憧れの世界でもう一度

五味

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二章 新しくも懐かしい日々

傭兵ギルドへ

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食後、飲み物を飲みながら、オユキとトモエはしばらくのんびりと話す。
それこそ、これまでの事もあれば、これからのことも。
そうしているうちに、自然と話題は今後の大まかな予定に及ぶ。

「いまいち物価が把握しきれませんね。旅に出るにあたって、どの程度のものが必要になるかも、想像がつきませんし。」
「そうですね。先ほどの受付の方に、尋ねればよかったかもしれません。」
「気が早いと、そう言われてしまいそうな気はしますが。」

そういって、苦笑いをしたオユキはふと気になることがあった。

「そういえば、狩猟者ギルドへの納品対象はどこまでなのでしょう。」
「そうですね、それも確認が必要ですね。」

旅先で討伐した魔物、そこから得られる物品の全てを持ち帰れるともわからない。
加えて、得られたものが食料であるなら、やはりその場で利用してしまう事にもなるだろう。
最初に聞いた説明では、全てを納品となっていたが、そのあたりの融通が利くのか、確かめなければならないだろうと、二人はそんなことを話し、食休みはもういいだろう、そう思えたところで、再び傭兵ギルドへと足を向ける。

暫く歩いてたどり着いた傭兵ギルドの外観は、狩猟者ギルドによく似た物であった。
ただこちらは、かなり奥行きがあり、また隣には開けた場所が用意され、そこで剣を振る者や、木でできた獲物を手に、模擬戦に励んでいる者もいる。
町に出入りする門からほど近く、奥まった場所にあるそこは、オユキとトモエにとっては、何処か懐かしい活気に満ちていた。
そんな様子を横目に見ながら、オユキとトモエが傭兵ギルドの中に入れば、狩猟者ギルドに比べると、簡素な内装が出迎える。
受付の数も、そこで待機している人員も、あちらに比べれば少ない。
外の活気に比べ、中はどこか閑散とした印象を受けるものである。

「おう、いらっしゃい。新顔だな、こっちで話を聞くぞ。」

さて、どこに行ったものか、オユキとトモエがそう考えてあたりを見回していると、受付に座る男から声がかかる。
そこに座るのは、よく鍛えこまれた体躯を持つ、壮年の人物であった。
重たい獲物を振り回しているのだろう、発達した筋肉、首から上腕にかけて、それが一目でわかるほど。
首回りなどは、下手をしたら、今のオユキの腰回りと同じか、それ以上あるのではないか、そう思わせるほどのものがある。
呼ばれたからにはと、トモエとオユキがそちらに近づくと、その男が改めて声をかけてくる。

「ようこそ、傭兵ギルドへ。本日はどういった用件で?」
「こちらで、訓練を受けられると、そう伺いまして。
 私どもは、昨日登録を終えたばかりの狩猟者ですので。」

そう、トモエが応えると、男は視線をオユキへと移す。
オユキにしても、彼の言いたいことはわかるので、腰につるした袋から、仮登録証を取り出して見せる。

「ああ。悪いな。少し見せてくれ。」

そういって、差し出された男の、ごつごつと、武器を振るだけではこうはなるまい、相応に徒手の心得もある、そう分かる手の上に、仮登録証をトモエとオユキが置く。
オユキはその際に、男と自分の手をどうしても比べてしまい、改めてずいぶんと小さくなったものだと、そう思ってしまう。男の手の半分ほど、それこそ簡単に握りつぶされてしまうだろう、そう見えてしまう。

「トモエとオユキか。」

男はそういって、取り出した用紙に何かを書き込む。受付表のようなものなのだろう。

「どうする、狩猟者の中には、傭兵ギルドに登録するものもいるが、登録もしていくか?」
「いえ、流石に今は考えていません。」
「ほう。いい心がけだな。そうだな、まずは狩猟者として経験を積むのがいいだろう。」

問いかけに、トモエが否定を返せば、男は楽し気に口元をゆがめる。

「さて、訓練だが、得物はそれでいいのか?」

言われて、オユキとトモエは顔を見合わせて、考える。
得物が選べるのであれば、いろいろ試してみたくもあるし、徒手の技も確認したい。
なにより、以前見につけた技術を改めて確認すると同時に、魔物、人ではない物に対する理合い、それを考え、学ぶそういった場と捉えているため、広範な知識であるほうが望ましい。
二人して、そんなことを考えながら、視線だけで意思疎通を行い、今度はオユキが声をかける。

「その、私達はこちらに渡ってきた者ですから、そういえば、伝わるのでしょうか。」
「ああ、異邦人か。なるほどな。それなら獲物にこだわらず、魔物相手といったところか。」

男には、それでオユキ達が求めていることが伝わったらしい。
受付はベテランがというのは、こちらも変わらないようだ。
少し考えこむそぶりを見せた男が、腕組みを解き、書類に何事かを書き込む。

「よし、いいだろう。時間はあるのか?
 午後一杯は使うことになるが。」
「はい、問題ありません。よろしくお願いします。」

トモエがそう答えれば、男は書類にまた何か着込み、二つの木片を取り出し、トモエに渡す。

「訓練料は、一人10ペセだ。
 あとはこの札を、あの扉から出た先の職員、出入り口に立っている奴がいるから、そいつに渡してくれ。
 そうすれば、訓練が受けられる。」
「ありがとうございます。それでは、こちらを。」

差し出された木札を受け取る前に、トモエが言われた金額を二人分置く。

「訓練とはいえ、命がかかっていることに対するものだからな。
 怪我をすることもある。それと、不調を感じたらすぐに伝えるように。
 実践じゃなくて訓練だからな、万全な状態でやるほうが効率がいい。
 もちろん、必要なら極限状態での訓練もあるがな。」

男は、そういって不穏な笑顔を浮かべながら、木札をトモエに渡す。

「そうですね。しばらくは近隣で活動しますが、離れる前にはそちらもお願いするかもしれません。」

オユキがそう答えると、男は意外そうにしながらも、楽しげに笑う。

「まったく、新人全部がお前みたいに弁えてくれればいいんだがな。
 さぁ、行ってこい。基礎訓練だからと言って、おろそかにするなよ。」
「ええ。基礎があってこそですから。」

トモエがそう答えれば、男は、それをわからない奴が多いから、死人が減らないんだよ、そういって手を振る。
オユキにしてもトモエにしても、見た目より経験をはるかに積んでいるから、そう身に染みている。
見た目通りの年齢の頃であれば、多少、若さに任せた何かがそこにはあったことだろう。
二人で、受付の男に頭を下げ、示された扉に向かう。
位置関係を考えれば、そちらは外から見えた場所ではなく、また別の施設なのだろう。
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