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4戦目
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四時間目までの授業を終えた百合恵は緋奈に案内されてとある空き教室へ連れてこられた。
「ようこそ、園芸部の部室へ」
「園芸部?」
「ええ、本当は部室として使われていないただの空き部屋なんですけどね。部員は私ともう一人なんですけれど、こうしてお花で飾ることが出来ますから」
百合恵が教室を見渡すと、生花造花を問わず花のポットが置かれていた。
花のみならず盆栽も置かれているのだが、植物に造詣が深いわけではない百合恵にとってはどれがどれだかさっぱり分からない。
「普通、こういうのが空き教室にあったら先生たちが片付けちゃいそうだけど」
「まぁ、お花ですから。どこにあろうとそこにあるのが自然というものなのです」
……それがはたして答えになっているのか、首をひねる百合恵だったが、緋奈の笑顔にほだされてそれ以上追及することはしなかった。
「来たよ、スカーレット。いやいや、君から呼び出すなて珍しいこともあるもんだ」
「ごきげんようヴァイオレット」
空き教室へ入ってきたのは猫背の少女、百合恵が校章のバッジを確認する。
「びっくりした。同級生なんだ」
入ってきた少女は姿勢のせいで分かりづらいが背も高く胸も大きい。前髪で顔がかくれがちだが、整った容姿をしているように百合恵は感じた。
「時任すみれだ。よろしく頼むよ」
「すみれとは幼馴染でヴァーチャル空間に興味を持ったのは彼女がきっかけなんだよ」
「私は出来るだけヴァーチャル空間にいたいのだけれど、緋奈はまだ現実を楽しめる精神があるようでね」
すみれはどこか呆れた口調だった。緋奈はそれを聞いて苦笑しつつ、すみれに百合恵を紹介する。
「この子、めっちゃ強いよ」
園芸部の部室での雑談に花を咲かせながら、その日の昼ご飯を皆で食べることになったのだった。
「VRでの食事で現実の空腹が満たされればどれだけ幸せか……」
もそもそと、という擬音で表現できそうな動作ですみれが総菜パンをかじる。百合恵と緋奈はいたって普通のお弁当を食している。
「百合恵って、毎朝ギリギリに登校しているイメージがあるけれど、ちゃんとお弁当を用意しているのね」
「まぁ、夕べのうちに作ってるからね。どうしても冷え冷えになっちゃうけど、こればっかりは仕方ないよ。朝作る元気なんてかけらもないし」
そういいながら百合恵が卵焼きを口に運ぶ。
「それに美味しいものって案外VRで体験できちゃうし、こっちでは簡単で食べやすい物を食べるのが一番だよ」
「その通り、どれだけ食べても太らないVRの食事と食べれば着実に太る現実の食事、どちらに重きを置くべきかなんて自明の理なのだよ」
百合恵の言葉にすみれが同調する。二人が意気投合している様に、現実での食事に重きを置く緋奈は小さく溜息をつくのだった。
「ようこそ、園芸部の部室へ」
「園芸部?」
「ええ、本当は部室として使われていないただの空き部屋なんですけどね。部員は私ともう一人なんですけれど、こうしてお花で飾ることが出来ますから」
百合恵が教室を見渡すと、生花造花を問わず花のポットが置かれていた。
花のみならず盆栽も置かれているのだが、植物に造詣が深いわけではない百合恵にとってはどれがどれだかさっぱり分からない。
「普通、こういうのが空き教室にあったら先生たちが片付けちゃいそうだけど」
「まぁ、お花ですから。どこにあろうとそこにあるのが自然というものなのです」
……それがはたして答えになっているのか、首をひねる百合恵だったが、緋奈の笑顔にほだされてそれ以上追及することはしなかった。
「来たよ、スカーレット。いやいや、君から呼び出すなて珍しいこともあるもんだ」
「ごきげんようヴァイオレット」
空き教室へ入ってきたのは猫背の少女、百合恵が校章のバッジを確認する。
「びっくりした。同級生なんだ」
入ってきた少女は姿勢のせいで分かりづらいが背も高く胸も大きい。前髪で顔がかくれがちだが、整った容姿をしているように百合恵は感じた。
「時任すみれだ。よろしく頼むよ」
「すみれとは幼馴染でヴァーチャル空間に興味を持ったのは彼女がきっかけなんだよ」
「私は出来るだけヴァーチャル空間にいたいのだけれど、緋奈はまだ現実を楽しめる精神があるようでね」
すみれはどこか呆れた口調だった。緋奈はそれを聞いて苦笑しつつ、すみれに百合恵を紹介する。
「この子、めっちゃ強いよ」
園芸部の部室での雑談に花を咲かせながら、その日の昼ご飯を皆で食べることになったのだった。
「VRでの食事で現実の空腹が満たされればどれだけ幸せか……」
もそもそと、という擬音で表現できそうな動作ですみれが総菜パンをかじる。百合恵と緋奈はいたって普通のお弁当を食している。
「百合恵って、毎朝ギリギリに登校しているイメージがあるけれど、ちゃんとお弁当を用意しているのね」
「まぁ、夕べのうちに作ってるからね。どうしても冷え冷えになっちゃうけど、こればっかりは仕方ないよ。朝作る元気なんてかけらもないし」
そういいながら百合恵が卵焼きを口に運ぶ。
「それに美味しいものって案外VRで体験できちゃうし、こっちでは簡単で食べやすい物を食べるのが一番だよ」
「その通り、どれだけ食べても太らないVRの食事と食べれば着実に太る現実の食事、どちらに重きを置くべきかなんて自明の理なのだよ」
百合恵の言葉にすみれが同調する。二人が意気投合している様に、現実での食事に重きを置く緋奈は小さく溜息をつくのだった。
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