ブックメイカー ~ゴミスキルを開花させた少年は、孤児から頂点へと成り上がる~

卯月 みつび

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第一章 スキルと従者と本の世界

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「ここが……本の中の世界?」



 レイカさんの言葉をもう一度繰り返す。

 それでも何が起こっているのかわからない僕に、レイカさんは優しく語り掛けてくれる。



「はい。エンド様のスキル、ブックメイカーですがレベルが上がると本に強い願いを描けるようになるんです。さぁ、あなたの本を出してみてください」



 僕はレイカさんに促されるまま、『ブックメイカー』とつぶやく。

 すると、幾度となく呼び出した本が、手元にぽんと現れた。



「おそらく、その本は今まで白紙だったのでしょう?」

「うん、そうだけど……」

「もう一度、中身を確認してくれますか?」



 いまさら何を。

 そう思わないでもなかったが、僕は微かな期待を抱き本をめくる。

 すると、一番最初の頁には目の前にいる美少女――レイカさんの絵が描かれていた。

 思わず何度も絵とレイカさんを見比べてしまうが、まるで生き写しのようだった。



「レイカさんが僕の本に……」

「はい。私はあなたの本に描かれた絵です。あなたが生み出したもの。あなたが欲しかった信頼できる人間。その願いによって描かれたのが私です」



 僕は、レイカさんに言われるがまま本を呼び出す。

 それを受け取ったレイカさんは、本の頁をめくると、そこに描かれた絵を彼に見せた。



「い、今まで何も書かれてなかったのに……それに、その絵――」



 今まで真っ白だった本。

 何をしても、ただの白紙の本だった僕の本には、何かが描かれていた。

 その絵は、とても美しい美少女。

 今、僕の目の前にいるレイカさんに他ならない。



「はい。私は、あなたのスキル。『ブックメイカー』によって生み出された従者。レイカです。これから、よろしくお願いしますね。エンド様」



 僕はそのまま本の頁をめくっていく。

 本の一番最後の頁をみると、そこには文字も追加されていた。

 そこには――



 レベル一:ブックメイカー(本を生み出す力)

 レベル二:ウィッシュフォーム(強い想いを描き形にする力)



 そう書かれていた。



「エンド様の強い想い。それが、この本に描かれそして現実になるんです。それがあなたの力ですよ、エンド様」



 レイカさんの言葉に、僕の全身が総毛立つ。

 全身に電撃が走ったのようなしびれが走り、だが、それが嫌な気分ではない。



 自分のスキルの力など、微塵も信じることができない。

 ましてや、それで何かが成せるとも思えない。

 しかし、今、現実として目の前にレイカさんがいる。

 レベルがあがってから、何の変化もなかった本に絵や文字が描かれている。

 今、僕はようやく前に進むことができたんだと、ようやく世界に認められたのだと、そんなことを感じていた。



「だから、こんなに狭いのかな? ほら、二人で両手を広げたら、端から端に届いちゃいそうだよ」

「そうですね、今は」

「今は?」



 僕の問いかけに、レイカさんはどこか妖艶な笑みを浮かべた。

 どこかいたずら心を忍ばせているような、そんな意味深な表情をしている。



「ええ。先ほども言いましたが、ここはあなたの世界です。あなたの願いを描く世界です。ですから、願ってください。あなたの願いを。何をしたいのか、何を作り上げたいのか。その想いを、ここは形にするんです」

「僕の想い……?」



 そういうとレイカさんは大きくうなづいてくれた。



 僕の想いか……。

 そういえば、僕がずっと願っていたことはある。

 孤児院で過ごしていたつらい日々から抜け出したいと、妄想にいつも逃げていた。



 あの時に戻れれば。

 スキルがわかったあの日。十歳の洗礼の日の前までは僕は幸せだったのだ。

 あの日から全てが変わった。

 だから僕は、あの日より前に戻りたい。

 そんなことをずっと思っていたんだ。



 孤児院に流れる穏やかな空気。

 だれもが僕を人間として扱ってくれていたあの時。

 あんな、だれもが幸せになれるかもしれないって希望を抱けるような時間。

 そんな世界が、ここに広がってくれれば――。



 そんなことを思っていると、本が急に熱を持つ。

 驚いて目を開けると、そこには光り輝く僕の本があった。



 強い光はやがて視界を埋め尽くし、世界は真っ白になっていく。



「レ、レイカさん! これって!!」

「これは私にも、なにがなんだか――」

「だ、大丈夫――」



 光に埋め尽くされた狭い空間。

 そこには僕とレイカさんしかいない。

 何が起こるかわからないこの状況で、僕はとっさにレイカさんの手を握る。

 もし、僕のスキルで生まれた存在なら、僕が守らなきゃならない。



 なんで、そんなことを思ったのかは自分でもよくわからないけれど――――。







 まばゆい光に目がくらむ。

 目はつぶったままだけど、とりあえずすさまじい光は収まったようだ。瞼の向こう側は、いつも通りの明るさのように感じる。

 僕の手の先にはレイカさんの手がある。ということは、とりあえず二人とも無事らしい。



 まずは、何があったのか確かめるのが先決だろう。

 そう思った僕は、ゆっくりと目を開ける。



 白い世界がだんだんと色を持つ。

 ようやく目が慣れてきた頃、僕は自分の目の前に広がっている光景が信じられなかった。



「これは……」

「す、すごい……」



 となりでは、レイカさんも驚いているようだ。

 だって、そうだろう?



 さっきまでは狭い、白い空間だったここが、今では――。



 まるで現実の世界のような、草原と森が広がっていたのだから。 
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