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ジョンさんに待ったをかけられて私は動きを止めたが、かろうじて首だけをジョンさんに向けた。ギギギという音がするくらいにゆっくりと動かして、ジョンさんを思わず睨みつけた。申し訳ないと思いながらも止めることができなかったのだ。
「陛下、ダン様。不肖このジョンめが毒見役を務めさせていただきます」
あ、そうか。王族だから毒味が必要なのか。何も入っていないとわかっているけど、やらないわけにはいかないんだろうな。でも私が食べて問題なければいいんじゃないの?じゃあ、食べちゃおうか。
「リサ嬢もお待ちくだされ」
と、ジョンさんは私の動きを察知したようだ。そう言われたら無理に食べることもできず、私は待てと言われた犬のようにおとなしくハンバーグを見つめた。早くしないと本当に犬のように涎を垂らすよ。
ジョンさんはゆっくりとハンバーグにフォークを刺した。
「おぉ!」
小さく叫ぶ。
「何ですか?」
ダン様が聞く。
「いえ、柔らかいので・・・」
そんな驚かなくてもいいんじゃないの?王族を前にゆっくり丁寧にするのも大事だろうけどさ、待ってるこっちの身にもなってよ。イライラしながら、私はおとなしくジョンさんを待った。
ジョンさんは続いてナイフを入れる。声を出さなかったが、驚いたように目が見開いていた。そして小さく切り分けたハンバーグを口に入れる。その瞬間。
「あふぃい」
と、声が漏れた。おそらく熱いと言ったのだろう。確かにハンバーグからは湯気が出ている。熱々ハンバーグなのだ。ウェイトレスさんの「鉄板熱いのでお気をつけて」の声を思い出し、懐かしさに頬が緩んだ。
ジョンさんは静かに咀嚼し、ごくんと飲み込んだ。しばらくは無言のまま、動きもせずにじっとしている。その様子を私はじっと見ていた。何ともないんだから、もったいつけずに「よし」と言ってくれ。気分は犬だ。待てと言われてお座りしている犬のことを思う。早く食べさせてくれ。
「・・・陛下、ダン様」
ジョンさんが口を開いた。
「お気をつけください」
厳かに言ったその言葉に緊張が走る。
「大変熱い食べ物です。そして」
ジョンさんの次の言葉を全員が固唾を飲んで見守る。
「とても美味しい食べ物です」
ジョンさんはパァっと笑顔になった。
「こんなに美味しい食べ物を今まで私は食べたことがございません。これに比べれば宮廷料理など料理とも言えません。なぜこんな食べ物がこの世にあるのでしょう。私は今日生きていて良かったと心からそう思っています。この場にいられたこと、それは神が与えたご褒美と思います」
初恋話よりも早口でジョンさんは話し出した。
「思えば私は料理を味わうという経験をせずにこの年まで生きて参りました。味わうということに時間を費やすのであれば、職務に全うしたいと考えておりました。それはなんともったいないことでありましょうか。しかしこうも思うのです。今まで味わうべき食べ物を食べてこなかった、出会えてなかったということであります」
ジョンさんの演説は続く。私は無視して食べることにした。
「大丈夫ってことですね。じゃ、いただきます」
そう言ってハンバーグを一口大に切って口に入れる。デミグラスソースの香りが鼻に抜ける。分厚いハンバーグは食べ応え抜群で、その分心の中まで栄養として染み渡る気になる。もぐもぐとゆっくり噛み締めて飲み込んだ。次にサラダを食べる。お店特製のドレッシングがさっぱりとしていて、口の中のデミグラスソースの重厚さと混ざると独特の味に変化する。
これこれ、私は夢中になって食べ進める。カップに入ったコーンスープを飲んでから、付け合わせのニンジンのグラッセを食べる。甘くて柔らかなニンジンにほっこりする。何だか安心する味なのだ。
「なんと美味しい食べ物か」
「本当に驚きました」
陛下とダン様も食べているようだ。品よくナイフとフォークを使っている。
「それに今までと違い切りやすいですね」
「まさしく」
やはり、あんな彫刻刀のようなメスのようなナイフでは使いづらかったということか。そりゃそうだと思うけど、今までそれでやってきたのだから問題なかったということか。使いやすいものができたら、そっちを使いたいと思うだろうな。
「それに目で見ても楽しい」
「王妃様もきっと喜ばれるでしょう」
2人はそう言いながら、私のほうを見た。ハイハイ、作れってことですね。いいですよ。心の中でそう言いながら、私はバケットを手にしていた。喋るのは後でという気持ちだった。
「陛下、ダン様。不肖このジョンめが毒見役を務めさせていただきます」
あ、そうか。王族だから毒味が必要なのか。何も入っていないとわかっているけど、やらないわけにはいかないんだろうな。でも私が食べて問題なければいいんじゃないの?じゃあ、食べちゃおうか。
「リサ嬢もお待ちくだされ」
と、ジョンさんは私の動きを察知したようだ。そう言われたら無理に食べることもできず、私は待てと言われた犬のようにおとなしくハンバーグを見つめた。早くしないと本当に犬のように涎を垂らすよ。
ジョンさんはゆっくりとハンバーグにフォークを刺した。
「おぉ!」
小さく叫ぶ。
「何ですか?」
ダン様が聞く。
「いえ、柔らかいので・・・」
そんな驚かなくてもいいんじゃないの?王族を前にゆっくり丁寧にするのも大事だろうけどさ、待ってるこっちの身にもなってよ。イライラしながら、私はおとなしくジョンさんを待った。
ジョンさんは続いてナイフを入れる。声を出さなかったが、驚いたように目が見開いていた。そして小さく切り分けたハンバーグを口に入れる。その瞬間。
「あふぃい」
と、声が漏れた。おそらく熱いと言ったのだろう。確かにハンバーグからは湯気が出ている。熱々ハンバーグなのだ。ウェイトレスさんの「鉄板熱いのでお気をつけて」の声を思い出し、懐かしさに頬が緩んだ。
ジョンさんは静かに咀嚼し、ごくんと飲み込んだ。しばらくは無言のまま、動きもせずにじっとしている。その様子を私はじっと見ていた。何ともないんだから、もったいつけずに「よし」と言ってくれ。気分は犬だ。待てと言われてお座りしている犬のことを思う。早く食べさせてくれ。
「・・・陛下、ダン様」
ジョンさんが口を開いた。
「お気をつけください」
厳かに言ったその言葉に緊張が走る。
「大変熱い食べ物です。そして」
ジョンさんの次の言葉を全員が固唾を飲んで見守る。
「とても美味しい食べ物です」
ジョンさんはパァっと笑顔になった。
「こんなに美味しい食べ物を今まで私は食べたことがございません。これに比べれば宮廷料理など料理とも言えません。なぜこんな食べ物がこの世にあるのでしょう。私は今日生きていて良かったと心からそう思っています。この場にいられたこと、それは神が与えたご褒美と思います」
初恋話よりも早口でジョンさんは話し出した。
「思えば私は料理を味わうという経験をせずにこの年まで生きて参りました。味わうということに時間を費やすのであれば、職務に全うしたいと考えておりました。それはなんともったいないことでありましょうか。しかしこうも思うのです。今まで味わうべき食べ物を食べてこなかった、出会えてなかったということであります」
ジョンさんの演説は続く。私は無視して食べることにした。
「大丈夫ってことですね。じゃ、いただきます」
そう言ってハンバーグを一口大に切って口に入れる。デミグラスソースの香りが鼻に抜ける。分厚いハンバーグは食べ応え抜群で、その分心の中まで栄養として染み渡る気になる。もぐもぐとゆっくり噛み締めて飲み込んだ。次にサラダを食べる。お店特製のドレッシングがさっぱりとしていて、口の中のデミグラスソースの重厚さと混ざると独特の味に変化する。
これこれ、私は夢中になって食べ進める。カップに入ったコーンスープを飲んでから、付け合わせのニンジンのグラッセを食べる。甘くて柔らかなニンジンにほっこりする。何だか安心する味なのだ。
「なんと美味しい食べ物か」
「本当に驚きました」
陛下とダン様も食べているようだ。品よくナイフとフォークを使っている。
「それに今までと違い切りやすいですね」
「まさしく」
やはり、あんな彫刻刀のようなメスのようなナイフでは使いづらかったということか。そりゃそうだと思うけど、今までそれでやってきたのだから問題なかったということか。使いやすいものができたら、そっちを使いたいと思うだろうな。
「それに目で見ても楽しい」
「王妃様もきっと喜ばれるでしょう」
2人はそう言いながら、私のほうを見た。ハイハイ、作れってことですね。いいですよ。心の中でそう言いながら、私はバケットを手にしていた。喋るのは後でという気持ちだった。
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