ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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 ドアを開けると、別世界。改めて見るとちょっとくどい。ピンクのひらひらしたカーテンにベッドシーツにソファにクッション。何もかもがどぎついピンク。目がチカチカしてきた。品がない、センスがない。

 味気がなさすぎる状態だったのでどうにかしようとしただけだった。ハイだっただけだったのだ。もう少し抑えた部屋に変えよう。

「す、素敵・・・」

 部屋を見たアメリアさんの目が輝いている。目の中にハートマークが見えるようだ。素敵?これが?と私は逆に驚いてしまう。

「素晴らしい!」

 ダン様の目も輝いているが、これはきっと部屋の装飾が素晴らしいとかじゃなくて、こんなに変化させたことが素晴らしいということだろう。すべて魔法で出したことは明白だから。

「こんなに素晴らしいお部屋、初めて見ました。王女様よりも素敵です」

 アメリアさんは王女様の警護も経験しているし、友人でもあるので何度か私室に伺ったことがあるそうだ。しかしここまでの部屋ではないそうで(ではどんな部屋なのだろうか、興味がある)こんなに素晴らしい部屋はおそらく国中探してもないだろうと言う。

 素晴らしいとか素敵とか言ってくれるけど、一般的な女性の部屋とはどんな部屋なのだろうか。人が来ることを想定していなかったので思う存分やらかしてしまった。そもそも人と関わらずに地味に生活するつもりだったのだ。

「お、お茶淹れますね」

 客が来たらお茶を出せ。お腹も空いているので軽食も用意しよう。最初に用意されていたものの中に香りもないような茶葉と干からびたような野菜、それにカチカチのパンがあった。それを魔法で変えている。

 ジャガイモがあったのでポテトサラダを作りパンに挟む。牛乳で生クリームを作りフルーツサンドも作った。知識がないので自信はないが、美味しくなれとイメージさせた茶葉でお茶を淹れた。猫足のテーブルに運ぶ。

「こ、これは!」
「・・・素敵」

 雑誌で見たことがあるセレブ御用達のティーセットを見て、2人はもはや呆然としたまま同じ言葉を発している。貧乏と思っている家からこんな物が出てくるんだから、そりゃ驚くよね。

 ダン様は目を血走らせたまま、カップを手にした。

「何という手触り。この絵も素晴らしい」

 お茶を飲まずにカップを見つめてため息をついている。

「素敵、素敵、素敵」

 アメリアさんは素敵しか言わなくなった。目つきがボゥとしていて、お酒に酔っているみたいにも見える。

「冷めるので飲んでください」

 いい加減面倒になったのでやや冷たく言ったのだが、2人は聞いていない。アメリアさんはランチョンマットにも興味を示して、素敵と小さく呟いている。ダン様はカップの次はティーポットを見て小さくうなづいている。2人が口にしないと私も食べてはいけないと思って待っているのだが、待ちきれなくなった。私はお腹がぺこぺこなのだ。

「先にいただきます」

 私は声をかけ、紅茶を飲んだ。あまり詳しくないのでわからないが、以前紅茶専門店で飲んだ味と似ていると思った。うん、美味しい。それからポテトサラダを挟んだサンドイッチを食べる。マヨネーズが多すぎたかもしれないが、パンと馴染んで美味しかった。
 
 私が食べ始めたのを見て、2人も落ち着いたのかお茶を口にした。

「な、何ですか。このお茶は!」
「美味しい・・・」

 2人がまた騒ぎ出したが、もうどうでもいい。食事に集中することにする。

「何という魅惑的な香り。鼻の奥まで清涼な空気が流れ込むような気がします」
「素敵・・・美味しい・・・」
「これは何という食べ物でしょう。こんなに美味しいものは食べたことがない。未知の味ですが、宮廷料理人が素人に感じます」
「美味しい・・・素敵・・・」

 2人の食レポにならない食レポを聞きながら、私は最後に残したフルーツサンドを手にしていた。牛乳から生クリームをイメージして作ったが、砂糖がなかった。この世界でも砂糖は高価なものなのか、あっても平民には与えるつもりはないのだろうな。食材を少し置いてはくれていたけど、調味料の類はなかったし。最小限の食材しかなかったんだよね。

 食材とか定期的に貰えるものなのだろうか。ダン様に言えばもらえるとは思うけど。魔法で出せればいいけど、今のところ何かを変化させて別のものを作っている。何もないところから出せることはできるのだろうか。やってみる価値はあるかな。

 私はそんなことを考えながら、食事を続けたのだった。
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