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ふと名前を呼ばれたような気がして、私は振り返りました。しかしそこには何も見えません。
私はフルル様の背中に乗ったまま、フフル様が言った良い場所に向かっています。森の中のような場所で、あたりには生き物の気配も感じられませんでした。
「ここはどこですか?」
聞き返したのですが、何も聞こえません。
「フフル様?」
気がついたらいつの間にか私はフフル様の背中から降りていて、フフル様の姿も見えなくなっています。私は本当に1人になっていました。
「どういうこと?」
意味がわかりませんでしたが、今はそんなことよりレートレースを救うことだけを考えようと思いました。そのためにフフル様が連れてきて下さったのです。
私は座り込み儀式を始めました。インディアルにいた頃、毎日していたことです。同じようにしていたと思うのですが、手応えを感じません。それでもやり続けないといけないのです。
そうしてずっと儀式を続けました。その時、誰かの声が聞こえました。
【穢れを払うためには、誰かが犠牲にならなくてはいけない】
その声はとてもか細い女の人の声でした。ここに誰かがいるのでしょうか。そんなことを考えましたが、それでも儀式を続けました。誰かがいても関係ありません。私は儀式を続けなくてはいけないのです。
そうでした、インディアルではいつもそう考えていました。儀式を続けないといけない。何がどうであれ、儀式はしなくてはならなかったのです。儀式をしなくては穢れを払えないから。誰かが犠牲にならないといけないから。聖女なのだから犠牲にならないといけない。
犠牲?
その時私は考えてしまいました。儀式の最中は何かを考えてはいけないと教わってきました。頭の中も穢れを払う儀式のことでいっぱいにしないといけない、他のことを考えてることが穢れを呼ぶことになる。そう教わってきたのです。
穢れを払うために犠牲になった聖女は何を考えていたのだろう。
ふとそんなことを考えてしまいました。本当はいけないことです。でも一度考えてしまったら、考えを止めることができなくなってしまいました。
もう一度エディ様に会いたい。
陛下や皇后様とお食事をしたい。
アンディ様や研究所の人たちと楽しく研究をしたい。
フフル様やラビさんと遊びたい。
綺麗なドレスを着たい。
どうしてでしょう。何故考えを止めることができないのでしょうか。私が儀式をしないとレートレースは大変なことになるのに。
涙が込み上げてきました。泣くということは感情があるということ。感情は捨てないと聖女にはなれない。
それは私が聖女様に最初に教わったことでした。聖女になるためには感情に支配されてはいけないのだそうです。
私は目を開けました。私は聖女失格です。
「フフル様、助けて。私には無理です。できません」
大きな声で聞こえるように。私は叫びました。
「ごめんなさい。私にはできません」
フフル様の気配は消えたままです。私の周りには何の気配もありません。もう会えないかもしれない。もう誰にも会えないまま、ずっとここにいないといけない。
急に怖くなり、私は立ち上がりました。誰もいない、何の気配もないこの場所に私は一人きりなのです。どうしたらいいか分からず、私はただ声をあげて泣きました。
「助けて。助けて。私を助けて」
私はフルル様の背中に乗ったまま、フフル様が言った良い場所に向かっています。森の中のような場所で、あたりには生き物の気配も感じられませんでした。
「ここはどこですか?」
聞き返したのですが、何も聞こえません。
「フフル様?」
気がついたらいつの間にか私はフフル様の背中から降りていて、フフル様の姿も見えなくなっています。私は本当に1人になっていました。
「どういうこと?」
意味がわかりませんでしたが、今はそんなことよりレートレースを救うことだけを考えようと思いました。そのためにフフル様が連れてきて下さったのです。
私は座り込み儀式を始めました。インディアルにいた頃、毎日していたことです。同じようにしていたと思うのですが、手応えを感じません。それでもやり続けないといけないのです。
そうしてずっと儀式を続けました。その時、誰かの声が聞こえました。
【穢れを払うためには、誰かが犠牲にならなくてはいけない】
その声はとてもか細い女の人の声でした。ここに誰かがいるのでしょうか。そんなことを考えましたが、それでも儀式を続けました。誰かがいても関係ありません。私は儀式を続けなくてはいけないのです。
そうでした、インディアルではいつもそう考えていました。儀式を続けないといけない。何がどうであれ、儀式はしなくてはならなかったのです。儀式をしなくては穢れを払えないから。誰かが犠牲にならないといけないから。聖女なのだから犠牲にならないといけない。
犠牲?
その時私は考えてしまいました。儀式の最中は何かを考えてはいけないと教わってきました。頭の中も穢れを払う儀式のことでいっぱいにしないといけない、他のことを考えてることが穢れを呼ぶことになる。そう教わってきたのです。
穢れを払うために犠牲になった聖女は何を考えていたのだろう。
ふとそんなことを考えてしまいました。本当はいけないことです。でも一度考えてしまったら、考えを止めることができなくなってしまいました。
もう一度エディ様に会いたい。
陛下や皇后様とお食事をしたい。
アンディ様や研究所の人たちと楽しく研究をしたい。
フフル様やラビさんと遊びたい。
綺麗なドレスを着たい。
どうしてでしょう。何故考えを止めることができないのでしょうか。私が儀式をしないとレートレースは大変なことになるのに。
涙が込み上げてきました。泣くということは感情があるということ。感情は捨てないと聖女にはなれない。
それは私が聖女様に最初に教わったことでした。聖女になるためには感情に支配されてはいけないのだそうです。
私は目を開けました。私は聖女失格です。
「フフル様、助けて。私には無理です。できません」
大きな声で聞こえるように。私は叫びました。
「ごめんなさい。私にはできません」
フフル様の気配は消えたままです。私の周りには何の気配もありません。もう会えないかもしれない。もう誰にも会えないまま、ずっとここにいないといけない。
急に怖くなり、私は立ち上がりました。誰もいない、何の気配もないこの場所に私は一人きりなのです。どうしたらいいか分からず、私はただ声をあげて泣きました。
「助けて。助けて。私を助けて」
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