帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人

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第5章 5年が過ぎた

5.2 5年後の日本と西側諸国

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 安井は、かっては悩みの種であった近隣諸国の問題が片付いたことを考えながら、向かいに座った若い女性がスマホを出して見つめているのをぼんやり見た。
『ああ、あれは魔力でインプットしているんだろうな』と思い、そう言えば少し前にはスマホの操作は指で触る必要があったことを思った。

 そう、パソコン・スマホの入力は現在では指で触るまたはプッシュする必要はなく、魔力で操作している。実際のやり方は、魔力を使うことを意識して、決められた42のシンボルのいずれかを思い浮かべるだけでいい。これは慣れると流れるように入力が可能であり、そのことによる、入力の効率アップは2.5倍と言われ、オフィスの生産性効率の向上に極めて大きく貢献している。

 そのためか、世界においてインターネットの中で使われている言語でもともと日本語の割合が高かったが、現時点ですでに英語の1.5倍を超えていると言われている。この、魔力による入力システムは日本独自のものであり、日本人の発明によるものである。

 ちなみに、現在日本における魔力発現の処方はすでに殆ど終了しており、35歳以下の日本人は殆ど全員、身体強化とパソコンやスマホの入力程度の魔力を使える。無論彼らは、知力増大も同様に可能になっており、これに関しては体力増加及び実際に魔法を使うように、魔力の使用を意識する必要はない。

 つまり言ってみれば、常に発動状態になるのだ。これは、魔力発現の処方によって一種の条件付けが成立することになると考えられている。35歳以上の人々については、2年前に新たな『処方』の仕方が開発され、身体強化と知力増加は今では殆どの人が得られている。

 しかし、これらの人々に対して体力増強の効果は限定的であるが、知力増加については若い世代の半分程度であるが、はっきりした効果があることが解かっている。一方で、魔力は世界の中でも日本人に例外的に多いことが判ってきており、とりわけ白人の魔力は極めて低いことが判明している。

 アジア人全般とりわけ中国・朝鮮人はある程度の魔力はあるが、他人の処方ができるほどの魔力を持つ者は極めてまれである。日本において、中学校以上の学校においては、中学校までは、処方時に国籍の区別はしなかったため在日K国人や中国人の子供も含む外国籍の子供も処方された。

 この結果、外国籍の子供の場合には、身体強化と知力増加が効果は低いがある程度の効果があったが、魔力が小さいためその効果は非常に低く、他のものに処方できるレベルのものは確認されていない。日本国政府は海外においては、効果が低いとして魔法の処方を行うことを制限してきた。

 その結果、魔法能力の所持者は世界でも日本人にほとんど限られることになっており、そのことによる摩擦が年々増しているのが現状である。これは、魔法の処方により知力が上がることが、生産性の向上、続出する改良・新発明など日本の産業に極めて大きな影響を及ぼしており、日本の近年の経済の好調ぶりが突出しているのである。

 良く知られているように、経済の成長は殆ど生産性の向上によってもたらされるのであって、人口増による影響はわずかである。そのことからすると、人口減による経済の縮小論はおかしいのであるが、近年において生産性の向上が非常に小さいこともそうした悲観論に輪をかけていた。

 これは、近年生産性の劇的な向上をもたらす画期的な発明や開発はまれであることがあって、すでにこうした技術革新の停滞期に入っていると主張する者も多い。日本はさらに経済的な面での困難を抱えていると言われてきた。これは、2022年時点で、国の借金と称する政府の借金がGDPの約2倍の1200兆円を超えて、世界でも突出している。

 このことが国の財政支出を抑制して、経済成長が低くなって、余計に悲観論が進んできた経緯がある。しかし、日本の場合にはとりわけ政府系機関のもつ金融資産や外貨準備高の額が550兆円分ほどもあり、加えて日銀の国債残高が500兆円を超えれいる。

 後者は政府の子会社であり事実上借金とはいえないから、この時点で日本政府の財政は不健全とは言えない。しかし、増税をしたい財務省等の機関及びそうして存在に焚き付けられた人々が莫大な借金と騒ぎたてていたのだ。そういうことで、今現在の政府の財務状況についてあまり問題はないが、今後という意味では危ない面がある。

 これは、単年度での収入に対して、支出が大幅に多く40%弱の赤字を出しており、これを続けるといずれは破綻することは確かなのである。この解決策は全体の経済の規模を大きくするしかないのであるが、増税はそれを縮小させるので悪手なのである。

 一方で、魔力発現により日本人の研究者や開発に携わる者の知能を選択的に強化した結果、これらの人々がもともと魔力の大きい者が多かったこともあって、彼らの知能が平均50%以上強化された。このことは、短時間で日本の研究開発のスピード及びその幅、種類を大幅に上昇させることになった。

 また、人々に魔力発現の処方がいき渡るにつれて、このことがあらゆる職場、学校に広がってきて、あらゆる場所から日々改善、改良、創造が起きてきた。実質的に2019年から始まったこの動きは、人類史上なかった規模と速さであった。

 先述した、魔力で操作できるコンピュータもそうであるが、このような人々から発明・考案されたものは、あり得ない優秀さの現場によってアッという間に実用化された。こうした中では、電気・電子機器、機械、家庭にあるさまざまなもの、生産機器、輸送機械、殆どのものがたちまち陳腐化してよりよいものに入れ替わっていく。

 このような入れ替わりは、極めて有効であることは聡明になった人々に明らかであったため、その導入は直ちに決定され、資金も賢明かつ効率よく調達された。こうして、莫大な量の物品または施設が買うかまたは投資がなされ、その中で全体として莫大な金が使われて、世の中の金廻りがよくなっていった。

 この動きのなかで、日本には使い道のない金が莫大に滞留していたことが大きく功を奏したことは事実である。このような動きの中で、政府の目標であった、インフレ率2%は2022年中にあっという間に超えた。そして、そのようにインフレ気味になるので、人々も金をただ持っていても目減りするので、投資先を探すようになる。

 このようにして、日本のGDPの増加は2023年2.5%、2024年5%、2025年9%、2026年12%、2027年12%で推移しており、昨年の段階で800兆円となっている。これは、中国が4年前に新体制になって下方修正して発表しているGDPと昨年末にほぼ並んだことになる。

 この中で、昨年日本の国の財政収支はようやく均衡し、今年からある程度の黒字がでる予定である。これは、雇用されている人々の所得が上がってきたのも一つの要因であるが、多くが赤字であった企業が利益を出すようになって税を払うようになったことが理由としては大きい。

 このように、長年の大きな問題であった国の財政収支も均衡し、高度成長期に匹敵する経済成長を続けているが、その中でとりわけ魔法能力を身に着けた若者が貢献している点が大きい。この情勢では、当然貢献の大きい若手に報酬の増加があるのは当然であり、実際に彼らの収入はどんどん伸びて、将来に夢がもてるようになった。

 そのことから、これらの若い人々は増えた空き家をリフォームした家を買い、また子供を2人3人と持つようになる。2027年日本の出生率は遂に2.0を超え、まだ伸びているので現在の人口を保つのに必要と言われる2.07を超えるのも間近と言われる。

 一方で、世界経済は、様々な希少な鉱物資源のひっ迫が顕在化してきて、価格が高騰し始めており、世界経済の足を引っ張っているが、日本はお得意のそれら資源の代替技術の開発、再利用で切り抜けている。この中で石油資源については、価格がどんどん上昇している。

 この中で、日本は2026年遂に海底のメタンハイドレートの商業ベースの採取を開始し、次の2年で需要の60%を賄うとしている。加えて、東大から核融合の活用の決定版といわれる論文が2020年に出され、現在政府はその理論に基づく装置化にかかっており、2029年には商業炉が完成すると言われている。

 このように、日本のみが好調に見える状況で、海外との摩擦が当然増えており、とりわけアメリカとの関係が悪化している。これは、高くなった知能の研究者が最初に向かったのは、特に装置化の必要がないソフトウェアの分野であったことによる。

 これらの研究者は、これまでアメリカの独壇場であったこの分野で、さまざまなソフトで他を圧倒する機能のものを開発してきた。中でも決定的であったのは、基本ソフトを現在のウィンを圧倒する“マジック”を開発した。それは現在普及している魔力で使えるスマホ、PCに適用できるものでもあった。

 このため、とりわけ日本においては、魔力が使えるソフトは圧倒的に便利であるため、日本にあるソフトは1年で入れ替わった。これは、魔法を殆ど使えない人にとっても利便性と圧倒的なスピードでウィンより勝っているため、世界中のマイクロンソフトの牙城を脅かし始めた。

 さらに、当然このマジックを搭載したスマートフォン、PCも日本メーカーは売り出したので、このハードの面でもパインの牙城も揺らぎ始めた。全く違う発想で開発されたこれらに対して、さすがのアメリカ企業もお得意の特許戦術は使えなかった。

 この状況で、遂にアメリカお得意の政府からの政治的圧力と通商制裁として、日本から電子機器の輸入制限をちらつかせて、この技術を召し上げようとした。2026年の秋のことである。しかし、日本政府としては、今のところアメリカとの安保条約は保持しているものの、現状では軍事的には敵にはしたくはないが、別に守ってもらう要素もない相手である

 また、結果的にKT国や中国の問題も自ら解決したことから言えば、そういうごり押しの無茶を聞く必要はない。さらには、日本からアメリカに輸出している電子製品は主として部品であって、禁輸して困るのは使っているメーカーであり、しかもその中にはかれらの兵器も入っている。

 その判断で、阿山首相は経産省に突っぱねるように指示した。これは、問題になっている基本ソフトのマジックは、近い将来世界のOSにとって代わるとの読みがあってのことである。アメリカのポチと言われた日本の首相にしては、思い切ったと言われたが、リアリストの彼にしてみれば、時々で最適の判断を下すのは当然のことである。

 結局、アメリカはそれ以上のことはできず、圧力はそれまでであったが、彼らは安保条約の解消を言い出した。日本としては、アメリカも中東やアジアでアメリカの強い影響がある国々に対する前進基地として日本は必要だろうという思いがあり、自らはもはや必要ないが、解消を言い出さないでいた。

 しかしアメリカから言い出したのならもっけの幸いと受諾し、2030末までにアメリカ軍は引き上げる予定になっている。ちなみに、日本国憲法は2025年に改正されて、武力及びその他の手段を使った侵略の禁止、自衛の権利を謳った憲法に生まれ変わったので、日本が自衛をするのに支障はない。

 アメリカと決定的に対立した場合の日本の問題は、兵器体系がアメリカ製であるものが多く、交換部品等の入手に困るという点があった。しかし、2023年以来、自衛隊の兵器はアメリカ製を含めて大幅に魔改造されており、元のものよりはるかに高性能になっているのだ。

 例えば、ミサイル防衛が実質“まもる君”のみであった点を解消するために、2基の『イージス・アショア』が導入されたが、これはまさに導入時に防衛研究所により魔改造されて、その技術の効果に驚いた米軍が持ちかえって同じ改造をしている。
 この意味で、むしろ米軍のエンジニアは本国の決定を嘆いている
「もとは我々の兵器であったが、いまや形は同じで中身も似てはいるが、性能は我々のものとは及びもつかないものになっている。尖閣の戦いを見てもわかるが、あの“まもる君”を持つ日本と戦う日が来たら、敗れるのは我々だ」

 ちなみに、魔力発現の処方においては、その処方は能力が高いものが行ったほど効果が高いことが確かめられており、最大で20%ほどの差が生じている。ということは、知られている限り圧倒的に高い魔力を持つハヤトが処方を行う効果が高いことになる。
 そのことが統計的に明らかになった結果、ハヤトは重要な研究所や個人については場合によって、処方が終わっていても再度処方を頼まれることが現在でも数多くある。
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