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トモエの言葉を切欠に、オユキにしても気が付いていたことではあるのだろう。
これまでは、ただそこに存在していただけの門が開く。
そうしてしまえば、門番としてのアーサーもいつでも振るえる様にと構えていた槍を、一度解かなければならない。オユキにしても、槍を相手にという経験はほとんどなかっただろうに、アーサーが構えていると、自然体に見えるのだが、槍を、己の得物を間違いなく手に持っている状態。警戒をするに、十分すぎる程の状態から、ようやく。
「で、どうする、ロゼリア」
「どうもこうもありません。結果は、まさにこの二人の間の事です。私たちにとって、あの子たちにとって。変わるとすれば、その程度ですから」
「相も変わらず、お前は嫌な良い方ってのを心得てるな」
「そちらが寝ている間も、私はずっとでしたから」
そして、ロゼリアの言葉で、対にはオユキも気が付くこともある。
だが、それはやはり今となってはどうでも良い事として。
「通らせていただいても」
「門は既に開いた。こっちとしては、もう止める事は無い」
「私としては、トモエさんだけでなく、いいえ、邪魔をされてしまいましたがトモエさんではなく」
「私のほうが与しやすい、それは事実かもしれませんが、面と向かって聞かされてしまった以上は、私ももはや耳を傾ける気はありませんが」
一体、オユキという人間をどう考えているのか。
意見を翻させよう、そう考えている人間の話を、何故オユキが聞こうと考えるのかと、ただただオユキは己の決断をぶつける。
この先に待つのは、創造神本体が座す、想像と創造の神殿。
こちらの世界のどこにでもあり、何処にもない場所。
こちらの中では、かつての世界と距離が近いと考えても良い場所へ。
「オユキさん」
そして、トモエがオユキに声をかけて、左手を差し出す。
「良いのですか」
「習った作法とは、少々違いますが、私たちの場合であればよいでしょう」
己が武器を持つ手を、オユキに差し出すトモエにオユキから。
これまでは如何に作法から外れていようとも、オユキが絶対に良しとしなかったことではある。
トモエは、あくまで己を戦うものとして定めている。武器を手に持つことを前提として、トモエは存在している。だからこそ、武器を持つ手を他人に預けるというのはトモエにとってはとても大きな意味を持つこと。
そして、そうした戦うものとしての理念、基本的な姿勢という物を騙られたオユキにしても、左手を差し出すトモエの手を取ってとするには己も武器を持つ手を預けなければならない。
これまでのように、逆であれば、互いに武器を持たぬ手を。
これまでがそうであったように。
「では、その」
「ええ、どうぞ」
恐る恐る、と言う訳でもなく。おずおずと、緊張をしながら。
その様子に、トモエとしてはどこかおかしさを覚えながら、そういえばと思い出すこともある。
確かに、生前は互いにこうして手を繋いで等と言う事は無かった。互いに武器を持つ手、そこに互いを置いて歩くことは、ままあったのだが、そこはそれ。触れさせていない、取られていない以上はいくらでもやりようがあるというのがただの事実。
だからこそ、こうしてトモエから直接触れても良いと示される場面というのは、やはりオユキにとっては特別で。
「オユキさん、流石にすこしくすぐったいと言いますか」
トモエの掌を、太刀を振る、武器を持つ人間の掌を。何が楽しいのか、指先でなぞるように軽く触れながら。
「いえ、こう、反応があると、つい」
「抑えようとはしているのですが、そうですよね」
トモエにしても、抑えなければならない程度には既に反射としての動作になっていることがある。
それを、オユキに向けぬ様にと理性で抑え込む。少なくとも、門を潜り、最期と決めている場所にたどり着くまでは。それこそ、その時には互いに武器を手に向き合うのだから。
「この後は、創造神様、ですか」
「さて、そればかりは。オユキさんが話していたように、私たちとしての決着の時には、戦と武技の柱がおられるでしょうが」
アーサーからは、後は自由にしろと言わんばかりに。
ロゼリアからは、何度もきちんと彼女の下で、もしくは教会で時間を使うようにと言い続けていた彼女からは、もはやつける薬も無いとばかりに、ため息一つ。
そして、零した溜息の後に、一度息を一つ吸い込んで。
「結末としては、幾つか道があります。そのどれになるかは、生憎と私としても見通せませんが、戻ってきたときには改めて話があります」
「ええ、では、その折に」
「良いですか、今度はきちんと始まりの町の教会、そちらで時間を使えるように訪うのですよ」
「こいつら、頻繁に行ってなかったか」
アーサーから、ロゼリアに対して噂として聞いていたのか、シグルドたちから、もしくは彼らの背中を見て過ごすことになっていた子供たちから話を聞いたからか。
「ええ、狩猟の成果、他国へ訪れた折には必ずと言っていいほどに手土産をもってお越しいただけました」
「異邦人ってなら、それでも十分だろ」
「話さなければならないことも、いろいろあるんですよ。全く、私との会話に揃って時間を使ったのは、初めてこちらに来た時だけなのですから」
「オユキさん一人を呼び出して、そこでいらぬことを吹き込んだ過去がある以上は私としても認める訳が無いでしょうに」
オユキに対して、猜疑の種をまいた人間が何を言うのかと、トモエがため息と共に。
そして、軽くつないだ手を、軽くつないでいた手を、オユキが少し強く握りこんで。
「では、そろそろ参りましょうか。お二方であれば、ご理解いただけるのでしょうが」
「俺らだけってだけでもない。お前らが確かな縁を築いた相手であれば、流石に分かるさ」
「こちらでいえば、それこそあの子達、それからユーフォリアであれば、貴女達二人の変化に気が付くでしょう」
「ユフィとシグルド君であれば、間違いなく気が付くでしょうね」
ユーフォリアに関しては、残念な事に。
トモエとオユキの、最期の道行きについてくることはできない。本人にしても、はっきりと意外だったのだろう。それこそ、ここ半年ほどの間にしても、本人はついてくるつもりであったらしいのだが、ミズキリという人間との間に合った契約が、未だにユーフォリアが縛られている物がまさに致命的な瞬間を狙って出てきてしまった。
相も変わらず、埋伏させておくのが上手い事だと、ユーフォリアがこちらに来てから初めて、トモエにとっては生前から含めて初めて荒れるユーフォリアを目にすることとなった。
どういった流れなのか把握できているのはそれこそ、ミズキリとルーリエラだけなのだろう。
結果として、今のユーフォリアは神国のあるこの大陸にはいない。
想像と創造の世界樹が根差す、この世界における中央大陸。アカシアの樹が彩る中にそびえたつ森林、ルーリエラの出身でもあるその地へと連れていかれている。
「では、今後とも、健やかでありますように」
「ご機嫌よう」
繋いだ手に、トモエからも軽い力が返ってくる。
要は、一先ずこうして二人で手をつなぐのにも少し慣れてきたのだと、そうした合図を行ってみれば、オユキが早々に別離の言葉を二人に。
末永くと言わないのは、そもそもアーサーの良い人は今も水と癒しの神殿にいるから。
「ああ。そっちは、まぁ、末永くな」
「お二人とも、確かに、お伝えしましたよ」
言葉を返さないから、最早約束ともいわさずに。
アーサーは既に身を引いていたのだが、ロゼリアも身を引いたために、後は視線を一切ブラス事無く門を潜る。
ただ、前を見て。
互いにつないだ手の感触だけを、意識しながら。
そうして、潜った門の先は、こちらに来た時をほうふつとさせる、真白の空間。
これから、この道を歩いていくのだろうと考えては見る物の。
「今度は、また、短そうですね」
次なる門が、少し先に用意されている。
「此処が、神殿の中と言う事でしょうか」
「さて、そればかりは何とも。それこそ、先ほどの場でロゼリア様との問答を行うと選択していれば」
「オユキさんは、それも考えていたでしょうが、私としてはお勧めしません。話すにしても、この後でよいでしょう」
「トモエさんは、それほどに」
「二度、ですから。あの人が、私とオユキさんを分けて、オユキさんに余計な事を言ったのは」
「私が求めていたのだとしても、ですか」
オユキの甘えるような言葉に、トモエとしても僅かに考えて。
「おすすめ、しません。結果を見ているから、ともいえるので、その時にと言う事でしたら難しい、ですね」
では、オユキの結果を見なかった、見ていないとして。
トモエが、オユキの交友関係とでも言えばいいのだろうか。仕事における関係とでも言えばいいのか。
それを止めることがあるのかと考えたときに、元よりロゼリアに関してはトモエにしても疑っていたところもある。だからこそ、教会に訪れて、そこで何かあるのだとしても教会で暮らす子供たちに、そちらから先の、教会で暮らす子供たちと時間を使う事を是としていた。
「嘘を見破る奇跡を持っている方が、嘘をつかないと考える事は出来ませんし」
「ええと、トモエさん」
「いえ、そうした制限があるかもしれませんが、そうだとするのならば知識と魔、法と裁きの存在が無意味となると言いますか」
「確かに、それもそうですね」
考えてみれば、それも当然と言えばいいのだろう。
この世界において、教会で司祭以上の位を持つ者たちが平然と嘘を暴けるというのならば、その人物の言葉に嘘が無いというのならば、その二柱はいったい何をするのかと、特に法と裁きは何をもって信仰を集めるというのか。
契約に際して、確かに法と裁きを頼む向きはあったのだが、それだけではという物だろう。
むしろ納得せぬ契約に、納得のいかぬさばきに対して多くの物から反感を得る事とてあったことだろう。
「私たちの間での事を、保証して貰えば良かったでしょうか」
「トモエさんとの間に、そのような物を置きたくありません」
トモエの少しのからかいも含んだ言葉とでも言えばいいのだろうか、それに対してオユキの反応はやはりあまりにも強い。オユキこそ、そうしたことを重要だと考えているのではないかと、そう考えてのトモエの言葉ではあったのだが、やはりと、トモエとしては思う所が。
「では、オユキさん。この扉を潜る前に、一つ、約束していただきたい事があります」
「それは」
「この約束をするためだけに、私はどうにか私たちの間での決め事、この場に持ってきたのですから」
少しの会話を終えれば、最早扉は目前。
未だに開いていないのは、揃って手を置けばいいのか、トモエが、オユキが前に進むと決めなければいけないのか。
これまでは、ただそこに存在していただけの門が開く。
そうしてしまえば、門番としてのアーサーもいつでも振るえる様にと構えていた槍を、一度解かなければならない。オユキにしても、槍を相手にという経験はほとんどなかっただろうに、アーサーが構えていると、自然体に見えるのだが、槍を、己の得物を間違いなく手に持っている状態。警戒をするに、十分すぎる程の状態から、ようやく。
「で、どうする、ロゼリア」
「どうもこうもありません。結果は、まさにこの二人の間の事です。私たちにとって、あの子たちにとって。変わるとすれば、その程度ですから」
「相も変わらず、お前は嫌な良い方ってのを心得てるな」
「そちらが寝ている間も、私はずっとでしたから」
そして、ロゼリアの言葉で、対にはオユキも気が付くこともある。
だが、それはやはり今となってはどうでも良い事として。
「通らせていただいても」
「門は既に開いた。こっちとしては、もう止める事は無い」
「私としては、トモエさんだけでなく、いいえ、邪魔をされてしまいましたがトモエさんではなく」
「私のほうが与しやすい、それは事実かもしれませんが、面と向かって聞かされてしまった以上は、私ももはや耳を傾ける気はありませんが」
一体、オユキという人間をどう考えているのか。
意見を翻させよう、そう考えている人間の話を、何故オユキが聞こうと考えるのかと、ただただオユキは己の決断をぶつける。
この先に待つのは、創造神本体が座す、想像と創造の神殿。
こちらの世界のどこにでもあり、何処にもない場所。
こちらの中では、かつての世界と距離が近いと考えても良い場所へ。
「オユキさん」
そして、トモエがオユキに声をかけて、左手を差し出す。
「良いのですか」
「習った作法とは、少々違いますが、私たちの場合であればよいでしょう」
己が武器を持つ手を、オユキに差し出すトモエにオユキから。
これまでは如何に作法から外れていようとも、オユキが絶対に良しとしなかったことではある。
トモエは、あくまで己を戦うものとして定めている。武器を手に持つことを前提として、トモエは存在している。だからこそ、武器を持つ手を他人に預けるというのはトモエにとってはとても大きな意味を持つこと。
そして、そうした戦うものとしての理念、基本的な姿勢という物を騙られたオユキにしても、左手を差し出すトモエの手を取ってとするには己も武器を持つ手を預けなければならない。
これまでのように、逆であれば、互いに武器を持たぬ手を。
これまでがそうであったように。
「では、その」
「ええ、どうぞ」
恐る恐る、と言う訳でもなく。おずおずと、緊張をしながら。
その様子に、トモエとしてはどこかおかしさを覚えながら、そういえばと思い出すこともある。
確かに、生前は互いにこうして手を繋いで等と言う事は無かった。互いに武器を持つ手、そこに互いを置いて歩くことは、ままあったのだが、そこはそれ。触れさせていない、取られていない以上はいくらでもやりようがあるというのがただの事実。
だからこそ、こうしてトモエから直接触れても良いと示される場面というのは、やはりオユキにとっては特別で。
「オユキさん、流石にすこしくすぐったいと言いますか」
トモエの掌を、太刀を振る、武器を持つ人間の掌を。何が楽しいのか、指先でなぞるように軽く触れながら。
「いえ、こう、反応があると、つい」
「抑えようとはしているのですが、そうですよね」
トモエにしても、抑えなければならない程度には既に反射としての動作になっていることがある。
それを、オユキに向けぬ様にと理性で抑え込む。少なくとも、門を潜り、最期と決めている場所にたどり着くまでは。それこそ、その時には互いに武器を手に向き合うのだから。
「この後は、創造神様、ですか」
「さて、そればかりは。オユキさんが話していたように、私たちとしての決着の時には、戦と武技の柱がおられるでしょうが」
アーサーからは、後は自由にしろと言わんばかりに。
ロゼリアからは、何度もきちんと彼女の下で、もしくは教会で時間を使うようにと言い続けていた彼女からは、もはやつける薬も無いとばかりに、ため息一つ。
そして、零した溜息の後に、一度息を一つ吸い込んで。
「結末としては、幾つか道があります。そのどれになるかは、生憎と私としても見通せませんが、戻ってきたときには改めて話があります」
「ええ、では、その折に」
「良いですか、今度はきちんと始まりの町の教会、そちらで時間を使えるように訪うのですよ」
「こいつら、頻繁に行ってなかったか」
アーサーから、ロゼリアに対して噂として聞いていたのか、シグルドたちから、もしくは彼らの背中を見て過ごすことになっていた子供たちから話を聞いたからか。
「ええ、狩猟の成果、他国へ訪れた折には必ずと言っていいほどに手土産をもってお越しいただけました」
「異邦人ってなら、それでも十分だろ」
「話さなければならないことも、いろいろあるんですよ。全く、私との会話に揃って時間を使ったのは、初めてこちらに来た時だけなのですから」
「オユキさん一人を呼び出して、そこでいらぬことを吹き込んだ過去がある以上は私としても認める訳が無いでしょうに」
オユキに対して、猜疑の種をまいた人間が何を言うのかと、トモエがため息と共に。
そして、軽くつないだ手を、軽くつないでいた手を、オユキが少し強く握りこんで。
「では、そろそろ参りましょうか。お二方であれば、ご理解いただけるのでしょうが」
「俺らだけってだけでもない。お前らが確かな縁を築いた相手であれば、流石に分かるさ」
「こちらでいえば、それこそあの子達、それからユーフォリアであれば、貴女達二人の変化に気が付くでしょう」
「ユフィとシグルド君であれば、間違いなく気が付くでしょうね」
ユーフォリアに関しては、残念な事に。
トモエとオユキの、最期の道行きについてくることはできない。本人にしても、はっきりと意外だったのだろう。それこそ、ここ半年ほどの間にしても、本人はついてくるつもりであったらしいのだが、ミズキリという人間との間に合った契約が、未だにユーフォリアが縛られている物がまさに致命的な瞬間を狙って出てきてしまった。
相も変わらず、埋伏させておくのが上手い事だと、ユーフォリアがこちらに来てから初めて、トモエにとっては生前から含めて初めて荒れるユーフォリアを目にすることとなった。
どういった流れなのか把握できているのはそれこそ、ミズキリとルーリエラだけなのだろう。
結果として、今のユーフォリアは神国のあるこの大陸にはいない。
想像と創造の世界樹が根差す、この世界における中央大陸。アカシアの樹が彩る中にそびえたつ森林、ルーリエラの出身でもあるその地へと連れていかれている。
「では、今後とも、健やかでありますように」
「ご機嫌よう」
繋いだ手に、トモエからも軽い力が返ってくる。
要は、一先ずこうして二人で手をつなぐのにも少し慣れてきたのだと、そうした合図を行ってみれば、オユキが早々に別離の言葉を二人に。
末永くと言わないのは、そもそもアーサーの良い人は今も水と癒しの神殿にいるから。
「ああ。そっちは、まぁ、末永くな」
「お二人とも、確かに、お伝えしましたよ」
言葉を返さないから、最早約束ともいわさずに。
アーサーは既に身を引いていたのだが、ロゼリアも身を引いたために、後は視線を一切ブラス事無く門を潜る。
ただ、前を見て。
互いにつないだ手の感触だけを、意識しながら。
そうして、潜った門の先は、こちらに来た時をほうふつとさせる、真白の空間。
これから、この道を歩いていくのだろうと考えては見る物の。
「今度は、また、短そうですね」
次なる門が、少し先に用意されている。
「此処が、神殿の中と言う事でしょうか」
「さて、そればかりは何とも。それこそ、先ほどの場でロゼリア様との問答を行うと選択していれば」
「オユキさんは、それも考えていたでしょうが、私としてはお勧めしません。話すにしても、この後でよいでしょう」
「トモエさんは、それほどに」
「二度、ですから。あの人が、私とオユキさんを分けて、オユキさんに余計な事を言ったのは」
「私が求めていたのだとしても、ですか」
オユキの甘えるような言葉に、トモエとしても僅かに考えて。
「おすすめ、しません。結果を見ているから、ともいえるので、その時にと言う事でしたら難しい、ですね」
では、オユキの結果を見なかった、見ていないとして。
トモエが、オユキの交友関係とでも言えばいいのだろうか。仕事における関係とでも言えばいいのか。
それを止めることがあるのかと考えたときに、元よりロゼリアに関してはトモエにしても疑っていたところもある。だからこそ、教会に訪れて、そこで何かあるのだとしても教会で暮らす子供たちに、そちらから先の、教会で暮らす子供たちと時間を使う事を是としていた。
「嘘を見破る奇跡を持っている方が、嘘をつかないと考える事は出来ませんし」
「ええと、トモエさん」
「いえ、そうした制限があるかもしれませんが、そうだとするのならば知識と魔、法と裁きの存在が無意味となると言いますか」
「確かに、それもそうですね」
考えてみれば、それも当然と言えばいいのだろう。
この世界において、教会で司祭以上の位を持つ者たちが平然と嘘を暴けるというのならば、その人物の言葉に嘘が無いというのならば、その二柱はいったい何をするのかと、特に法と裁きは何をもって信仰を集めるというのか。
契約に際して、確かに法と裁きを頼む向きはあったのだが、それだけではという物だろう。
むしろ納得せぬ契約に、納得のいかぬさばきに対して多くの物から反感を得る事とてあったことだろう。
「私たちの間での事を、保証して貰えば良かったでしょうか」
「トモエさんとの間に、そのような物を置きたくありません」
トモエの少しのからかいも含んだ言葉とでも言えばいいのだろうか、それに対してオユキの反応はやはりあまりにも強い。オユキこそ、そうしたことを重要だと考えているのではないかと、そう考えてのトモエの言葉ではあったのだが、やはりと、トモエとしては思う所が。
「では、オユキさん。この扉を潜る前に、一つ、約束していただきたい事があります」
「それは」
「この約束をするためだけに、私はどうにか私たちの間での決め事、この場に持ってきたのですから」
少しの会話を終えれば、最早扉は目前。
未だに開いていないのは、揃って手を置けばいいのか、トモエが、オユキが前に進むと決めなければいけないのか。
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