この男、地獄の猟犬なんかじゃありません。

薄穂

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第1章 魔王の再臨/番外編

リヨンドとラルフ<ずっと一緒に編>

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 モロクが黒顔羊サフォーク革の本を作りたいと言い出してその材料集めに5日間屋敷を離れると言いアレファンデルと一緒に出掛けていった。
 なんだか子供のお出かけを見送る親の気分だった。
 そしてモロクを見送った後、ラルフは仕事が始まるまで私にぴったりくっついて過ごしていた。
「甘えん坊だね、ラルフ。」
「リヨンド、分かってる?もう絶対生きて帰ってこないと思ってた人が今ここにいるんだよ?しかも帰ってきたと思ったらまたすぐ聖都に出かけちゃうし…」
 思わず、ふふっ、と笑ってラルフの髪を撫でるとラルフは私の胸に顔を埋めて深呼吸した。
 こんなラルフが可愛くてたまらない。
「これからもずっと一緒にいるよ。」
 ラルフの髪に唇を寄せるとラルフは顔を上げて私にキスをした。



 ラルフは屋敷の離れを動物病院としている。
 今日もたくさんの飼い主たちが様々な動物を連れてやってくる。
 きっとラルフは今日も忙しくしているのだろう。
 私も後何日か体を休めたらまた狩りの仕事を再開することにしている。
 カファレルもそろそろ動きたそうにしているし、準備運動に少しカファレルを連れて出掛ける事にした。
「カファレル、おいで。少し出かけよう。」
 私がカファレルを呼ぶとカファレルの部屋から飛んできて私の肩に止まった。
「ずっと居なくてごめん。一緒に出掛けよう!」
 そう言うとカファレルは声高に鳴いてバサバサと翼を鳴らした。
 アリスに少し出かけてくると告げ、エンデワールを出て南の草原へと向かった。
「カファレル、気の済むまで飛んでおいで。」
 私が空を刺すとカファレルは勢いよく空に舞い上がった。
 私はこの光景が凄く好きだ。
 カファレルがよく晴れた深く青い空を昇っていく姿はとても格好良いし、自由に飛び回る喜びを謳歌するように旋回して飛び回るのを見るだけで私まで嬉しくなってしまう。
 カファレルとはカファレルがまだ羽も生え揃っていない頃に森で偶然出会った。
 巣から落ちて鳴いているのを狐に狙われていて、私はその時狐を狙っていたからたまたま偶然助ける形になった。
 雛のカファレルを巣に戻してやろうと思ったが木に登ってみると親鳥や他の雛たちは脚だけを残して何かに食べられてしまったらしい。
 可哀想に思って連れ帰り、世話をしたのが始まりだった。
 あの小さかった雛がこんなに立派な大鷲に育ったのだと思うと何となく感慨深いものを感じる。
「あー、平和だなぁ…」
 広い草原で誰に言うでもなく独り言を呟いて楽しそうに飛び続けるカファレルの姿を見上げた。
 少し前までは死ぬ覚悟までしていたのに、それが過ぎ去ってしまえばこんなに穏やかだ。
 出発する前日、ラルフに辛い思いをさせてしまったのは不本意だったけど、でもあんなに私を想ってくれている事が凄く嬉しかった。
 私は本当に幸せ者だ。

 



 日が傾き出した頃にカファレルを連れて屋敷に戻ると離れの建物にはまだ多勢の患者と飼い主がいた。
 今日はきっとクタクタになって戻ってくるだろうと思っていたが、日が暮れる頃に少し険しい顔でラルフが屋敷に戻ってきた。
「リヨンド、これから出張手術になったから悪いけどディナーは一緒に食べられない…。アリス、今日僕は遅くなりそうだから外で済ませてくるよ。」
「かしこまりました。」
「ラルフ、気を付けて行っておいで。」
「うん、ありがとう。それじゃ。」
 私とアリスは急いでいるらしいラルフを玄関先で見送った。

 ディナーはアリスを誘って2人で食べた。
 そして、夜もだいぶ更けてきた頃に玄関のドアが開く音がした。
 3階の部屋から階段を降りて玄関ポーチに行くとラルフが床に這いつくばっていた。
「ラルフ!?」
 慌てて駆け寄るとどうやら酷く泥酔しているらしい。
「…待ってて、水持ってくるからね。」
 どうしたのだろう…ラルフがこんなに酔うなんて…
 キッチンで急いで水を汲んでラルフの元に戻るとラルフはぺたりと床に座って体をふらふらさせながらぼうっと天井を見上げていた。
「ラルフ、お水だよ。飲んで。」
 ラルフの肩を抱いて水を飲ませるとラルフは水を飲んでからふわふわしたまま私の肩に顔を埋めた。
「あははは…ごめんねぇ?うふふ、リヨンドだいすき。だいすきだよー。」
「ラルフ、私も大好きだよ。さぁ、ベッドへ行こう。」
 肩にぐりぐりと額を押し付けられ、ふにゃふにゃになっているラルフを抱き上げて3階の寝室まで運んでいく。
 ベッドにラルフを下ろした時にラルフが話し始めた。
「今日、僕はあの子を助けられなかった…」
 きっと出張手術した動物の話をしているのだろう。
「一生懸命がんばったんだよ、僕もあの子も…でもね、最後にあの子は『もう良いよ、ありがとう』って言うように…麻酔で動けない筈なのに尻尾で僕の手を撫でて……そのまま……うぅぅ…っ」
 ラルフは獣医師として優秀で腕に自信を持っているし、その腕で動物達を助けてられる事を誇りに思っている。
 だけど時々自分の力が及ばず動物が亡くなってしまうと悲しみと寂しさと悔しさが溢れてしまう繊細な性格でもある。
 涙が溢れ始めたラルフの頬をそっと撫でてその髪にキスをするとラルフは全身で私に抱きついた。
「僕はリヨンドに何かあってもきっとあの子と同じように助けてあげられない…僕は獣のお医者さんだから…それで、もしその時になったらリヨンドもあの子みたいに辛いのに微笑わらって『大丈夫、もう良いよ』って言いそうだなって……」
「ラルフ、あのね……私は生きてここにいるよ。まだ私を殺さないでくれるかな?」
 ふふ、と笑うとラルフは痛いくらいに私にしがみついて泣いた。
「リヨンドが帰ってくるまで、本当は凄く怖かった。それでね、僕は医者として、人として、今日酷い事を思ってしまったんだ。あの子が亡くなった時に『リヨンドじゃなくてよかった』って思っちゃったんだ……あの子はあんなに頑張ってたのに、安心して僕に身を任せてくれたのに…っ!僕は酷い奴なんだ…!僕はあの子を助ける為に行ったのに…っ!」
 それには何も言わずにラルフの背中を何度も何度も撫でてラルフが落ち着くのを待った。

 どのくらいそうしていただろうか…
 ラルフから寝息が聞こえてきたところでそっと離れ、ラルフの体を拭こうとタオルを濡らし、ラルフの服を脱がせていくとアルコールが巡っているらしい体はピンク色に染まっていて、呼吸以外からも大量のアルコールを接種した事が分かる。
 タオルで全身を拭いていくとラルフは身を捩ってくすぐったがった。
 ……あぁ、私は何て奴なのだろう……。
 ラルフは動物を助けられなくてこんなに辛い思いをして酔い潰れたというのに、…私の体はそんなラルフの反応にしてしまう。
 良くも悪くも私はラルフに対して動物的な欲求が抑えられないのだろう。
 心の中でごめんね、と呟いてラルフの胸元にキスをしてそそくさとラルフの体を拭き寝巻きを着せて寝室から離れた。
 ラルフの体を拭いたタオルを洗濯かごに放り込み、洗面所で冷たい水を出して顔を洗い、自身の昂まりが落ち着くまで待った。
 流石に寝込みを襲うなんてとてもじゃないけど私にはできない。
 熱が冷めた所で再び寝室に戻るとラルフはぐっすりと眠っていて、その隣に静かに滑り込み、目を閉じた。



 隣でラルフが飛び起きたのに驚いて目を覚ますとラルフは顔を真っ赤にして私を見ていた。
「おはよ、ラルフ…」
「あの、僕昨日……」
 カーテンの隙間から見えた空はまだ薄暗い。
「めちゃくちゃ酔ってたよね…まさか、着替えさせてくれたのかい…?」
「うん、よく眠ってたからね。」
「ありがとう…」
「おいで…」
 私が両腕を広げるとラルフはきゅっと口元を結んで私の腕の中に収まった。
 まだ酒の匂いが残るラルフを抱き締めて何度も髪を撫でるとラルフは私の背中に回した手に力を込めた。
「リヨンド、ごめん。昨日、僕変な事言ったでしょ?」
「ふふ、大丈夫だよ。昨日は大変だったね。お疲れ様。」
「……うん…」
 私に擦り寄ってくるラルフを抱き締めたまま再びうとうとしかけた時、私の下腹部に硬いものを感じてうとうとしながらラルフの腰を撫でるとソレがピクリと動いた。
「……ラルフ…ふふ…」
「いや、あの…暫く…その、シてなかったから……あっ、ごめ、ごめん…大丈夫、眠いでしょ…大丈夫だから……、んっ…」
 ラルフの腰からお尻に掛けて撫でるとぴくぴくとラルフが腕の中で反応する。
「可愛いね、ラルフ…」
「…っ、…リヨンド…」
 少しずつ眠りの淵から覚めてきた。
 体をぐるりと反転させてラルフに覆い被さり額、頬、唇にキスをする。
「ご、ごめん、酒臭いよね…あと、拭いてもらったとはいえ、お風呂入ってないし…」
「気にしないで。」
 ラルフの寝巻きを脱がせていき、露わになった胸の突起を舌で転がす。
「…ん…っ、…ん…んん、…リヨンド…っ、…」
 ちゅ、とわざと音を立てて突起を開放するとラルフはぴくりと反応して蕩けた顔で私を見上げた。
「は、ぁ……うぅ…なんだか…今日のリヨンドいやらしいね…」
「ふふ、いやらしい事をしてるからね。…でもいやらしいのはラルフの方だよ?朝から…しかも、もうこんなになってる。」
 既に蜜を垂らし始めているラルフのソレに指を這わすと、ラルフは小さく喘いで身を捩った。
 暫く可愛い反応を堪能しているとラルフが起き上がって私の体をベッドに押した。
「今日は僕が誘ったから……僕がするよ…」
 ラルフは私の上に跨ると自分の指を舐め、恐る恐るその指を後孔に沈めて慣らし始めた。
「ん、…うぅ…はぁ、ん…っ」
「いやらしいラルフも可愛いよ。」
 頑張っているラルフのソレをそっと握って緩く扱くとラルフは片手を私の腹に置いて腰を揺らしながら自分の指を抜いて私のソレに触れた。
「ンンんッ…もう、早く…リヨンドの欲し…っ」
 そんな事を言われたら私だって男…下半身はもういつでもラルフの中に挿入はいれるようになっている。
 でもその欲望だけでラルフを傷つけたくないから…
「もうちょっとお預けだよ。私もお手伝いしたいからもっと上に来て…?」
 私の目の前にラルフの胸がくる位置まで来てもらい、胸の突起を舌でいじりながらラルフの指と一緒に後孔に私の指を挿入る。
「ァッ、あっ!んん…ッ、リヨンド…はぁっ、んっ」
 ピクピクと震えながら私の上で腰をくねらせ、ラルフの指と私の指、全部で3本挿入るようになったところでラルフが少しずつ下に下がった。
「も、もぅ、挿入れるね…っ」
「…うん、無理しないでね。」
「大丈夫…だってもう、…」
 ラルフは恥ずかしそうに俯きながら自分の後孔に私のソレを当てがい、ゆっくりと腰を下ろしていく。
 私のソレがずず、ず、とラルフの中に挿入っていく。
「ぁ…ぅぅ…っ、んんん…っ…はぁっ、ぁ…っ」
「…ん…っ、ラルフ…」
 私のをラルフが最後までしっかり飲み込んでしまうと、ラルフは艶めかしい顔で嬉しそうに笑った。
「ふ、ぅ…はぁっ、はぁっ、…リヨンド…っ、動くね…ッ」
「うん…いいよ。」
 ずず、と腰を浮かせて、ぷちゅ、と音を立てて腰を落とす。
「ぁっ、音…っ、…うぅ…恥ずかし…んぁっ」
 そう言いながら行為を止めようとしないラルフが可愛くて仕方ない。
「ラルフ、…気持ち良いよ…」
「んんっ、ぁっあっ…」
 仰け反って倒れそうになるラルフを起き上がって抱き止め、座ったままの姿勢で腰を揺らすとラルフは私にしがみ付いて最奥おくが気持ち良いのか私のソレでイイトコロを擦り付けて喘ぐ。
「ぁっ、あっ、リヨ…ッ、リヨンドっ…気持ち、ィッ、あっ…!」
 私の背中に爪を立ててがるラルフをしっかり抱き締めて再びラルフをベッドに下ろすとナカで角度が変わって驚いたのか、ビクビクと体を震わせて私のソレを締め付けた。
「ひっ…ぁ、ん…ッ」
「っ…ラルフ、…動くね?」
「んっ、うんっ、うん…っ!」
 ラルフの頬にキスをして、肩にラルフの足を担いでラルフを突き上げた瞬間、ラルフがぐっと体をそらしてビクッと震えた。
「はっ、アッあぁっぁ…ッ」
「え…?」
 まだ殆ど動いていないのにラルフは軽くイってしまったらしく、少しだけ白い液を自分の腹に出していた。
「あっ、うぅっ、ごめ…ん…」
 ラルフは恥ずかしくなったのか両手で顔を隠して私に謝った。
「ううん、大丈夫だよ、…痛くなかった?」
「……い……て…」
 よく聞き取れなくて「ん?」と聞くと、ラルフは少し手をずらして蕩けたままの顔で「まだ気持ちいいから動いて…」と呟いた。
「可愛すぎるよ…っ、それは!」
 ラルフの中を抉る様に何度も突き上げるとラルフは嬌声を上げて仰け反り、快楽を求めて腰を動かした。

「…ごめんね、大丈夫…?」
 ぐったりしているラルフに水の入ったグラスを手渡すと、ラルフは笑って首を横に振った。
「うん、……前回よりは全然大丈夫…」
「あぁ……うん、あれはやりすぎたよね……本当にごめんね…」
「ううん、僕が望んだ事だから良いんだよ。…だって今こんなに幸せだしさ。」
 んふふ、と笑うとラルフはグラスの水を飲み干して私の肩にもたれかかった。
「僕の彼氏はこんなに逞しいボディで魔王討伐に選抜される程すっごく強いのに格好良くて紳士的で優しいからねっ。」
「………。」
 やはり少し根に持っているのかもしれない。
 ラルフの肩を抱き寄せて髪にキスしてから抱き上げ、寝室に備え付けられているバスルームに運んだ。
「一緒に入ろう。」
 私が提案すると、ラルフは嬉しそうに笑って頷き、キスを求めてきた。
 唇を甘噛みして舌を絡め合い、何度か啄むようなキスをして離れる。
「ラルフ、愛してる。」
「…僕も大好き。……もうあんな決死の覚悟なんかしないからね。次は僕もついて行くよ!僕は剣も魔法も使えないから足手まといになること必須だけどね!」
「ふふ、それは困るなぁ。私もラルフが困っているのが可愛くて戦いに集中できなくなりそうだよ。…でも、僕も色々決心したからもうラルフにあんな思いさせないよ。」
「そうしてくれるとありがたいよ。僕も酔い潰れなくて済むからね。」
「ふふ、…これからもずっと一緒にいるよ。」
 笑いながら頬を赤らめたラルフを抱き締めて2人で幸せなシャワータイムを過ごした。

リヨンドとラルフ<ずっと一緒に編> 終わり
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