もういらないと言われたので隣国で聖女やります。

ゆーぞー

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「皇后陛下とお茶のお時間になりますので」
 お約束は生きていたようです。リズさんに促され、私は立ち上がりました。皇后陛下のお城まで少し歩くそうです。私はリズについていきます。1人だと絶対迷います。

 私が歩くとどこでも出会った人が脇にそれて頭を下げてくれます。リズさんにわけを聞くと、私が王族と同じ身分だからだと言われました。私は孤児の平民です。そう言ってもリズさんは陛下が決めたことだから、と取り合ってくれません。

 確かにリズさんに言っても仕方ないことです。でも私なんかに頭を下げる人のことを思うと、非常に心苦しい思いになります。せめて頭を下げるのをやめてもらえないか、陛下にお願いしてみることにします。

 そうしてしばらく歩いていたら、前から綺麗な女の人が歩いてきました。アマンダさんのように髪の毛をクルンクルンに巻いて、ピラピラのドレスを着た若い女性です。似たような感じのメイドさんが2人後ろに立っています。

「聖女様のお通りです。道をお開けください」

 リズさんの声にその女性は言い返しました。

「わたくしは、リッテンバーム侯爵の娘 フローラ・リッテンバームです。そちらにいらっしゃる方の爵位をお聞かせいただけますか?侯爵よりご身分がお有りでしたら、道をお譲りいたしますわ」

「聖女様のご身分は王族と同等。そのように陛下からご通達頂いていますが、お聞きになっておられませんか?」

「その方が聖女様だと、どのようにわたくしが理解しなくてはならないのでしょう?お会いしたことはございませんし、ご紹介いただいたこともございません」

 なるほど、つまり私がここで聖女であると証明すればいいのでしょうか。でも私が聖女であるとどのように証明したらいいのでしょう。この人たちが魔力を感じる人ならいいのですが、感じない人だったらどのように証明しても無意味に思えます。

 リズさんもフローラさん達も一歩も引かない様子です。ここでこのままにらめっこをしていたら、皇后様のお茶の時間に間に合わなくなります。

「リズさん、もういいですよ。この方々に道を譲って先に通っていただきましょう。じゃないと皇后様とのお約束に間に合わなくなります」
「ですが」

 私とリズさんのやりとりを聞いたフローラさんが目を見開きました。

「皇后様とお約束ですって?」

 声がワントーン高くなりました。

「あなた、皇后様とお茶のお約束なんて。今朝来たばかりなのに嘘おっしゃってるの?」

 は?何故そんな嘘をつく必要が?と不思議に思ってフローラさんを見ると、私を小馬鹿にしたように口の端を少し上げて笑っていました。

「皇后様はお忙しい方なのよ。あなたなんかとお約束するわけないじゃない」
「虚言癖というものがございますわ」

 メイドさんの1人がフローラさんに耳打ちするように言いました。でも声は大きくはっきりと聞こえました。

「嘘をつく癖、でございます。聖女というのも嘘ではございませんか?」

 もう1人のメイドさんも言いました。

「わたくしの親族に聖女のアマンダがおります。本人は聖女と言っておりますが、わたくしは信じておりません。あなたもアマンダと同じなのですね」

 なるほど、アマンダさんと親戚でしたか。確かによく似ていらっしゃいます。

「今日は引いて差し上げますわ。だってご病気なのですもの」
 そう言ってフローラさんはオホホと笑います。

「さ、どうぞ。皇后陛下様によろしくお伝えくださいませ」

 3人の嘲笑う声が聞こえます。とにかく早く行かないと皇后様をお待たせしてしまいます。

「よろしくお伝えいたしましょう」

 リズさんはニヤリと笑いました。その笑顔はとても神々しく見えたのでした。
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