ひとくちの恋ー魔法庫のひと口のショート恋愛小説をー

天咲琴乃 あまさき ことの

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1口の五分休符ー朗読する歯科医師5人組ー

5話 叶芽 (かなめ)

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 叶芽(かなめ)



 五分休符が、売れる。






 そう思ったのは、三回目の朗読が終わった頃だった。





 子どもが落ち着く。
 保護者が泣く。
 職員が礼を言う。





 数字にすると、分かりやすい効果だ。






 俺は、フリーランスだ。



 セミナー公園費、
          一日三十万。
 数字で評価される世界にいる。
 だから、分かる。





 これは、善意だけで続けると壊れる。






「このまま、ボランティアでやるんですか?」

   


 誰も答えなかった。
 院長は、笑っている。
 理は考え込む。
 蒼太は黙る。




 律は、少し困った顔をする。



「金の話をすると、空気が変わる」
 それも、知っている。




 でも、言わない方が残酷だ。



「続けたいなら、守る必要がある」






 俺は、淡々と言った。




 五分休符は、特別なユニットだ。
   異質だ。アラサーアラフォーのオジサンたちが、しかもみんな歯科医師が
朗読のためにユニットを組んでいる。



   
 特別なものは、狙われる。



 消費される。



 だから、仕組みがいる。







 その夜、院長と二人で話した。
 あの人は、全部分かっていた。






「叶芽くん、君は優しいですね」







 その言葉に、少しだけ笑った。
 優しいんじゃない。



 人が壊れるのを、見たくないだけだ。


 五分休符。


 それは、休みのための時間じゃない。



 続けるための、間だ。
 だから俺は、また来る。
 たまに。


 風を入れる役として。
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