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17章 次なる旅は
狐が化かすには
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「そう、なのよね。」
さて、アイリスの生国、テトラポダに存在する神殿について言及した所で、なにやら反応が鈍い。
「先ほど、彼の神も臨席を賜ったからな。あれは、お前らの方かとも思ったが。」
「確かに、これまで数度お見かけした時よりも、聊かご機嫌が良いように見受けられました。これまでの成果が確かに結実している、それも一つとは思いますが。」
「確かに、変化があるのは今のところマリーア公爵領と、王都。そこが主体ではだが。」
何やら、アベルの言葉にオユキとしては引っかかるところもある。
「主体、ですか。」
「そういや、その辺りはそこまで興味を持っていなかったか。」
「興味が無いわけでもありませんが、まだ時間がかかるだろうと。」
「国内で言えば、何処も動きはある。」
そして、少しばかりアベルから簡単に説明をされる。
人口の問題が解決した。そう考えている者ばかりではないというのが、非常に大きいのだと。
また、神々の恩寵というのは、誰にしても得たい。そこで、オユキとトモエが短期間でここまでの事を引き起こしているのなら、それを追いかけようと思う者達というのは、決して少なくは無いのだと。
「何やら、もの言いたげなとは思いますが、成程。」
「確かに、能力として抜けた方々は多いでしょうから、騎士様方から数人を回せば試しには十分ですか。」
「ああ。それもあって王都で多くの者が軍事物資を買い漁ったわけだな。」
「そして、王都の食糧不足、その解消のために私たちが後にしてからも動きはあったでしょうから。」
加えて、王都で食料の獲得を急がねばならない期間があった。
色々とマリーア公爵が情報を差し出している先、王家はそれらをよく使った事であろう。
「しかし、解せませんね。」
ただ、そうした流れを聞いたうえでオユキとしては納得がいかない事がある。
「始まりの町、あちらに迄足を延ばす方が少ないように思えましたが。」
「ああ、その事か。ふむ。アイリス。」
「いいわよ。私は知ってるもの。というか、あなた達、前にルイスがいるときに気が付いているようだったけど。」
「マリーア公爵と王家から、わざわざと、そのように考えてしまいますから。」
如何に遠隔地との情報交換が、一部の者達で出来るとしても。それが一部に留められている背景を考えれば。
「求めた者達は、当然対価を払っている。」
「マリーア公爵には、随分と手間をかけていますね。」
つまるところ、その辺りまで含めてマリーア公爵が王家に対して支払ったという事であるらしい。
それだけ、戦と武技の神からの短剣をマリーア公爵が重く見たという事なのであろう。少なくとも、それを得られる者達を抱え込み、王家からの干渉を排除すると、そう公爵が決めた段では御言葉の小箱と短剣しかなかったのだから。何となれば、それを決めた後に、王都でさらに色々と難物を持ち込んだ事もある。恐らく、先に取り決めが出来てしまっているため、もはや無理はいえない、それはお互いにとなっているのだろう。
「話はそれましたが、アイリスさん達は食事を楽しまれているわけですし。」
「ああ。その事ね。一応、代表を出して彼の神に、それはしているのだけれどやっぱり祖霊なのよね。」
「そうなりますか。」
明らかに人よりも優れた力。それは祖霊に連なるからこそ。だからこそ、力の源である相手を、それぞれの種族が崇める。与えられた物を誇りに思うからこそ。
「さて、話を戻しますが、やはりアイリスさん達の語る祖霊。そう言った相手は基本的に。」
「まぁ、俺らの暮らす場とは、得意な環境はそちらに依るわな。」
「祖たる獣迄遡ればそうなるけれど、流石に私たちも森の中でよりは、家を好むわよ。」
「料理を好む、その様子を見れば勿論そうでしょう。しかし、由来の部分ですね。」
生憎と、この狐がオユキとトモエを化かすには年季が足りない。年季という意味では、十分だが、経験が不足している。アベルが彼女の補助をするのであればまた話も変わるが、生憎とアベルという男が優先するのはアイリスではなく、神国と武国だ。利益が相反しないのであれば、そこに譲歩は生まれるのだろうが。
「イリアさんの種族を森猫と断言したこともあります。しかし、トモエさんの含むものについては自信が無い。」
お前では、不足がある。前置きとしてオユキがそう告げれば、どうやら本人にも自覚があるようでため息などをついたりしている。
「伏せようと、秘していようと、そういった物を暴き立てるのは趣味ではありませんが。」
しかし、それが必要であると、そう考えたのならばオユキは止めない。如何にカナリアの勘気を買うと考えていたとしても、彼女たちの種族の来歴に踏み込んだように。
「アイリス様方の祖霊、彼のお方が複数の神々に由縁を持つという話もありましたから。」
「ええ。祖霊様が語られた言葉を、今更否定はしないわよ。貴女も気が付いている、そう聞いているのだからそれは話しましょう。」
父に戦と武技とされる神、力の一部は木々と狩猟に連なり、冬と眠りにも係わりがあるのだとアイリスから。ただ、その前提にしても、トモエが疑念を持っていた。
「ただ、それを良しとするのであれば。」
「ああ。成程。そうなるのか。」
「はい。しかし、カナリアさんとは違い、私どものいた世界は滅びていないはずなのですよね。」
それこそ、死後相応のどころでは無い年月が経ち、熱的な死と終末論の一つを宇宙そのものが得ていたならばわからないものだが。そうなってくると、創造神と呼ばれる相手、それがまた分からないと論理的な破綻がそこにはある。
「申し訳ありません、どうにも思考があちらこちらに。」
オユキからは、主題からどうしてもそれがちな会話の流れを一度謝り、元に戻す。
「まぁ、いよいよそういった部分も推察するには必要だという事なんだろうが。」
「恐らくは、といった形ではありますが。」
どうにも、これまでも治らない悪い癖、そちらにオユキが切欠を与えられるたびに流れるのが止められぬのだろうと、トモエがそれを微笑ましげに見ながら場の流れを引き取る。オユキ自身、そうしている時間が楽しいのだ。そして、それを己に許す程度には、この場にいる者達にも気を許しているのだからと。
「私たちでも、移動の最中話し合いを持ちました。その結論の一つとして、やはり始まりの町、あちらで相応に大事というのはこれからも起こっていくのだろうと。そして、それについても今回は他国との関係、その折衝に骨を折る以上はその対価を求める王家の思惑があるだろうと。」
「それでか。」
「はい。タルヤ様とナザレア様。この二人については、思惑というものを考えざるを得ません。」
「タルヤ殿については、二代陛下の御世からと記録が残っているのだが。」
花精人と比べるべくもない寿命を持つ相手は、それを隠しもしないだろう。
「問題、と言いますか今回疑問を持っているのは、ナザレア様がどれだけ長くあるのか、それについてもです。」
「確かにな。獣の特徴を持つ相手は、基本的に俺らに比べて寿命は短い。」
「そうでしょうとも。それを解決すると言いますか、それを否定する来歴として分かりやすいものは一つあります。」
つまるところ、当方に足を運んだ者達が。言葉というものについて、経験が浅いからこそ起きたともいわれている、誤解。それを来歴とする存在。木になる羊。花精よりも寿命がはるかに長いと、そうされている木精にも係わりがあるとすれば、実にわかりやすい。ルーリエラに来歴を明言されたセシリア、そんな彼女が始まりの町に戻ってから用意された事。納得がいきやすい、分かりやすい思惑というものはそこにある。
「しかし、そちらは誤解が伝承の下なのです。」
「なるほど。その前提を置けば推論として単純にすぎるか。」
そして話しながらも、トモエもアベルもアイリスの反応を伺っている。相手は隠そうとしているのだが、事これに限らず、非常に分かりやすい相手に。それこそ、見ず知らずの相手であれば問題が無いのだが、それなりに慣れた相手では、アイリスは余所行きの態度を取り続けるだけの経験が無いからと。
普段であれば、こういった先々の話をしていれば、所々口を挟むというのに、ただ黙して語らぬ当たり実にわかりやすい。
「加えて、雌羊であれば、一般的に角が無いとは思うのですが。」
「そう言えば、オユキもそんな事を言っていたが、こちらではそんな事は。」
「ですが、神性として私たちの世界に由縁を持つのであれば、無視が出来る要素ではありませんから。」
オユキとトモエがそれを気にする理由は異なる。オユキは雌には無いと、そのように考えている。品種によっては、それも正しくはある。確かに、ナザレアの持つ角というのは牡羊の特徴でもある。だが、実際には雌の羊にしても角は持つのだ。短く真っ直ぐな物であることが多いのだが。
「となると、オユキとは違って、トモエにはある程度予想があるのか。」
「あるには、ありますが。」
ただ、それが正解だとすれば、トモエとしては色々と不安にもなる。だからこそ、オユキにはっきりと告げていない事もある。
「ただ、私が覚えている来歴を考えた時には、少し幅が広すぎるんですよね。」
同一とされている相手が多い。そんな相手ではないかと、そうトモエは考えている。
「幅が、広い、か。」
「はい。」
語源が全てを意味するような、そのような神性となる。
「祖霊様も、貴方が語ったものだけでは無いわよ。」
そして、常に反応を伺っていた相手、恐らく伏せられないと諦めたのだろう。観念したかのように、一言だけ返ってくる。オユキの方でもそれを確かに聞いているようではあるが、今はトモエが場の流れを引き取ったこともあり、別の事を既に考えているようではある。つまりは、トモエが次なる大事、それに予想される相手がどのような事を好むのか、それを話した事もあり今後の段取りにすっかりと思考が傾いている事だろう。
「では、後確信を得るために行うべき確認は、ナザレア様が治癒を得意とするか、でしょうか。」
流石に、今度の旅ではトモエは勿論としてオユキにしても怪我をするような状況が生まれなかった。
「王家の側近は、治癒の類は当然としているぞ。」
「となれば、一先ずそちらを確度の高いものとして備えましょうか。今度は、私にできる事は何もありませんが。」
予定を変えた。そして、そこで用意されたのは踊り子と歌姫。料理人は、元々の予定にいたのだ。そして、そのどちらも女性である。
さて、アイリスの生国、テトラポダに存在する神殿について言及した所で、なにやら反応が鈍い。
「先ほど、彼の神も臨席を賜ったからな。あれは、お前らの方かとも思ったが。」
「確かに、これまで数度お見かけした時よりも、聊かご機嫌が良いように見受けられました。これまでの成果が確かに結実している、それも一つとは思いますが。」
「確かに、変化があるのは今のところマリーア公爵領と、王都。そこが主体ではだが。」
何やら、アベルの言葉にオユキとしては引っかかるところもある。
「主体、ですか。」
「そういや、その辺りはそこまで興味を持っていなかったか。」
「興味が無いわけでもありませんが、まだ時間がかかるだろうと。」
「国内で言えば、何処も動きはある。」
そして、少しばかりアベルから簡単に説明をされる。
人口の問題が解決した。そう考えている者ばかりではないというのが、非常に大きいのだと。
また、神々の恩寵というのは、誰にしても得たい。そこで、オユキとトモエが短期間でここまでの事を引き起こしているのなら、それを追いかけようと思う者達というのは、決して少なくは無いのだと。
「何やら、もの言いたげなとは思いますが、成程。」
「確かに、能力として抜けた方々は多いでしょうから、騎士様方から数人を回せば試しには十分ですか。」
「ああ。それもあって王都で多くの者が軍事物資を買い漁ったわけだな。」
「そして、王都の食糧不足、その解消のために私たちが後にしてからも動きはあったでしょうから。」
加えて、王都で食料の獲得を急がねばならない期間があった。
色々とマリーア公爵が情報を差し出している先、王家はそれらをよく使った事であろう。
「しかし、解せませんね。」
ただ、そうした流れを聞いたうえでオユキとしては納得がいかない事がある。
「始まりの町、あちらに迄足を延ばす方が少ないように思えましたが。」
「ああ、その事か。ふむ。アイリス。」
「いいわよ。私は知ってるもの。というか、あなた達、前にルイスがいるときに気が付いているようだったけど。」
「マリーア公爵と王家から、わざわざと、そのように考えてしまいますから。」
如何に遠隔地との情報交換が、一部の者達で出来るとしても。それが一部に留められている背景を考えれば。
「求めた者達は、当然対価を払っている。」
「マリーア公爵には、随分と手間をかけていますね。」
つまるところ、その辺りまで含めてマリーア公爵が王家に対して支払ったという事であるらしい。
それだけ、戦と武技の神からの短剣をマリーア公爵が重く見たという事なのであろう。少なくとも、それを得られる者達を抱え込み、王家からの干渉を排除すると、そう公爵が決めた段では御言葉の小箱と短剣しかなかったのだから。何となれば、それを決めた後に、王都でさらに色々と難物を持ち込んだ事もある。恐らく、先に取り決めが出来てしまっているため、もはや無理はいえない、それはお互いにとなっているのだろう。
「話はそれましたが、アイリスさん達は食事を楽しまれているわけですし。」
「ああ。その事ね。一応、代表を出して彼の神に、それはしているのだけれどやっぱり祖霊なのよね。」
「そうなりますか。」
明らかに人よりも優れた力。それは祖霊に連なるからこそ。だからこそ、力の源である相手を、それぞれの種族が崇める。与えられた物を誇りに思うからこそ。
「さて、話を戻しますが、やはりアイリスさん達の語る祖霊。そう言った相手は基本的に。」
「まぁ、俺らの暮らす場とは、得意な環境はそちらに依るわな。」
「祖たる獣迄遡ればそうなるけれど、流石に私たちも森の中でよりは、家を好むわよ。」
「料理を好む、その様子を見れば勿論そうでしょう。しかし、由来の部分ですね。」
生憎と、この狐がオユキとトモエを化かすには年季が足りない。年季という意味では、十分だが、経験が不足している。アベルが彼女の補助をするのであればまた話も変わるが、生憎とアベルという男が優先するのはアイリスではなく、神国と武国だ。利益が相反しないのであれば、そこに譲歩は生まれるのだろうが。
「イリアさんの種族を森猫と断言したこともあります。しかし、トモエさんの含むものについては自信が無い。」
お前では、不足がある。前置きとしてオユキがそう告げれば、どうやら本人にも自覚があるようでため息などをついたりしている。
「伏せようと、秘していようと、そういった物を暴き立てるのは趣味ではありませんが。」
しかし、それが必要であると、そう考えたのならばオユキは止めない。如何にカナリアの勘気を買うと考えていたとしても、彼女たちの種族の来歴に踏み込んだように。
「アイリス様方の祖霊、彼のお方が複数の神々に由縁を持つという話もありましたから。」
「ええ。祖霊様が語られた言葉を、今更否定はしないわよ。貴女も気が付いている、そう聞いているのだからそれは話しましょう。」
父に戦と武技とされる神、力の一部は木々と狩猟に連なり、冬と眠りにも係わりがあるのだとアイリスから。ただ、その前提にしても、トモエが疑念を持っていた。
「ただ、それを良しとするのであれば。」
「ああ。成程。そうなるのか。」
「はい。しかし、カナリアさんとは違い、私どものいた世界は滅びていないはずなのですよね。」
それこそ、死後相応のどころでは無い年月が経ち、熱的な死と終末論の一つを宇宙そのものが得ていたならばわからないものだが。そうなってくると、創造神と呼ばれる相手、それがまた分からないと論理的な破綻がそこにはある。
「申し訳ありません、どうにも思考があちらこちらに。」
オユキからは、主題からどうしてもそれがちな会話の流れを一度謝り、元に戻す。
「まぁ、いよいよそういった部分も推察するには必要だという事なんだろうが。」
「恐らくは、といった形ではありますが。」
どうにも、これまでも治らない悪い癖、そちらにオユキが切欠を与えられるたびに流れるのが止められぬのだろうと、トモエがそれを微笑ましげに見ながら場の流れを引き取る。オユキ自身、そうしている時間が楽しいのだ。そして、それを己に許す程度には、この場にいる者達にも気を許しているのだからと。
「私たちでも、移動の最中話し合いを持ちました。その結論の一つとして、やはり始まりの町、あちらで相応に大事というのはこれからも起こっていくのだろうと。そして、それについても今回は他国との関係、その折衝に骨を折る以上はその対価を求める王家の思惑があるだろうと。」
「それでか。」
「はい。タルヤ様とナザレア様。この二人については、思惑というものを考えざるを得ません。」
「タルヤ殿については、二代陛下の御世からと記録が残っているのだが。」
花精人と比べるべくもない寿命を持つ相手は、それを隠しもしないだろう。
「問題、と言いますか今回疑問を持っているのは、ナザレア様がどれだけ長くあるのか、それについてもです。」
「確かにな。獣の特徴を持つ相手は、基本的に俺らに比べて寿命は短い。」
「そうでしょうとも。それを解決すると言いますか、それを否定する来歴として分かりやすいものは一つあります。」
つまるところ、当方に足を運んだ者達が。言葉というものについて、経験が浅いからこそ起きたともいわれている、誤解。それを来歴とする存在。木になる羊。花精よりも寿命がはるかに長いと、そうされている木精にも係わりがあるとすれば、実にわかりやすい。ルーリエラに来歴を明言されたセシリア、そんな彼女が始まりの町に戻ってから用意された事。納得がいきやすい、分かりやすい思惑というものはそこにある。
「しかし、そちらは誤解が伝承の下なのです。」
「なるほど。その前提を置けば推論として単純にすぎるか。」
そして話しながらも、トモエもアベルもアイリスの反応を伺っている。相手は隠そうとしているのだが、事これに限らず、非常に分かりやすい相手に。それこそ、見ず知らずの相手であれば問題が無いのだが、それなりに慣れた相手では、アイリスは余所行きの態度を取り続けるだけの経験が無いからと。
普段であれば、こういった先々の話をしていれば、所々口を挟むというのに、ただ黙して語らぬ当たり実にわかりやすい。
「加えて、雌羊であれば、一般的に角が無いとは思うのですが。」
「そう言えば、オユキもそんな事を言っていたが、こちらではそんな事は。」
「ですが、神性として私たちの世界に由縁を持つのであれば、無視が出来る要素ではありませんから。」
オユキとトモエがそれを気にする理由は異なる。オユキは雌には無いと、そのように考えている。品種によっては、それも正しくはある。確かに、ナザレアの持つ角というのは牡羊の特徴でもある。だが、実際には雌の羊にしても角は持つのだ。短く真っ直ぐな物であることが多いのだが。
「となると、オユキとは違って、トモエにはある程度予想があるのか。」
「あるには、ありますが。」
ただ、それが正解だとすれば、トモエとしては色々と不安にもなる。だからこそ、オユキにはっきりと告げていない事もある。
「ただ、私が覚えている来歴を考えた時には、少し幅が広すぎるんですよね。」
同一とされている相手が多い。そんな相手ではないかと、そうトモエは考えている。
「幅が、広い、か。」
「はい。」
語源が全てを意味するような、そのような神性となる。
「祖霊様も、貴方が語ったものだけでは無いわよ。」
そして、常に反応を伺っていた相手、恐らく伏せられないと諦めたのだろう。観念したかのように、一言だけ返ってくる。オユキの方でもそれを確かに聞いているようではあるが、今はトモエが場の流れを引き取ったこともあり、別の事を既に考えているようではある。つまりは、トモエが次なる大事、それに予想される相手がどのような事を好むのか、それを話した事もあり今後の段取りにすっかりと思考が傾いている事だろう。
「では、後確信を得るために行うべき確認は、ナザレア様が治癒を得意とするか、でしょうか。」
流石に、今度の旅ではトモエは勿論としてオユキにしても怪我をするような状況が生まれなかった。
「王家の側近は、治癒の類は当然としているぞ。」
「となれば、一先ずそちらを確度の高いものとして備えましょうか。今度は、私にできる事は何もありませんが。」
予定を変えた。そして、そこで用意されたのは踊り子と歌姫。料理人は、元々の予定にいたのだ。そして、そのどちらも女性である。
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