ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

文字の大きさ
45 / 68

45

しおりを挟む
 空中に浮かんでいる魔獣を見ながら、私は考えた。魔獣を研究している人がいるのなら研究させてあげたい。魔獣に対峙するには体力が必要と思うが、ノートンにはそれがないように思う。きっと彼では実際に見ることのできない魔獣が現在宙に浮かんでいるのだ。観察したいと思うだろう。

 でもここで魔獣を下に下ろしたら大惨事になる。すでに王子たちは傷だらけになっているのだ。王子たちだけではなく、騎士や冒険者たちも怪我をしている。昨日に続いて今日も怪我するなんて王子たち、ツイていないな。また治せばいいか。それならさっさと済ませないと。

 私は魔獣たちをじっと見つめる。すると宙に浮いている魔獣がごそっと減った。

「リサ!何をしたんですか!」

 どよめきと共にダン様の声が聞こえた。目の前ではノートンが力無く地面にしゃがみ込んでいる。

「魔獣が・・・」

 力無くノートンが呟いた。顔を見たら涙を流している。

「よ、ようやく・・・ここまで来たのに・・・」

 え?泣くようなことなの?私そんなに悪いことしたの?

「ひでぇことしやがる・・・」

 マジフカが憎々しげに呟いた。ただでさえ怖い顔がますます怖くなっている。

「嬢ちゃん、そりゃねぇだろ」
「そうだそうだ」
「少しくらい見せてやったっていいだろうに」
「ケチくさい」

 口々に騒ぎ出した冒険者たち。え?え?え?ちょっと待って?

「落ち着きなさい!」

 ダン様が言うと何とか黙ったが、私を見る目は冷たい。ノートンはマジフカや他の冒険者に囲まれて、慰められている。うーん、何をしてもリサは嫌われる運命なのか?ちょっと、いやかなり凹んでしまった。でも大量の魔獣をこのままにしておくわけにいかないし。

「リサ、魔獣をどうしたんですか?」

 ダン様の目は動揺しているようだ。

「観察したいってことだから、とりあえず1種類だけ残してその他の魔獣は元いた場所に戻しましたよ」
「は?」

 ダン様の目がぱかっと見開いた。

「今なんて?」

 聞かれたので素直に答える。

「1種類だけ残して他は元いた場所へ」
「は?」

 いや、もう一回聞くの?

「あ、雄雌いた方が良かったですね。でも魔獣の雄雌ってどうやって見極めるんですか?ちょっとわからなくて。一匹いればいいかと思ったんですよ。個体によってもいろいろ違うかもしれないですけど、そこは選びようがないので諦めてもらえれば。あぁ、あとは観察ですけど、どうやってやります?一匹ずつ檻に入れましょうか。でも魔獣の檻ってどうなんでしょうか。」

「もういいです」

    ダン様に遮られてしまったが、言いたい事は言えたと思うので黙ることにする。

「ノートン、どうしますか?」

    ダン様はノートンに聞いた。聞かれたノートンはダン様とマジフカを交互に見たあと、浮かんでいる魔獣を見上げている。しばらく黙って考え込むような仕草を見せていたのだが、やがて決心したように顔を上げた。

「どうしましょう」

    ようやく答えた返事がそれか。キビキビ答えろよ。と、イラついたが、こんなことは初めてだろうから、どうしたらいいかわからないだろうと考え直す。

    よし、答えやすくするために選択肢を与えてあげよう。

「一匹ずつ分けることにしますね」

    そう言ったとたん、塊で浮かんでいる魔獣が分かれていく。イメージの力はすごいな。思ったとおりになる。それにだんだんスムーズにできるようになってきた。魔獣はジタバタと暴れている。これでは観察も困難だろう。動かないように眠らせとくか。

 その瞬間、魔獣たちがおとなしくなった。みんなネンネしたんだね。

「とりあえず眠らせました。どのくらい寝てるかはわからないのですが」

    上から聞こえてくる魔獣のイビキ。魔獣もイビキかくんだなぁ、なかなか面白いな。

「何やってるんですか!」
    
 ダン様に怒鳴られてしまった。いや、起こした方がよければ起こすけど。でも寝てるのに無理やり起こされるのって嫌だよね。

 見るとノートンもマジフカも口をポカーンと開けていた。ぼんやりしている場合じゃないと思う。この後もやることがたくさんあるんだから、チャッチャッと動いてほしい。

「ダン様、とにかくさっさとしましょう。王子たちの怪我も治さないといけないし。授業も受けなくちゃいけないんだから」

 そう言いながら王子だけというわけにいかないので、広範囲に治療できないか考えた。

「うわぁ」
「傷が治った」
「もう痛くない!」

 そんな声を聞きながら、地味に過ごすはずだったのにこれはまずいことになったとも思うのだった。



 

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫より強い妻は邪魔だそうです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
「ソフィア、お前とは離縁する。書類はこちらで作っておいたから、サインだけしてくれ」 夫のアランはそう言って私に離婚届を突き付けた。名門剣術道場の師範代であるアランは女性蔑視的な傾向があり、女の私が自分より強いのが相当に気に入らなかったようだ。 この日を待ち望んでいた私は喜んで離婚届にサインし、美しき従者シエルと旅に出る。道中で遭遇する悪党どもを成敗しながら、シエルの故郷である魔法王国トアイトンに到達し、そこでのんびりとした日々を送る私。 そんな時、アランの父から手紙が届いた。手紙の内容は、アランからの一方的な離縁に対する謝罪と、もうひとつ。私がいなくなった後にアランと再婚した女性によって、道場が大変なことになっているから戻って来てくれないかという予想だにしないものだった……

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

私ですか?

庭にハニワ
ファンタジー
うわ。 本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。 長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。 良く知らんけど。 この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。 それによって迷惑被るのは私なんだが。 あ、申し遅れました。 私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。

【完結】五度の人生を不幸な出来事で幕を閉じた転生少女は、六度目の転生で幸せを掴みたい!

アノマロカリス
ファンタジー
「ノワール・エルティナス! 貴様とは婚約破棄だ!」 ノワール・エルティナス伯爵令嬢は、アクード・ベリヤル第三王子に婚約破棄を言い渡される。 理由を聞いたら、真実の相手は私では無く妹のメルティだという。 すると、アクードの背後からメルティが現れて、アクードに肩を抱かれてメルティが不敵な笑みを浮かべた。 「お姉様ったら可哀想! まぁ、お姉様より私の方が王子に相応しいという事よ!」 ノワールは、アクードの婚約者に相応しくする為に、様々な事を犠牲にして尽くしたというのに、こんな形で裏切られるとは思っていなくて、ショックで立ち崩れていた。 その時、頭の中にビジョンが浮かんできた。 最初の人生では、日本という国で淵東 黒樹(えんどう くろき)という女子高生で、ゲームやアニメ、ファンタジー小説好きなオタクだったが、学校の帰り道にトラックに刎ねられて死んだ人生。 2度目の人生は、異世界に転生して日本の知識を駆使して…魔女となって魔法や薬学を発展させたが、最後は魔女狩りによって命を落とした。 3度目の人生は、王国に使える女騎士だった。 幾度も国を救い、活躍をして行ったが…最後は王族によって魔物侵攻の盾に使われて死亡した。 4度目の人生は、聖女として国を守る為に活動したが… 魔王の供物として生贄にされて命を落とした。 5度目の人生は、城で王族に使えるメイドだった。 炊事・洗濯などを完璧にこなして様々な能力を駆使して、更には貴族の妻に抜擢されそうになったのだが…同期のメイドの嫉妬により捏造の罪をなすりつけられて処刑された。 そして6度目の現在、全ての前世での記憶が甦り… 「そうですか、では婚約破棄を快く受け入れます!」 そう言って、ノワールは城から出て行った。 5度による浮いた話もなく死んでしまった人生… 6度目には絶対に幸せになってみせる! そう誓って、家に帰ったのだが…? 一応恋愛として話を完結する予定ですが… 作品の内容が、思いっ切りファンタジー路線に行ってしまったので、ジャンルを恋愛からファンタジーに変更します。 今回はHOTランキングは最高9位でした。 皆様、有り難う御座います!

どうして私にこだわるんですか!?

風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。 それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから! 婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。 え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!? おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。 ※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

〘完結〛わたし悪役令嬢じゃありませんけど?

桜井ことり
恋愛
伯爵令嬢ソフィアは優しく穏やかな性格で婚約者である公爵家の次男ライネルと順風満帆のはず?だった。

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

処理中です...