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10章 王都の祭り
反省会
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分かれてそれぞれと思えば、アベルによって纏めてのほうが良いと、そう言われたため皆で車座になる。中央にはしっかりと持たされた食事、勿論外で食べられるように工夫が凝らされている。残った武器の手入はどうにもならないため諦め、簡単に怪我の手当てを終えれば、全員でそれに手を伸ばす。
なんというか、本当に至れり尽くせりだ。未だに雑事を任せている相手には申し訳ないが、そばを通る時にそれぞれに声を掛けられる。
「実に見どころのある子供たちではないか。」
「全くだな。まだまだ若いところは目立つが。」
「その調子で精進を続けるといい。」
「しっかり休みなさい。我らに出来る事は、我らがやるのだから。」
掛けられる言葉は、基本的にはそのような物で、経験を感じさせるものだ。その辺りの人選も、短い時間だというのに、本当に良くしてくれている。改めてそれに感謝しながらも、オユキは少々少年たちの旺盛な食欲に、引き気味ではある。
運動のすぐ後は食べられない、そんな者も多く、現に今のオユキもそうなのだが。少年たちは動いた分はすぐに回復させねばと言わんばかりに、次々と口に運んでいる。
「ま、こうなるからな。」
どうやら、アベルが分けなかったのは、一先ず彼らの食欲を処理させるためであったらしい。
「何と言いますか。ええ。過去に覚えがあるとはいえ。」
「確か、異邦の人間が考察を残しているが、加護が定着するにも食事や休憩が必要になってるらしくてな。」
「身体ばかりではなく、ですか。」
「どうにも、栄養素意外に食事に含まれている物が有るとかないとか。花精を始めとして、噛んで食べるでは無く、食物そのものを吸収する種族がいる以上は、そんな話だったか。」
「ああ。そういえば、そのようなこともありましたか。」
オユキとしてはそれでルーリエラの振る舞いが納得できるものでもある。加えてセシリアが座る一角、その周囲の下ばえから色が抜けているのも。そうであればと飲み込むことは出来る。理屈はとんと見当もつかないが。
「まぁ、それでは皆さんも食べながらで。まずは総評のような物を。そうですね、アベルさんからのほうが良いですか。」
「お前らだと、個別になるからな。」
そうして、まずはと口火を切る。そしてその評価に対しては緊張感が生まれているが、そのような席でもない。
「正直、初陣と考えれば、ああ、集団戦、掃討戦としてだな。上出来すぎる。」
そして、褒められれば、立場もある人物だ、子供たちが特に喜ぶ。
「勿論、改善すべき箇所も多くあるが、事前にその説明を行っていないしな。それで結果は目的を達成して、負傷者にしても軽傷だけだ。結果を見れば、文句のつけようがない。だから総合評価としては、成功だな。」
何なら、もう少し苦戦があると踏んでいたが、そうアベルがこぼす。
それに対して、少しお腹も落ち着いたのか、食べるペースを落とし始めたアナから質問が出る。
「えっと、怪我をしたのにですか。」
「確かに、個別で、これまでなら無傷で倒せただろうが、状況が違う。」
「それは、そうですけど。」
「そのあたりはお前らも言われてるかもしれないが、トモエの教えの弊害でもある。」
そうはっきりと言われれば、トモエとしても反論はない。
「あー、そういや前あんちゃん言ってたな。回避が前提だからって。でも、怪我してないぞ。言った本人が。」
「そんな事直ぐにできるようになるわけがないだろ。アイリスにしろ怪我がないだけで、何度か素手で角払ったりしてるからな。」
「まぁ、そうね。それだけの経験がある、そういう事だから恥じるつもりはないけれど。」
「おー。」
そう、アイリスにしても、これまでの間に本人も気が付いているが、なんだかんだとそれに頼っている事が有ったのだ。だからこそ、普段の訓練、魔物がいない場であれば必ず指輪を付ける。だからこそ、別枠で能力がさらに伸びているのだろう。
近頃は、魔物の数が少ない場面では、試しにと指輪を付けている場面もあったりもする。それほどまでに、闘技大会までの短い期間に、懸けているらしい。
それは、その場で己の流派、教えこそが至上だと、そう示すつもりのトモエにしても、異なるやり方ではあるが、余念がないものだ。それに負けるつもりのないオユキにしても。だから、二人して乱戦の最中、一切の怪我を負うことなくという物だ。教えているからと、それに時間を使っているからと、己を磨くことまで投げ出しはしない物だ。
「しかし、アベル殿。」
「ま、お前らも分かってるだろうが、問題が無かったとは言わない。だが全体としての評価はそんなもんだ。」
「えっと、問題って言うと、やっぱりさがる時だよな。」
その辺りはもちろん自覚があるようだ。シグルドがそう言えば、揃って頷いている。
「だが、それが一番難しい所でもあってな。正直初回で出来ない、それを責められるようなもんでもないんだよ。」
「でも、それこそ失敗したら。」
「だから、監督役がいるんだよ。出来る様になるまでは。その辺りは悪い事じゃない。
勿論、この後、それぞれの改善点は伝えていくがな。」
そこでアベルの話は終わりのようで、次はとトモエが口を開く。少年たちにしてみれば、結局彼ら自身ではない、その事が引け目になっているのだろうが。その辺りは分かっていたことだ。
これまでにどうにか出来た事でも、囲まれ、そこに助けが来ない、それだけで慌てるのだから。それこそ経験不足、そういう物でしかない。
「さて、皆さんにとっては初めての経験だったでしょう。まずはお疲れ様でした。そして、後程狩猟者ギルドでも感謝の言葉を頂けるでしょう。それだけの事を為したのだと、まずはそれを誇りましょう。」
そして、トモエとしても個別で見ればそれぞれに言うべきこともあるが、全体としてはよくやっていた、本当にそう思うのだから。もう少し、色々と手を出さなければ、そんな事も考えていたのだ、最初は。
「先ほどのアベルさんの言葉にもありましたが、私の教えている事、特に今の段階では不都合の多いこともあったでしょう。それを良く互いに庇い合いました。」
「今の、段階、ですか。」
「ええ、私もオユキさんも、これまで3度ほどですか、見せたでしょう。」
そう、やってやれないことは無いのだ。ただ、それを後に回している。こちらの教えであれば、特に騎士、己の身までも盾にする、そんな相手とは優先順位が違う。
「流石に、皆さんにはまだ早いですし、手も足りませんから。」
トモエがそう話せば、不穏を感じている風ではあるが、それは良い。一体多数、休むことなく、相手だけが入れ替わりながら。そんな愉快な鍛錬もさせられたものだ。そして疲れたころには、待っていただけ、そのはずの相手が周囲から短刀を投げ込んだりしてくるのだ。
「えっと、まぁ、ならよかったよ。俺らだと、これが初めてのギルドからの依頼だしさ。」
「ええ、ですから、戻った時、その時は喜びましょう。結果は上々。目的の達成という意味では、言うまでもありません。ギルドの方々の想定、それはずいぶんと超えていますからね。」
そう、最初は見なかった顔、追加の荷台、そのような物まで手配されているのだ。ならば成果は十二分すぎるほどだ。そうしてトモエが話しを締めれば、既に持たされた食事も無くなっている。物足りなさそうにはしているが、戻る前にまだ話はある。
「さて、それでは個別の話をしましょうか。まず、シグルド君。」
そう、全体の結果、その成功。その話が終われば、個別の失敗だ。
「あー、前に出すぎた、そうは思ってる。」
「はい。そうですね。」
そして、それぞれに良い所と悪いことを順に話していく。それぞれ自覚があるところではあるようで、受け答えも早い。そして、それが終われば、どう改善するかという話になるのだが。
「ただ、改善策、悪かったところを直すというのは。」
「ああ。今回の事を頭に入れて繰り返す、それしかないからな。」
トモエとはまた異なる、指揮をする立場、それも経験豊富な立場としてアベルからも、それぞれに言葉はあったのだが。結論はそうなる。
「あー、そうなるのか。確かに、じゃあやれって言われても、無理だってのはわかるけど。」
「確かにな。」
「うん。流石に囲まれちゃうと。そうしないように動かなきゃってのはわかるけど。」
「私、基本的に後ろにいるから、私が言ったほうが良いのかな。」
「いや、今日はリーアも両手剣だったしな。」
それぞれに、思い思いの事を話し始めるが、ただそれも終わりとしなければいけない。荷物についても、流石にこうして1時間以上も休んでいれば、片が付いているのだから。
「では、話はまたあとで。今は移動としましょうか。」
「おー、そうだな。」
「後は、そうですね。戻ってから今日は疲れもあるでしょうから、そちらで改めてゆっくりと話しましょう。それぞれ消化すれば、また思うところも出て来るでしょうから。」
「ま、移動中も、話は出来るし。つっても、役割分担って言うのは考えなきゃだよな。」
さて、そんな少年の言葉は正鵠を得ているが、そもそもそれをするにもまだ早いのだ。これからそれも時間をかけて、それぞれの得意を把握しながら作っていくしかない。
なんというか、本当に至れり尽くせりだ。未だに雑事を任せている相手には申し訳ないが、そばを通る時にそれぞれに声を掛けられる。
「実に見どころのある子供たちではないか。」
「全くだな。まだまだ若いところは目立つが。」
「その調子で精進を続けるといい。」
「しっかり休みなさい。我らに出来る事は、我らがやるのだから。」
掛けられる言葉は、基本的にはそのような物で、経験を感じさせるものだ。その辺りの人選も、短い時間だというのに、本当に良くしてくれている。改めてそれに感謝しながらも、オユキは少々少年たちの旺盛な食欲に、引き気味ではある。
運動のすぐ後は食べられない、そんな者も多く、現に今のオユキもそうなのだが。少年たちは動いた分はすぐに回復させねばと言わんばかりに、次々と口に運んでいる。
「ま、こうなるからな。」
どうやら、アベルが分けなかったのは、一先ず彼らの食欲を処理させるためであったらしい。
「何と言いますか。ええ。過去に覚えがあるとはいえ。」
「確か、異邦の人間が考察を残しているが、加護が定着するにも食事や休憩が必要になってるらしくてな。」
「身体ばかりではなく、ですか。」
「どうにも、栄養素意外に食事に含まれている物が有るとかないとか。花精を始めとして、噛んで食べるでは無く、食物そのものを吸収する種族がいる以上は、そんな話だったか。」
「ああ。そういえば、そのようなこともありましたか。」
オユキとしてはそれでルーリエラの振る舞いが納得できるものでもある。加えてセシリアが座る一角、その周囲の下ばえから色が抜けているのも。そうであればと飲み込むことは出来る。理屈はとんと見当もつかないが。
「まぁ、それでは皆さんも食べながらで。まずは総評のような物を。そうですね、アベルさんからのほうが良いですか。」
「お前らだと、個別になるからな。」
そうして、まずはと口火を切る。そしてその評価に対しては緊張感が生まれているが、そのような席でもない。
「正直、初陣と考えれば、ああ、集団戦、掃討戦としてだな。上出来すぎる。」
そして、褒められれば、立場もある人物だ、子供たちが特に喜ぶ。
「勿論、改善すべき箇所も多くあるが、事前にその説明を行っていないしな。それで結果は目的を達成して、負傷者にしても軽傷だけだ。結果を見れば、文句のつけようがない。だから総合評価としては、成功だな。」
何なら、もう少し苦戦があると踏んでいたが、そうアベルがこぼす。
それに対して、少しお腹も落ち着いたのか、食べるペースを落とし始めたアナから質問が出る。
「えっと、怪我をしたのにですか。」
「確かに、個別で、これまでなら無傷で倒せただろうが、状況が違う。」
「それは、そうですけど。」
「そのあたりはお前らも言われてるかもしれないが、トモエの教えの弊害でもある。」
そうはっきりと言われれば、トモエとしても反論はない。
「あー、そういや前あんちゃん言ってたな。回避が前提だからって。でも、怪我してないぞ。言った本人が。」
「そんな事直ぐにできるようになるわけがないだろ。アイリスにしろ怪我がないだけで、何度か素手で角払ったりしてるからな。」
「まぁ、そうね。それだけの経験がある、そういう事だから恥じるつもりはないけれど。」
「おー。」
そう、アイリスにしても、これまでの間に本人も気が付いているが、なんだかんだとそれに頼っている事が有ったのだ。だからこそ、普段の訓練、魔物がいない場であれば必ず指輪を付ける。だからこそ、別枠で能力がさらに伸びているのだろう。
近頃は、魔物の数が少ない場面では、試しにと指輪を付けている場面もあったりもする。それほどまでに、闘技大会までの短い期間に、懸けているらしい。
それは、その場で己の流派、教えこそが至上だと、そう示すつもりのトモエにしても、異なるやり方ではあるが、余念がないものだ。それに負けるつもりのないオユキにしても。だから、二人して乱戦の最中、一切の怪我を負うことなくという物だ。教えているからと、それに時間を使っているからと、己を磨くことまで投げ出しはしない物だ。
「しかし、アベル殿。」
「ま、お前らも分かってるだろうが、問題が無かったとは言わない。だが全体としての評価はそんなもんだ。」
「えっと、問題って言うと、やっぱりさがる時だよな。」
その辺りはもちろん自覚があるようだ。シグルドがそう言えば、揃って頷いている。
「だが、それが一番難しい所でもあってな。正直初回で出来ない、それを責められるようなもんでもないんだよ。」
「でも、それこそ失敗したら。」
「だから、監督役がいるんだよ。出来る様になるまでは。その辺りは悪い事じゃない。
勿論、この後、それぞれの改善点は伝えていくがな。」
そこでアベルの話は終わりのようで、次はとトモエが口を開く。少年たちにしてみれば、結局彼ら自身ではない、その事が引け目になっているのだろうが。その辺りは分かっていたことだ。
これまでにどうにか出来た事でも、囲まれ、そこに助けが来ない、それだけで慌てるのだから。それこそ経験不足、そういう物でしかない。
「さて、皆さんにとっては初めての経験だったでしょう。まずはお疲れ様でした。そして、後程狩猟者ギルドでも感謝の言葉を頂けるでしょう。それだけの事を為したのだと、まずはそれを誇りましょう。」
そして、トモエとしても個別で見ればそれぞれに言うべきこともあるが、全体としてはよくやっていた、本当にそう思うのだから。もう少し、色々と手を出さなければ、そんな事も考えていたのだ、最初は。
「先ほどのアベルさんの言葉にもありましたが、私の教えている事、特に今の段階では不都合の多いこともあったでしょう。それを良く互いに庇い合いました。」
「今の、段階、ですか。」
「ええ、私もオユキさんも、これまで3度ほどですか、見せたでしょう。」
そう、やってやれないことは無いのだ。ただ、それを後に回している。こちらの教えであれば、特に騎士、己の身までも盾にする、そんな相手とは優先順位が違う。
「流石に、皆さんにはまだ早いですし、手も足りませんから。」
トモエがそう話せば、不穏を感じている風ではあるが、それは良い。一体多数、休むことなく、相手だけが入れ替わりながら。そんな愉快な鍛錬もさせられたものだ。そして疲れたころには、待っていただけ、そのはずの相手が周囲から短刀を投げ込んだりしてくるのだ。
「えっと、まぁ、ならよかったよ。俺らだと、これが初めてのギルドからの依頼だしさ。」
「ええ、ですから、戻った時、その時は喜びましょう。結果は上々。目的の達成という意味では、言うまでもありません。ギルドの方々の想定、それはずいぶんと超えていますからね。」
そう、最初は見なかった顔、追加の荷台、そのような物まで手配されているのだ。ならば成果は十二分すぎるほどだ。そうしてトモエが話しを締めれば、既に持たされた食事も無くなっている。物足りなさそうにはしているが、戻る前にまだ話はある。
「さて、それでは個別の話をしましょうか。まず、シグルド君。」
そう、全体の結果、その成功。その話が終われば、個別の失敗だ。
「あー、前に出すぎた、そうは思ってる。」
「はい。そうですね。」
そして、それぞれに良い所と悪いことを順に話していく。それぞれ自覚があるところではあるようで、受け答えも早い。そして、それが終われば、どう改善するかという話になるのだが。
「ただ、改善策、悪かったところを直すというのは。」
「ああ。今回の事を頭に入れて繰り返す、それしかないからな。」
トモエとはまた異なる、指揮をする立場、それも経験豊富な立場としてアベルからも、それぞれに言葉はあったのだが。結論はそうなる。
「あー、そうなるのか。確かに、じゃあやれって言われても、無理だってのはわかるけど。」
「確かにな。」
「うん。流石に囲まれちゃうと。そうしないように動かなきゃってのはわかるけど。」
「私、基本的に後ろにいるから、私が言ったほうが良いのかな。」
「いや、今日はリーアも両手剣だったしな。」
それぞれに、思い思いの事を話し始めるが、ただそれも終わりとしなければいけない。荷物についても、流石にこうして1時間以上も休んでいれば、片が付いているのだから。
「では、話はまたあとで。今は移動としましょうか。」
「おー、そうだな。」
「後は、そうですね。戻ってから今日は疲れもあるでしょうから、そちらで改めてゆっくりと話しましょう。それぞれ消化すれば、また思うところも出て来るでしょうから。」
「ま、移動中も、話は出来るし。つっても、役割分担って言うのは考えなきゃだよな。」
さて、そんな少年の言葉は正鵠を得ているが、そもそもそれをするにもまだ早いのだ。これからそれも時間をかけて、それぞれの得意を把握しながら作っていくしかない。
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