キミと僕との7日間

五味

文字の大きさ
60 / 66

6-13

しおりを挟む
「いいの。」

彼女の提案は、正直僕にとってうれしいものではある。そもそも自分一人で星を探すのはもちろん大変だし。天体望遠鏡も、カメラもな。写真自体は、印刷さえ考えなければ、それこそスマートフォンの中にフォルダ分けして、アルバムにしたっていいけど、そもそもそうするためには、めぼしい星をおさめなきゃいけないわけで。

「うん。私は、まぁ、なんだろう。活動報告になっちゃうし。」

そういって彼女は苦笑いをしてみせる。
確かに、アルバムと言えば個人の趣味に聞こえる。しかし彼女が星の写真を撮って、それにメモを付けて、記録に残せばそれは活動記録と呼んでいいものになるだろう。

「そっか。じゃ、僕が二冊作ろうか。」

ただ、だからと言って、彼女に手伝ってもらってそれでおしまいというのもあれだから、僕はそんなことを言う。
きっと彼女が祖母の話を聞いて羨ましいと、そう思ったのは皆で活動したのもそうだろうし、今でも、ずいぶん昔の物だというのに、今でも保存している、そんな大切なものが残っていることもだろうから。

「えっと、いいのかな。」
「僕と、キミで、一冊づつ。」
「面倒じゃない、同じ内容を。」
「同じ内容だけど、僕の物と、キミの物、違うものだし。」
「そっか。」

そう。僕は自分のアルバム、彼女も彼女のアルバム。中身は同じでも、よく似ていて、そっくりに見えても、きっとそれは何か違うのだから。

「それに、手伝ってもらって、何もしないって言うのは。多分、道具も借りるし。」
「えっと、うん。それはそうだと思うけど。でも、お世話になってるし。」
「それは祖父母。僕じゃない。」

そう、彼女に既に何かしているのは祖父母で、僕じゃない。

「君が、それでいいなら。」
「よくなきゃ言わないよ。」
「うん、キミは、そうだよね。」

そういって彼女が笑う。

「本当に、キミでよかった。」
「そっかな。」
「そうだよ。」

何がよかったのかはよく分からないけど、まぁ彼女がよかったのならよかったのだろう。
すっかり機嫌も良くなったようだし、僕は例によってギターを鳴らしながら彼女と話す。

「一応、星座としては覚えてるけど。」
「うん。」
「春と夏で、ガラッと変わるんだよね。」

そう、季節によっては見えない星も、それが変われば見えるようになって。
見えなかったものが見えるようにもなる。

「北の方にあるのは残るけど、そうだね。公転の影響があるから。」
「お勧めって、何かある。」
「それこそ、夏の大三角形とかかな。後は、春は見えないけど天の川、私たちの言る銀河の腕の部分とか。」
「うーん。」

正直あまり心惹かれない。
特に、こう、心惹かれる逸話とか知らないし。

「えっと、そっか。そうだよね、星座とかの方が好きなんだよね。」
「記憶に残ってるのはそうだけど。そういえば、なんで大三角形なんて呼ばれてるの。」
「その、諸説あってね。」

そして、僕はまた失敗したなと、そう思ってしまう。とりあえず、分かったこと、何とか頭に残ったこととしてはもともとアルタイルは二等星とされていたとか、それこそ1000年にわたって、参考書とされた本があったとか、どうにかそのあたりは頭に残った。
とにかく、よく知らない固有名詞は頭にそう簡単に残ってくれないのだ。

「えっと、それだと、七夕伝説って。」
「うーん、観測方法や位置にもよるから。天の川を挟んで特に明るい星って、そう考えたらその二つ、なのかなぁ。でも、ベガ以外は星図で示すと天の川の中にあるんだよね。」
「あ、そうなんだ。」
「うん。デネブみたいにほとんど真ん中にあるわけじゃないけど。」
「へー。」

それにしても、そういった実際の星に加えてあれこれと、本当に彼女はよく覚えている。
それに感心しながらも、話を変える。

「えっと、夏にも、銀河とか、星雲と見れるんだよね。」
「見れるよ。有名なのだと、アンドロメダ銀河とか。」

その言葉に、僕は思わず首をかしげる。

「あれ、星座じゃなったっけ。確か48個ある中の一つだった気がするけど。」

僕の記憶では、それは星座の名前だ。

「うん、さっき話したアルマゲストの中にあるトレミー48星座の一つだね。
 1000年以前に既に星とは違うっていう風に、観測された記憶があるくらい近い場所にある銀河で、肉眼でも見えるんだよ。」
「え、そうなの。」

それはなんだかおもしろそうだと思う反面、こう、もしはっきりと見えるのであれば、祖母が既に僕に教えてくれている気がする。
弾んだ声が出て、彼女も気が付いたのだろう、慌てて訂正をしてくる。

「その、ほらさっきも言ったけど、星とは違う、その程度にしか見えないからね、昔の、街灯もない時代で。」
「そっか。」
「えっとね、こう、双眼鏡で覗いても、ぼんやりとした白い煙みたいなのに見えるし。」
「えー。」

なんというか、それは、がっかりだ。
いや、難しいのは知っているんだけど。別の銀河、そんな物冗談みたいにとういう位置にあることくらいはわかるし。

「あ、大丈夫、私の望遠鏡使えば、少しくらいは見えるから。それに、えっと前にも言ったと思うけど写真に撮って、加工すれば色々見えるようになるし。」

そうして、彼女と色々話して、ギターを弾きながら。
静かな夜に、賑やかな二人で。
これまで縁側で聞こえていたような、耳を傾けていたような、葉のこすれる音、枝の鳴る音、虫の鳴き声、それが少し遠くに聞こえるくらいに賑やかな二人で、少し夜の時間を共有すれば、僕は先に戻る。
アルバムを作る時、その時は、僕も一日二日くらい、こうして彼女と夜を過ごすのも悪くないかもしれないなと、そんな事を考えながら。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

処理中です...