ブックメイカー ~ゴミスキルを開花させた少年は、孤児から頂点へと成り上がる~

卯月 みつび

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第三章 スキルの力と金策と裏切り

十五

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 僕たちはそれから、家を建てるための木材を買ったり皆が住む場所の整理を手伝ったりしていた。

 その働きを見ていると、各種族ともに、特性があるのがわかってくる。



「よし! これで今日のノルマは達成だ! だが、今日も時間はまだある! 早く住む環境を整え、エンド様に恩返しをするのだ! 急げ!」



 そうやって集落の人々を鼓舞するのは犬人族の長だ。

 真面目な彼らは、日々の仕事を当番制にして計画的に物事をすすめているようだ。

 その計画もどんどん前倒しをして、住む体制はほぼ整っているといっていい。 



 その仕事ぶりと僕に対する献身ぶりは舌を巻くものであり、いつも感心してしまう。



「犬人族は本当に真面目だよね。疲れちゃわない?」

「そんなことは! 我ら種族も周囲の魔物に存続を脅かされておりましたから。今は天国のようです! このような場所を与えてくださり感謝しているのです」



 長はそういって仕事に戻っていく。





「ん? エンドかにゃ? エンドもこっちきて日向ぼっこするにゃー」



 僕が猫人族のところに行くと、そこには岩の上で寝そべっている彼らがいた。

 なにやらごろごろと寝転がり気持ちよさそうだ。



「猫人族はゆったりしているね」

「それはそうにゃ。犬人族は真面目だし、熊人族は力が強いけど温厚にゃ。ほっといても、文句いいながらきっとやってくれるにゃ。いまは、この暖かい場所で日向ぼっこするほうが大事だにゃ」



 そういって、猫人族の長は寝ころんでしまう。

 その寝顔は心底幸せそうだった。



「こんな顔されたら何も言えないよね……。次に行こうかな」



 僕は一緒に横になりたい衝動を抑えながらその場を後にした。





「ん? エンド様なんだな。ちょうどいい。これを見てほしいんだな」



 鼠人族のところに行くと、そこは普通の家ではなくたくさんの穴が掘られていた。彼らの住居のようだ。

 さっそく出てきた鼠人族の長は何かを手に持ってやってくる。



「これは?」

「森にある蔓で編んだ布なんだな」

「これが森にある蔓で?」



 僕の横からレイカが躍り出ると、驚いた様子でその服を見る。

 色とりどりに編まれたその服はとても美しく、街でもみることはない。

 それを森の蔓で編んだというのだから、それがどれだけ難しいか僕でもわかった。



「これは……素晴らしいものですね。伸び縮みもしますがとても丈夫そうにみえます……なによりこの彩りはほかに類をみないものです。本当に素晴らしい」



 うっとりした表情でそれをみるレイカ。

 そんなレイカに、鼠人族の長はにこりと微笑む。



「それなんだけどな、ぜひエンド様に持っていてほしんだな」

「え? 僕に?」

「作ったものはエンド様に見せておかないとなんだな。もしそれをよいものだと思ってくれるなら、もらってくれると嬉しいんだな」

「それは……とてもいいものだと思うけど、いいのかな?」

「いいと思うんだな」

「そっか……ありがとう」



 そんな鼠人族の長の好意を受けた僕は、いまだうっとりしているレイカに視線を向ける。



「なら、それはレイカが使うといいよ」

「え? そんな。これはエンド様に納められたものでは――」

「いいんだ。気に入っているようだから、レイカが使ってくれると嬉しいな。僕は使い道がないからね」

「えと……その…………ありがとうございます」



 レイカはそう言うと、顔を赤らめながら布をぎゅっと抱きしめている。

 普段とは違うレイカの様子にほっこりしながら、僕は熊人族の様子を見に行くことにした。





「エンド様ぁ。どうしたんだぁ?」



 そういいながら振り返る熊人族。

 彼が持っている大きな木材が、僕らに向かってくる。



「うわああぁぁ!」

「きゃっ!」



 僕とレイカはとっさにしゃがみ込んだ。

 そんな僕らに熊人族はゆっくりと近づいてくる。



「そんなところにいたら危ないね」

「ご、ごめんね」

「それにしてもすごい力ですね。家を作るのは順調ですか?」

「そうだね。でも、僕らはもう終わるから、猫人族のところを手伝おうかな」

「どうして猫人族へ?」

「きっとまだ手をつけてないだろうからね」



 そういって笑みを浮かべる熊人族をみながら僕は苦笑いしかできなかった。

 彼らは力は強いが温厚な性格のようだ。



「もし猫人族のところにいくのでしたら、自分達でもやるようにいってもらえますか? 熊人族の方に負担がかかりすぎるのもこまりますから」

「うーん。それはいいよ。僕らも、猫人族の力を借りるときもあるとおもうからね」



 どこまでも優しい言葉に、僕らもほっこりをしてしまうのだった。





 僕らも、皆の作業を手伝ったり、足りないものを買いにいったり、夜はみんなでご飯を食べたりしていると、あっという間に一週間がたった。

 今日はまたオリアーナから売りあげを受け取る日だ。

 先週からまったく会えていないけど、どう思っているんだろうか。

 僕はすこし心配になりながら待ち合わせ場所へと向かった。



 僕とレイカが向かうと、そこには既にオリアーナがいた。

 彼女は近くの壁に寄っかかっており俯いている。表情は見えないが、いつものような明るい雰囲気ではないようだ。



 その違いに疑問を抱きつつも、僕は彼女に声をかけた。



「やぁオリアーナ。待たせてごめんね」



 僕の声を聞くや否や、勢いよく顔を上げたオリアーナの目は血走っていた。

 視線には、僕に対する憎しみがこもっているのか、その圧力に心臓が跳ねる。



「えっと……どうしたの?」

「どうしたのじゃないわよ」



 あまりにも冷たい声に、僕は驚きを隠せない。

 何かがあったに違いない。



「どうして私を裏切ったのよ」

「え? 裏切り?」

「しらばっくれないで!! あんた以外にいないのよ! 確かにあんたたちを騙してたのは悪かったと思ってる! けどね! 私にだって、守らなきゃいけないものくらいあるのよ!」



 オリアーナは叫びながら小さなナイフを取り出した。

 そして、ぎこちない手つきでそれを僕に向かって突き出す。



「あ、あんたが悪いんだからね! もう時間がないのよ! だから、だからっ――! あんたには死んでもらわなきゃならないのよ!!」

「エンド様!」



 咄嗟にレイカが僕を庇おうと動くが、僕はそれを止める。

 どうして? と訴えかける目に、大丈夫、と頷き返す。



「オリアーナ。僕にはオリアーナが言っていることが全然わからないんだけど」

「うるさい! いいから、あんたが奪ったお金を返してよ!!!」



 オリアーナは震える手を憎しみで抑えながら、僕に向かってナイフを突き刺してきたのだった。 
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