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「うーん。」
そんな彼女の信頼に対しては、少々申し訳ないことを昨夜考えてしまった。
なのでこうしてついつい歯切れの悪い反応をしてしまう。
「え。」
そんな僕の様子に思うところがあったのか、何やら驚いた顔をされる。
「いや、僕も朝の日課があってね。」
言い訳でしかないけれど、そんな事を言い募る。
「えっと、ここに来てる目的でもあるし、少しはそれやりたいなって。だから起きてから少ししてきたわけだし。」
「そうなんだ。でも、来てくれたんでしょう。」
「うん。」
「なら、約束を守ってくれたってことだし。そもそもこれたらって、君はそう言ってたじゃない。」
「そっか。」
確かにそんな言い方をしたような気もする。ここでゆっくり話していても仕方がないと、僕は早速彼女に移動を促す。
そこで、問題になるのは荷物だ。
「えっと。うん、こっちの、望遠鏡以外を持つね。」
「そうだね。そのほうが良いかも。」
重たいというのは分かっているし、それを手伝ったほうがとも思うけど。どうにも扱い方も分からない。
乱暴に持とうとは思わないけど、何が駄目なのかもわからないから慣れた相手に任せてしまったほうが良いだろう。僕が何かして、それで何か起こってしまったら、彼女としても色々複雑だろうし。
「じゃ、いこっか。」
「うん。よろしくね。」
「こちらこそ。」
そういってお互いにクスクスと笑いながら歩き出す。山道、けもの道のようなものだけど、人がどうにか二人並んで歩ける程度の幅のそこを、僕が先頭に、彼女が少し後ろからついてくる。
「あ。」
「どうかしたの。」
「その、気にしてたら悪いから。」
「そこまで言われたら、気になるけど。」
「あの、私よりも背が低いんだなって。」
その言葉に、僕は思わず首をかしげる。なんだかんだと暗い中分かり難かったのかもしれないけど、それなりに近くにいたから気が付きそうなものだけど。
特に食事の時は向かい合って座っていたから、その視線の高さとかで。
「今気が付いたの。」
「えっと。うん。」
「僕は別に気にしてないし、良いよ。まぁ、もう少し伸びないかなとか、そんな事は思うけど。」
「そっか。私も低いほうだから、同じかな。」
「へー。」
そういう言い方をされてしまうと、背が低い彼女よりさらに低い僕は、とか。
少し気になってしまうけど、まぁそれは良いかなと放っておく。
「足元、気を付けてね。滑りやすいんだって。」
「うん。」
「疲れたら言ってくれれば、休むから。」
「その、どれくらい離れてるんだっけ。」
「片道20分くらいかな。」
「じゃあ、いつもよりかなり短いから大丈夫だよ。こう見えて体力はあるんだ。」
そう言って見せる彼女は、確かにそんな重たいものを持って山道をかき分けるだけの体力はあるのだろう。とてもそうは見えないけれど。
「そっか。」
「そういえば。」
何となく、このまま祖父母の家まで話しながら歩くんだろうなと、そんな感じがする。悪い事とは思わないけど。
彼女はそうして人と話すのが好きなのだろう。見も知らぬ、夜中にいきなり出会った僕相手に色々と話すくらいであったし。
「朝の日課って。」
「言ってなかったっけ。」
「うん。ギターの練習とか。」
「鉢植えの手入。」
そんな事も僕は彼女に話していなかったらしい。
「そうなんだ。何育てるの。」
「何だろう。松だとは思うけど、細かい種類までは、そういえば聞いてないや。」
聞かれて今更そんな事に気が付く。
下ばえの草、石に付けている苔、それらにももしかしたらそれぞれ名前があるのかもしれない。
「その、渋い趣味だね。」
「祖父がやってて楽しそうだったから。後はよくわかんない草とか、苔とか。」
「えっと、盆栽、だっけ。」
「うん。」
「楽しいの。」
聞かれて、どう答えようかと少し考えて、思いつくことをそのまま口にする。そういえば彼女の趣味と少し似てるんだなと、そんな事を思いながら。
「楽しいよ。毎日少しづつ変わるし。同じように見えても毎日何か違うから。」
「へー。」
「家にも二つ持って帰ってるけど、少しづつ手を入れてあげれば、少しづつ変わって。
いいなと思っておいた石も、明日にはやっぱり止めとけばよかった、そう思ったりしてね。」
そんな話をすると、彼女からも僕が思っていたことが言葉にされる。
「そっか。星と似てるところもあるんだね。」
「うん。」
レンズを覗いて遠い空を見る。
鉢植えの中に作ったそれを楽しむ。
決定的な違いはあるけれど、小さな、実際には大きな変化がそこに在るのかもしれない、でも気が付ける小さな変化、少しづつ変わるそれを楽しむのだ。
かといって、僕は変わらず望遠鏡で肉眼で見るのとほとんど変わらない恒星を見たいとは思えないけど。
「ね、見せてもらってもいいかな。」
「いいよ。」
「他には、何かしてるの。」
「後は、勉強したり、石を拾いに行ったり。あ、そうそう、少し前に火星みたいな模様の石、見つけたんだ。」
「わ、そんな石があるんだ。」
「あったよ。」
そうして、楽しく話して、珍しく僕からも話題を振りながら話していると、すっかり木々の暗さが無くなり、祖父母の家が見えて来る。目的地まではあと少し。僕は寝て起きて元気だけれど、彼女はもしかしたら話していないと眠気を覚える、そんな状態なのかもしれないなと、そんな事に今更気が付いた。
そんな彼女の信頼に対しては、少々申し訳ないことを昨夜考えてしまった。
なのでこうしてついつい歯切れの悪い反応をしてしまう。
「え。」
そんな僕の様子に思うところがあったのか、何やら驚いた顔をされる。
「いや、僕も朝の日課があってね。」
言い訳でしかないけれど、そんな事を言い募る。
「えっと、ここに来てる目的でもあるし、少しはそれやりたいなって。だから起きてから少ししてきたわけだし。」
「そうなんだ。でも、来てくれたんでしょう。」
「うん。」
「なら、約束を守ってくれたってことだし。そもそもこれたらって、君はそう言ってたじゃない。」
「そっか。」
確かにそんな言い方をしたような気もする。ここでゆっくり話していても仕方がないと、僕は早速彼女に移動を促す。
そこで、問題になるのは荷物だ。
「えっと。うん、こっちの、望遠鏡以外を持つね。」
「そうだね。そのほうが良いかも。」
重たいというのは分かっているし、それを手伝ったほうがとも思うけど。どうにも扱い方も分からない。
乱暴に持とうとは思わないけど、何が駄目なのかもわからないから慣れた相手に任せてしまったほうが良いだろう。僕が何かして、それで何か起こってしまったら、彼女としても色々複雑だろうし。
「じゃ、いこっか。」
「うん。よろしくね。」
「こちらこそ。」
そういってお互いにクスクスと笑いながら歩き出す。山道、けもの道のようなものだけど、人がどうにか二人並んで歩ける程度の幅のそこを、僕が先頭に、彼女が少し後ろからついてくる。
「あ。」
「どうかしたの。」
「その、気にしてたら悪いから。」
「そこまで言われたら、気になるけど。」
「あの、私よりも背が低いんだなって。」
その言葉に、僕は思わず首をかしげる。なんだかんだと暗い中分かり難かったのかもしれないけど、それなりに近くにいたから気が付きそうなものだけど。
特に食事の時は向かい合って座っていたから、その視線の高さとかで。
「今気が付いたの。」
「えっと。うん。」
「僕は別に気にしてないし、良いよ。まぁ、もう少し伸びないかなとか、そんな事は思うけど。」
「そっか。私も低いほうだから、同じかな。」
「へー。」
そういう言い方をされてしまうと、背が低い彼女よりさらに低い僕は、とか。
少し気になってしまうけど、まぁそれは良いかなと放っておく。
「足元、気を付けてね。滑りやすいんだって。」
「うん。」
「疲れたら言ってくれれば、休むから。」
「その、どれくらい離れてるんだっけ。」
「片道20分くらいかな。」
「じゃあ、いつもよりかなり短いから大丈夫だよ。こう見えて体力はあるんだ。」
そう言って見せる彼女は、確かにそんな重たいものを持って山道をかき分けるだけの体力はあるのだろう。とてもそうは見えないけれど。
「そっか。」
「そういえば。」
何となく、このまま祖父母の家まで話しながら歩くんだろうなと、そんな感じがする。悪い事とは思わないけど。
彼女はそうして人と話すのが好きなのだろう。見も知らぬ、夜中にいきなり出会った僕相手に色々と話すくらいであったし。
「朝の日課って。」
「言ってなかったっけ。」
「うん。ギターの練習とか。」
「鉢植えの手入。」
そんな事も僕は彼女に話していなかったらしい。
「そうなんだ。何育てるの。」
「何だろう。松だとは思うけど、細かい種類までは、そういえば聞いてないや。」
聞かれて今更そんな事に気が付く。
下ばえの草、石に付けている苔、それらにももしかしたらそれぞれ名前があるのかもしれない。
「その、渋い趣味だね。」
「祖父がやってて楽しそうだったから。後はよくわかんない草とか、苔とか。」
「えっと、盆栽、だっけ。」
「うん。」
「楽しいの。」
聞かれて、どう答えようかと少し考えて、思いつくことをそのまま口にする。そういえば彼女の趣味と少し似てるんだなと、そんな事を思いながら。
「楽しいよ。毎日少しづつ変わるし。同じように見えても毎日何か違うから。」
「へー。」
「家にも二つ持って帰ってるけど、少しづつ手を入れてあげれば、少しづつ変わって。
いいなと思っておいた石も、明日にはやっぱり止めとけばよかった、そう思ったりしてね。」
そんな話をすると、彼女からも僕が思っていたことが言葉にされる。
「そっか。星と似てるところもあるんだね。」
「うん。」
レンズを覗いて遠い空を見る。
鉢植えの中に作ったそれを楽しむ。
決定的な違いはあるけれど、小さな、実際には大きな変化がそこに在るのかもしれない、でも気が付ける小さな変化、少しづつ変わるそれを楽しむのだ。
かといって、僕は変わらず望遠鏡で肉眼で見るのとほとんど変わらない恒星を見たいとは思えないけど。
「ね、見せてもらってもいいかな。」
「いいよ。」
「他には、何かしてるの。」
「後は、勉強したり、石を拾いに行ったり。あ、そうそう、少し前に火星みたいな模様の石、見つけたんだ。」
「わ、そんな石があるんだ。」
「あったよ。」
そうして、楽しく話して、珍しく僕からも話題を振りながら話していると、すっかり木々の暗さが無くなり、祖父母の家が見えて来る。目的地まではあと少し。僕は寝て起きて元気だけれど、彼女はもしかしたら話していないと眠気を覚える、そんな状態なのかもしれないなと、そんな事に今更気が付いた。
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