16 / 30
三章
沼の底 1
しおりを挟む
海斗は自分が夢を見ている、そうはっきりと自覚した。
彼は、以前の高校に進学するその少し前、それこそ花家伊澄と出会うことになった、そんな事件に遭遇する、そんな時期。そうのような姿で、懐かしい、見ればそう思うが普段は忘れている、そんな風景を目にしていた。
彼の意識がはっきりしているのであれば、それこそその出来事はきちんと連続性を持ったものであろうが、目の前の風景や場所、それがコマ落としでもされているかのように切り替わっていく。
それを見ながら、見たから、これは夢なのだとはっきりと意識する。そういった夢であれば、自分の意思で場面を切り替えられる、そんなことを彼は聞いたこともあったが、今見ているものはそうではないようだ。
ただ、ぼんやりと、寝る前に消えた彼女をとにかく忘れないようにと、そう意識したからだろう。彼女に関わるその出来事を眺める。
彼が思い返せば、再会した時にも、この出来事に関しては互いにあまり触れず、伊澄からあの時はと、そう指し示したうえで、お礼を言われる程度のものであった。
思えば、彼が今の職業を得るきっかけにもなっている、そんな出来事。それがついに目の前で再現される。
その日の彼は、友人と駅前で遊び、学生らしく駅前のあちらこちらを適当に冷やかす、その程度のものであったが、その帰り道。目の前を、不審な男が歩いていることに気が付いた。
側に誰がいるわけでもなく、携帯で誰かと話している風でもない。だが、誰かがそこにいるかのように、ただ少し離れた位置にいる彼にも聞こえる、そんな音量で話している。そして、まっすぐ進むでもなく、酔っているのか、または違う理由なのか、上体を大きく揺らしながら歩いている、そんな、一目でおかしい、そう見える男であった。
追い越すのも躊躇い、男の後ろを過去の時分はのろのろとついていく。
遊び終わったその気怠さもあって、普段であれば気にせず追い抜き、さっさと歩き去っただろう。
今にして思えば、この選択は良かったのだろう、当時はそれこそ後々いろいろと考えることになったが。
暫く、他に見る物もないため、目の前の不審な男を観察しながら、道を歩く。
そもそも、駅で遊ぶこともなければ通らない、不慣れな道だ。
何処をどうたどれば帰れるのか、それが分かっている程度、それも遠回りとそう思いながらも歩かなければ、それこそ場所が分からなくなる、携帯で確認しながら、そういった歩き方を求められるようなそんな道。
見慣れた場所へと合流する、そのためには、そろそろ大きな通りに出なければ、そんな曲がり角が近づいた時、突然目の前の男が走り出した。
何事かと、驚いてみれば、男の走る先には、自分と同じ年頃の少女がいた。
たまに見る制服は、自分の通う学校のものとは異なるが、それでも名前くらいは知っている、そんな学校の制服だ。
その人物に向かっている、そうはっきりと感じる程度には、その男が、これまでふらふらと歩いていた男が、ずっと続けていた独り言も止め、猛然と走り出す。
海斗は、それを他人ごとのように、今の彼は過去の事だからなおの事、それをぼんやりと見送る。
当時の時分は、このとき何を考えていたのだろうか、そんな事を考える余裕もあった。
今にして思えば、まず行うべきは、手に持った携帯で警察に通報することだったのだろう。だが、その時はそんな冷静さもなく、どうなるのか予想もできないのに、男を追いかけた。
運動部に所属しているわけでもないが、それでも体を動かす機会はほどほどにあり、男が走り出してから、かなり遅れての行動ではあったが、その距離が徐々に縮まる。
そして、走り寄る男に気が付いたのだろう、当時の伊澄はその場で立ち止まり、男を見る。
そして、男の顔を見て、何か感じるものがあったのだろう、後で聞いても面識はないと、そういわれた、カバンを盾にするように構え、身を縮めるだけであった。
当時の彼は、それに対して何かを叫んだ。
それは夢として見ている中でも、よく聞き取れない、それこそ顔に恐怖を浮かべている彼女には、聞き取れるわけもなかっただろう。
彼は知らぬことではあるが、そもそもその男の影になって、彼女からは男が、口を半開きにして、よだれを垂らしながら、それでもへらへらと、妙な笑顔を浮かべながら自分に走り寄ってくる、そんな姿しか見えていなかった。
いや、影になっていなくとも、その男意外にまともに気が周りはしなかっただろうが。
そして、身を縮めるだけの小娘は、男にその場に押し倒される。
走った勢いそのままにぶつかられ、持っていた鞄はよそに飛んでいき、悲鳴を上げることもできずに組み敷かれる。
それから十秒ほどだろうか、男が抑え込んでいる、その背中に追いついた彼は、躊躇うこともなくその背を横から蹴りはらった。
これまで喧嘩など縁がなく、格闘技などもちろんやったこともない、素人の蹴りでも走った勢いがあったからだろう。男は彼女の上から転がるように落ち、海斗を睨むように見上げる。
短い距離でも全力で走ったためか、僅かに息が上がりながらも、彼は改めて男を正面から見る。
血走った目、明らかに健康とは思えない肌、ぼさぼさの髪、眼の下にはクマが色濃く、開いた口からはよだれを流している。
そして、その手には、小さいながらも鈍く光る刃物。
海斗は手に持っていた携帯を、まず、未だに地面に横たわる伊澄に放り投げ、警察に電話しろ、そう叫び、肩から下げていた鞄を男に投げつける。
当時は、そこで自分が何をしたのかよく覚えていなかったが、夢に見ると、ああ、こんなことをしたのか、そう改めて思い返される。
投げつけた鞄は、そのまま男の顔に当たるが、男はひるむこともなく、何か意味のない叫び声を上げながら、今度は彼のほうへと飛び掛かろうとする。勿論、手にした刃物を前にして。
そこで恐怖で身が固まることが無かったのは、まぁ、若さゆえの無謀か、何か正義感のような、側で未だに地面に倒れる彼女を、この場で守れるのは自分しかいない、そんな安っぽい英雄志向か。
なにかそのようなものに突き動かされ、彼は男の飛び掛かりをかわし、刃物を握る手にしがみつき、見よう見まねでそれを捩じる。
当然そんなものは上手くいくはずもなく、見た目に反して異常な力で、組み付いた腕で振り回され、近くの電柱にたたきつけられる。
その衝撃で息が詰まったその隙に、男は刃物を彼につき込む。
それをどうにか体をひねり、どうにか刺されることは避けたが、複だけではなく肩から腕にかけて、切り傷ができる。
そんなことを数度繰り返し、彼はようやく男の手首をつかみ、それをひねり、足をかけ地面に引き倒すことに成功する。
その様子を、過去の自分の視界越しに見る今の彼は、運が良かった、そうとしか思えず、自分のことで、終わって、無事だった、そうとわかっているのに、冷や冷やと、嫌な緊張感を味わうこととなった。
最初に組み付いた時の、無理な動きで痛めたのか、それこそ後になって分かった、麻薬の服用、その効果が切れたのか、そこからは彼でも十分に抑え込める、その程度の力しかなくなった。
そして、未だに、体は起こしていたが、震えて様子を見るだけだった伊澄に、叫ぶように告げる。
早く警察を呼べと。
2・3回そう叫べば、彼が投げつけた携帯を手に、震えながら、たどたどしく何かを話し出す。
その間も押さえつけた男は、訳の分からない叫びをあげ、抑え込めるとはいっても、気を抜けば抜け出しそうなその男を、どうにか全力で、それこそ火事場の馬鹿力とでもいうのだろうか、そのようなもので押さえ続ける。
後から聞けば、警察が来る迄、5分にも満たない時間だった、そう聞いたが、当時の彼は1時間ほどに感じていた。
抑える腕は疲れでしびれだし、それだけでなく、切り付けられた傷から流れる血が、貧血も起こしていたのだろう。
抑えられる男と、抑え込む彼自身、その汗が滑らせようとする中、ただただ、男をどうにか抑えつけた。
そして、少し遠くに見えた警官が、彼らに気が付き、駆け出し近づいてくる。
その拍子に、少し気が緩み、もがき続けた男の手が自由になる。
落とした刃物は拾っていないが、男の上に乗り、押さえつける彼を自由になった手で殴りつけ始める。
そんな中、自由にはさせるまいと、離れた手を取ろうとはせず、頭と首に手をかけ、体重をかけ抑えつける。
そして、何度も振り回される手が顔に当たり、いい加減意識も薄れかけ始めたころに、警官が彼に代わって、男を抑えつける。
二人組の片方が抑え、もう一人が、もう大丈夫だと、そう声をかけながら彼を助け起こす。
そして、そこで彼の意識は途切れた。
彼は、以前の高校に進学するその少し前、それこそ花家伊澄と出会うことになった、そんな事件に遭遇する、そんな時期。そうのような姿で、懐かしい、見ればそう思うが普段は忘れている、そんな風景を目にしていた。
彼の意識がはっきりしているのであれば、それこそその出来事はきちんと連続性を持ったものであろうが、目の前の風景や場所、それがコマ落としでもされているかのように切り替わっていく。
それを見ながら、見たから、これは夢なのだとはっきりと意識する。そういった夢であれば、自分の意思で場面を切り替えられる、そんなことを彼は聞いたこともあったが、今見ているものはそうではないようだ。
ただ、ぼんやりと、寝る前に消えた彼女をとにかく忘れないようにと、そう意識したからだろう。彼女に関わるその出来事を眺める。
彼が思い返せば、再会した時にも、この出来事に関しては互いにあまり触れず、伊澄からあの時はと、そう指し示したうえで、お礼を言われる程度のものであった。
思えば、彼が今の職業を得るきっかけにもなっている、そんな出来事。それがついに目の前で再現される。
その日の彼は、友人と駅前で遊び、学生らしく駅前のあちらこちらを適当に冷やかす、その程度のものであったが、その帰り道。目の前を、不審な男が歩いていることに気が付いた。
側に誰がいるわけでもなく、携帯で誰かと話している風でもない。だが、誰かがそこにいるかのように、ただ少し離れた位置にいる彼にも聞こえる、そんな音量で話している。そして、まっすぐ進むでもなく、酔っているのか、または違う理由なのか、上体を大きく揺らしながら歩いている、そんな、一目でおかしい、そう見える男であった。
追い越すのも躊躇い、男の後ろを過去の時分はのろのろとついていく。
遊び終わったその気怠さもあって、普段であれば気にせず追い抜き、さっさと歩き去っただろう。
今にして思えば、この選択は良かったのだろう、当時はそれこそ後々いろいろと考えることになったが。
暫く、他に見る物もないため、目の前の不審な男を観察しながら、道を歩く。
そもそも、駅で遊ぶこともなければ通らない、不慣れな道だ。
何処をどうたどれば帰れるのか、それが分かっている程度、それも遠回りとそう思いながらも歩かなければ、それこそ場所が分からなくなる、携帯で確認しながら、そういった歩き方を求められるようなそんな道。
見慣れた場所へと合流する、そのためには、そろそろ大きな通りに出なければ、そんな曲がり角が近づいた時、突然目の前の男が走り出した。
何事かと、驚いてみれば、男の走る先には、自分と同じ年頃の少女がいた。
たまに見る制服は、自分の通う学校のものとは異なるが、それでも名前くらいは知っている、そんな学校の制服だ。
その人物に向かっている、そうはっきりと感じる程度には、その男が、これまでふらふらと歩いていた男が、ずっと続けていた独り言も止め、猛然と走り出す。
海斗は、それを他人ごとのように、今の彼は過去の事だからなおの事、それをぼんやりと見送る。
当時の時分は、このとき何を考えていたのだろうか、そんな事を考える余裕もあった。
今にして思えば、まず行うべきは、手に持った携帯で警察に通報することだったのだろう。だが、その時はそんな冷静さもなく、どうなるのか予想もできないのに、男を追いかけた。
運動部に所属しているわけでもないが、それでも体を動かす機会はほどほどにあり、男が走り出してから、かなり遅れての行動ではあったが、その距離が徐々に縮まる。
そして、走り寄る男に気が付いたのだろう、当時の伊澄はその場で立ち止まり、男を見る。
そして、男の顔を見て、何か感じるものがあったのだろう、後で聞いても面識はないと、そういわれた、カバンを盾にするように構え、身を縮めるだけであった。
当時の彼は、それに対して何かを叫んだ。
それは夢として見ている中でも、よく聞き取れない、それこそ顔に恐怖を浮かべている彼女には、聞き取れるわけもなかっただろう。
彼は知らぬことではあるが、そもそもその男の影になって、彼女からは男が、口を半開きにして、よだれを垂らしながら、それでもへらへらと、妙な笑顔を浮かべながら自分に走り寄ってくる、そんな姿しか見えていなかった。
いや、影になっていなくとも、その男意外にまともに気が周りはしなかっただろうが。
そして、身を縮めるだけの小娘は、男にその場に押し倒される。
走った勢いそのままにぶつかられ、持っていた鞄はよそに飛んでいき、悲鳴を上げることもできずに組み敷かれる。
それから十秒ほどだろうか、男が抑え込んでいる、その背中に追いついた彼は、躊躇うこともなくその背を横から蹴りはらった。
これまで喧嘩など縁がなく、格闘技などもちろんやったこともない、素人の蹴りでも走った勢いがあったからだろう。男は彼女の上から転がるように落ち、海斗を睨むように見上げる。
短い距離でも全力で走ったためか、僅かに息が上がりながらも、彼は改めて男を正面から見る。
血走った目、明らかに健康とは思えない肌、ぼさぼさの髪、眼の下にはクマが色濃く、開いた口からはよだれを流している。
そして、その手には、小さいながらも鈍く光る刃物。
海斗は手に持っていた携帯を、まず、未だに地面に横たわる伊澄に放り投げ、警察に電話しろ、そう叫び、肩から下げていた鞄を男に投げつける。
当時は、そこで自分が何をしたのかよく覚えていなかったが、夢に見ると、ああ、こんなことをしたのか、そう改めて思い返される。
投げつけた鞄は、そのまま男の顔に当たるが、男はひるむこともなく、何か意味のない叫び声を上げながら、今度は彼のほうへと飛び掛かろうとする。勿論、手にした刃物を前にして。
そこで恐怖で身が固まることが無かったのは、まぁ、若さゆえの無謀か、何か正義感のような、側で未だに地面に倒れる彼女を、この場で守れるのは自分しかいない、そんな安っぽい英雄志向か。
なにかそのようなものに突き動かされ、彼は男の飛び掛かりをかわし、刃物を握る手にしがみつき、見よう見まねでそれを捩じる。
当然そんなものは上手くいくはずもなく、見た目に反して異常な力で、組み付いた腕で振り回され、近くの電柱にたたきつけられる。
その衝撃で息が詰まったその隙に、男は刃物を彼につき込む。
それをどうにか体をひねり、どうにか刺されることは避けたが、複だけではなく肩から腕にかけて、切り傷ができる。
そんなことを数度繰り返し、彼はようやく男の手首をつかみ、それをひねり、足をかけ地面に引き倒すことに成功する。
その様子を、過去の自分の視界越しに見る今の彼は、運が良かった、そうとしか思えず、自分のことで、終わって、無事だった、そうとわかっているのに、冷や冷やと、嫌な緊張感を味わうこととなった。
最初に組み付いた時の、無理な動きで痛めたのか、それこそ後になって分かった、麻薬の服用、その効果が切れたのか、そこからは彼でも十分に抑え込める、その程度の力しかなくなった。
そして、未だに、体は起こしていたが、震えて様子を見るだけだった伊澄に、叫ぶように告げる。
早く警察を呼べと。
2・3回そう叫べば、彼が投げつけた携帯を手に、震えながら、たどたどしく何かを話し出す。
その間も押さえつけた男は、訳の分からない叫びをあげ、抑え込めるとはいっても、気を抜けば抜け出しそうなその男を、どうにか全力で、それこそ火事場の馬鹿力とでもいうのだろうか、そのようなもので押さえ続ける。
後から聞けば、警察が来る迄、5分にも満たない時間だった、そう聞いたが、当時の彼は1時間ほどに感じていた。
抑える腕は疲れでしびれだし、それだけでなく、切り付けられた傷から流れる血が、貧血も起こしていたのだろう。
抑えられる男と、抑え込む彼自身、その汗が滑らせようとする中、ただただ、男をどうにか抑えつけた。
そして、少し遠くに見えた警官が、彼らに気が付き、駆け出し近づいてくる。
その拍子に、少し気が緩み、もがき続けた男の手が自由になる。
落とした刃物は拾っていないが、男の上に乗り、押さえつける彼を自由になった手で殴りつけ始める。
そんな中、自由にはさせるまいと、離れた手を取ろうとはせず、頭と首に手をかけ、体重をかけ抑えつける。
そして、何度も振り回される手が顔に当たり、いい加減意識も薄れかけ始めたころに、警官が彼に代わって、男を抑えつける。
二人組の片方が抑え、もう一人が、もう大丈夫だと、そう声をかけながら彼を助け起こす。
そして、そこで彼の意識は途切れた。
0
あなたにおすすめの小説
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/9:『ゆうじんのかお』の章を追加。2026/1/16の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/8:『ついてきたもの』の章を追加。2026/1/15の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/7:『かわぞいのみち』の章を追加。2026/1/14の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。
【完結】百怪
アンミン
ホラー
【PV数100万突破】
第9回ネット小説大賞、一次選考通過、
第11回ネット小説大賞、一次選考通過、
マンガBANG×エイベックス・ピクチャーズ
第一回WEB小説大賞一次選考通過作品です。
百物語系のお話。
怖くない話の短編がメインです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる