ブックメイカー ~ゴミスキルを開花させた少年は、孤児から頂点へと成り上がる~

卯月 みつび

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第一章 スキルと従者と本の世界

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 孤児院が燃えてから三日目。

 初めて宿に泊まった僕は、すがすがしい朝を迎えていた。



 藁ではないベッド。

 隙間風のない部屋。

 とても寝心地のいい空間に、僕は人生で初めてといっていいほど深い眠りについたのだ。

 ちなみに、レイカは本の中に入ってもらっている。

 そのほうが休めるのだとか。狭そうな印象があるんだけどな。不思議なものである。



 僕は起きて身支度を整えると、本からレイカを呼び出した。

 そして、一緒に食堂で朝食を食べることにしたのだ。



「はいよぉ! 坊主! 今日は泣くんじゃないよぉ!」



 食堂の女将さんは昨日の様子を覚えていたのか、そういって僕をからかってくる。

 恥ずかしいけど、それだけ美味しかったのだ。

 いいじゃないか。



「それじゃあ、女将さん。エンド様がまた泣いてしまうような美味しい朝ご飯をよろしくおねがいしますね」

「おっと! こりゃからかいすぎたかな! まあ、期待しないで待ってておくれ!」



 レイカがそう返してくれて、女将さんはさっさと奥に引っ込んでいった。

 うまく切り返せない自分を情けなく思いつつ、僕はレイカにお礼を言った。



「ありがとね」

「いえいえ」



 出会って三日目だけど、なんとなく僕らも妙な硬さがなくなってきたように思う。

 主と従者っていうのはぴんとこないけど、いろいろと助けてくれるのは確かだ。

 何の気なしに過ごしていると、すぐに朝食が運ばれてきた。

 白いパンと簡単なスープ。スープの具の量をみて僕はびっくりした。女将さんに聞いたら極々一般的な食事らしい。

 僕はそんな食事についつい感動してしまう。



「美味しいですか?」

「お、おいひぃえす」



 口の中に詰め込み過ぎてしゃべりづらい。

 だけど、美味しすぎて食べるのをやめられないのだ。つまりしょうがない。

 慌てて食べる僕をほほ笑みながらレイカが見ているに気づき、少しだけ気恥ずかしく感じてしまう。



「そういえばエンド様」

「あに?」

「エンド様はこれからどうやって生きていきたいですか?」



 唐突な質問だが、軽いものじゃない。

 たしかに、昨日稼いだお金だってずっと残るわけじゃない。いつかは使い切ってしまう。

 レイカは本の中にいれば食べなくていいらしいけど、僕はそうはいかない。



 働いたことも何もない自分が、一人で――いや。レイカと本の世界を守りながら生きていかなきゃならないんだ。

 そうなると、自然と選択肢は狭まってくる。



 僕は手を止め考え込む。

 僕はどう生きるか。

 何やら朝から重いことだけど、悠長に遊んでいる暇なんてない。



 僕はレイカを見る。

 そして本を見る。



 すると、おのずと自分の中で答えが浮かんできた。



「僕は……冒険者になりたい。うん……そうだ。僕は冒険者になりたいんだ。レイカ」



 僕は背筋を伸ばしてレイカをみる。

 すると、レイカも真面目な表情で言葉を返してくれた。



「理由は、あるんですか?」

「僕には……何もなかった。レイカはスキルのレベルがあがったおかげっていってた……けど、それで得たものはレイカと本の中の世界。僕は、お金を稼げる術も信頼できる人も手に入れた。絶対に失いたくない。もう力のなさに嘆いてすべてを失うのは嫌なんだ…………」



 思わず手に力が入る。

 レイカは、一度途切れた僕の話を辛抱強く待ってくれている。



「僕は、それを守りたい。ただお金を稼ぐだけならあの果物を売っていれば今でもできるし、昨日みたいなことくらいだった乗り切れると思う。けど、もし昨日以上の危機に見舞われたら? 魔物に街が襲われる日も来ないとも言えない。その時、僕は今のままでレイカと本の世界を守れるのか? そうやって自問自答したら……僕はやっぱり自分に自信がないことに気づいたんだ」

「……エンド様」

「だから、僕は強くなる。強くなるためには色々道はあるとおもう。けど、孤児だから住むところもない。身元を保証してくれる人もいない。お金もすぐれた技術もあるわけじゃない。なら、冒険者になるしか強くなる道はないかなって思ったんだよ。消極的な理由だけど――僕は冒険者として生きていく」



 声に出すと、ようやく決意が固まった。

 さっきまで思い付きだったものが、僕の目標へと形を変えていく。

 レイカは僕の言葉を聞くと、どこか満足そうに頷いてくれた。

 そして、そっと手を差し出してくれる。僕は、その手にそっと自分の手をのせた。



「エンド様の想いが叶うその時までお傍に降ります」

「ありがとう……。レイカが本から生まれなかったら、きっと僕は今頃野垂れ死んでいたよ」

「そう……かもしれませんね」

「うん、きっとそうだよ」



 そう言って二人で笑った。

 僕の人生は、今日、新たな門出の日を迎えるのだった。
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