちのけで料理に夢中な人々もいる。
ぎゅうぎゅうに詰まった人々の間をスラムの子供たちが駆け回っていた。何か仕事を頼まれているのだろう。まじめな顔で頑張っているようだ。
ステージの脇では、檀上の男女が使っている化粧品の紹介を行っていた。
そこには、商会の娘や貴族の令嬢が群がり真剣な表情で化粧品を吟味していた。
「順調ですね」
振り返ると、そこにはダシャがいた。
ダシャはカトリーナと同じ目線に立ち穏やかにほほ笑んでいた。
「まだ始まったばかりよ。きっと、これからトラブルがいっぱい起こるわ」
「嫌な予感ですね。でも、きっとそれも乗り越えられます」
「そうなるように頑張らないとね。そういえば、ほかの皆はどう?」
「各々仕事を頑張っているみたいですよ? 正直、私も把握しきれていません。ヘルムート様は有能ですね。もしよければラフォン家に召し抱えたいくらいだと執事長が言っていました」
「でも、彼は嫌がるでしょうね。それに、今のスラムには彼が必要だもの」
「わかっていますよ……。それよりも、そろそろ美魔女コンテストがはじまりますね」
ダシャが舞台に目を向けると、司会の男が参加者を舞台に呼んでいるところだった。
カトリーナも舞台へと目を向ける。
「そうね! あ、ドラ様よ! 普段とは考えられないくらい緊張してるみたい」
普段では考えられない様子をみたカトリーナはそういうと、ダシャと顔を見合わせて笑った。
緊張していたようだが、ドラの立ち回りは見事だった。
堂々たる振る舞いで、年を重ねた美しさをこれでもかと振りまいた。
若い者は当然のことながら、年配の女性たちもドラの美しさにため息を吐いた。自分とそう変わらない年なのに、あまりに美しい伯爵夫人に、皆は憧れ歓喜する。
あっという間に投票は終わり、開票が始まった。
そして、結果がでる。
仕事の合間を縫って、その様子をカトリーナは舞台袖から見ていた。
「それでは、美魔女コンテストの優勝者は――――」
――――ドラ・カンパーニュ伯爵夫人でございます!
司会の声が会場に響きわたる。
その声に導かれるように舞台の中央にでてきたドラは、胸をはって観客に礼をする。
そして、優雅に舞台から見切れると、舞台袖にいるカトリーナに一直線に向かってきた。
「ドラ様! おめでとうございます! やっぱりドラ様が優勝されるとおもって――」
「カトリーナ様。私は、こんなに緊張して吐きそうになってこのような状況に追い込んだ人間を恨むなどと思っていなかったわ」
「ド、ドラ様!?」
すわった目で睨んでくるドラは、真っ青な顔をしており具合が悪そうだ。片手がお腹をさすっていることからお腹の調子も悪いのだろうか。
カトリーナはドラを心配しながらも、目の前に迫る恐怖から逃れようと身をよじる。
「待ちなさい。まだ終わってないから……」
「一体、何を」
「あなたは本当にめちゃくちゃよ。第二王子の謀略にはまったと思ったら、わけのわからない提案をしてきて。こんなにとんでもないお祭りを企画して……」
「あの、ドラ様には本当に感謝してもしつくせないのですが、ご迷惑をおかけしたとしたら申し訳ないと思っておりまして、その――」
思わず謝罪をひねり出そうとするカトリーナだが、ドラはそんなカトリーナの肩をがしりとつかむと拗ねたような顔をして目を逸らす。
「違います! その……私が言いたいのは――とても楽しかったということです」
「へ?」
「と、年甲斐もなく、優勝できたことが嬉しくて……。私は、あなたがこのような場を作ってくれなければ、こんな不安を味わなかったですし、興奮もしなかったでしょう。今、私は貴族としての何もかも投げ出して叫びたい気分です。それくらいうれしい想いをあなたは私に与えてくれた……。その、ありがとうございます」
「ドラ様……」
自分よりはるかに年上だとしても。
照れながらうれしいと語るドラが、カトリーナには可愛く思えた。
自然とドラを抱きしめたカトリーナは、心からのお祝いのことばを送る。
「おめでとうございます、ドラ様。とっても素敵でしたよ」
「ええ。当然です」
親子ほども離れている二人。
だが、体を離してほほ笑みあう二人は肩を並べあう友人のようだった。
カトリーナは、その後も興奮するドラをあしらいながら、会場を回る。
喜びと悔しさをにじませるコンテストの参加者を。
額に汗して働く屋台の料理人やスラムのことも達を。
コンテスト参加者にあこがれて目をキラキラさせながら化粧品に群がる女性たちを。
喉が枯れるまで叫び続けている司会の男性を見ながら、カトリーナは穏やかにほほ笑んでいた。
一日目はこれで終わり。
間違いなく成功と言える初日を終えて、カトリーナはほっと息を吐いたのだった。
*****************
近況ボードにも書いておりますが、第一章部分の引き下げを30日に予定しています。
お読みしてくださっている方はご確認くださいませ。
平民、貴族と分けながら若く見目麗しい男女が壇上へと上がっていく。
一人一人自己紹介や特技を披露して、観客の目を楽しませている。
カトリーナはその様子を見ながらあたりを見回した。
檀上の男女を食い入るように見つめている観客。
その脇では、屋台が立ち並び壇上を見ながら食べるものもいれば、舞台そっちのけで料理に夢中な人々もいる。
ぎゅうぎゅうに詰まった人々の間をスラムの子供たちが駆け回っていた。何か仕事を頼まれているのだろう。まじめな顔で頑張っているようだ。
ステージの脇では、檀上の男女が使っている化粧品の紹介を行っていた。
そこには、商会の娘や貴族の令嬢が群がり真剣な表情で化粧品を吟味していた。
「順調ですね」
振り返ると、そこにはダシャがいた。
ダシャはカトリーナと同じ目線に立ち穏やかにほほ笑んでいた。
「まだ始まったばかりよ。きっと、これからトラブルがいっぱい起こるわ」
「嫌な予感ですね。でも、きっとそれも乗り越えられます」
「そうなるように頑張らないとね。そういえば、ほかの皆はどう?」
「各々仕事を頑張っているみたいですよ? 正直、私も把握しきれていません。ヘルムート様は有能ですね。もしよければラフォン家に召し抱えたいくらいだと執事長が言っていました」
「でも、彼は嫌がるでしょうね。それに、今のスラムには彼が必要だもの」
「わかっていますよ……。それよりも、そろそろ美魔女コンテストがはじまりますね」
ダシャが舞台に目を向けると、司会の男が参加者を舞台に呼んでいるところだった。
カトリーナも舞台へと目を向ける。
「そうね! あ、ドラ様よ! 普段とは考えられないくらい緊張してるみたい」
普段では考えられない様子をみたカトリーナはそういうと、ダシャと顔を見合わせて笑った。
緊張していたようだが、ドラの立ち回りは見事だった。
堂々たる振る舞いで、年を重ねた美しさをこれでもかと振りまいた。
若い者は当然のことながら、年配の女性たちもドラの美しさにため息を吐いた。自分とそう変わらない年なのに、あまりに美しい伯爵夫人に、皆は憧れ歓喜する。
あっという間に投票は終わり、開票が始まった。
そして、結果がでる。
仕事の合間を縫って、その様子をカトリーナは舞台袖から見ていた。
「それでは、美魔女コンテストの優勝者は――――」
――――ドラ・カンパーニュ伯爵夫人でございます!
司会の声が会場に響きわたる。
その声に導かれるように舞台の中央にでてきたドラは、胸をはって観客に礼をする。
そして、優雅に舞台から見切れると、舞台袖にいるカトリーナに一直線に向かってきた。
「ドラ様! おめでとうございます! やっぱりドラ様が優勝されるとおもって――」
「カトリーナ様。私は、こんなに緊張して吐きそうになってこのような状況に追い込んだ人間を恨むなどと思っていなかったわ」
「ド、ドラ様!?」
すわった目で睨んでくるドラは、真っ青な顔をしており具合が悪そうだ。片手がお腹をさすっていることからお腹の調子も悪いのだろうか。
カトリーナはドラを心配しながらも、目の前に迫る恐怖から逃れようと身をよじる。
「待ちなさい。まだ終わってないから……」
「一体、何を」
「あなたは本当にめちゃくちゃよ。第二王子の謀略にはまったと思ったら、わけのわからない提案をしてきて。こんなにとんでもないお祭りを企画して……」
「あの、ドラ様には本当に感謝してもしつくせないのですが、ご迷惑をおかけしたとしたら申し訳ないと思っておりまして、その――」
思わず謝罪をひねり出そうとするカトリーナだが、ドラはそんなカトリーナの肩をがしりとつかむと拗ねたような顔をして目を逸らす。
「違います! その……私が言いたいのは――とても楽しかったということです」
「へ?」
「と、年甲斐もなく、優勝できたことが嬉しくて……。私は、あなたがこのような場を作ってくれなければ、こんな不安を味わなかったですし、興奮もしなかったでしょう。今、私は貴族としての何もかも投げ出して叫びたい気分です。それくらいうれしい想いをあなたは私に与えてくれた……。その、ありがとうございます」
「ドラ様……」
自分よりはるかに年上だとしても。
照れながらうれしいと語るドラが、カトリーナには可愛く思えた。
自然とドラを抱きしめたカトリーナは、心からのお祝いのことばを送る。
「おめでとうございます、ドラ様。とっても素敵でしたよ」
「ええ。当然です」
親子ほども離れている二人。
だが、体を離してほほ笑みあう二人は肩を並べあう友人のようだった。
カトリーナは、その後も興奮するドラをあしらいながら、会場を回る。
喜びと悔しさをにじませるコンテストの参加者を。
額に汗して働く屋台の料理人やスラムのことも達を。
コンテスト参加者にあこがれて目をキラキラさせながら化粧品に群がる女性たちを。
喉が枯れるまで叫び続けている司会の男性を見ながら、カトリーナは穏やかにほほ笑んでいた。
一日目はこれで終わり。
間違いなく成功と言える初日を終えて、カトリーナはほっと息を吐いたのだった。
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