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#4 再会の入浴
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一旦帰宅した私はとある準備をして自転車に乗って出掛けた。
「ちょっと万和、どこ行くの?」
後ろから一美お姉ちゃんの声がするが振り向かなかった。思えば帰宅してすぐ出掛けるなんて初めてのことだ。自転車で南へ下っていく。学校を通り過ぎ、さらに500メートルほど。
「ここだ」
やってきたのはスーパー銭湯、そら。友庭さんは徒歩通学だから、きっと学校の近所に住んでいるはず。となれば、最寄りのスーパー銭湯はここのはず。このそらは温泉施設ではないけれど、友庭さんはうちのお風呂を気に入ったくらいだから温泉に興味があるわけではないはず。いかに水に浸かれるかが重要なはず。だとしたら、ここにいたっておかしくない。
番台さんにお金を支払う。何度も通うことを考えると、ありがたい程に安い。一発で出会えるとは――
「いたぁ!!」
「んぁ? あぁ、万和ちゃんか」
あまりにあっけなく遭遇できてしまい、言葉に詰まってしまう。あれこれ言いたいことはあったし、姉との関係だとかどうして水にこだわるのだとか。ひとまず、服を脱いで大浴場へ向かう。友庭さんとお風呂に入るというのは実は何度か経験済で、それはひとえに我が家のお風呂が大きいからだ。
「最近忙しかったんですか?」
「まぁね。星花祭もあったし」
この二週間であった最大のイベント、それは年に一度の文化祭――星花女子では星花祭と呼ぶ――だ。服飾科といえばその制作物を展示するのだが、そのモデルは一体誰が務めたといのだろうか。もしや……姉が?
「友庭さんが作った服、着てみたいです」
「流水をイメージしたドレスなんだが、君にも似合うかもしれないな。ただ、君も君で水の抵抗がありそうな身体をしているな」
「あぁ、まぁ……家系なので」
胸元に注がれる視線を遮るように、両手で隠す。クラスメイトだと世音ちゃんや舞ちゃんがけっこう大きめだけど、私の方が二人より大きいと思う。商店街の友達だと、月見屋さんのみのりさんとほとんど同じくらいだと思う。
「友庭さんは大きい方が好きですか? 百香お姉ちゃん、すごく大きいから」
「別にこだわりはないよ。私は自分の流線型のボディを合理的だと思っているけれどね」
友庭さんの子供っぽくて出っ張りの無い、それこそ水の抵抗を受けなさそうな体躯……それでいて姉の蜜をむさぼる大人の女でもある。そのアンバランスさが、なんだか特別に思える。
「にしても、ここに来るなんてどうしたんだい? 君の家なら銭湯に来る必要なんてなさそうだが」
「別に、気分です。逆に、友庭さんはどうして家に来てくれなくなったんですか?」
「そうだな、まぁ星花祭の準備で私も百香も忙しかったから」
それは確かにそうだけれど。何か裏があるような気がしてならないんだ。だから、私は一歩踏み込んだ質問を投げかける。それはあの日、答えを得られなかった質問だ。
「友庭さんは姉とどういう関係なんですか? 姉が、その……言い方が悪いですけどビッチだって知ってるんですか?」
他にもお客さんがいるから声をしぼるけど、銭湯の構造上ちょっと響いてしまうのは否めない。友庭さんが答える、その声はどことなく興味なさげな声色だった。
「私は百香に誘われて男とも交わったくらいには、百香の淫奔さは知っているつもりだ。男は不味かったなぁ」
は? 友庭さんまでそういうこと経験済なの? 水にしか興味がないような振る舞いをしているくせに、一美お姉ちゃんみたいに……。周りの女の子たち――それこそクラスメイトの世音ちゃんや舞ちゃん。商店街で仲のいい響さんやみのりさん――にはもう恋人がいて、やることやってて……。私だけが置いて行かれる。平凡で、普通で、凡庸なまま……。特別になりたい、特別が欲しい。友庭さんが欲しい。友庭さんじゃなくていいのかもしれないけれど……でも、今はただ友庭さんが欲しい。欲望に駆られる私に、友庭さんは薄ら笑みを浮かべながら問いかけた。
「……万和ちゃんは、美味しいのかい?」
「……え?」
「ちょっと万和、どこ行くの?」
後ろから一美お姉ちゃんの声がするが振り向かなかった。思えば帰宅してすぐ出掛けるなんて初めてのことだ。自転車で南へ下っていく。学校を通り過ぎ、さらに500メートルほど。
「ここだ」
やってきたのはスーパー銭湯、そら。友庭さんは徒歩通学だから、きっと学校の近所に住んでいるはず。となれば、最寄りのスーパー銭湯はここのはず。このそらは温泉施設ではないけれど、友庭さんはうちのお風呂を気に入ったくらいだから温泉に興味があるわけではないはず。いかに水に浸かれるかが重要なはず。だとしたら、ここにいたっておかしくない。
番台さんにお金を支払う。何度も通うことを考えると、ありがたい程に安い。一発で出会えるとは――
「いたぁ!!」
「んぁ? あぁ、万和ちゃんか」
あまりにあっけなく遭遇できてしまい、言葉に詰まってしまう。あれこれ言いたいことはあったし、姉との関係だとかどうして水にこだわるのだとか。ひとまず、服を脱いで大浴場へ向かう。友庭さんとお風呂に入るというのは実は何度か経験済で、それはひとえに我が家のお風呂が大きいからだ。
「最近忙しかったんですか?」
「まぁね。星花祭もあったし」
この二週間であった最大のイベント、それは年に一度の文化祭――星花女子では星花祭と呼ぶ――だ。服飾科といえばその制作物を展示するのだが、そのモデルは一体誰が務めたといのだろうか。もしや……姉が?
「友庭さんが作った服、着てみたいです」
「流水をイメージしたドレスなんだが、君にも似合うかもしれないな。ただ、君も君で水の抵抗がありそうな身体をしているな」
「あぁ、まぁ……家系なので」
胸元に注がれる視線を遮るように、両手で隠す。クラスメイトだと世音ちゃんや舞ちゃんがけっこう大きめだけど、私の方が二人より大きいと思う。商店街の友達だと、月見屋さんのみのりさんとほとんど同じくらいだと思う。
「友庭さんは大きい方が好きですか? 百香お姉ちゃん、すごく大きいから」
「別にこだわりはないよ。私は自分の流線型のボディを合理的だと思っているけれどね」
友庭さんの子供っぽくて出っ張りの無い、それこそ水の抵抗を受けなさそうな体躯……それでいて姉の蜜をむさぼる大人の女でもある。そのアンバランスさが、なんだか特別に思える。
「にしても、ここに来るなんてどうしたんだい? 君の家なら銭湯に来る必要なんてなさそうだが」
「別に、気分です。逆に、友庭さんはどうして家に来てくれなくなったんですか?」
「そうだな、まぁ星花祭の準備で私も百香も忙しかったから」
それは確かにそうだけれど。何か裏があるような気がしてならないんだ。だから、私は一歩踏み込んだ質問を投げかける。それはあの日、答えを得られなかった質問だ。
「友庭さんは姉とどういう関係なんですか? 姉が、その……言い方が悪いですけどビッチだって知ってるんですか?」
他にもお客さんがいるから声をしぼるけど、銭湯の構造上ちょっと響いてしまうのは否めない。友庭さんが答える、その声はどことなく興味なさげな声色だった。
「私は百香に誘われて男とも交わったくらいには、百香の淫奔さは知っているつもりだ。男は不味かったなぁ」
は? 友庭さんまでそういうこと経験済なの? 水にしか興味がないような振る舞いをしているくせに、一美お姉ちゃんみたいに……。周りの女の子たち――それこそクラスメイトの世音ちゃんや舞ちゃん。商店街で仲のいい響さんやみのりさん――にはもう恋人がいて、やることやってて……。私だけが置いて行かれる。平凡で、普通で、凡庸なまま……。特別になりたい、特別が欲しい。友庭さんが欲しい。友庭さんじゃなくていいのかもしれないけれど……でも、今はただ友庭さんが欲しい。欲望に駆られる私に、友庭さんは薄ら笑みを浮かべながら問いかけた。
「……万和ちゃんは、美味しいのかい?」
「……え?」
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