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しおりを挟む王城の一室にマグヌス様とインディアルで大臣だった方々が集まっています。その中には何度かお会いしたことのある方もいらっしゃいました。
「あなたが聖女、アリス様」
マグヌス様が立ち上がって挨拶してくださいました。私はお会いしたことがありませんが、アジャール様とは似てもいない穏やかで優しそうな方です。
「インディアルを支えてくれたのに兄上のせいで申し訳ない」
マグヌス様が頭を下げてくださいます。
「おやめください。私はもう気にしていませんから」
フフル様に言われたこともあり、私はもう気にしないことにしました。私のせいでと思ってしまうと確かに自分が悪かったと思うのですが、私の手を離れてしまったのだからもう自分のできることはないのだと思うと気にならなくなります。
「聖女様、儀式は大変だったでしょう」
何度かお会いしたことがある、大臣だったクラント様から話しかけられました。
「祈りの間を覚えていらっしゃいますか。あの建物をアジャール様は壊してしまいました。もう国の再建は望めないでしょう」
クラント様の声に他の方々も俯かれました。涙を流している方もいらっしゃいます。
「あの建物を壊したくらいで国の再建を諦めるのか!」
マグヌス様が怒りの篭った声で怒鳴りました。先ほどまで穏やかに微笑んでいたのに、思わずビクッと肩が震えました。気がつくと、エディ様が私のすぐそばにいらっしゃっています。
「マグヌス様、あの建物は特別な建物です」
私は思い切って言いました。
「特別?どういうことだ」
クラント様の目を見て私は自分の知っていることを話そうと思いました。このことは国王と聖女、そして大臣でも限られた人しか知らないことです。クラント様もご存知の話なのでしょう。小さくうなづいています。
「インディアル王国はかつては穢れた土地でした。人が住めるような地ではなかったのです」
それは私がかつて聖女様に聞いた話です。大昔に大きな戦争があり、そこではたくさんの人が死に土地が穢れてしまったそうです。なんとか人が住めるようにするため、当時の聖女が自分の命と引き換えに土地の穢れを抑え込みました。その場所が祈りの間でした。そして聖女がずっとその場所を中心に国に結界を張り、国を守り続けていたのです。
「つまりその場所が壊れてしまったから」
「おそらく封印されていた穢れが国中を覆うのでしょう」
そういうとクラント様は目を閉じました。
「穢れが国を覆ったらどうなるのだ」
「おそらく、悪しき心を持つ者の天下となります」
その場にいた人が全員息を飲むのがわかりました。
「こちらに影響はないのでしょうか」
しばらくしてから、ようやくどなたかが声を出されました。
「アリス様が我が国には結界を張っております。悪しき心を持つものはこの国にはいられないため、インディアルへ向かったようです。逆に良き心の持ち主はレートレースに導かれております」
ギルバート様の説明に安堵したような声が聞こえました。本当にそれでいいのか私は心配でなりません。
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