ひまわり計画

風宮 秤

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ノーベル賞

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 国慶節明けの会議室に二つのニュースが伝わった。
「ドクター・ワン、良いニュースと悪いニュースが来ました・・・。ご存じのようですね」
 シナリオ担当は、表情の変化を見逃さなかった。
「見抜かれた事が一番のニュースだな。良いニュースはリチャード・ワンにノーベル物理学賞を授与すると連絡があった。本人は入院中で出席出来ない旨は伝えたが代理で王雪美に出席して欲しいと言ってきた」
「ひまわりシステムにノーベル賞級の効果があったのですか?」
 シナリオは何かしらの受賞には備えてはいた。しかし、環境分野の活動が物理学賞に合致するとは想定していなかった。
「地球とは言い難いけど、ひまわりシステムを設置した地域では有意な気温の低下が観測されているよ。それぞれの国の気象局の観測データが裏付けているよ。そして、地球温暖化防止は地球科学分野での受賞になりますよね。大姐?」
「そう言っていた。私は地球温暖化防止の活動に弾みをつけたい政治的思惑を感じた」
「では、悪い方のニュースは私から説明します。美国の連邦捜査局がリチャード・ワンにインサイダー取引の容疑で国際手配を出しました」
「これは凄い。リチャード・ワンは歴史に残りますよ」
 喜んで見せるエンジニア担当だった。
「ドクター・ワン、授賞式に出席されるのですか?」
「顔を晒すのは私の役割の一つだから仕方がない。美容院に行ってネット民の期待に応えるつもりだ。肝心な時に留守になるのは心苦しいが代表して授賞式を楽しんでくるつもりだ」

 リチャード・ワンのノーベル賞受賞ニュースは、一部のネット民の話題になった。環境保護活動を崇高な活動と捉えている環境信者からは金でノーベル賞を買ったと批判的に言われた。現実主義の環境保護団体からは、環境保護活動自体の地位向上に繋がったと歓迎する意見が出た。地域振興団体からは砂漠地帯の極貧地域にカーボンニュートラルの現金収入の可能性を示した意義は経済学賞の価値があると称賛した。
 ひまわり計画をネタにしているネット民からはリチャード・ワンの娘の王雪美に期待が高まった。リチャード・ワンの代わりに交渉役をしているにも関わらず写真の一枚も外に出て来なかったからだ。見られない事で掻き立てられる欲望が『謎の美人』『秘書のように控えめ』のキーワードで独り歩きをしていた。話題になってから五年ほど過ぎていたが、彼らの妄想を熟成させるにはちょうど良い年月だった。


 十一月に入るとノーベル賞の話題は関心を失っていた。時折リチャード・ワンの国際指名手配のニュースがネット民にぶり返されていた。経済誌は国際指名手配だからと言ってリチャード・ワンを利用しないはずはなかった。指名手配の切り口でも、運用成績での切り口でも特集の中心になるのは真似出来ない手法だった。
 ノーベル賞受賞のニュースと同時に経済誌からは取材の申し込みとテレビ局からは出演の申し込みが殺到した。何を訊きたいのかは分かっていた。質問者が駆け出しの新人でも経済学者でも、若いキャスターでも解説者でも異口同音に短期間で資産を増やす取引手法しかなかった。
 シナリオに国際指名手配の想定はなかった。彼らが主張するインサイダー取引の定義には恣意的な部分があり立件に必要な証拠も解釈に依存するからだ。一つはっきりしているのはウォール街の外で活動している事だった。美国の富が吸い取られているのが癇に障ったと見るべきだった。
 リチャード・ワンは問い合わせのあった経済誌とテレビ局に同一文面の回答書を送信した。

『経済誌・テレビ局各位
 問い合わせありがとうございます。本来なら依頼のあった全ての取材を受け、出演をしたい思いであります。しかし、有限の時間の中では優先順位をつけざる得ない事をお許し頂きたい。そこで、各位から頂いた質問事項に対し同一の回答をする事で公平を期したいと思います。
 現在の総資産は十七億ドル。運用成績は三十四億ドル。資産が増える以上にひまわり計画に投資しました。年率は百パーセント前後。購入価格の五倍以上が見込める銘柄に分散投資が基本方針です。
 上昇の見込める銘柄に分散投資をするのは、どの方とも同じだと思います。僕の場合は愚直に該当する銘柄を探していると自負しております。部外者が入手出来る情報をどれだけ読み解く事に時間と能力を使うか。視野狭窄にならない様に他者の意見に耳を傾ける事。仮に相手が間違っていてもその結論に帰結する情報と考え方には素直に耳を傾け新しい視点を増やす事。間違った考え方でも、それが主流ならそれに沿って株価が変動するからです。
 インサイダー疑惑を掛けられているのは、愚直に情報分析をする事の難しさを表していると思います。例えば企業に指導が入る前に必ず被害を訴える企業があります。その声が大きければ政府が是正に動く。国家間で報復する場合でもどの業種を選ぶのか。どの企業を選ぶのか。報道で知った時に納得感があるはずです。それは愚直に資料を読み込み企業の繋がりを見て行けば良いのです。業績の上がる企業があれば別の企業の業績が落ちる。一つの物が売れればサプライヤーチェーン全体で業績が上がるのです。なるべく多くの資料を読み込み関連が見出せるか。株取引の成功の道に近道も遠回りもありません。愚直に資料を読み込み社会全体の繋がりを見るこの道だけが成功に繋がっているのです。
 この手法は捜査手法を参考にしています。もし仮説が正しければ、その一面からで大きく利益を上げる事が出来ます。しかし、現実はそうではない。冤罪を出さない様に多面的エビデンスを集め分析をする必要がある。それに気がついた時に愚直にデータを集め多面的に分析する手法に辿り着いたのです。

 親愛なる各位に、このメールが役に立てれば幸いです。

 リチャード・ワン 』

 A4一枚程度の文面に各社工夫を凝らした特集を組んだ。専門家に論評させるところ。シニア層のアンケート結果と比較した運用方法の理想と現実のギャップに焦点をあてたところなどがあった。各社がそれぞれの解釈で特集にしたが連邦捜査局だけが正しく理解した。開示した手法を真似すれば同じ成果を上げられる。但し情報収集能力と分析能力があれば。実質的な無罪主張であり真似できないのであれば捜査機関として情報収集能力も分析能力も不足しているとの挑戦状であった。

   ~・~・~

 拉薩から山脈を越えた西部に広がる丘陵な土地にエンジニア担当は来ていた。ひまわり計画のサイトでも確認が出来る場所だ。標高五千メートルを超えるこの地ではサングラスと日焼け止めが欠かせない。
 一面に展開したひまわりシステムB型は真っ直ぐ太陽に向いていた。時々刻々と短針が動くように角度を変えていく。人の目では分からない僅かな凹みを持つ凹面鏡郡が千キロ先で集光している。一笑に付されるアイデアだが形となり手で触る事が出来る。
「圧巻だよ」
 エンジニア担当は満足そうに呟いた。
 数十キロメートル離れた整地中の地域に車で移動する。小型機で上空視察をする手段もあったが工兵の士気を落としかねない。車で移動して温めた缶珈琲の差し入れをするのが一番良かった。人とは機械とは違うもの。エンジニアだから人が見えるのだ。
 彼らはひまわりシステムが何であるのかに興味を持たない。今、興味を示して命を危険に曝すより事後に全てを知る事を選ぶ。孫子の兵法を理解している兵は慎重だ。
 B型は百基単位で電源供給用の太陽光パネルが設置された。反射面中央に太陽電池を設置するのは非効率だからだ。
 奥地に行くほど缶珈琲の差し入れは喜ばれた。全ての班を回れるわけではないが缶珈琲は託してある。野営の時に配られるだろう。

   ~・~・~

 十一月下旬になると主席の動向を伝えるニュースから映像が消えアナウンサーが読み上げるだけに変わった。新聞では文面だけになった。しかし、視察を伝える現地民のSNSには写真付きの投稿がされていた。本来ならCGを使っても健全ぶりをアピールする場面である。大使館の行動も不可解な動きが見られた。家族を帰国させる者が出てきた。
 それを裏付けるように主席の余命宣告が囁かれるようになった。未だ病名は不明だったが私財を投じて食料を買い漁る実業家がでた。何かが起こる事は誰でも想像できた。何に巻き込まれるのかは分からなかった。不安に繋がるものは情報統制の網に掛ったが漠然とした不安は防ぎようがなかった。
 内乱がトレンドに上がると直ぐにブロックされた。隠語に変わり不安は囁かれ続けた。外国では次期主席の候補者をはじめ、勢力図などを解説する番組が出た。内乱をキーワードに艦船の数でポストが決まる海軍に不満が燻っていると解説する番組もあった。陸軍がチベット高原に展開していると解説する番組もあった。沿岸部を捨て遷都を計画しているとしていた。
 主席には不愉快極まる話題で溢れたが、主席の沈黙は続いた。

   ~・~・~

 ドクター・ワンの部下たちが会議室に集まりだしたのは二十二時を回っていた。昼間とは違い誰もが私服で現れた。ビデオ担当スタッフも招待された。壁際にはフライドチキンやフライドポテト、ケーキなどの夜食が並べられ、お酒も用意されていた。ツリーがあればクリスマスパーティーと言える雰囲気だった。
 モニターには北欧のライブ映像が映し出されていた。まだ十五時とは言え夕方の様にビルの影が街を覆っていた。塩城とは違う街並みも感慨深いものがあった。今はドクター・ワンの晴れ舞台を仲間たちと見ようと集まっていた。

 二十三時になると授賞式会場の配信が始まった。雑談が静まりそれぞれが時計を確認していた。
「みなさん、もうじき授賞式が始まります。その前にひまわり計画は彼の立案が最初の一歩でした。ゼロから形あるアイデアを生み出すのはコロンブスの卵と同じく大変難しいものです。そしてドクター・ワンをはじめ我々はそれぞれの得意分野を活かして彼のアイデアを具現化して今日に至りました。しかし、シナリオはまだ完結していません。エピローグもまだです。でも、今日は仕事を忘れてみんなで祝おうではありませんか」
 シナリオ担当が原案者に目配せをすると拍手が沸き起こった。
「私のラフなアイデアを実行可能な形に昇華し具現化して頂いた皆様に。そして、アイデアを認めて頂いたドクター・ワンに。この場を借りてお礼を申し上げたい。大謝」
 原案者は各自が思い思いの飲み物を手にしているのを確認すると、
「ドクター・ワンにノーベル賞を」
「乾杯」
 モニターの向うの厳かな雰囲気とは対照に会議室ではお互いを労い、雑談があちらこちらで交わされた。

 授賞式の開会を知らせるラッパが鳴り響いた。モニターの前に扇状に集まると受賞者の入場を待った。式場でのドクター・ワンの衣装は誰も知らされていなかったからだ。男性の燕尾服とは違い女性のドレスコードは解釈に幅があった。順当にはチャイナドレスだが腿まである切れ込みは肌の露出でアウトになる。若者に人気のある漢服の可能性は否定出来ないがドクター・ワンの漢服姿を想像出来る部下は一人もいなかった。
 受賞者の入場が始まるとどよめきが起きた。
「白のチャイナドレスだ・・・・」
 ドクター・ワンが葬式に着用する白色を選んだ事に困惑が広がった。祭事であれば紅色。西洋に合わせて白色を選んだのか? 民族衣装が認められる式だから色の解釈も文化の違いが認められるはず。
「切れ込みがデザイン化されて肌の露出は防いでいる。アップにした髪に白色の牡丹を模した飾り。一際目を惹く赤い口紅・・・きれい」
 細かく実況を入れている女性スタッフが魅了されていくのが伝わってくる。
「龍の刺繍! 銀糸で巻き付くような登り龍の刺繍がされている。四爪だ」
 白一色に見えた生地だったがライトの加減で龍が浮かび上がった。女帝のように見える衣装なのに押し殺したような雰囲気は秘書を思わせた。
「我々は、あの方をボスとして仰いで仕事をしているが、壇上に立つ姿はリチャード・ワンより目立たない様に一歩引いた感じがある・・・。どちらが本物のドクター・ワンだろうか?」
 シナリオ担当はドクター・ワンの傍で働いていながら気づけなかった一面に当惑と敬意を感じていた。
「大姐は、私たちを欺いていないよ。『授賞式を楽しんでくる』と言っていたよ。私には秘書の演技を楽しんでいる様にしか見えないよ」
 国王からの授与式でも、代理で受け取り、代理で感謝を表現しているのが伝わってくる。自分が主人公として我を失う事がない姿勢はドクター・ワンの真面目さの表れかもとシナリオ担当は思った。

 授賞式が終り晩餐会を待つ間、会議室では寝袋に潜り仮眠をとる者が多かった。ドクター・ワンの衣装替えにも興味があったが本命のリチャード・ワンのメッセージビデオを見る為に晩餐会の終盤まで仮眠をとる者もいた。

 晩餐会会場に向かう受賞者をカメラが追っていた。受賞者の伴侶にも温かい言葉が向けられていた。
「おお・・・、さすがは我らがボスだ」
 授賞式と衣装が変わっていた。デザインは同じだ。赤一色。龍の刺繍も赤。左右の切れ込みは黒の生地だった。妖艶さが漂い代理出席の雰囲気はない。黒社会のボスと言っても誰も疑わないだろう。

 晩餐会が始まる頃には隅で寝息を立てる寝袋ばかりになっていた。ドクター・ワンの衣装が見られれば残りはリチャード・ワンのスピーチだけだ。スピーチ原稿の内容は誰もが知っていたが周囲の反応は気になる。早朝六時ぐらいに予定されているスピーチまで晩餐会だけでは睡魔に勝てない。ならば素直に仮眠をとってリチャード・ワンの出番を待つ事にする。誰もが妥当な判断をしていた。
「自ら、寝ずの番ですか?」
 トレーダー担当はコーラを持って来た。
「これから先、晩餐会を見る事はないからね。寝るのは明日でも出来るよ」
 コーラを受け取りながら言った。
 エンジニア担当は、閃くように思い出した。
「ネタ元が未だに分からないよ」
 トレーダー担当は指さすコーラを見て思い出した。
「バフェットですよ。美国の著名投資家の。彼は一日に五本飲むそうですよ」
「株取引は本当に儲かるの?」
「どうですかね。投稿内容と勤務先をリンクして人工知能で分析すれば企業の動きが透けて見えたので儲かると思いますよ」
「内部情報がなくても?」
「なくても儲かります。でも、倍に増やす事は難しいと思います」

 ドクター・ワンが壇上に案内されると、合図を受けたかのように寝袋から抜け出しモニターの前に集まって来た。晩餐会会場では巨大なスクリーンが用意され横に立つドクター・ワンが映し出された。
「父はノーベル賞の受賞にとても感謝をしていました。出来れば国王陛下をはじめひまわり計画に協力して頂いた皆様に感謝を伝えたいと申しておりました。残念ながら外出が叶わぬ故にビデオレターでの非礼を許して欲しいと申しておりました」
 深々と頭を下げるとビデオレターの再生が始まった。

 映し出されたのは、何本もの点滴に繋がれ酸素マスクで顔を覆われた老人だった。ビデオ出演でのリチャード・ワンとは年齢が違い過ぎた。誰もが間違いだと思ったがスタッフに動揺はなく隣に立つ王雪美はモニターを見つめたままだ。
 老人は薄目を開いた。覇気のない瞳は長くない事を物語っていた。
『お集まりの皆様、このような形でのスピーチとなり大変恐縮しております』
 聞き取り辛い掠れた声に字幕が表示された。
『僕が地球環境に取り組むようになったのは免疫不全となり無菌室から出られなくなった時からです』
『生活が一変しました。お金で買えないものを初めて知りました』

『家族を顧みなかった僕を、誰が顧みるでしょうか?』
『何もかも失ったと思いました』
『そんな僕を娘は見捨てないでいてくれた』
『こんな僕を見捨てないでくれた。家族らしい事をしなかった僕を』


『僕は考えました。娘に出来る事を』
『地球温暖化のニュースは知っていました』
『娘の為、その子供たちの為に、地球環境を買おうと思いました』

『無菌室にパソコンを持ち込みました』
『環境問題を勉強し、資産を増やし、協力者を探しました』
『バーチャル空間を作りました。スタッフにカメラを持たせ世界中を見ました』
『若い姿でビデオ出演もした』
『社会も僕と同じだと分かった時、ひまわりシステムの設置にお金を出しました』


『僕は感謝しています。気づかせてくれた神に。協力者に。そして、娘の王雪美に』

 スクリーンの横で王雪美が涙ぐんでいた。
 静寂が会場を包んだ。
 途切れ途切れのスピーチを終えた安堵のリチャード・ワンと頬を伝う涙の王雪美。
 誰かの拍手で、会場の時計が動き始めた。
 王雪美は、深々とお辞儀をすると席に戻った。
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