ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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 ダン様に連れられてきたのは校長室のようだ。大きな机があり、書類が広げられていた。昨日就任したばかりなのにもう仕事をしているのか。ダン様は働き者だねぇ。でもリサになる前の私もそうだった。と、私は思い出した。

 会社員時代、早朝出勤をして締切に間に合わせたっけ。そうでもしないと間に合わなかった。でも間に合わせちゃった私にも問題あったな。できないと言えなくて引き受けていたから。仕事はそういうものだと考えていた自分に腹が立つ。

 関係ないことをつい考えてしまった。余計なことは思い出さなくていいんだ。私は思い直して今のことを考える。そうそう、と、忘れないように私は魔法石を取り出す。クズのような石を大きく作り替えたのだから、きちんと報告しておこう。報連相は大事だしね。

 しかしダン様の反応は違った。目を見張り、微動だにしなくなった。こういう場合、どうしたらいいか本当に困る。声をかけるべきか、身体に触れてもいいのか。あまりに親密になってしまったので忘れてしまいそうになるが、相手は王族なのだ。最も注意しないといけないのだ。

「今、どこから出しました?」

 しばらくして、ダン様は声を発した。ラノベでは定番のアイテムボックスというかインベントリというか、つまりはネコ型の青いロボットが持っていたポケットみたいなものを作ったのだ。まぁそれも例によって勝手にできてしまったわけである。朝持っていくことを考えていたら、手ぶらで行けたら助かるななんて思ったから。

 しかしダン様からしたら、何もないところから袋が出てきて、ボールのような球体の石がゴロゴロと出てきたことになる。確かに動きが止まってしまうのも仕方がないのかも。さて、どう説明しようかなと一瞬考える。というのも仕組みがわかっていないのだ。だが当然ダン様は納得しないだろう

「どこから出てきたかということと、これは何かということ。聞きたいことはまずは2つです」

 ダン様は冷静に聞いてくる。自分でも説明を試みようと頭の中で整理するのだが、時間経過しない別の次元に預けていてそこから取り出した、としか言えない。それがどこかなんて答えられない。そしてこの球体が何かだが、クズのようだった石を固めて大きな球体にした、と答えるしかない。

 それで正直に答えてみたわけだが、案の定ダン様は瞬きもせずに私を見返すばかりだった。どれだけ見られてもそれ以上の返答ができないので私も黙って見返す。お互いじっと目を合わせるだけだが、堪えきれずに私は目を逸らした。睨めっこはダン様の勝ちだな、と考えて空笑いしてしまう。

「結局はそういうことですね」

 どういうことかわからないが、ダン様はそう言って魔法石のボールを手に取った。何度かうなづいたり、かざしてみたりして何かを確認しているようだ。

「とりあえず、これは預かります。陛下にも報告しないといけないので」

 そう言ってからダン様はもう一度私を見た。

「今朝の件ですが」

 深刻そうな表情だ。だから私も真剣な表情をする。

「あなたに後見人がいないので、あんなことはこれからも常に起こるでしょう」

 平民の孤児だから難癖つけていいってことか。貴族だから何してもいいと思っているなら、根性腐ってるな。やり返してもいいならやり返すけど、実際は私のほうが罰せられるんだろうな。

「なるべく接触を避けるほうがいいでしょう」

 望むところだ。あんな臭い連中と仲良くなんてできないし。なんとなくだが、自分にもあの獣臭が移ってる感じがして、気持ち悪いくらいなのだ。自分の周りだけはいい香りになるようにしよう。よし、石鹸の香りがいつも漂うようにして・・・。

「・・・何したんですか?」

 ダン様の眉間の皺が深くなった。くっきりと縦に2本皺ができている。石鹸のいい香りが辺りに漂っている。それなのにどうしてダン様は怖い顔しているのだろう。

「いや、だって、あの人たち・・・」

 臭いですよね、とは言えなかった。相手は女子だ。陰で変な匂いがするなんて言うのはいじめだ。反則だ。そういうことはやはり同じ女としてできない。

「もういいですよ」

 ダン様は諦めたようにため息をついた。

「あなたと一緒にいるといろいろとありすぎて。私もキャパオーバーなんです」

 シッシッと追い払うようにダン様の手が動くのを私はぼんやりとみていた。酷いなぁと思いながらも仕方ないかと思う。気の毒にも思えたので、ティーカップを取り出した。

「これでお茶でも飲んでください」

 わずかにダン様が笑ったように見えたが、気のせいかもしれないと思った。

 
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