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「揃ったか」

 執務室に一足先に戻ると、極秘にギルバート、アンディ、エディを呼んだ。アリスは皇后とお茶を楽しんでいるはずだ。

「実はインディアルからアリスに損害賠償請求とやらが出された」

 インディアルから届いた封書の中には、アジャールとアマンダの結婚式の招待状とアリスへの損害賠償請求書が入っていた。

「は?」
「どういうことですか?」

 机の上に投げ出された封書をアンディは一礼して手に取る。中身を見て手が震えている。

「魔獣が発生し病気で倒れる国民が増えたのは、アリスが悪魔の使いで呪いをかけて国から出たせいなので責任取ってお金を払いたまえ?」
「兄上」

 中身を読んだアンディに対し、エディが睨んだ。

「ふざけないで、きちんと読んでください」
「ふざけてない」

 アンディは手紙をエディに渡す。エディはそれを引ったくるように手にする。

「ほん、とう・・・だ」

 未だかつて、国同士のやり取りの書状がこんな子どもがふざけて書いたような文面であったことがあるのだろうか。相手は成人した男性のはずだ。一応文の最初には「損害賠償請求書」と書かれているのだが。

「陛下、どうするおつもりですか?」

 こんな時でもギルバートは冷静かつ真剣な目でこちらを見る。

「どうするも何も、アリスは我が国の宝。損害賠償と言われても応じるつもりはない」
 私はキッパリと宣言する。

「こっちもどうしますか」

 アンディがもう一つの手紙を見ている。

「結婚招待状。欠席するならお祝い金か品物を送れ?」
「まさかそちらもそのように書いているのですか?」

 エディが読み返す。

「我々は結婚することになったので、結婚式にはぜひ参列するよう呼びかけている。そちらの国とは国交を断絶するつもりだったが、アマンダはそちらの国出身なので特別に招待する。結婚式が終わったら国交は断絶するのでそのつもりで。もし欠席するようなら、それなりの祝いの品を送ってください。もしくはインディアルの通貨でもかまわぬ。アジャール&アマンダ」

 声に出してエディが読んでいるが、途中から声が震えている。まともな文ではない。

「酔っ払いか?」
「大丈夫なのか?」
「おそらくですが。まともな人間は国外に出たか、病が蔓延っているようですので政務に付けないのでしょう。アジャール殿に意見できる人も皆無でしょうし」
「アマンダ、こっちに残っていればよかったのに」

 まがいなりにも上司だったアンディは複雑な表情で招待状なるものを見ていた。

「アリスが結界を張って、インディアルから悪い奴はこちらに入れなくなりましたからね。国交は断絶でかまわないのではないですか」
「アマンダは帰って来れないかも」

    少しだけアンディはしんみりした様子を見せた。だがすぐに「悪い奴が来ないのは安心だな」と切り替えた。

    そしてマグヌス様に統治してもらうことについてや魔獣討伐についてなどを話し合ったのだった。
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