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独立への戦い
41 シャロンの決意
しおりを挟む失効してから暇だったケインは1人っきりの隊長室で、プカプカタバコを吸っていた。テレビをつけて見てもどの番組も同じような事しか伝えてなく、ただ時間だけが通り過ぎていった。
すると課員がドアを開けて入ってきた。タバコ臭さに課員は一瞬眉をひそめたが、すぐに切り替えて喋り出した。
「隊長。課長が戻りました。」
ケインは頷くと立ち上がって窓を開けた。冷たい外気が一気に室内になだれ込んでくる。室内な煙たさは冷風に巻かれて外に出ていった。
「分かった。もしシャロンさんに会ったらここにいるって伝えてね。」
「了解しました。」
課員はそう言うと扉を閉めた。
しばらく待っていると聞き慣れた声が後ろからして来た。
「ケインさん。ただいま。」
ケインはゆっくりと振り返ってシャロンの方を見た。バックを肩にかけて、雪が髪の上に点在していた。
「久しぶりだね。元気してた?」
「ええ。」
そう言うとシャロンは机に自分の荷物を置いて椅子に座った。ケインは机の上に置かれた業務連絡用のバインダーをじっと見つめるシャロンを見て少し息を吸って言った。
「シャロンさん。辞めようとしてたでしょ。」
シャロンは図星だったようで、驚いた顔でケインを見た。その顔を見たケインは更に続けた。
「不本意だったけど、シャロンさんの事については色々と分かったよ。けど、逃げちゃダメだ。」
「分かってるんでしょ。このままだとケインさんにも害が及ぶわ。」
「そんな事どうだって良いね。」
そう吐き捨てるように言うとケインはまた窓の外を見て言った。
「あと少ししたらイーベルを確保しに行こうと思うんだ。」
シャロンも立ち上がってケインの近くに寄った。
「確保するって、どこにいるのか知ってて言ってるの?」
「ああ、もちろん。」
「.....ノーザンライト州に行くのは無理よ。あそこに行くにはヘリが必要よ。今の私たちにはあそこに行くためのヘリが無いのよ?」
「そんな事どうにでもなるよ。それに言ってしまえばヘリは手配済みだしね。」
「どういうこと?」
「ノーザンライト州警に連絡用としてヘリを飛ばしてもらうのさ。で、それに俺の部下を乗せる。」
「そんな、そんな事したら今度こそケインさんタダじゃ済まないわよ。」
「俺自身のことより大切な事なんだよ。だから多少の無理はしてしまわないとな。」
それを聞いてシャロンは少し俯いて言った。
「元はと言えば、全て私が招いた事。ごめんなさい。」
「謝ることなんてないよ。謝るのはイーベルを確保してからにしてくれないかな。」
「....そうね。」
「まあ、イーベルを確保する事だけ今は考えよう。後のことは後で考えりゃそれで事足りるよ。」
ケインはそう言うと椅子に座り込んで、足を机に上げて置いた。シャロンもそのまま自分のデスクに座り、くつろぐケインに問いかけた。
「ケインさん、1つ質問があるんだけど。」
「うん?」
「確保しに行くって言ってたけど、課員を動員するの?」
そのシャロンの質問にケインはハッと何かを思い出しかのようにカレンダーを見た。ケインは慌ててジャケットを着始めた。
「ちょっとケインさん。質問に答えて。」
「課員は動員しないよ。俺の知り合いと、現地州警の力を借りるだけさ。それとその件でちょっと出掛けなきゃいけないから、俺今から出るね。夜までには帰るから。」
ケインはそれだけ言うと駆けって庁舎を出て駐車場に向かった。
シャロンは隊長室からケインの後ろ姿をじっと見つめていた。
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