ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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 さぁ、門をくぐろうかと思っていた時である。全速力で馬車がこちらへ向かってきた。私たちは門の端の方にいる。当然馬車は門の中央から中へ入るはずである。だから何の問題はないはずなのだが、馬車は迷いもなく私たちのほうへ向かってきたのである。

「危ない!」

 アメリアさんが私の前に出てきた。さすが護衛騎士である。カッケーな、と心の中で拍手した。男装の麗人って感じでいいぞ。彼女はマンガの中には出てこなかったが、もし登場人物であったらファンがいたかもしれないね。呑気にそんなことを考えていた。

「あ~ら、こんなところで歩いている人なんているわけないと思ってましたわ」

 馬車から出てきた人を見て私は目を疑った。この世界は中世ヨーロッパ風である。だから馬車が走っているわけなのだが、今目の前にいる人もやはり中世ヨーロッパ風の人である。ハッキリ言ってしまえば、髪型が変なのだ。クルクルの巻き毛はお約束だが、頭のてっぺんを高く盛り上げ大きなリボンをつけている。地毛だけでこんなことできるのか。どうなっているのだろうか。

 入学式でこんな髪型の人は見ていない。上級生なのか。この髪型は正常なのか。校則はないのか。と、さまざまな疑問が沸いて出てくる。でもそれを本人に聞くことはできないだろう。なぜなら私の身分は最下層で質問は許されないからだ。そんなに卑屈に考えなくてもいいと思いたいけど、とりあえず今は無視しよう。そのうち判明するかもしれないし。

「御者は安全を確保する義務があるだろう。今のままでは門にぶつかっていた。もしそうなっていたら、大変なことになっていた」

 アメリアさんは馬車を操作していた御者を叱った。中の人のことは無視している。

「いや・・・私は命令で・・・」

 御者の人はしどろもどろになって小声で呟いている。おそらく歩いている私を見つけて、てっぺん盛り上げ女が命令したのだろう。もし事故になっても相手は平民のリサだからたいした問題はないと思っているのだ。

「アタクシ、知ってますのよ。あなた、平民ですってね。しかも孤児。そんな方がどうして入学を許されたのかしら。きっと何か恐ろしい技を使ったのでしょうね」

 そう言いながら、こちらに向かってくる。うっわー、気づいちゃったけど、この人臭いわ。たぶん髪の毛をこんなに盛り上げるためには何かしらの整髪料を使っているのだろうけど、それが臭いのだ。これがこの世界の普通?こんな人マンガに出てこなかったから、脇役かしらね。

 そう思うと、アメリアさんがいいにおいって我が家を褒めてくれたのがわかる気がする。こんな女の人ばかりだったら、鼻が曲がってもおかしくないわ。でも露骨に嫌な顔もできないし、顔を背けることもできない。臭くて涙目になってきた。

 するとまた1台馬車が近づいてきて、中から人が出てきた。この人もてっぺんをうず高く盛り上げて花を飾っている。頭にだよ。頭にチューリップみたいな形の大きな花を刺してるの。顔の上に大きなチューリップが刺さってるのを見て、我慢できずに俯いた。これで少し匂いから逃れられた。

「ごきげんよう、どうされましたの?」

 優雅にチューリップ女が挨拶する。しかしこの女もキツい匂いを放っている。思い出したのが豚骨ラーメン屋さんだった。獣臭というのだろうか、整髪料の材料が気になる。私はチラリと女たちを見た。

「あら、この方・・・」

 チューリップ女は私を見ると、露骨に嫌な顔をする。いや、こっちだって嫌な顔したいよ。あんたら、臭いよって言ってやりたいよ。でも言わないであげてるのは、女の情けってやつよ。

「見てくださいまし、この方。髪がございませんわ」
「オホホホホ、仕方ございませんわ。平民の方は貧しくて髪の毛を売ってパンを買うんですから」
「まぁ、物知りでございますわね」
「下々の生活を知るのも貴族の嗜みですわ」

 2人はそう言ってオホホと笑い合っている。いや、貴族だったら平民にそんな生活させてることを恥じろよ。そんな髪型作る前にさ。だいたい、私に髪はあるぞ。髪がないというのは、と心の中で文句を言っていると。

「何をしていますか」

 ダン様が冷ややかな目で立っている。それを見た女たちは途端に姿勢を正し、お辞儀をした。それに倣い私もお辞儀する。やっぱりめんどくさいなと私は思うのだった。
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