キミと僕との7日間

五味

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「おはよ。」
「ああ。今日は早いな。」

起きるなり着替えて、まだ寒さを感じる早朝。それこそようやくあたりが明るくなり始めてきた、そんな時間に目がどうにか目が覚めた僕は祖父に縁側で挨拶をする。

「流石にまだ眠いけど。」
「そうだろうな。もう少し寝ていても。」
「えっと、迎えに行くってそう言ったから。」

そう言いながらも、僕は祖父に並んで自分の鉢を眺める。本当なら迎えに行って彼女を祖父母に紹介するのが先かもしれないけど、これは僕にとっては外せない事でもあるのだ。

「ばーさんから、きいた。」
「ああ。」
「えっと、この前話した子が家でお世話になりたいって。それで荷物もあるし、知らないところに一人で来るのも気が引けるかもしれないから迎えに行ってくるよ。」
「望遠鏡か。ついていこうか。」
「大丈夫じゃないかな。あの子はいつも運んでるわけだし。」
「そうか。」
「うん。」

普段はもう少し日が昇ってからこうして鉢をつつき始めるが、この時間だと思いのほか土も濡れているし、なんというか枝葉もそうだが幹も普段と少し違うように見える。
それに全体的に水分を含んでいるからか、思ったものよりも全体的に濃い色調に見えて来る。

「んー。」

そんな鉢植えを前に思わず唸りながら首を捻ってしまう。なんというか、この時間ここに合わせるなら今の鉢、その中で整えているものは合わない気がするのだ。
もっとこう、今の時間でもよく見える、そんな姿がある気がする。そうして悩んでいると珍しく祖父の笑い声が聞こえる。

「どうしたの。」
「何、昔同じようなことを考えたなと。」
「そっか。」

そう言われて少し頭が落ち着いたのか、確かにここに合わせて触れば、今度は昼に気に入らないとまた戻す気もしてくる。

「もしかして、じーさんも昼に元に戻したの。」
「ああ。」
「そっか。」
「やりたければ、試してみるといい。」
「うーん。毎日この時間に起きたりしないから、結局いつものに合わせて、そうなるかも。」
「そうか。」

そうして祖父の方を見れば、そういえば僕が起きてからこうして並んで、それまでに手入れを終えて普段触っていない物を今は触っている。
つまり祖父は分けたのだろう。早朝、ようやく日が差す時間帯に最もよく見えるものと、もう少し日が昇ってからよく見えるものと。
僕もそうしてみようかと、他の鉢植えにも視線を向けると祖父から声がかかる。

「迎えに行くんじゃなかったのか。」
「そうだった。」

すっかり忘れて手入れを本格的に始めるところだった。

「約束したけど、こっちも大事だから、少しのつもりだったんだよね。」
「そうか。なら、続きは戻ってからにするといい。」
「うん。」
「この時間は、足元が滑りやすいからな。」
「そうなんだ、気を付けるね。」
「ああ。」

どことなく楽しそうな祖父にそう答えて、僕は玄関に回って、その前に部屋に戻って上着や帽子を取って、山歩きがしやすい格好になると、改めて玄関に向かう。

「行ってらっしゃい。」

そして、その際にパタパタと動き回ったからか、玄関では祖母に見送られる。

「うん。じゃ、迎えに行ってくるから。」
「はい。気を付けてね。」
「いつもの時間には戻って来るよ。」
「急いで怪我をしないように。」
「うん。じーさんも足元危ないって言ってたし。」
「そうですね。行ってらっしゃい。」

そうして、祖母に見送られて家を出て山道に向かう。
こうして明るい時間に彼女に会いに行くのは初めてだし、そもそもこちらに来ている間にこうして人に会う事を目的としてどこかに行くのも、彼女と会ってから。
ギターの練習というのもあるけど、どこか自分の中で言い訳になっていた、それくらいは流石に僕にもわかるし、彼女の持っている天体望遠鏡、それで写真で見たような、勿論それとはまたいろいろ違うけど、それを見るのはやっぱり楽しいから。
ただ、彼女が祖父母の家に来たところで、せいぜい朝と夕方に顔を合わせるくらいだと、そうは思うのだが。なんとなくそれも今となっては楽しみになっている。
思えば友人、さて彼女自身はどう思っているか分からないけど、何となく僕の方はそんな風に彼女を捉え始めている。共犯意識、同族意識、なんと言えばいいのかは分からないけど、こうして休みにわざわざこんなところに来る、そんな数少ない仲間、友人。
それくらいには僕も彼女の事を思っているのだから。

そんな事をぼんやりと考えながら山道を行けば、いつものように彼女がそこにいる。
ただいつもと違うのはあの大きな望遠鏡は片づけられて、シートも畳まれている。
そして何処かぼんやりと、こちらを見ながら切り株に、僕がギターを弾くときに使っていたものに腰かけている。
付け加えてこういったら彼女に失礼だけど、珍妙な、初めて会ったときに僕が引いていた曲とリズムだけは似ている鼻歌を歌っている。
こうしてここまで近づいて理由がわかる迄は、早朝にしか聞こえない、活動しない生き物がいるのかもとか、そう思った事は、多分僕は彼女に伝えることはないだろうな、そう思いながらも声をかける。

「ごめん。お待たせ。」

こちらを向いているのだから、それなりに前から気が付いていたのだろう。
そう声をかければ、彼女からは挨拶が返ってくる。どこか眠たげに。

「おはよう。そんなに待ってないよ。ただ、きっと迎えに来てくれるだろうなって。」
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