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30章 豊穣祭
のんびりと
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生憎とトモエが居なければ現状満足に着付けが出来るものはいない。しかし、トモエにしても茶会と侍女たちが認識する場に参加するには、それなりの服に着替える必要もある。オユキとどちらが準備に時間がかかるのかと言われれば、また難しいところではある。だが、アルノーに話を通したうえで、さらにオユキと同じ流れを作ってほとんど同じというのなら、要はそういう事なのだろう。
「ええと、皆様着替えられたのですね」
そして、揃って席につけばと言うよりも、オユキが主催として席に着くのを待っていたのだと言わんばかりに、他が順次入ってくる。そして、揃った相手を改めて見回してみれば、寧ろオユキとしては居心地のよくない空間とでもいえばいいのだろう。アベルが入れ歯などとは考えるのだが、生憎と彼は今もユニエス公爵としての仕事もあるため不在。アルノーについては、いよいよこの場に供するための料理を今も忙しく。さらには、夜の正餐に向けた準備もある。つまりは、並ぶ顔というのはどこまでも女性ばかり。トモエ一人が男性だと、中身はどうであれそういった状態に。
「当たり前でしょう」
「あの、オユキさん。流石に子爵様から招待を受けた席ともなれば、相応に必要な身嗜みと言うのがありますし」
「ええと、そのあたりは、まぁそうなのでしょうとしか。と、言いますか、そこまで仰々しい物にするつもりはなかったのですが」
アイリスとカナリアから揃ってそのような話をされるのだが、オユキとしてはそれに対して何かを返せるはずもない。ただ、用意されている飲み物に改めて口をつけてそれでお終い。こうした席であれば、揃って同じ飲み物を。そのようにオユキは考えていたのだが、ここまでの間は基本的に異なるものがファンタズマ子爵家では用意されていた。それこそ、オユキが殊更好んでいるアルノーの手によって用意されているトレファクトコーヒー。トモエには、こちらで一般的とされているニルギリによく似てはいるのだが、色味のもう少し薄い物。来客向けに何を出しているのかについては、流石にトモエもオユキも漂う香りだけで判別できるようなものではない。ただ、今は揃ってジャスミンを使用した物。それこそカリンに言わせれば、どうにも本来のモーリーフアチャーとは少々異なっているらしいのだが、流石にトモエはともかくオユキはそこまで理解もできはしない。
「こちらのお茶が用意されていると言う事は、そういう事なのね」
「そのあたりは、どうなのでしょう」
アイリスの言葉に、オユキがトモエに視線を向ければ頷き一つ。
「飲茶、ええと、点心を用意した席と言う事のようです」
「ありがたいのだけれど、手間はかかるでしょうに」
「一応、事前に準備して魔国から持ち帰った冷凍用の魔道具ですね、そちらも併用して色々と手間を省いているとは聞いていますが」
オユキの単純な思考として、冷凍と言うのはどうしたところで品質に難が出ると、そうした理解が有る。ある側面では確かに正しくはあるのだが、アルノーほどになってしまえば、寧ろそこに多くの利点を見出すものだ。客人もいる、それどころか雇用主もいる。何より、彼のプライドに懸けて。
「丁稚の子たちは、そういえばいつ頃に」
「流石に引き抜きであったりは、公爵様を優先としたいのですが」
「私が先に話して、それを良しとする気は無いのね」
「それとこれとは、やはり話が違いますから」
さて、何やらすっかりと狙われている者たちもいるらしいのだが、そのあたりの話は是非とも公爵を通してくれとしかオユキからは言えない。勿論、本人たちが望めばその限りでは無いのだが今はまだ早いとでもいえばいいのだろうか。そもそも、アルノーに教育の進捗をこれまでに何度か聞いたこともあるのだが、そちらについてはまだまだ時間がかかるとそう言われたこともある。実際には、彼からの判断を待たずにと言う事もあるかもしれないが、そればかりは関係性の問題とでもいえるものではある。
「来たわね」
「相変わらず、鼻が良いですね」
「私だけではなく、こっちの二人も気が付いているわよ」
「改めて、イリアさんとこうして席を同じくさせて頂くのは、初めてでしたか」
アイリスがさりげなく水を向けてくれたこともある。相も変わらず、こうした席での振る舞いについてはオユキよりも優れているのだなと、そうして内心で納得を作った上で。イリアの立場がまだわからないからこそ、彼女を知らないだろう相手に向けて。
「こちらは、イリアさん。私よりもそちらのカナリアさんの方が詳しいだろうとは思うのですが、こちらに来たばかりの頃にご縁を得てそれからもこうして何かと」
どちらかと言えば、カナリアのほうが付き合いが長いだろうとさらに話をまわす。簡単に、それこそ互いに名前は知っているのだがそれ以上はオユキにしても知らないのだ。森猫というのにしても、アイリスから言われてそうだと考えているだけ。疑う訳では無いのだが、彼女の鼻にしても匂いを基準とする以上は知らぬものに対して働く訳も無い。オユキの種族についてはいよいよ不明だと、そうした話ではあったのだ。今ではすっかありと、妖魔と呼ばれる種族であり名前が示す通りの伝承がと言う事ではあるらしいのだが。
「ええと、私が神国に来てから、あの時は確かパッセルが送ってくれたんですけど、そこからの付き合いで」
「あの、カナリアさん、そういえば魔国からどうやって移動したのかを訪ねていませんでしたが」
今の言葉、カナリアの話の中にどうにも見過ごせないものが。
「ああ、そういえばそのあたり話していませんでしたっけ。同族に送って貰ったんですよね」
「その、送るというのは」
「よく見ているかと思いますが、こう、抱えて」
「オユキ、貴女は知らないのでしょうけれど、空を飛ぶことが叶うのであれば速度もかなり」
フスカがそんな話を付け加えてはくれるのだが、オユキとしてはそもそも魔物がとそちらの方が気になるのだ。何も空に魔物がいないわけでもない。空を平然と飛んで回る魔物もいるというのに。
「そこのだらしのない裔でも無ければ、問題ありませんよ」
「ええと、その、はい」
カナリアが随分と情けない様子ではあるのだが、確かに種族としての完成系がそう話す以上は事実なのだろう。最も、フスカを基準に考えたときに果たしてこちらにいる者達の果たしてどれだけがという話でもあるが。
「オユキからは、こちらの品の紹介は」
「一応、最低限は出来るかと思いますが、その、中身に関しては」
話がイリアからカナリアに流れたからだろう。振り返ってみれば、フスカと同席する機会はそれなりにあった、パロティアにしても二度は席を同じくしてはいる。だが、そうした場面では趣向の違う品が並べられてはいた。だからこそ、皮に包まれて中身は見えぬ料理、一部は上が開いているのだがそうした料理なのに漂う香りは肉の物であったり甘い豆の香りであったり。そのあたり、それぞれどうなっているのかと説明を強請られる。だが、オユキにしても作ったわけでもない以上は中を見なければ分かるはずもない。そして、これらを用意した相手については、今も忙しくしているのは理解ができるため、他の誰かとしなければならないのだが。
「では、僭越ながら」
そして、説明をそれぞれに聞いてきたらしいナザレアから、それぞれの料理について説明がなされる。
「それにしても、蒸籠等、いつの間にとも思いますが」
「アルノーさんもそうですが、私にしても欲しいとは考えていたので」
どうやら、オユキ用としてオユキの前に一つ置かれた物以外は、蒸籠ごとに種類が変えられているらしい。それぞれの説明を聞きながら、生憎とオユキの視線の高さでは中を確認することも叶わないのだが、それぞれの説明をしながらもナザレアが順に取り分けている。
「オユキの物とは、また随分と毛色が違うのね」
「私の物は、どちらかと言えば甘味や果物が中心ですから」
この辺りは、トモエの判断でもあるのだろう。肉を少なく、というよりもオユキがあまり忌避感を見せずに食べることが出来る様にと違う物が。華やかさという点で見れば、確かにオユキ用とされている物のほうが優れてはいる。だが、客人向けの物にしても、既に見つけたらしい着色料、もしくはアルノー自身で、彼とその丁稚で色々と作った食材を染める染料を使って飾り立てられている。それこそ、中身に応じてと言う事ではあるのだろうが、中身を模した形に作られたものもあれば、四季を表すのだと言わんばかりに四色に分けてそれぞれに違う餡を入れてとした焼売まで。本当に、様々な品が蒸籠の中には入れられている。
「遊び心が足りない、成程、確かにこうしてみると如何に華やかにするのか、その工夫はまさに遊び心と言えるものなのでしょうね」
「私達では、確かにここまでの事はしませんし。そもそも煮炊きと言うのは、縁遠い物ですから」
「確かに、食事が必要になるのは短い期間ということもありますか」
何やら、フスカとパロティアが人には全く分からぬ話をしているのだが、そちらにも興味はある。ただ、それこそ後ほどカナリアに聞いても良い話でもある。
「ところで、イリアさんは今日は」
「あー、その、申し訳ございませんが」
「言葉については、どうぞ気兼ねなく。それにしても、翻訳の加護と言えばいいのでしょうか、それがあるというのに敬意をもってとしたときに発揮されないのが疑問でもありますし」
言葉に関しては、いよいよ分からないことが多すぎるからと、オユキがイリアにそう話して。そこで、イリアにしても、肩から力が抜けて、アイリスの物ともまた違う、寧ろカナリアと比較した方が似ていると言ってもいいような。初めて見る部族としての衣装だろう物で同席している相手から、改めて話を聞こうとしたところでトモエが先に、少し遅れてオユキも気が付く。
「珍しいですね」
「そうですね。ですが、そうなると」
「ええ、何かがあったと言う事なのでしょう」
こうした席であれば、まずもって同席することのないユーフォリアが、何かがあるのだとして、オユキを優先する以上は、早々介入してこない相手が手に封書をもって。表情が、面倒だと隠しもせずに語っている。
「さて、どちらでしょうか」
「ええと、皆様着替えられたのですね」
そして、揃って席につけばと言うよりも、オユキが主催として席に着くのを待っていたのだと言わんばかりに、他が順次入ってくる。そして、揃った相手を改めて見回してみれば、寧ろオユキとしては居心地のよくない空間とでもいえばいいのだろう。アベルが入れ歯などとは考えるのだが、生憎と彼は今もユニエス公爵としての仕事もあるため不在。アルノーについては、いよいよこの場に供するための料理を今も忙しく。さらには、夜の正餐に向けた準備もある。つまりは、並ぶ顔というのはどこまでも女性ばかり。トモエ一人が男性だと、中身はどうであれそういった状態に。
「当たり前でしょう」
「あの、オユキさん。流石に子爵様から招待を受けた席ともなれば、相応に必要な身嗜みと言うのがありますし」
「ええと、そのあたりは、まぁそうなのでしょうとしか。と、言いますか、そこまで仰々しい物にするつもりはなかったのですが」
アイリスとカナリアから揃ってそのような話をされるのだが、オユキとしてはそれに対して何かを返せるはずもない。ただ、用意されている飲み物に改めて口をつけてそれでお終い。こうした席であれば、揃って同じ飲み物を。そのようにオユキは考えていたのだが、ここまでの間は基本的に異なるものがファンタズマ子爵家では用意されていた。それこそ、オユキが殊更好んでいるアルノーの手によって用意されているトレファクトコーヒー。トモエには、こちらで一般的とされているニルギリによく似てはいるのだが、色味のもう少し薄い物。来客向けに何を出しているのかについては、流石にトモエもオユキも漂う香りだけで判別できるようなものではない。ただ、今は揃ってジャスミンを使用した物。それこそカリンに言わせれば、どうにも本来のモーリーフアチャーとは少々異なっているらしいのだが、流石にトモエはともかくオユキはそこまで理解もできはしない。
「こちらのお茶が用意されていると言う事は、そういう事なのね」
「そのあたりは、どうなのでしょう」
アイリスの言葉に、オユキがトモエに視線を向ければ頷き一つ。
「飲茶、ええと、点心を用意した席と言う事のようです」
「ありがたいのだけれど、手間はかかるでしょうに」
「一応、事前に準備して魔国から持ち帰った冷凍用の魔道具ですね、そちらも併用して色々と手間を省いているとは聞いていますが」
オユキの単純な思考として、冷凍と言うのはどうしたところで品質に難が出ると、そうした理解が有る。ある側面では確かに正しくはあるのだが、アルノーほどになってしまえば、寧ろそこに多くの利点を見出すものだ。客人もいる、それどころか雇用主もいる。何より、彼のプライドに懸けて。
「丁稚の子たちは、そういえばいつ頃に」
「流石に引き抜きであったりは、公爵様を優先としたいのですが」
「私が先に話して、それを良しとする気は無いのね」
「それとこれとは、やはり話が違いますから」
さて、何やらすっかりと狙われている者たちもいるらしいのだが、そのあたりの話は是非とも公爵を通してくれとしかオユキからは言えない。勿論、本人たちが望めばその限りでは無いのだが今はまだ早いとでもいえばいいのだろうか。そもそも、アルノーに教育の進捗をこれまでに何度か聞いたこともあるのだが、そちらについてはまだまだ時間がかかるとそう言われたこともある。実際には、彼からの判断を待たずにと言う事もあるかもしれないが、そればかりは関係性の問題とでもいえるものではある。
「来たわね」
「相変わらず、鼻が良いですね」
「私だけではなく、こっちの二人も気が付いているわよ」
「改めて、イリアさんとこうして席を同じくさせて頂くのは、初めてでしたか」
アイリスがさりげなく水を向けてくれたこともある。相も変わらず、こうした席での振る舞いについてはオユキよりも優れているのだなと、そうして内心で納得を作った上で。イリアの立場がまだわからないからこそ、彼女を知らないだろう相手に向けて。
「こちらは、イリアさん。私よりもそちらのカナリアさんの方が詳しいだろうとは思うのですが、こちらに来たばかりの頃にご縁を得てそれからもこうして何かと」
どちらかと言えば、カナリアのほうが付き合いが長いだろうとさらに話をまわす。簡単に、それこそ互いに名前は知っているのだがそれ以上はオユキにしても知らないのだ。森猫というのにしても、アイリスから言われてそうだと考えているだけ。疑う訳では無いのだが、彼女の鼻にしても匂いを基準とする以上は知らぬものに対して働く訳も無い。オユキの種族についてはいよいよ不明だと、そうした話ではあったのだ。今ではすっかありと、妖魔と呼ばれる種族であり名前が示す通りの伝承がと言う事ではあるらしいのだが。
「ええと、私が神国に来てから、あの時は確かパッセルが送ってくれたんですけど、そこからの付き合いで」
「あの、カナリアさん、そういえば魔国からどうやって移動したのかを訪ねていませんでしたが」
今の言葉、カナリアの話の中にどうにも見過ごせないものが。
「ああ、そういえばそのあたり話していませんでしたっけ。同族に送って貰ったんですよね」
「その、送るというのは」
「よく見ているかと思いますが、こう、抱えて」
「オユキ、貴女は知らないのでしょうけれど、空を飛ぶことが叶うのであれば速度もかなり」
フスカがそんな話を付け加えてはくれるのだが、オユキとしてはそもそも魔物がとそちらの方が気になるのだ。何も空に魔物がいないわけでもない。空を平然と飛んで回る魔物もいるというのに。
「そこのだらしのない裔でも無ければ、問題ありませんよ」
「ええと、その、はい」
カナリアが随分と情けない様子ではあるのだが、確かに種族としての完成系がそう話す以上は事実なのだろう。最も、フスカを基準に考えたときに果たしてこちらにいる者達の果たしてどれだけがという話でもあるが。
「オユキからは、こちらの品の紹介は」
「一応、最低限は出来るかと思いますが、その、中身に関しては」
話がイリアからカナリアに流れたからだろう。振り返ってみれば、フスカと同席する機会はそれなりにあった、パロティアにしても二度は席を同じくしてはいる。だが、そうした場面では趣向の違う品が並べられてはいた。だからこそ、皮に包まれて中身は見えぬ料理、一部は上が開いているのだがそうした料理なのに漂う香りは肉の物であったり甘い豆の香りであったり。そのあたり、それぞれどうなっているのかと説明を強請られる。だが、オユキにしても作ったわけでもない以上は中を見なければ分かるはずもない。そして、これらを用意した相手については、今も忙しくしているのは理解ができるため、他の誰かとしなければならないのだが。
「では、僭越ながら」
そして、説明をそれぞれに聞いてきたらしいナザレアから、それぞれの料理について説明がなされる。
「それにしても、蒸籠等、いつの間にとも思いますが」
「アルノーさんもそうですが、私にしても欲しいとは考えていたので」
どうやら、オユキ用としてオユキの前に一つ置かれた物以外は、蒸籠ごとに種類が変えられているらしい。それぞれの説明を聞きながら、生憎とオユキの視線の高さでは中を確認することも叶わないのだが、それぞれの説明をしながらもナザレアが順に取り分けている。
「オユキの物とは、また随分と毛色が違うのね」
「私の物は、どちらかと言えば甘味や果物が中心ですから」
この辺りは、トモエの判断でもあるのだろう。肉を少なく、というよりもオユキがあまり忌避感を見せずに食べることが出来る様にと違う物が。華やかさという点で見れば、確かにオユキ用とされている物のほうが優れてはいる。だが、客人向けの物にしても、既に見つけたらしい着色料、もしくはアルノー自身で、彼とその丁稚で色々と作った食材を染める染料を使って飾り立てられている。それこそ、中身に応じてと言う事ではあるのだろうが、中身を模した形に作られたものもあれば、四季を表すのだと言わんばかりに四色に分けてそれぞれに違う餡を入れてとした焼売まで。本当に、様々な品が蒸籠の中には入れられている。
「遊び心が足りない、成程、確かにこうしてみると如何に華やかにするのか、その工夫はまさに遊び心と言えるものなのでしょうね」
「私達では、確かにここまでの事はしませんし。そもそも煮炊きと言うのは、縁遠い物ですから」
「確かに、食事が必要になるのは短い期間ということもありますか」
何やら、フスカとパロティアが人には全く分からぬ話をしているのだが、そちらにも興味はある。ただ、それこそ後ほどカナリアに聞いても良い話でもある。
「ところで、イリアさんは今日は」
「あー、その、申し訳ございませんが」
「言葉については、どうぞ気兼ねなく。それにしても、翻訳の加護と言えばいいのでしょうか、それがあるというのに敬意をもってとしたときに発揮されないのが疑問でもありますし」
言葉に関しては、いよいよ分からないことが多すぎるからと、オユキがイリアにそう話して。そこで、イリアにしても、肩から力が抜けて、アイリスの物ともまた違う、寧ろカナリアと比較した方が似ていると言ってもいいような。初めて見る部族としての衣装だろう物で同席している相手から、改めて話を聞こうとしたところでトモエが先に、少し遅れてオユキも気が付く。
「珍しいですね」
「そうですね。ですが、そうなると」
「ええ、何かがあったと言う事なのでしょう」
こうした席であれば、まずもって同席することのないユーフォリアが、何かがあるのだとして、オユキを優先する以上は、早々介入してこない相手が手に封書をもって。表情が、面倒だと隠しもせずに語っている。
「さて、どちらでしょうか」
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